機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
エグザベ・オリベは1年と半年ほど、フラナガンスクールに所属していた。
ニュータイプの研究をしているフラナガン博士に、自身の生体データを提供していたのだ。
楽な仕事だ。
時折、書類の作成やデータ集計をすることもあったし、厚生労働局や保健所、税務署へ提出する書類を任されることもあった。
フラナガン博士はニュータイプ研究以外に興味が持てない人だった。
基礎データすら、蓄積データすらないニュータイプ研究に生涯を捧げる人だった。
ニュータイプの定義すら曖昧なまま、各地で続けられるニュータイプ研究を一新しよう、と本気で考えていた。
ニュータイプを学問として確立しようとしていた。
本当の本気でニュータイプを新人類として確立しようとしていた。
フラナガンスクールを逃げ出したのは、それが理由だ。
高濃度ミノフスキー粒子下で、性行為を強要される実験にはとてもじゃないが付き合ってられなかった。
アムロ大尉が、憲兵に連れられて僕らのサイコミュ研究室に来たのは、ようやく各論文の内容が頭に入り、復習と総括に入りかけた頃だった。ハマーンさんが機密を持ってきたあの日から3週間ほど経っていた。
「Ζガンダムを解体することになった。カミーユには申し訳ないが、決定事項だ。先に知らせておきたかった。設計に携わっていた、と俺も聞いている。思い入れのある機体なんだろう?」
アムロ大尉は、それを教えに来てくれたのだ。
Ζガンダム。そうか、誰にも乗られないまま、解体されるのか。悲しいか、と言われれば、そうだ。だけど、理由はわかる。バイオセンサーだ。
悲しい一方で、良かった、とも思う。本心だ。父と母と僕が作ったZガンダムは、人を殺さないで済む。僕と違って。
解体がこんなにも早く決まった理由も分かった。エグザべさんだ。エグザベさんもサイコミュについて多少知ってるってヌー曹長は言っていた。僕にバレないうちにZガンダムを、バイオセンサーを片付けるつもりでいる。あの人は、本当に、もう!
「いいのか、カミーユ。お前が設計したΖガンダムなんだろう。バイオセンサーだけ外してもらえば、いいだけじゃないのか?」
マシューがそう言ってくれるのは嬉しいけれど、でも、バイオセンサーなんて、よくわからないものを誰かが使うのかもしれないと思えば、逆に解体は僕としては有難かった。
バイオセンサー。例えZガンダムから取り外されても、別のMSに搭載されるかもしれない。だけど、アムロ大尉が解体してくれるなら、そんなことはない。絶対に阻止してくれる。
だから、僕はアムロ大尉にならZガンダム解体を任せることができる。アムロ大尉は誠実な大人だから。
「まさか!誰かを乗せて実験させるのかもしれない、だなんて心配しながら生きていけって言うのかよ。アムロ大尉、知らせてくれてありがとうございます。僕なら、平気です。どうせ、エグザべ中尉でしょ、こんな無茶を頼んだのは。ご迷惑おかけします。」
本当にアムロ大尉には、頭が下がる思いだった。
アムロ大尉も、あっちこっちに忙しいのに、エグザべさんは大変な仕事を押し付けちゃって、自分はパプテマス少佐と悪だくみしてるんだもんな。僕らに気づかれていないって思ってるし、なんならエグザべさん本人も悪だくみで忙しくなりすぎてて、時々、僕の第2の部屋で床に落ちてたりする。
昨日もファと協力して、ベッドまで運んだ。
僕の答えにアムロ大尉も安堵してくれたみたいだ。柔らかい表情が似合う人なんだ、アムロ大尉は。
「気にしていないのならいい。解体は3日後になる。バイオセンサーの実物を見たくないか?」
「それは、見てみたいです。まあ、傍から見て分かるものかどうかも、分からないですけど。マシューもセーラも見たいだろ?」
2人も誘ったのは、まあ、マシューはMSバカだし、セーラもMS開発に興味を持っていたからだ。
Ζガンダムの設計をしたなんて、2人に喋ってしまったのは失敗だったかもしれない。ここ最近、話題が逸れることも多かった。
自分専用MSの設計をしてほしい、と僕に頼んでくる2人に悪い気はしないけど。僕の目標は打倒メッサーラだ。
「時間は、後から伝えよう。いや、ヌー曹長辺りに伝言しておく。そっちの方が早い。エグザベ中尉にも気づかれないだろうし、な。…苦労してるな、カミーユも。」
アムロ大尉がしみじみと僕に言う。まったく本当に、その通りだ!
