機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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牙を研ぐ

 

 

 

僕は、やっぱりニュータイプが、まだよくわかっていないんだ。それを、分かったのはゲーツ大尉のサイコミュ調整をしていたからだった。

こんなに苦労させられるだなんて、いや、こんな厄介でややこしいなんて、本当に心の底から嫌になる。

 

ニュータイプになったって、サイコミュの勉強したって、実際にサイコミュの調整なんて仕事を任されてみたら単なる初心者だ。ペーペーのド素人だ。分からないことだらけで、間違いだらけの失敗だらけだ。

 

1人じゃないから、マシューもセーラもハマーンさんもゲーツ大尉も助けてくれてるから、何とか続けられているだけで、僕ひとりだけだったら、とっくの昔に投げ出しているか、自棄になって無責任に馬鹿なことをしでかしていたかもしれない。

ニュータイプの力に頼り切る人間になっていたかも。

孤独な人間になっていた。

 

だから、カミーユ・ビダンは、ニュータイプじゃなくていい。

 

「カミーユ!調整が過敏すぎている!」

 

さっきから、ずっとこういうことの繰り返しだ。最初の調整として、専用パイロット用に合わせてあった調整をゲーツ大尉用に書き換えていくのだけれど。それだって上手くはいかない。まずは、サイコ・ガンダムのカメラアイの電源をいれる、と言う行動を脳波コントロールだけでするはず……その調整をしているつもりなのに!

初歩の初歩なのに、マシューにさえ横から口を出されている。エリートは、これだから!

 

「最初は大雑把に、でいい。これほど、繊細に調整すると機体の異変が私の脳にもフィードバックされてしまう。」

 

ゲーツ大尉がサイコガンダムから、通信を通して報告をしてくれる。

なんだ、それ?!僕は聞いてないぞ!機体の異変がフィードバック?つまり、それって機体の故障を自分の体の異変として感じ取ってしまうってことか?!

 

「聞いてませんよ!ハマーンさん!」

 

「サイコ・ガンダムは戦場へ出さない。飽くまでも感応波の増幅機として使う。機体に傷がつくことなどない。心配することなど何もない。調整を続けろ、カミーユ。」

 

僕の心配も一顧だにしてくれない。

 

「大人は勝手ばかり言って!」

 

「ハマーン様のご判断に間違いなどない!」

 

「カミーユ、もう少し簡潔に入力してみては?」

 

「マシューもセーラも!!勝手ばかり言って!!」

 

感応波をコンピューター言語に翻訳する?簡単に言ってくれる。大雑把だとか、繊細だとか、注文を付ける前に理想形を示してくれ!

横から、ごちゃごちゃと注文を付けられても訳が分からなくなるだけだ。

こういうシステムエンジニアの仕事って、本当は仕様書とか企画書とか目標になるものがあるのは、僕だって知ってるんだからな。

そういうものもなしに、好き勝手外野は言うんだ。

言うんだけれど。

でも。

 

「ああ、もう!やるしかないんだろ!それは分かったから、俺が間違わない様に、静かに、見ててくれ!」

 

本当は、ファにも横にいて欲しいし、エグザべさんにも応援してほしいけど!サラとシドレにもこの苦労を分けてやりたい、けど!というか、パプテマス・シロッコ少佐に何もかも全部押し付けたいけれど!

 

「サイコミュなんて、この世から消してやる!」

 

こんな、他人の命と心を弄ぶような技術をこの世から無くすためなら、僕は何度だってコンソールを叩いて見せる。サイコミュは、ここ最近の僕の悩みの種なんだ。四六時中、こいつのせいで頭を悩ませているんだ。

そんな僕にはサイコミュをこの世から消す権利があるはずだ!

 

僕がサイコミュの調整を会得することはサイコミュ兵器をこの世から無くすために必要なことなんだと、ハマーンさんは説明してくれた。信頼できない兵器に開発予算は降りないから、と。

 

ハマーンさんは頼りになる人だ。その本当の意味がわかった。目的のために必要なものを示せる人がいてくれるのならば、迷う時間がもったいない。

 

僕1人なら間違えてしまうこともあるかもしれないけれど、目的だって見失ってしまうかもしれないけれど、僕は孤独じゃないんだ。叱ってくれる人も、褒めてくれる人も、助けたい人も、助けてくれる人もいる。

 

そんな僕なら、できるだろう!

