機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
ニュータイプ。
自分がニュータイプと呼ばれる能力を持っているのならば、僕は人々を導かなければならないのだろうか?
それが、1年戦争から1か月経ったころのアムロ・レイの悩みだった。
導く?でも、何に?…ニュータイプに、か。
ニュータイプがなんなのか、分からない人たちばっかりじゃないか。
地球も宇宙もそんな人ばかりだから、戦争なんかしてしまった。
でも、ニュータイプが戦争をしないで済む人間のことを言うのだとしたら…
シャア・アズナブルの言う通り、ニュータイプの時代を作ることができたのならば…
そのためには、ニュータイプをみんなに理解してもらわないと駄目なんだ。
正しく、理解してもらわないと。
焦りもあった。
僕は1年戦争の英雄になった…らしい。
英雄、になった僕は…俺は、英雄らしく、ニュータイプらしく、人を正しく導かなければならない。
そう、感じていた。
僕の予想通りに、翌日にはアムロ大尉はアーガマへ来ていた。もちろん、ゲーツ大尉が僕らのサイコミュ研究室に来た日の翌日だ。
1番はブライト艦長の容体を心配してアーガマに来てくれているのだろうけど、解体できなくなったZガンダムもちゃんと気にしてくれていた。最近は格納庫でアストナージさんと話しているアムロ大尉を見ることも多い。
憲兵と情報部そしてゲーツ大尉が言うには呪われたアムロ・レイ文書は、インターネット上にも怪文書として出回っているらしい。「宇宙からのメッセージを受け取ったイッカクの歌を人間の言語に訳した詩」「3回、音読したら気が狂う文書」「宇宙オオトカゲから警告」「ニュータイプにしか理解できない暗号」として名を馳せているらしい。
完全に、オカルト扱いだ。
一時は「幽霊を呼び出すときに唱える呪文」になりかけていたこともある、と部屋に居た情報部の女の人は教えてくれた。ニスリーン・ジャダール一等兵だ。そう言うのが好きらしい。一緒に降霊術やってみる?と聞かれたけど、僕もマシューもセーラもゲーツ大尉も丁重にお断りをした。
ゲーツ大尉が部屋を出た後、僕もマシューもセーラも何も言ってないのに憲兵と情報部はアムロ大尉本人に見せても問題ない、と断言してくれた。アムロ・レイ文書については僕らと一緒に読んだ彼らも同じ感想を持ったんだな。それが、当たり前に分かった。
オールドタイプとかニュータイプとか超えて、僕らはこの怪文書と向き合いたくないと思ったんだ。
いや、僕、カミーユとしては、そんな怠惰をしてないで、早急にアムロ大尉にこの呪われたアムロ・レイ文書の改訂するように頼んでもらいたかった。こういうのはいったい誰の仕事になるんだ?
「カミーユ、なんだ?この文章は?誰が何について書いたんだ?」
問題のアムロ・レイ文書を読んだアムロ大尉の感想がこれだったからだ。憲兵も、僕らのお目付け役のニスリーン一等兵も間違いなく、このアムロ大尉の発言を聞いた。
「何を無責任なことを!!良い大人が!これはあなたの発言をまとめたものだろう!」
マシューがアムロ大尉に掴みかかりそうになりながら言うのを俺とセーラで抑える。
もう、マシューは!!
こいつ、パプテマス少佐のところに修行に出したい!!少しは少佐の爪の垢でも煎じて飲め!ついでに数学も教わって来い!
手のかかる弟ってドラマとかのセリフにあるけど、きっとマシューみたいな奴を言うんだ!
