機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
「木星のこともある。早急に、木星の彼らに報いなければ。……赤い巨人がこちらを見ている。」
エグザベの、その呟きは耳に残った。
木星の赤い巨人。心臓を冷たい手で捕まれたかのような、あの時の、あの感覚が蘇ってくる。
木星で、私を見た、私に見られた、あの…
「言うな。気づかれる。」
エグザべは、木星の赤い巨人を見ている。この地球圏から。人間の限界を、こうも軽々と越えようとしている。
エグザべの思考が走っているのではない。走らされている。恐らくは、赤い巨人に。
物を分からされている。己で分かるのではなく。
それに気づいたとき、私は木星から地球圏に戻る決断をした。力の家畜になりかけているパプテマス・シロッコに気づいたからだ。
人類に品性を求めているのも、そう、赤い巨人に相対する為だった。あれを、人類が降さなければ、そして、制御しなければ未来がない。
力に溺れない人類を、地球圏に求めた。
「違うよ、パプテマス・シロッコ。もう、気づかれているんだ。ずっと、気づかれていた。人類を見ている。人類で、試しているのか。理想の生命体を作れるか否かを。ずっと、何度も試し続けていたんだ。生命の源を惑星に植えては滅ぼすのを繰り返し。……そうか、シャア・アズナブルと同じだ。理想の『アムロ・レイ』を求める。勝手に期待して、絶望することを繰り返すだけの存在。」
穏やかな顔で、木星を見ながら言うエグザベに恐怖を感じる。私が、4年の時をかけて理解した赤い巨人の意図を見抜いた。
まさか、赤い巨人と、感応してみせたとでも…
「もういい、やめろ。エグザべ、ドゴス・ギアに戻って来い。」
肩を強めに叩くが、まだ、エグザべの思考は走っている。見れば分かることだった。
茨の冠が、完成した…。
「パプテマス・シロッコ、君が頼りだ。僕を上手く使ってくれ。もう、因果地平の彼方へ人類を、全生命体を連れて行かせるわけにはいかない。君が木星から帰ってきてくれて、本当に良かった。君に会えて。…ずっと違和感があったんだ。1年戦争が始まるあの日まで、僕はコロニーでの生活に違和感なんて感じてなかった。思考も走ることなんて無かったんだ。重力が人工物だと言われても、地面の下が宇宙空間だと言われても。宇宙で生きていることが当たり前だった。当たり前に生きていけるように、そうできるように、コロニーを作ってくれた人たちが居たからだ。ニュータイプなんて揶揄される力なんて無くても、人は宇宙で生きていたのに…思考が走るようになって違和感がずっと付きまとっていた。自分の思考なのに。直感が全てに先行することは恐怖だ。正気を疑いもした。」
遺言めいたことを言う。ふざけたことを。
「だが、力は使いようだ。どのような物でも。悍ましい巨人に押し付けられた物であっても。人類の存続と発展のためにも使えよう。エグザべ、お前は私の友だ。この、パプテマス・シロッコの。私は友を道具として使うことなどない。」
「軍が、僕の性に合っていたのはそういうところだろうな。僕を道具として使い潰してくれる。」
笑うな、エグザベ・オリベ。お前の、その、苦しみを自分で笑うな。
お前が受けた痛みを、苦しみを、屈辱を、悲哀を、怒りを、お前自身を軽んじるな。
「道具として潰れたいか?だが、私はお前に、そのような楽な道を選ばせない。エグザべ、お前には私と共に、人類を導く重責を背負ってもらう。お前には、それができるはずだ。」
木星を、赤い巨人を思えば、当然のことだ。人類の、人類による人類のための宇宙を実現するために。
この宇宙には、私とお前が、そして多くの品性を持った人々が必要だ。
人類の、地球の、木星の、生命の未来のために。
ハマーン・カーン。母として、愛する我が子のために戦う女も立ち上がったのだ。
「カミーユ。カミーユ・ビダンの父として、エグザべ、お前が立たずにどうする?カミーユに赤い巨人を押し付けるのか?他者から影響されやすい素直さと真面目さを持ったカミーユ・ビダンでは巨人に抗えないだろう。…キャスバル・レム・ダイクンは、『アムロ・レイ』にならなかったカミーユ・ビダンに失望してアクシズで沈黙を続けている。木星の巨人のように、だ。巨人は、キャスバル・レム・ダイクンは、お前の言う通り、見ているだろう。カミーユ・ビダンを。」
エグザべの表情がようやく動いた。思考を止めることができたか?
