機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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ジオン共和国軍は常に難題を抱え込んでいる。

好戦的なジオン共和国民、共和国政府及び軍の内部に潜む開戦派、反政府武装組織とその後援者。

ダイクン派やら、デキン派やら、ギレン派やら、キシリア派などなど。
奴らは互いに手を結んだり、殺し合ったりしている。

国民が巻き込まれようが、国益に反しようが全く気にしない。そういう奴らだ。

地球連邦を打倒さえすれば全ての罪が許される、などと信じている気が狂った奴らだ。

共和国政府首脳陣はより一層狂っている。

地球連邦と手を組むことも、対峙することも拒絶し、ズムシティに引きこもっている。

軍が丹精込めて育成したギャン部隊と陸兵隊を抱え込んで引きこもるだけだ。



これはチャンスだ。

機会が来た。共和国軍参謀本部が設立から今まで夢見ていた瞬間だ。

政府が耳目を閉じるこの瞬間を、待っていた!!






偽薬

 

 

 

ここ3日は、ドゴス・ギアの通信設備と情報部員の助けを借りて、共和国軍と密に連絡を取っている。僕の出撃許可がまだ下りないからだ。負傷も治っているというのに、パプテマス・シロッコと共和国軍から許可が下りない。

 

決戦が目の前に来ているというのに、訓練しかできていない。

 

相も変わらず、共和国政府は自衛に懸命だ。ギャン部隊と陸兵隊をズムシティから離さない。

陸兵隊はいい。彼らはコロニー内部での白兵戦や自走砲、戦車での戦闘を心得ている。常に想定して訓練している。だから、政府首脳陣の身の安全のために彼らがズムシティを守備しているのは正しい。正しい運用法だ。

しかし、ギャン部隊。テロリスト鎮圧部隊であり、対MS部隊だ。それをズムシティに縛り付けてどうするつもりなんだ?

ズムシティの治安がいくら悪いとしても、大した役には立たないだろう。ザク改‐Ⅲ部隊が適任だった。

 

今、ジオン共和国は治安が悪い。もともと、1年戦争前から治安の良いサイドではなかったが、今は共和国政府首脳陣さえも震撼するほどに悪化している。

 

前線の僕にまで知らされるわけもなかったが、どうも共和国内部で資産家や軍人、政府要人に至るまで謎の殺人事件や自殺事件が続いているらしい。一家全員が殺されるという強盗事件も多発していると、今、聞かされた。

 

ますます僕のギャン部隊より、数の多いザク改-Ⅲが必要だろうに!

道路や官公庁の前に立たせておくだけでも違うはずだ。

警察と軍人が協力をして治安維持を行うほどの危機的状況にあるというのに、どうして最善を行わないのか。

 

最近、共和国の報道を確認する暇も無かったとはいえ、そこまでとは思ってもいなかった。

共和国政府首脳陣の命が無事なのはもはや、奇跡なのではないだろうか。

 

「エグザべ・オリベ中尉に、コード13を送信。繰り返します。コード13を送信。送れ。」

 

「コード13、了解しました。データ受信確認。送れ。」

 

コード13、か。地球連邦軍上層部が仲介して届けてくれた、暗号用の書籍のことだ。実物は手元にない、というよりドゴス・ギアの休憩室に置いてある書籍を使用している。13だから、この前の補給で届いたチェスの入門書だったはずだ。

 

「1……2-5、6、14。5-1、7、8、20。」

 

淡々と読み上げられる数字と、送信されてきたデータを確認する。数字は間違っていない。

この大量の数字と、チェスの入門書の文書内にあるアルファベットを突き合わせる作業は、まあ、僕も行うことになるんだろうな。数字の数が多すぎるからだ。1ページ目からアルファベットを選定しだすとか、どれだけ長い文章を送ってくるつもりなんだか?