「こんな発言をした覚えはないな。なんだ?…完全な理解は完全な平穏に繋がる?肉体から解き放たれた魂だけが純粋な物事の真の想起を?うん?……物自体とそれを認識する主観の構成の対比による共同作業が現象で……現象が構成される以前の物自体を認識できない人類にとって認識の拡大がもたらす物質世界からの超越的価値観の……何が言いたいんだ?この文章を書いた奴は?」
ゲーツ大尉がこの発言を聞いたら、気絶するんじゃないだろうか?いや、全世界のニュータイプ研究者が首を括るかもしれない。
ゲーツ大尉が通常の仕事してる時間に来て、本当に良かった。
「この文章を書いた人間は正気じゃなかったんじゃないか?」
とうとう、アムロ大尉はそこまで言った。
「……いえ、僕にはわかりません、アムロ大尉。ニュータイプって、なんなんでしょうか?」
マシューをセーラさんと2人がかりで床に押さえつけて、アムロ大尉に訊いた。
アムロ大尉って、この状態のマシューも気にかけないんだ…立派な大人だと思ってたのに。
頭の右上を見ているような、見ていないような そんな感じで考え込んでいる。
「俺もここ最近、ニュータイプについて考える時間が増えたよ、カミーユ。戦後に周囲から、俺はニュータイプだと言われて、俺自身もそう信じ込んでしまっていただけで、間違っていたのかもしれない。ニュータイプが人類の革新した姿だという話が本当なら、俺はニュータイプじゃない。今も目の前の仕事を片付けるのに手一杯だ。人間に腕が2本しかない理由が分かるようになってきたよ。」
「腕が2本しかない理由?」
そういうことを言ってしまうアムロ大尉だから、こういう呪われたアムロ・レイ文書ができあがってしまったんだろうな。僕には、それが分かった。
「前に言われたことがある。どんなに逆立ちしたって、俺はアムロ・レイでしかない、と。神様になんか、なれやしない、と。もっと、その言葉を胸に深く刻んで置くべきだった。ニュータイプが本当に居るんだとしたら、俺みたいな後悔ばかりの人生を歩んだりしない人間のことを言うんだろう。…カミーユ、友達と戯れるのも悪くはないが、ちゃんと手加減をして傷つけないようにするんだ。マシューが俺に怒った理由はよくわからないが、大切な友達なんだろう。床に押さえつけるなんて、したら駄目だ。…いや、俺も人のことをどうこう言える人間じゃないんだ。カミーユ達くらいの頃には、そういうプロレスごっこもよくしていた。懐かしいよ。」
言われてマシューから手を離したけれど。もう少し早いタイミングで言ってくれれば良かったのに。いや、でも、こういう子供の悪ふざけを叱ってくれるのは、アムロ大尉が大人だからか。
「ララァ・スンと分かり合えた時、互いのことを真から理解できたと思えたあの時…本当なら俺は、もっと時間をかけて彼女と話すべきだった。確かめるべきだったんだ。ララァ・スンと俺が共有したものが、感覚が、本当に真実だったのか。同じものだったとしても、違うものだったとしても、話し合って、未来を切り開くための力に変えるべきだった。ニュータイプなどという言葉に惑わされて、自分に特別感など感じている場合じゃあなかった。ララァが特別な人だったからと言っても、俺自身が俺を普通の人間だと分かっておくべきだった。…後悔ばかりだ。今だって。」
アムロ大尉は、そう言ってため息をついた。言いたいことがあるんだろう。僕に。でも、僕は聞かないことにした。
アムロ大尉は神様じゃないからだ。
「神様じゃないって言ったのは、アムロ大尉ですよ。だったら、大尉はちゃんと人間をしてください。ニュータイプとかオールドタイプとか、僕にはよくわからないんです。僕は、思考が走るだけの、ただの人間ですから!」
そうだ。人間には未来のことなんて、分かりっこない。
エグザべさんも思考が走るなんて言ってはいても、でも、混乱しているからとか疲れているからそうなるんだって、言ってもいた。
思考が走り過ぎる恐怖も教えてくれた。彼岸に連れていかれる恐怖だ。
1年戦争の時のアムロ大尉に、シャア・アズナブルを殺しておかなければならなかった理由が分かるはずがない。分かっていたら、とっくに彼岸に連れていかれていた、走る思考がそうしていた。
