機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
ニュータイプ研究の概論のためだ。
だが、サイコミュ研究室の誰も考えていなかった。
ニュータイプの能力がどこから来るものなのか。
どんなものなのかも。
「なんで?君たちは!自分の能力に!そんなにも!!無頓着で居られるのだ?!どうして?!待て!己の感覚だけで!語ろうとするな!全員、言ってる単語が違うのに!分かり合った気に!なるんじゃあない!」
ゲーツ大尉は、思いのほか熱血漢だった。
でも、今は備品のホワイトボードを前に、頭を抱えている。ホワイトボードには「思考が走る」「知覚の拡大」「分かる」「確信」「分かり合う」「騎士道」「感応波」と割と丁寧な字で書いてある。ゲーツ大尉は誰でも読める字を手早く書ける人か。書類仕事もできるんだろうな。
ホワイトボードに書かれている単語は、ゲーツ大尉に促されて僕らがニュータイプ能力の特徴を挙げたものだ。僕らの会話で出てきたものが単語で書かれているのを見ると、不思議な感じがする。
こんなこと言ったか?という感じだ。もうちょっと、違うニュアンスなんだけど、単語にされてホワイトボードに書かれると違和感がある。マシューもセーラもおんなじに不思議そうな顔をしてるから、僕だけが感じてるわけじゃない。
そんな僕らの様子にもゲーツ大尉は頭を抱えている。
ニュータイプの発現と強化人間開発の実験対象だった、という彼の過去は置いておくとしても、熱血漢で研究者気質な部分がゲーツ大尉の発言から垣間見えた。
単語一つに定義の統一を求めてくる。研究って確かにそういうものだろうけど、自分のもつ感覚を定義された単語で説明するのは大変なのだということを、僕らは分かるしかなかった。
こういうのが分かるようになったのも、サイコミュの論文を読んだ成果かも。
「特に、カミーユ、カミーユ・ビダン!!君の言う、思考が走るってなんなんだ?!」
「なんか、思考が走るという言葉が一番しっくりくる表現だと、僕は思ったので使ってますけど、それが何だって言うんです?」
僕が、思考が走るという言葉を使うのはエグザべさんの影響だけど、それは言わなかった。というか、ゲーツ大尉に言ったら僕だけじゃなくてエグザベさんも怒られそうな気もするし、それを考えると後が大変そうだと思った。僕とエグザべさんだけの言葉でもあるし。
「ニュータイプの感覚全てを、その言葉に集約するんじゃない!怠惰だぞ!ニュータイプ能力の研究を何だと思っているんだ?こっちは、遊びじゃないんだぞ!!」
「ニュータイプ能力の研究などと言っても、アクシズでは脳波の測定とサイコミュMSの訓練しかされなかったが?」
マシューも困惑したまま、そう言う。
アクシズのニュータイプの研究って脳波の測定とサイコミュMのS訓練だけなのか。また、知らないことが増えてしまった。というか、疑問が増えてしまった。その程度のデータで何の研究ができるって言うんだ?
僕はそれさえ、したことない。そんなことしなくても良かったし、僕を研究材料やニュータイプとして見る人間はエグザべさんや情報部や人事部の人たちが遠ざけてくれていた。僕は護られていた。
その僕が相対した、師事したニュータイプと分類されるであろう人は、エグザべさんとパプテマス・シロッコ少佐だ。
一般的にはニュータイプって言われるのだろうけど、2人とも「思考が走る」とか「物がわかる」とかそう言う言葉に全てを集約していた。その後に会ったサラとシドレは、まあ、まだ僕と同じくらいの年齢だし。
ああ、でも、この前、ヌー曹長の許可を得て、ファと一緒にジュピトリスにビデオ通話した時には、2人とも「物がわかる」を使っていた。通信傍受を警戒してのことかもしれないけれど。
「それは、アクシズだけだ!本来、ニュータイプ研究というものは、もっと繊細に注意深く経過観察とデータの集積を行うものだ!血液から、遺伝子から、身体のホルモンバランスさえ、定期的に生体検査してだな。心身の疲労や睡眠時間なんか、一番管理される部分だ!サイコミュMS訓練など、二の次だ!問題外だ!」
ゲーツ大尉はそう言いながら、ホワイトボードの字を消し始めた。深くため息までついてる。腕を組んでしばらく考えているのは、僕らがあまりにも無知すぎるからかな?