 

「以上、送れ。」

 

5分後にようやく、数字の読み上げが終わった。向こうも向こうで大変だっただろう。上官に言われて、与えられた数字だけ読み上げるのは根気もいる。

 

「確認完了しました。1330(ひとさんさんまる)に再通信します。以上、送れ。」

 

「了解。終わり。」

 

チェスの入門書は既にドゴス・ギアの情報部員が部屋に持ってきていた。というより、アルファベットの突き合わせも行われている。流石、情報部だ。行動が早い。

 

「ご協力ありがとうございました。」

 

情報部員に礼を言うが、気にしない様にと返された。

 

まあ、仕方がないことではある。共和国軍の参謀本部と上層部は、地球連邦軍の信頼と信用を得なけえれば、いずれ地球連邦との戦争になることを知っている。

 

そんな中での、僕の負傷だ。

パプテマス・シロッコは、僕の負傷を戦闘によるものだと改竄した。様々な面倒を省くためにそうした、と言う。まあ、そこは僕も納得した。

結局のところ、僕はパプテマス・シロッコに迷惑をかけているのだから、納得するしかない。

 

そんな中、ドゴス・ギアの情報部や通信設備まで借りて共和国軍が僕に仕事させているということは、つまり、僕に負傷による休暇を与えるだけの余裕もない、ということだ。地球連邦軍に派遣されている義勇兵は僕だけではないだろうに。

 

僕が、というより共和国軍義勇兵が関係した作戦を増やそうと、わざわざドゴス・ギアに通信してくる始末だ。この通信のやり取りだけで、作戦に参加したことになるらしい。そんな馬鹿な話があるだろうか?

そう思うが、共和国軍の参謀本部はそういうことにしてみせる腹積もりでいる。

 

形振りかまっていられない、本国の狂乱ぶりが見えるようだった。

 

「アクシズ港湾封鎖作戦、3日後0500決行。後の解読は、まだかかりますが。」

 

そう、最初の文章を教えてくれたのは、ドゴス・ギアの情報部の人だった。ラオ・ホン曹長だ。彼はヌー曹長を知っていた。ラオ曹長は随分前にヌー曹長の上官だった時期があるらしい。まだ生きていたのか、と僕がヌー曹長の話をすると、そう言った。一体、ヌー曹長は何をしたんだか?

 

「助かります。採用されたんですか、港湾封鎖。」

 

港湾封鎖は地球連邦軍の上層部を介して、共和国軍に具申していた作戦案だった。

ドゴス・ギアに来る直前のことだ。ヌー曹長の分析力と戦史への造詣の深さが、僕の作戦立案を助けてくれた。

彼には頭が上がらない。地球連邦軍にも、ヌー曹長の功績が認められるように上申書でも書いておこう。出世を気にしているようでもないが、ヌー曹長の権限が増えれば、地球連邦軍の為にもなる。

 

「大まかな作戦内容を送ってきているようです。エグザべ中尉には、護衛任務が課せられています。」

 

「了解しました。パプテマス・シロッコ艦長にも許可をもらいます。」

 

早速、書類を書かなければならない。

 

ドゴス・ギアを離れることにもなるだろう。所属先も再度、変更になるのだろうか?いや、それには時間が足りないか。ドゴス・ギアからの派兵という形になるのかな。ドダイくらい貸してもらえないか、パプテマス・シロッコに交渉してみよう。

 

アクシズまで、ギャン改-Ⅱで行けないわけではないが、推進剤を温存するに越したことはない。

 

長い、長い戦いになるのだろうから。

 

 

 

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アクシズ港湾封鎖作戦の最先鋒となるジオン共和国軍ムサイ級戦艦フィラデルフィア、その直掩にエグザべ・オリベ中尉が指名された。

エグザべのギャン改-Ⅱがその任務にあたる。

 

それがジオン共和国軍が寄こしてきた暗号による情報だった。情報班からの報告だ。

 

「ジオンは殲滅したほうがいいんじゃねえか?」

 

ヤザンのその言葉には同意しか感じなかったが、今ここで言えることではない。

ここは艦長室ではなく、艦橋だ。

 

「誤解を招くような言葉を発するべきではないな、ヤザン大尉。ジオン公国は殲滅するべきだが、共和国は必死なだけだ。『英雄』を必要とするほどに、国内情勢が荒れているのだろう。」

 

もはや生かす価値のないサイド3延命のために、ジオン共和国は『英雄』を必要としている。ザビ家、或いはジオン・ズム・ダイクンに代わる『英雄』を。

 

民衆の熱狂と狂信を受け止め、未来を示すための生け贄が必要となるほど、サイド3の住民には品性と知性が無い。

 

「品性の無い国民が多ければ、『英雄』がプラシーボだとしても試さざるを得ない、か。」

 

極めて、不快だった。

地球圏の人類を半分も虐殺し、地球にコロニーまで落としたサイド3の住民共は、その全ての罪をザビ家に押し付けて、そ知らぬ顔で生きている。罪を贖うことも無く、直視することも無く。己を正当化して生きている。