アムロ大尉は神様じゃない。当たり前に、人間なんだ。
「人間って……何をすればいいんだろうな、カミーユ。」
泣きそうな顔でアムロ大尉が言う。
「後悔して、反省して、でも次が起きないように自分を修正しながら生きていくんです。」
僕はもう、誰も失いたくないんだ。
両親のことを想った。ファの家族のことも、空手部の仲間のことも、ティターンズ、いや、ライラさんやジェリド、カクリコンのことも想った。グリーン・ノアから飛び出してしまった僕が失ってきたもの全てを想った。僕が巻き込んでしまった誰かのことを。
僕も人間だから、色々なものを失った。故郷も家族も知人も、失ってしまった。未来なんて、分かりはしなかった。
でも、もう失いたくはない。だから、僕はファもハマーンさんもアムロ大尉もマシューもセーラも、たくさんの人を巻き込んでいる。助けてもらっている。
家族を、友人を失いたくないのなら、カミーユ・ビダン。お前は人間のまま生きていけば良い。身体と心を持って、家族や友人たちと温めあいながら、支えあいながら。互いに傷つけあったとしても、後悔し反省し、愛し合うことを諦めずに生きてゆけば良い、カミーユ・ビダン。それは生きているカミーユにしかできないことだ。羨ましい、なんて言うと思ったか、バァーカ!!間抜けなカミーユ・ビダン、生きて見せろ!泥水すすって、血の池を這いずり回って、屈辱と悲痛に叫び声をあげてでも生きて見せろ、カミーユ・ビダン。お前の言う人間を、やってみせろ!そしたら…まあ、俺達もちょっとだけ手を貸してやってもいいぜ。
僕をせせら笑う声が耳元を通り過ぎていく。何人もの笑い声。だけど、怖くはなかった。屈辱も感じなかった。
僕は、お前とも話してみたかった。同じ名前なんだろ。僕と同じカミーユ。そして、エグザべさんのことが大好きなのも同じなんだ。
僕が羨ましいから、僕にちょっかいかけに来るんだ。
「僕には、ファもエグザべさんもサラもシドレも、マシューもセーラも。家族も友達もいるんです。アムロ大尉も、僕が友達だって思っていいのなら。」
アムロ大尉は何も言って来なかったけど、笑いながら僕の頭をグラングランするほど撫でてくれた。
マシューはそれに隠れて、僕の脛を蹴った。撫でられてる僕が羨ましいなら羨ましいって、言えばいいのに。素直で正直なのがマシューのいいところなのにな。
アムロさんはマジで自分の発言を忘れている 編
ガチで自分の発言だと思ってない弊SSのアムロ・レイ。
この発言したはずの7年前には哲学と文学の入門書を、得意でもないのに読んで頑張って原稿つくって頭に入れていた。だけど、報道に載ったのを見たとき、自分でも上手ではなかったと分かってしまったので、記憶から消した。そのうち改訂するつもりではいたけど、忘れていたアムロ・レイ。本当に真面目なんだよ。
だが、そもそも報道機関も研究員も連邦軍がアムロさんの身の安全のためシャットアウトしてたので機会が無くなって……。まあ、逆に良かった!!
研究者?まあ、名と実績のあるニュータイプの発言は無視できなかった。哲学書持ち出して殴り合いの喧嘩してNT研究所は分裂した。弊SSでは、そういうことになった。
カミーユはマシュマーのこと手のかかる弟だと思っているけど、マシュマーも引っ込み思案の手のかかる弟ってカミーユのこと思っている。セラーナは2人とも弟だって思っている。
カミーユの思いつくエリートというのはパプテマス・シロッコしかいないので、マナーとか振舞いとかだけ、マシュマーに真似してほしい。今の動きはコメディアンなので。薔薇を!!咥えるな!!
マシュマーは、カミーユが自分に甘えているところがあるのは分かっているので、カミーユの兄貴分として頑張っているつもりでいる。弊SSのカミーユは甘えると相手の扱いが雑になる。手が出やすくなるし、口も悪くなる。だんだん、かまってちゃん、ぽい所が出てくる。
ファは一番、精神年齢が高い。子供組の中では。だから、マイネちゃんのお世話係を任されるわけです。バスクミームにシャアミーム、キャスバル配信など、弊SSの世界はちょっと汚染されてるから。