機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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カミーユはガンダムMK-Ⅱの訓練を始めた。
エグザべ・オリベが言うには戦場で生き残るためには必要なことだから、だという。

戦場。既にいくつかの死地を駆け抜けてきたカミーユであったが、アンマン港防衛戦を経て思うのは、かつての「敵」と思ってしまった人たちの事だった。

自分は生き残ることができるのだろうか?
誰かを生き残らせることができるのだろうか?

生き残ったカミーユは、訓練を始めた。
それは、未来に生き残るための準備であった、とまだ彼は気づかない。


ブリーフィング

カミーユの訓練は順調だった。何事も丁寧に真摯に、根気よく取り組んでくれている。

まだまだ、辛い思いを抱えているだろうに。それを振り払うかのように、乗り越えようとしている様に頑張ってくれている。

 

カミーユを戦場になんか、いさせてはいけないな。必ず、平穏に帰してあげなければ。

親友のカミーユに誓ったのだから。

 

 

 

さて、そんな思いとは裏腹に、一向に何ともならない方にも目を向けなければならなかった。もう、アンマン港防衛戦から10日も経つ。

 

そう。あの時予測した敵の攻撃。しかし、今に至るまでティターンズに動きがない。

このことについて、毎日、ヘンケン艦長と観測班を交えて話し合うようにしているが、警戒を続ける以外の意見が出ることはなかった。

威力偵察をしようにも、ティターンズは強大すぎて、エゥーゴは弱小すぎた。それはヘンケン艦長たちに言いはしなかったが。

戦力の差が大きすぎる。

 

そして、その弱小さよりも、もっと大きな問題がエゥーゴの内部にあった。

 

僕はたった今エマ中尉に教えられるまで、グラナダでクワトロ大尉たちが奪取した戦艦とMSの本当の数と保管場所を知らなかった。クワトロ大尉が機密にしていたと言う。2隻の戦艦と10機のMSだけではなかったらしい。

アーガマの格納庫で受領したリック・ディアスの調整を終えた僕をコクピットの前で捕まえて、エマ中尉はこの情報を教えてくれた。

 

「え?なんで、ですか?」

 

エマ中尉にそう間抜けに聞いてしまったのは、正直恥ずかしかった。エマ中尉も先ほど、クワトロ大尉から聞いたばかりだと言う。 

なんで、奪取してきた戦艦とMSの数が違うんだ?味方に隠してどうする?何になる?浮かぶ疑問は山ほどあったが、とにかく親切なエマ中尉に頭を下げた。

 

「恥ずかしいです。僕があの時、確認しておくべきでした。進行だったのに。エマ中尉、手助けしていただいてありがとうございます。」

 

「いえ。かまわないわ。打開策は今、総員で考えているの。情報って大事な物だと、ようやく思い出したから。」

 

そういうと、中尉はパイロットの待機室に向かっていった。多分、整備士や他のパイロットにも伝えて打開案を求めるのだろう。

 

味方に隠すような情報でもないだろうに。クワトロ大尉の考えがまるで分らない。…もしかすると、暗躍しているアナハイムエレクトロニクスからの指示なのかもしれない、がそれにしたって、まるで意味がない機密だ。

味方の戦力を味方から隠すのか。何のために?

 

エマ中尉がクワトロ大尉から聞き出したという本当の戦力。

戦艦がティターンズの主要基地のグラナダに6隻、アンマンにアーガマを含めて3隻。加えて、機種様々のMSが80機。

あまりの大胆さに、アナハイムエレクトロニクスのウォン氏の得意げな顔さえ見えたような気がした。

 

「ブリーフィングの準備をするか。」

 

そもそも、グラナダに奪取してきた戦艦を保管してるって、アナハイムもグラナダの地球連邦軍も随分と危ない橋を渡るものだ。いや、アナハイムは軍人じゃなくて会社員か。軍事というものを分かるわけもないのだ。

グラナダの地球連邦軍?まあ、他人事なのだろう。アナハイムエレクトロニクスという大企業の暗躍が彼らを大胆にもさせているのか。

 

そうだ、ウォン氏に連絡を取って作戦開始時にはアンマン市の一般人を避難させてもらおう。念のために。

 

危ない時に危ないですよ、と声を掛ける親切に怒る人ではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「グラナダを攻略します。」

 