「本当に、そうですよ!エグザべさんは、人に心配かけてるだなんて欠片も思っちゃいないんですから。そういうところ『修正』してやらないと。そのために、マシューにもセーラにも手伝ってもらってるんです、僕は。」
「は?聞いてないが?初めて聞く。なんだ?『修正』とは?」
マシューが言うが、僕は無視した。セーラはわかっているのに、ほんとにマシューときたら。
毎朝、ウォンさんがテレビで『修正』してるじゃないか。
「困った保護者だな。MSで気になることがあれば、…いや、何でもいい。何かあったら言ってくれ。手伝えるかは分からないが、俺だって話くらい聞けるさ。」
アムロ大尉は、大人だな。エグザべさんにも見習ってほしい。
僕は素直にお礼を言った。
まあ、2日後、エゥーゴの情報部から横やりが入ってZガンダムの解体は急遽中止されたのは、本当に僕のせいでもないし、エグザべさんのせいでもなかった。
振り回されたアムロ大尉がひたすら可哀そうなだけだった。
流石にアムロ大尉が気の毒になって、アーガマの情報部に文句をつけに行くと、ヌー曹長が情報部の扉の前に『エゥーゴ情報部の横暴に断固反対』と紙に書いて張り付けていた。
姑息な人だ。
絶対、関係してるのに、あからさまに嘘だってわかる事するからヌー曹長は駄目な大人なんだ。こういう大人にはならないように心がけていこうと思った。
Zガンダムの解体中止が決まった次の日、ヌー曹長が1人の軍人をアーガマに連れて来た。
金髪の、なんか、かっこつけた髪形の若い男の大尉だ。
憲兵3人に囲まれて、彼はアーガマに着任し早々、僕らのサイコミュ研究室に連れてこられた。まだ、戦闘記録とか航宙記録の確認もしてないうちに連れてこられたそうで、困惑した顔をしている。
それで、ヌー曹長の問題行動を一つ一つ指摘している姿はアーガマでは珍しかった。だって、皆大体、手が先に出るから。
まあ、でも、そうだよな。確かに大問題なんだろうな。ブライト艦長や先任たちとの顔合わせも十分でないまま、連れてこられたのは僕たちのサイコミュ研究室だ。
僕もマシューもセーラも未成年だし、軍人でもないし。
「えー、この人はね、ゲーツ・キャパ大尉です。もとの所属はNT研究所?オーガスタ?まあ、どっちも、ていうか、全部もう無いからね、関係ないか。うん。閉鎖してもらったからね。ゲーツ大尉にはこれから、ただのMSのパイロットとしてね、頑張ってもらうって名目でね、アーガマに引っ張ってきたんでね。カミーユ君たちね、一応程度でいいから頭に入れておいてね。この人に実際にしてもらうのはね、ニュータイプ研究の解説。そう、君たちの教授役になるね。いや、本当はね、フラナガン博士辺りも一緒に連れて来たかったけど、あの人の研究内容はね、読んでて気持ち悪いし、半年前にニュータイプを信仰するカルト教団にね、重量物過積載のトラックで突撃して、今刑務所に居るからね、無理でした。フラナガンスクールの研究論文もね、取り寄せたけど、まあ、未成年に読ませても大丈夫な内容の論文なんてね、ほぼほぼないからね。その代わりに教授役を呼んできたってことだね。ゲーツ大尉はね、強化人間の実験体として、安定した結果を出しているって評判で、正直ね、上層部も色々とうるさかったんだけど、それはね、もういいよ。終わったからね。で、この人ね、強化人間化の実験を実際に受けてね、その内容も覚えていて、ニュータイプ理論とかいうのも頭に入っているからね、何でも質問していいから。武装を解除したZガンダムの実験もしてもらうし、押収したサイコミュMSも届いたらその実験もしてもらうことになるんで、あまり時間はないけどね。だから、みんなもね、手早くニュータイプ研究ってやつを頭に叩き込んでおいてね。」
ゲーツ大尉は、ヌー曹長のその発言を聞いて、驚いた顔をした。
つまり、ヌー曹長はゲーツ大尉に何も言わずに、アーガマまで引っ張ってきたのだろう。
「初耳だが?私が下された命令と違う!軍務規定に違反することになる!」
「はい、これお渡しします。手続きは全部終わってますから、こちらの書類のご確認よろしくお願いしますね、ゲーツ大尉。憲兵も常時つきますんで、問題ないです。問題ないように変えました。はい。よろしくお願いします。俺もね、マジで忙しくなってきてね、小さいクソガキに申し訳ないなぁと思うんだけどね、ほんと。でかいクソガキがね、本当に色々しやがってね。だからね、ちょっとこっちも色々するからね、今までは時間稼ぎとか言ってたけどね、そういう場合じゃなくなって、本当に色々しないといけないから。情けない大人で申し訳ないんだけどね、カミーユ君もカミーユ君で頑張っててね。セーラさんとマシュー君も、本当にごめんね。まだまだ、ハマーンさんの力が必要でね。早いとこ安全な場所に移ってほしいんだけどね、そういうわけにもいかなくてね。ハマーンさんも、ほんとあの人怖い。」
