機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記 作:1スレ130番より愛を込めて
何故、軍に入ったのかと聞かれることは多々あった。まぁ、笑って誤魔化して言わないことにしていた。
しかし、
「エグザべさんに、軍人は似合いませんね。」
僕の部屋に遊びに来ていたカミーユに、ふと、そう言われた。こうして直接会うのは久しぶりだ。グリプス戦役後、本当に色々合ったから。
本当に久しぶりに会えたのに、僕はペットボトルの紅茶と先ほどグラナダ港のマーケットで買ってきたお菓子しか、カミーユに出せないのが申し訳ない。後で、レストランにでも連れてってあげようかな?
僕の部屋には冷蔵庫もない。
ここは自室ではあるが、まぁ、グラナダにある仮の部屋だ。ジオン共和国と月と地球とを往復するにはこんなものさえ必要になる。寝袋とローテーブルくらいしか置く物もないというのに。
「なんで軍人になんかなったんです?エグザベさんには、もっと合う仕事あったでしょ?」
「…そう、かな?やってみたら割と向いてたから、良いかなって。」
僕の答えにカミーユの目が鋭くなる。誤魔化したのがバレたな。彼に対して嘘をつくのは難しい。それに、本当は僕だって、嘘を吐きたくはなかった。
ため息をついた。
「高校に入って、2年生になる直前だったかな?仲良かった先輩の一人が生徒指導室に呼ばれてね、不思議に思ったから、ちょっと後に理由を教えてもらったんだ。優秀な生徒会長で親切な人だったよ。」
生徒会長が生徒指導室に呼ばれた理由は、なかなか面白かった。彼は希望する大学は決まっていたが、学科を決めかねていた。その受験票を提出するギリギリまで。
「だから、担任の先生の前でサイコロを振って決めたそうなんだけど。他の先生にはふざけている様に見えて、親まで呼ばれて怒られたんだって。」
僕は、この話をクラスメイトの友人にした。聞いた直後、たまたま教室にいたから、挨拶ついでに。
「大ウケだったね。5分間くらいは笑ってた。そいつだけじゃなくて、クラス全員、あの生徒会長らしいって笑ってた。そしたら、他の友人たちも僕の親友もノッてきてね。」
じゃあ、俺たちは希望校をくじで決めようぜって。カミーユは、僕の幼馴染のカミーユは馬鹿みたいに大笑いしながら言った。
「くじで希望校決めるなんて馬鹿馬鹿しい話だろ。でも、あいつが言い出すと、皆、いい案だなって思ってしまうんだ。凄いやつだった。」
くじは、カミーユ達がクラスの人数分を作って、次の日の朝、持ってきてくれた。引きくじだった。
「全員、違う大学に行かせることにしたから、同窓会の時にシラバス持ってこいよ、とか言ってたな。他の大学がどんな講義してるか知りたいって。」
「シラバス?ってなんです?」
そうか、カミーユはまだ知らないのか。彼は地球連邦軍の軍大学に進学する。後、1か月後だ。入学式のとき、なにか、お祝いをしてあげたいな。
「大学の講義の内容とか単位数とか書いてある冊子だよ。それ見て受けたい講義を決めていくんだ。簡単に必要な指定書籍も載ってるから。」
あいつは、全部の大学に行って全部の学科に入りたい、と言っていた。生徒会長は無欲すぎる、と。
「僕は一番最後に、くじを引かされた。なんでか、言い出したのが僕だってことにされてさ。手渡しだったよ。ジオン工科大学だった。」
一つ息を継いだ。そう、ジオンだった。
くじを渡してくれた時にあいつが言ったのは、僕はイイコちゃんではなくてマジメくんだから期待しているという内容だった。他のヤツからは、素直に感謝してるって言えとか茶化されてもいた。
意味は分からなかったから、その時は良くわからないまま、どういたしましてって返した。その時も大ウケしてた。
「地球の大学も各コロニーの大学もあった。クラスメイトは40名もいたのに本当に誰も被らなかった。」
そこからも、凄かったな。あいつのグループ6人揃うと本当に凄かった。
クラスメイトの誰一人ギブアップを言わなかった。言おうとも思わなかった。
奨学金の提案や必要事項まで教えてくれた。
あいつは、俺が不合格なんて許すと思ってんのか、バーカ!とか口では言ってたが、本当に2年の終わりには全員、希望校に判定Aが、出たのだ。
高校始まって以来の快挙だった。
そして、僕らは誰も、その大学へは行けなかった。
あいつらの真意に気づいたのは、ずっとずっと後だった。
「戦争が、大きな戦争が始まるって勘づいてたんだろうね。誰か一人でも、クラスメイトを生き残らせようとしたんだ。世界の、地球圏全土、何処かしらなら誰か1人は生き残れると。」
気づいたのは、難民になった自分には軍への道しか無いと覚悟を決めた時だった。
そうだ、あいつは地球連邦の軍大学を引いて嫌そうな顔をしながら、でも、笑ってた。
「多分、あのクジ不正してたんだよ。だから、難癖つけて僕を最後にしたんだ。マジメくんは気に病んじゃうじゃんって、あの後、言ってたのも思い出したんだ。」
そんな事も気付かない僕の青春は彼らに守られてた。
あいつ、軍に入るつもりだった。戦争が起きるのに。
いや、殊勝な心掛けでは無かったんだろう。多分、自分の力で勝つと、勝てると踏んだから笑ってたんだ。頭も度胸も、何より人望もあった。
あのルウムは、もう、ない。あの気の良い奴らも。
「就職先を考えないといけなくなった時、少し、思ったんだ。あいつが軍に入って勝った後、何するんだろうって。何をするつもりだったんだろうって。多分、軍の予算使って、やりたい放題、好きに研究出来るようにしてたと思う。化学も物理も工学も全部。理屈さえつければ、出来ない研究分野はないからね。」
学びたいことが多すぎると言っていた。あいつは勝って、その功績で全部するつもりだった。
「だから、僕は、軍に入ったんだ。本当に出来ることなのか確かめたくて。そしたら、思ったより軍が向いててね。ここ迄来てしまった。」
あいつらは今、きっと僕を見て大笑いしてるんだろう。ざまぁないなと。工科大学行けば良かったのに、と。
でも、仕方がない。まだやれることがあるなら、やるだけだ。
『とある男子高校生たちの青春の日』
2025年7月30日の、極暑の日に書きました。
スレを読んだ皆が、暑い中号泣してくれればいいな、と思って、自分も号泣しながら書きました。
人間は、冬でも水分不足になるそうです。しっかりと栄養と睡眠と水分を取られて、元気に冬を乗り越えましょう。