僕がそう発言した時、誰も何も言わなかった。活発な意見交換がしたいんだけど。

アーガマの艦橋に居るのは、大体、この前のデブリーフィングのメンバーだ。クワトロ大尉も居る。本当ならば、毎回居てほしいものだけれど。 

 

「まあ、前回の先発隊の活躍でほとんど攻略し終わっているようなものです。少し、アーガマを移動させるだけだと思っていただければ。」

 

僕が補足して言うが、誰も何も言ってくれない…

 

「今後、グラナダに寄港するティターンズの戦艦はどうする?」

 

ヘンケン艦長だけがちょっと考えた後、そう聞いてきた。想定していた質問だ。すぐに返せる。

 

「鈍いのであれば港の中に誘引し、待機させたMSによって艦橋を破壊します。頭を潰されたのであれば、即時出撃はできないでしょう。戦艦と艦載MSは接収は容易いかと。」

 

周囲を見渡して、意見を求める。誰も何も言わない。

なんでだ?ロベルト中尉なんか、こんな時に口笛を吹いている。

 

「グラナダをエゥーゴの防衛と補給の拠点にすれば、今後の戦略にも幅がきくかと愚考しました。」

 

実際、アンマン港では手狭なのだ。だから、奪取したティターンズの戦艦の大半をグラナダで保管する、などという危ない真似をエゥーゴはしている。味方艦との連絡も取りづらくなり、MS部隊の訓練計画まで立て難いことこの上ない。

それにアンマンはあくまで、普通の工業都市で、その港は一般開放さえされてもいる。戦艦がいつまでも居られる港ではない。

 

「敵も馬鹿じゃないわ。気づかれたら、どうするの?」

 

エマ中尉が当然の懸念を指摘する。

有難い。不明点や疑問点を味方で共有できれば、それだけ意見交換も活発になるし、計画に不備があれば見直せる。

 

「グラナダはティターンズの補給基地です。寄港する敵戦艦の物資は少なく、艦載員は疲れて油断しています。アーガマとグラナダの6隻とMSで、対応可能だと愚考しました。」

 

とは言ってみたが、僕はちょっと内心自信がなかった。

 

急増された戦力だ。練度を知らないし、連携も取れるかどうか。全く使い物にならない可能性だってあった。なんで機密にするのか。

機密指定した本人、クワトロ・バジーナ大尉に目をやる。

 

「……カミーユにやらせるか。いい経験になる。」

 

殴りかからなかったのは、そう、クワトロ大尉なら言いかねないと予想していたからだ。それが頭を過ぎった時、僕は部屋で吐き気さえ催した。

 

「カミーユ・ビダンは、僕の直属の部下です。現在、彼は基礎訓練を始めたばかりで動きに不安定な部分も多い。上官命令とはいえ許可しかねます。」

 

もちろん、それをさせないために僕がいる。

 

「戦いの中で育てる事も、エグザベ中尉なら出来るだろう。」

 

この発言も想定していた。

 

「いいえ、出来ません。自分は、軍学校時代にその様なことを、つまり、何の訓練も受けず数合わせでMSに乗せられた兵たちが壁にも慣れずに戦死した事を教官より教えられました。二度と繰り返すべきではない、と。僕も同意見です。」

 

一息にそう言い、大きく息継ぎをした。

 

「我々は80機のMSを所持していると言うことを、まず頭に入れておいてください。そこにグラナダとアナハイムが入れば、周辺に防宙設備を作り、守りを頑健に出来ます。」

 

「さて、アナハイムが許すかな?」

 

クワトロ大尉はもう、こちらも見ずにそう言う。そう言えば、大尉と向き合って話したのはこの前が最初だったな。

 

「許すも許さないもないでしょう。我々の味方をするしかないはずです。グリーン・ノアにはガンダムMk-Ⅱの生産工場が合ったのでしょう。アナハイムエレクトロニクスのライバル潰しの為には、多少の事に目を瞑ってもらいます。」

 

もう、誰も何も言わなかった。艦長も考え込むだけだ。

 

艦橋は沈黙したままだ。誰も何も話さない。

 

10分程、そうしていた。僕が口を開かなかったのは怒りを抑えていたからだ。

表情に出せば、侮られる。これも教官の教えだ。

何でもないように装う事が、常にどんな苦境にあっても微笑んで他人を安心させる事が出来る士官が良い士官になれる。

 

やがて、艦長が口を開いた。

 

「……アナハイムとの密約がある。我々は、この戦力でジャブローに総攻撃をかけなければならない。」

 

「艦長!」

 

クワトロ大尉の迷惑そうな感情が滲み出る声が飛ぶ。

 

ジャブロー?ジャブローって何のジャブローだ?まさか地球のジャブローとは言わないよな?