 

敵のサイコミュ兵器をジャックして、使えなくすることくらいやっても見せる。兵器にされてしまう人間を解放して見せるんだ。

 

人間を人間に戻す為に!

 

「カミーユ!今度は大雑把すぎるぞ!機体が反応していない。」

 

「もう!マシューは!!」

 

僕は、もう孤独ではない。

 

帰る場所は、エグザべさんが作ってくれた。

 

なら、僕だってエグザべさんが帰ってこれる場所を、作れるんだ!

 

 

 

 

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机の上に広げた数えきれないほどの紙には、アクシズとモウサの内部構造図。ハマーン様のご厚意でね、もらってきたデータから俺が書き上げたものだ。

 

データ上には無かった秘密通路や推測できる構造物も赤色で書き込んでいる。

具体的には、アクシズのお偉いさん方が逃げ込むであろう緊急避難場所とか。距離と内部構造的にこの辺りに避難場所ありそうだよね、くらいの推測だけれどね。

 

「はいはい、じゃあね、タナカ伍長にこの仕事任せるからね、全員殺せるようにルート策定と陸軍歩兵の武装選定やってみてね。後でチェックするからね、俺が。ワン一等兵は、タナカ伍長について、こいつがコンピューターウィルス作らない様に見張っててね。マジで、次は許さねえからね。『トロイの木馬』ならまだしもね。マジ許さねえからね、次は!はい、仲直り!」

 

タナカ伍長は不満そうな顔をしているけど、俺の方が不満だよ。

 

てめえ、よくも『トロイの木馬』を勝手にアクシズにバラまこうとしやがって。オマケに、連邦軍の情報共有システムの脆弱性を突くハッキングウィルスまで作りやがって。

 

全部、俺が!消したけど!!

 

「上の動きが遅いんなら、こっちで動かせばよくないですか?参謀本部の交代とか、声だけでかいウスノロ和平派の排除とか、予算の獲得とか。自分なりに、効率を考えたんですが。」

 

効率だけ考えるならそうだけどね、世の中こんな穴だらけの計画が上手くいくほど簡単じゃないんだよね!コンピューターの中だけで完結してる世界じゃないんだよね!世界は四角くなんてないから!

伍長になるまで、お前は何を見てきたんだってね、話なんだよね!タナカ!

 

「次やったらね、俺はマジでお前を宇宙に放り出すよ!越えちゃいけない一線って言うのがね!世の中にはあるらしくってね!この仕事失敗したら、今回の!お前のやらかしも誤魔化しが効かなくなるんだよね!物事にはね、手順と道理という原理原則があるんだよね!本当にタナカ、お前相当だからね!自覚持って、仕事に挑んでね。」

 

「核爆弾じゃなくてウラン同時圧縮式爆弾って言えば良くないですか?グラナダにもうありますし、歩兵の損失0になりますよ。何より、安価です。」

 

「宇宙に放り出される時にね、自殺用のピストルいらないって言うんなら、そうしなね、タナカ。俺だって、許可下りるんなら、とっくにそうしてるに決まってるんだよね。俺が出来てないってことの意味を考えてから行動してくれないとね、2度手間だよね!先に言っておくと、クラスター爆弾も許可下りなかったからね。復興して新住民入れるときのね、邪魔になるような兵器は使えないよ。空気を汚すのも駄目だからね。G3ガスとか一酸化炭素とかもね、とっくに禁止されてるからね!」

 

「景気が良い話ですね。ヌー曹長。アクシズの制圧に安価な短期決戦兵器を使わないとか。」

 

「お前の頭が悪いって話なんだよね、タナカ伍長。」

 

「MSと歩兵でアクシズとモウサのテロリストを全滅させるって、効率が悪いでしょう。効率が悪いってことは頭が悪いってことですよ。お金もかかりますし、どうかすると遺族年金とか、傷痍軍人年金とか、ただでさえ遅滞している部隊があるというのに。…ヌー曹長、アクシズが勝手に自爆して滅んだってことにしませんか?アクシズ内部にウィルス研究施設とか毒ガス兵器開発施設があったことにすれば問題ないはずです。地図から考えると、アクシズ内部のこの区画とかいかがです?G3ガスを流した後、テルミットとナパームで焼けば事後調査でもわかりません。」