「子供たちための未来を切り開きたいと、アムロ大尉は言っていたんだ。僕も、そう、思うよ。だけど、残念だ。赤い巨人もキャスバル・レム・ダイクンも、違うらしい。」
「世界に他者のいない者同士、気が合うのだろう。赤い巨人と赤い彗星だ。」
「同じ赤繋がりか。なんか昔読んだ推理小説にそんな同盟が出て来たな。なんだったっけ?赤い……ああ、そうか。赤い巨人はキャスバル・レム・ダイクンを通して、地球圏の人類を、ニュータイプを試しているのか。だから、僕が地球圏に居ても、赤い巨人を見ることができた。相性も悪いはずだよ。いわゆるニュータイプの力の源は、赤い巨人なんだ。今、分かった。」
「もう2度と、キャスバル・レム・ダイクンに関わるな。エグザべ。カミーユのことを想え。」
「パプテマス・シロッコにだけ、赤い巨人を押し付けるわけないだろう。親友の君の力になれないほど、まだ、僕は宇宙に溶けてない。あんな悍ましい…不気味な…邪悪だ。キャスバル・レム・ダイクンのことを吐き気を催す邪悪だと思ったことはあるけど、赤い巨人はそれ以上の邪悪だよ。」
「カミーユ・ビダンのことを想え。目を背けるな。エグザべ・オリベ。」
「軍人なんだよ、僕たちは。パプテマス・シロッコ、君を生かすのが僕の仕事でもある。中尉としての、MSパイロットとしての僕の仕事だ。僕の希望でもある。………帰れはしない。」
「兵を無駄死にさせず、敵に勝利し生かして帰すのが、士官としての、艦長としての私の使命だ。私を侮るなよ。」
「君のことを侮るような人間は、この世にいないよ。僕が許さない。………もし、許されるのなら、カミーユとファさんのいるところに、帰りたいと、そう、思っている。でも、パプテマス・シロッコ、僕が今日、殺したMSは18歳から20歳の少年達だった。7年間、テロリストたちに洗脳されて、ジオン公国のすべてが正義だと信じさせられて、勝利を疑ってない少年たちだったんだ。あいつらは、いつも、いつも、そうだ。だから、僕はもう帰れない。」
「私が、お前に命じたことだ。エグザべ・オリベ。テロリストを全て殺せ、と。」
すべて、私のせいにしてしまえばいい。子供を殺したことも。
「こういうときだけ、パプテマス・シロッコは僕を甘やかす。僕と君で決めたことだったはずだ。ジオン公国、いや、ジオニズムをこの世から消すと。アクシズにはジオン公国の全ての罪業を背負って消えてもらうと。僕とパプテマス・シロッコで決めた。人類の未来のために、そう、決めただろう。」
「思い出したのならば、その責務も業も生きて背負え。私がいつまでもお前を甘やかしていると思うな、エグザべ。」
「生きて、背負う、か。ルウムの、故郷の宇宙港で、カミーユに背中を、押されたんだ。そのせいで、いや、そのおかげで生きているんだ、僕は。」
「足りないな。ルウムのカミーユだけでは。ルウムだけでは。このパプテマス・シロッコの友ならば、まだ重い業を背負ってもらう。それができるエグザべ・オリベだ。私はお前を知っている。」
「そう、か。そうだな。僕もパプテマス・シロッコのことを知っているよ。君が、人類を愛していることも、導こうとしていることも。僕は、そうか。君と、パプテマス・シロッコと導く側に行かないといけないのか。ますます、帰れないな。」
「死人は人を導けない。忘れるな。」
「キャスバル・レム・ダイクン次第かな?5回も逃げられているようでは……逃げる?どこに?」
Zガンダム 逆襲のシャア 編
赤毛同盟ならぬ赤同盟…いっそ赤軍(あかぐん)でどうかな?コンプライアンス通らないって?二次創作書いてる人間がそんなもの気にしてどうする?コンプライアンスなんて踏み台にすぎんよ。