 

地球連邦軍の総司令部がある、アマゾンの軍事基地ジャブロー、なわけないよな?

嘘…だよな?1年戦争前からの軍事基地だぞ?

たった80機のMSで何ができる?

そもそも、80機程度のMSと10隻程度の戦艦なんて地球軌道上に来た時点で高高度ミサイルで撃ち落とせる。それだけの練度を地球連邦軍は保っているはずだ。

 

何度ジオン公国軍がジャブローで失態を重ねたと…知っているはずだろう、赤い彗星ならば。

 

 

 

 

 

 

それから、長い、本当に長い時間、具体的には5時間。時に艦長がウォン氏に電話を挟み、ブリーフィングをした。

 

兎に角決まった事は2つ、グラナダはエゥーゴの拠点とすることと、ジャブローのブリーフィングは次回にすることだった。

 

正直に言うと、僕は、ブリーフィングの間、ちょっとだけ逃亡を考えた。カミーユを連れて、エゥーゴから逃亡することを。だが無理だ。ジャブロー攻略よりは勝算があるけど。

 

アナハイムエレクトロニクスは本当に会社員の集まりなのだ。それも生粋のルナリアンの。恐らく、交通網の整った都会しか歩いたことのないルナリアンには、地球の広さやジャングルとか密林の恐ろしさなど分かりはしないのだろう。

僕も教本でしか知らない、恐ろしい事しか。

 

MS80機でジャブローを制圧?正気の沙汰ではない。地上に着くことなく全機落ちる。大気圏とか地球環境とか、そういう話ではない。ジャブローの防衛力を考えれば、当然そうなるというだけのことだ。

 

地上で戦闘にはいくつもの戦訓がある。

対MS用地雷。多種多様な自走砲、戦車、高射砲。爆撃機、戦闘機。対面制圧用ミサイル群。敵武装だけでこれだけあるのだ。対処法についても数えきれないほどにある。

80機のMSなんて生き残れるはずがない。地上では80人の兵士と同義になる。

 

 

 

「……なんでクワトロ大尉は、あんなに乗り気なんだ?」

 

腑に落ちない事の一つはそれだ。

クワトロ大尉は仕方ないとか何とか、ブリーフィング中ずっと言っていたが、僕にはジャブローに行くことに乗り気の様にしか見えなかった。

 

 

 

 

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「グラナダを攻略します。」

 

若造の、エグザベ・オリベ中尉は一切の迷いなく、開口一番そう言った。本当に言いやがった。

グラナダはコロニーと地球を結ぶハブ港であり、地球連邦の基地であり、兵站の集積地だった。

 

考えたことがなかった、と言えば嘘になる。ティターンズの豊富な補給や設備を羨ましく妬ましく思わないエゥーゴはいない。

何せこっちは新設の組織で、言ってしまえば寄せ集めだ。組織として動く経験は浅いし、このアーガマにさえ過去を明言できない人員が多い。代表としては、シャア・アズナブルことクワトロ・バジーナ大尉。地球圏の未来を見据えて、地球から宇宙への移民を積極的に支持する彼は、地球圏の将来を嘱託すべきニュータイプだった。

 

クワトロ大尉が来てからこっち、アナハイムエレクトロニクスは随分、柔軟になった。資金もMSも支援してくれるようになった。アナハイムから紹介されたという経緯もあるが、頼りになる歴戦の優秀なMSパイロットでもあった。

 

おまけに、シャア・アズナブル大佐だというのに、エゥーゴの発起人であり指導者であるブレックス准将のおぼえもめでたい。そのクワトロ大尉が、そのアナハイムエレクトロニクスから求められたジャブロー攻略。

これは、最高機密だ、とクワトロ大尉は言う。

 

だが、若造は。

 

「グラナダを攻略」

 

口の中だけで小さく誰にも聞かれないように呟く。考えなかったわけではない。考えなかったわけでは。

 