言うだけ言うと、ヌー曹長は出ていくし、ゲーツ大尉は書類を何度も読み返しているし、僕はΖガンダムの実験と聞いて胸がつぶれそうな思いがするし。
本当に大嵐にあったかのような気分だった。大嵐なんてあった記憶もないけれど。嵐みたいな人っていうのはヌー曹長のことを言うんだろうな。
「大尉って階級は、大変なんですね。」
セーラはそうは言うけど、多分このアーガマだけだよな。こういうの。だから、エグザべさんは奔走してたわけだし。
「軍人になりたくなくなるな、ああいう人を見ると。」
マシューでさえ、ヌー曹長が出て行ったドアを見てそう言った。
「ニュータイプ研究の解説?教授しろ?何のことだ?新型MSのテストパイロットとしか、聞いていないんだが?」
「アーガマって、もともと不良軍人のたまり場なんですよ、ゲーツ大尉。今はだいぶマシになりましたけど。」
エグザべさんの受け売りだ。でも、僕の実感でもあった。実際、ヌー曹長がいる。
「私は、不良軍人ではないが?」
まあ、そうだろうな。素行に問題が見られないから、ヌー曹長も引っ張って来たんだろうし。
「不良軍人を矯正するのは、真面目な軍人の仕事になるんです。命令をこなしながら、矯正するのは大変でしょうけど、応援してます。」
僕は子供なので、無責任にそう言うことにした。
いや、さすがにZガンダムの実験は止めたいけれど。僕にできることなんだろうか?ヌー曹長を捕まえて、ふんじばってでも問いたださなければ。僕は今度こそ、トイレ掃除用のバケツとブラシも辞さない。
サイコミュは、使用者のニュータイプにも影響が出る。研究結果はそれを示していた。マシューもセーラもハマーンさんも認めた。
サイコミュMSに乗った後は心が落ち着かなくなると。宇宙のどこかに敵がいるんじゃないかと、敵を殺さないといけないという使命感に駆られると。
「MSは兵器だ。ニュータイプ、いや、人と兵器が同調するように作られたサイコミュ、調整されたサイコミュが私たちをMSの一部へと、兵器へと調整していくのだ。」
ハマーンさんは、そう、言った。
サイコミュは、人間を、ニュータイプを兵器へと変えてしまう技術だと分かった。
そんな危ないものを、世界に広めたくは無かった。
Zガンダムのその後と保父さんの着任 編
保父さんが来たので、これからは保父兼軍人のゲーツ大尉がアーガマを走り回ります。その予定です。え?着任早々、命令が書き換えられてる?迷走開始!!
まあ、エグザべも迷走してるから…
戦争って、戦前にどれだけ準備が整えられたかで、すべて決まるから…じ、準備期間は長いんだよ…
情報部なんて一番忙しいよ。
ペンタゴン周辺のピザ屋とかゲイバーとか、監視してる米軍オタが一番知ってるだろ。ここぞとばかりに、便乗しようとしてくる勢力は先に叩いて黙らせとかないといけないんだよ。アナハイムエレクトロニクスとかルオ商会とか、ルナリアンとかザビ残党とか!
まあ、ヌー曹長を始めとした過激派勢力はもっと嫌な手法を使います。
小石1つで人を殺せるって知ってる人たちなので。
これ書いてた時スレで何の話をしていたかと言うと、強化人間の話です。9スレ目か。
弊SSでは欠片も登場しないフォウ・ムラサメとロザミア・バダムの話です。結構、スレでは知らない人も多かったので。
2人は強化人間で、カミーユと感応しましたが、どちらもカミーユの前で死にました。フォウはカミーユにとっての『ララァ』で、ロザミアはカミーユにとって助けられたかもしれない『フォウ・ムラサメ』です。俺はそう解釈してます。
2人ともエゥーゴとカラバが内乱を起こしたため急遽、ティターンズによって戦線に投入されました。おそらく戦闘経験も訓練もまともに受けてなかったでしょう。これはサラとシドレも同じですね。
実験データ収集のために戦線投入した、というよりせざる得なかったのかな。予算とか連邦軍内部での立場もあるし。だって、俺なら既定の訓練と教育課程合格してない兵士使いたくねえもん。データ収集すら中途半端なもんしか取れないし。踏んだり蹴ったりだよ、強化人間も研究者も。
内乱さえなければ……悲劇だね。
あ、あと自分は最終話の亡霊たちをカミーユの精神分裂体だと解釈している派閥です。あの場に幽霊はいない派閥に所属してます。学会???追放処分??ドンとこい!!よろしくお願いします。
ZZガンダム本編ででてくるララァ・スン。あれも本人ではないでしょう。
だってハマーンさんはシャア・アズナブルと寝てないんだから。生きているうちは肉欲に忠実にシャアを愛したララァ・スンは肉体が無くなればアムロ・レイを愛するはずでは??よって、あの場に出てくる理由が無い、と俺は思う。
シャアにララァ・スンになることを求められてララァ・スンのフリをしているカミーユ・ビダンだろうと思います。アムロ・レイが生きていることを知ったから、ララァ・スンの代わりを求めたんだろうと思ってる。中身がカミーユなんだから、そりゃジュドーを助けに行くよ。うっかり、ジュドー巻き込んじまったんだものな。