 

「そういう事をね、俺たちが言い出すと思われたから!ナパームも禁止されたんだよね!お前程度が考え着くことをね、俺が考えなかったとでも思ってる?」

 

「ただ単にヌー曹長が、上層部から嫌われているから却下されただけでは?」

 

「お前に言われたくないよね!」

 

「ヌー曹長は、憲兵にも嫌われていますよね?嫌われ過ぎでは?」

 

タナカ!てめえ!!

 

こっちはアクシズのニュータイプ研究施設とサイコミュ研究施設の完全封鎖作戦考えないといけないんだよね!それを、タナカのドジで時間取られて、名誉挽回のチャンスまでもぎ取ってきたんだよね、俺は。

仕事は山積みだよ!拉致被害者関係も上層部と外務省の会談待ちだし、連邦軍内部の綱紀粛正も、エゥーゴの組織改革も、カミーユ君やファさんの待遇も、ハマーン様達の引越し先の選定も……

 

タナカがね、すぐ俺にバレる様な雑な手段を使うから俺もね、時間かけて怒らないと上層部に示しがつかないんだよね。こんなバカな時間の使い方したくもないよね!

 

ほんと、マジで、タナカ!てめぇ!!

 

 

 

 

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ようやく、アクシズもアクシズの中の可愛くて可哀そうな人達も、ここが戦場だと分かってくれたみたいね。みんなの成長がとてもうれしく思えるの、私、レコア・ロンドには。

 

アクシズの居住惑星モウサだと、飲料水がなくなってきているらしいわ。食料の配給も少なくなってアクシズでもモウサでも毎日毎日抗議活動が行われている。アクシズの行政に対する抗議活動、つまりは内乱よ。

私はそれを戦艦グワダンの自室で知った。

 

「嫌よね。せっかくジオン公国が再興できるってチャンスをこんな自分勝手な欲望のために潰されるだなんて。」

 

そういう話を私に教えてくれたのは、グワダンのMS、ガザCのパイロットをしているキャット・サイレン中尉だった。グワダンの食堂で話をして意気投合した女。

 

「ほんとね、キャット。ようやくキャスバル・レム・ダイクン公王が即位したのに。」

 

私は、グワダンのMSパイロットであるシャア・アズナブル大佐の補佐官として1人部屋が与えられていたから、よく彼女はしゃべりに来る。

アクシズの女パイロットは珍しいというのもあるけれど、きっとシャア・アズナブルのことが気になって探りに来ているのね。アクシズでは幼児性愛主義者として有名だもの。私とシャア・アズナブルがアクシズに来てから1度も寝ていないのも周知の事実なんだから、一層気になるのよね、貴女たちアクシズの人間は。

 

「公王妃を選ぶって、ジャミトフ閣下が言ってからアクシズもモウサも大騒ぎらしいのよ。母が教えてくれたの。貴女は選ばれるの?って。私なんかがシンデレラにはなれっこないのに。」

 

そう笑って話す彼女はかわいらしい人。140センチくらいしか身長が無くて、まるで子供のような顔をしている。私より年上らしいのに。

 

「キャスバル・レム・ダイクン公王のおきさき様?って何を基準に選ぶのかしら?」

 

「さあ?わからない。でも、ミネバ様がご健康だったのなら、こんなバカ騒ぎしなくて済んだのよ。ミネバ様さえ、お元気だったのなら。」

 

ミネバ・ラオ・ザビは病床にあるとアクシズでは公式発表されている。命の危機だと。ジャミトフなんか、お見舞いに行ったフリ迄していて、馬鹿馬鹿しかったわ。

 

キャスバル・レム・ダイクンにとっても、ミネバがアクシズを捨てたことは隠し通したいようね。まあ、そうよね。だって、責任を、アクシズの人々を導くという大業の責任を押し付ける相手が居なくなってしまうもの。

 

今後に及んでも、まだ逃げようと考えているキャスバル・レム・ダイクンは、往生際が悪いのよ。

 

アクシズの人たちと同じ。往生際が悪いの。

 