ルナリアンは信用できない。ブレックス准将のエゥーゴも、クワトロ大尉が来るまで鼻で笑われるような有様だった。そして、恐らく一部のもの以外は、俺達のことを今も腹の底では鼻で笑っている。

ウォン・リーは違う。彼は実直だった。ルナリアンの中では一番信用できた。月に住む人間全てを含めて一番だ。

 

ルナリアンは金と口しか出さない。

 

金は大事だ。それはわかる。若い時分には、金さえあれば、と戦闘後に思ったことが数え切れないほどあった。もっとミサイルが、バズーカが、MSが、戦闘機があれば、と何度も思った。

 

しかし、金を出したからと言って、無限に人間の死体を積み上げさせて良いわけではない。

 

ジャブロー。

 

クワトロ大尉は、資金を出したアナハイムエレクトロニクスの連絡員の前で、やってみねば分からん、と言った。

 

一方、グラナダ攻略。既に道筋が出来ていた。この、アーガマに来たばかりの、尻に殻でも付いてそうな、この若造、エグザベ・オリベ中尉のなかで。

 

艦長席から奴の顔を見る。クワトロ大尉の揺さぶりを受けても小揺るぎもしない。いつもそうだ。穏やかな笑みを浮かべ、全て世は事もなしと言った感じを受ける。

 

その奴が、グラナダ攻略を言う。アナハイムエレクトロニクス、ルナリアンを黙らせると。

 

ロベルトもアポリーも感心している。エマ中尉も懸念事項の確認は終わったようだ。

 

地球とコロニーがいくら揉めようが、何人犠牲者を出そうが素知らぬ顔で、あくまで第三者として、他人事として済ませてきたルナリアンの、アナハイムの目を瞑らせる。

 

それは、艦長としても魅力的だった。

エゥーゴの一員としても魅力的だった。

軍人としては、とてもとても魅力的だった。

 

 

 

 

 

 

 

「艦長、機密を、そうホイホイと明かしてもらっては困る。兵の統率に関わるぞ。」

 

艦長室に2人で入るなり、クワトロ大尉はそう言った。青いな。

 

「ルナリアンどもの目を覚まさせる事は、軍人としては夢なのですよ、クワトロ大尉。ご理解願いたい。」

 

「…彼らは我々を見捨てるかもしれん。」

 

そう。それだから、ルナリアンの目を覚まさせなければならないのだ。自分たちだけは何処までも、争いに無関係で、軍人より、汗や血や命を流す人々より上等な人間だと思っている奴らの。

 

今も奴らはティターンズにMSを卸している。宇宙移民の安寧と発展を自分たちも支持していると言いながら、宇宙移民の殲滅を画策するティターンズに、だ。

 

ウォン、彼だけは賛成してくれた。直ぐにグラナダを攻略して欲しいといい、上層部の説得を請け負ってくれた。『修正』をしてでも、認めさせると言い切った。

 

「大尉はお若い。まずは、焦らない事を覚えて頂かねば。ブレックス准将も俺も、大尉には期待していますよ。」

 

クワトロ大尉は何も言わず、艦長室を去った。

やれやれ、若いのが元気なおかげで、大尉も功を焦っているようだ。俺もあんなころがあった。

 

まぁ、クワトロ大尉の焦りも分かる。エグザべ・オリベ中尉は俺の目をまっすぐに見て言った。

 

「ジャブロー攻略はあらゆる面から検討しましたが、成功しません。MSの数が10倍になろうと、必ず失敗に終わります。兵を無駄死にさせることは指揮官として最も恥ずべき行為ではないでしょうか。」

 

クワトロ大尉ではなく、艦長の俺を見て、言った。

 

言葉に出さなくても伝わるものはあった。

あの、若造め。俺を見て、指揮官としての本分を思い出せと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シャア迷走編

常に迷走してる?それはそう。
むしろ迷走してない時がないと思っている。


スレでここ書いているときに、何度もジャブロー降下作戦を頭の中でシミュレーションしてみましたが、全滅以外の結果は出ませんでした。
俺では無理でした。

ところで、レコアさんのあの川下り、何の意味があったんですかね?
カイさんはカッコいいけれど、汚れていない白いスーツを着て登場…何かの伏線だったのかな?富野監督の初期案を聞いてみたいと思ってる。
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