マシューに数学を教える時の僕とおんなじだ。
「まあ、君たちには詳細は省いて説明するが、毎日決まった時間に血圧と心拍数、血液検査をしていた。その検査も被験者の健康管理のためにしていたんだ。栄養状態も睡眠時間も細かく管理されていた。そのうえで、私達被験者は1か月に1回は脳ドックの検査をしていた。就寝時には脳波測定も。脳波測定は脳の働き、ニュータイプの出す感応波を見るためのものだ。時には丸一日、測定器をつけて過ごすこともある。他にも実験や検査はあったが……まあ、そういう生体データの積み重ねがこんにちのニュータイプ研究の基礎だ。ここ4年ほどのことではあるが。」
聞いただけでも、げんなりする。ゲーツ大尉たち被験者は研究者にずっと付きまとわれていたんじゃないんだろうか。
そんなの、人間のする生活じゃない。
「まあ、アクシズでは色々な物資も足りませんでしたし、研究者もいまいち頭が足りない感じがありましたね。私もマシューも担当研究者が嫌いでした。」
珍しくセーラが毒舌だ。いつもはっきり言うセーラだけど、ここまでの言葉は本当に珍しい。
セーラとマシューは苦労してきたんだな。それが、本当に伝わってくる。まともな研究内容も教えられずに、ただただ、心身ともに疲労するサイコミュMSの訓練が主だったのか。
「そうだ!様々な医療物資が必要になる。機材だって、設備だって常に最新のものが必要とされる。医療分野の知識さえ、だ。ニュータイプ研究は脳科学分野の1つに位置づけられているんだ。並行して開発された新規の催眠医療技術はこれからの、精神医療にも活用できるのではないかと期待されてもいるというのに!その、当事者の、天然もののニュータイプの君たちが、なんで、こんなに無頓着なんだ?」
そんなことをゲーツ大尉に言われても困る。ニュータイプ研究があることを知ったのも、ついこの間だ。1か月前くらいのことだ。
それが、脳科学分野?なんで脳なんだ?いや、確かに思考って脳で行うものなんだけれど、でも、誰かの気持ちに寄り添うときって、別に脳だけで行っているわけではないような気がする。
思考を走らせすぎても、誰にも寄り添えはしない。だって、そういうものだ。
想いは言葉でも伝えるし、温かさは体を寄り添わせなければ伝わらない。
「思えば、アムロ・レイもそうだった。彼が、ニュータイプというものについて研究者や報道関係者に解説しようとした際の発言内容をまとめた文書は、今もニュータイプ研究者の口論と殴り合いの原因だ。地球連邦のNT研究所が分裂した原因でもある。今では呪われたアムロ・レイ文書と称される始末だ。」
苦々しい顔で言わないでほしい、と僕は思った。
ゲーツ大尉はアムロ大尉がグラナダ基地にいて、アーガマには毎日のように来ている事を知らないんだろうな。
2人が鉢合わせしたら面倒なことになるんだろう、と考えなくても分かった。やめてほしい。
「ともかく、君たちがニュータイプでありながらニュータイプ研究について全く理解が無いことは、私でも理解した。教授役など、私のような浅学の人間が請け負っていいわけではないが、軽い説明くらいはつけよう。正式に命令が下っているからな。まずは、アムロ・レイ文書を頭に入れて、それぞれ感想でも述べてほしい。そこから、始めよう。」
ゲーツ大尉の言うまま、僕らは呪われたアムロ・レイ文書を読んだんだけれど、1時間後にはアムロ大尉本人に聞いた方が早いんじゃないかっていう結論に至った。
そういう内容だった。
ニュータイプはニュータイプを知らない 編
呪われたアムロ・レイ文書というものを生み出したSSは多分ここだけ。スペシャル感があるね!
16歳の少年アムロ・レイはニュータイプをどう理解していたのか、言葉にしていたのか気になってはいた。
ゲーツ大尉、試練はまだまだあるぞ。気を抜くな。
弊SSのニュータイプは俺の独自考察の下にあるんで!!(予防措置)
ニュータイプを完全に説明できる人って富野監督以外にはいないので!!俺の独自考察のニュータイプで行きます!!
隣人愛だよ!隣人愛!或いはアウフヘーベンだ!
「まっとうき全体」に至るまでの過程だよ過程!