地球まで戻ってきてしまったのなら、もう、皆して死ぬしかないのに、他に道があると思っている。

だから、モウサで内乱を起こしている。己が上に立てば、地位があれば苦難を脱せられると思っている。

 

そうでなければ、普通は戦争の前に味方同士で争わないもの。普通なら。

戦う事自体が目的のシャア・アズナブルではない、普通の人間なら。

 

「ミネバ様なら、きっと公王様とお似合いで、ジオン公国を立派に再興なさったのに。どうして、地球圏に戻って来れたタイミングで…」

 

キャットは、ジオン生まれのジオン育ち、らしい愚痴をよくいう子だわ。とても、ジオンらしさに溢れている。

ミネバ・ラオ・ザビが8歳の子供だと知っていても、真剣にそう信じている。羨ましいわ、その単純さが。いっそここまで単純に成れたのなら、きっと幸せでしょうね。

 

「長旅の疲れという物よ。落ち着けば、元気になられるわ。それよりも、私が気になるのはもらえるはずのMAよ。まだ、訓練もシミュレーターでしかできていないのよ。実物が見たいわ。実際に乗ってみないと実感って湧かないものでしょ。」

 

「羨ましい。ノイエ・ジールでしょ。」

 

「アクシズの隠し玉って話よね。4年前の機体だから、型落ちかと思ってたけど。悪くないわね。寧ろ、豪勢なくらいよ。」

 

ノイエ・ジール。私の新しいMA。

 

「でも、僚機があのシャア・アズナブルなんでしょ。ロリコンはお断りよ。」

 

「シャア・アズナブルの顔見て、それを言えるイイ女は少ないわよ。貴女、人を見る目があるのね。」

 

思わず笑ってしまった。そう、彼女は人を見る目がある。私と違って。

 

でも、キャスバル・レム・ダイクンとシャア・アズナブルを別人だと思っている可愛らしいキャット。アクシズで死ぬしかない可哀そうな…

 

「イイ男がいる世界、ね。悪くないわ。貴女もそう、思うでしょ、キャット?」

 

そんな夢を見ていたような気がする。イイ男が居て、私も女ができる世界。来世にある世界。

 

「もちろんよ!ジオン公国の男たちはみんな、イイ男達だった!」

 

シャア・アズナブルも?そう聞きたくなるのは、私が意地悪いからよ。

 

「キャスバル・レム・ダイクン公王様が再興されるジオン公国も、イイ男で溢れかえるのよ!より取り見取りってね!」

 

キャットの眼は、その幻影を、全く疑っていなかった。

 

私が来世を疑っていないのと同じで、夢を見ていた。

 

 

 




カミーユは顧客や営業から、やいやい文句を付けられながら仕事するシステムエンジニアの気持ちを体験している 編

なお、顧客が理解あるゲーツ、営業がシステムエンジニアの知識もあるハマーンとマシュマーとセラーナなのでまだマシ。

結局俺には、Zガンダム本編見ててもサイコガンダムの強さが良く分からない。デカい強い呼んだら来る、くらい。

サイコガンダムの遠隔操作できたのフォウ・ムラサメくらいだけど。
そのフォウは常時、精神不安定頭痛持ちなパイロットなんで使えないよな…ロザミアも精神不安定で唐突に幼児退行するし…


強化人間2人とも偽物の記憶を植え付けられて可哀そう悲惨、とか言うけれど、偽物の記憶の方がマシという可能性は高いと思う。コロニー落としの被害後、人に言えないような…はありうる話だし。
そういうこと、誰も言ってないのはなんでだろうな?



ヌー曹長は面倒見がいいところがあるから、そのためにはハマーンにだって駄々こねる。

ロッケンロールの魂を持つ漢タナカ伍長、地球連邦軍参謀本部を手中に収めようとする。ロックが過ぎてヌー曹長にガチ怒られしました。


アクシズで内乱だって、当たり前だよな?
地球連邦軍とジオン共和国軍から、武装勢力認定され領宙侵犯で囲まれ、ジオン公国でキャスバル・レム・ダイクンを公王にした上、そのキャスバル・レム・ダイクンが宇宙移民促進政策を言ったので、はい詰みです!!


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