 

だが、その共和国民の欺瞞を、地球連邦政府も今は無視せざるを得ない。

宇宙移民という名の宇宙棄民政策、その過ちの対価が人類の半分と回復がいつになるか分からない地球の傷か。

 

その人類全ての傷の痛みを和らげるために使われる偽薬が、私の、パプテマス・シロッコの友だとでもいうのか。『英雄』エグザベ・オリベ、か。

 

全て、不快だった。

 

「人類は、品性を持たなければならない。」

 

人類を導く私自身も、品性を忘れるようなことはあってはならない。

 

怒りに囚われるようでは、人類を導けない。だが、感情を否定するのも、また、人類ではない。

 

それが、地球圏に戻って得たパプテマス・シロッコの知見だった。

怒りがある。この私に怒りがある。共和国に対する殺意と言い換えてもいい。それほどの怒りがパプテマス・シロッコにある。

私だけではなく、ヤザンも怒りを抱いている。だからこその発言だ。

 

私の友から、エグザべ・オリベから共和国はどれほど奪うつもりでいる?家族や友人や故郷すら奪い、人権すら奪い、本来あるはずだった復讐心すら奪った。

心すら、踏みにじっている。

怒りがある。

 

だが、怒りに身を任せはしない。そのために、私は木星から地球圏へ戻って来たのだ。

 

「ヤザン大尉。アクシズ攻略の先鋒は共和国に任せよう。だが、共和国軍の力量は信用できるものではない。ヴェルザンディ全艦隊は、共和国軍の後背より港湾封鎖の支援を行う。特にMS部隊には、アクシズのガザC殲滅任務を任せることになろう。頼めるか。」

 

共和国軍はサイド3が保有する全ての艦艇と輸送船をアクシズ最大の港湾へ向けて出航させる。そのために民間船さえも買い上げている。

 

辿り着ける船が一隻でもあればいい。いや、全艦艇と輸送船をアクシズ殲滅のために消費したという実績さえあればいい、という作戦である。

 

流した血が、犠牲が多いほど、戦後、地球連邦政府は、ジオン共和国を助けざるを得ない。今以上に、経済支援もせざるを得ないだろう。

輸送船の有無は、コロニーの命に係わる。地球連邦政府とジオン共和国政府で合意が取れていなければ、決行されることも無かった。

 

「ガザCなんぞ、ヴェルザンディの、俺らMS部隊の敵じゃねえな。俺としては赤い彗星を捕まえてやりたいところだが、パプテマス艦長。」

 

「無論、戦場にシャア・アズナブルが出てくるのであれば、優先的にヤザン大尉に知らせよう。」

 

「赤い彗星は、真っ先に逃げ出すとお考えで?」

 

ヤザン大尉の予想は、先日、エグザべが出した意見だ。あえて艦橋を発言することによって、全員に注意を促そうとしている。

 

「或いは、『アムロ・レイ』を求めて、グラナダへ向かうか。」

 

鼻で笑えるような話だ。だが、シャア・アズナブルはそれをやりかねない軽率さも持ち合わせている。

 

「クッソ、気持ち悪い奴だな、赤い彗星は!アムロ・レイが女にでも見えてるんじゃねえか?」

 

艦橋にはそこかしこから失笑がこぼれた。そう、鼻で笑える話だ、普通ならば。

アムロ・レイという少年に負け続けたことを認められない負け犬の悪あがきに全人類が付き合わされている。不快な獣め。

 

ヤザン大尉がシャア・アズナブルを捕らえられればいい。共和国軍が、エグザべが、奴を殺すことになれば…

 

『英雄』は、使い潰されて死ぬのが運命だ。

 

 

 






アンパンマンマーチ聞きながら書いた最終章

一番解きにくい暗号って何だろうと考えて、やっぱり単純に本を使った暗号が解きづらいよな。って思った話。小噺に入れてもいいけど。使いました。
この暗号使うときは必ず初版本とか、全部の文字が合致しているか確認してからお使いください。

籠城作戦っていうものは、援軍のあてがないのならただの緩慢な死です。ましてや、宇宙です。孤島で籠城……Zガンダム本編でも地球連邦軍がティターンズに支配されていなければ、このように対応できたはずなのに。というか、ジャミトフの目的と手段が迷走し過ぎてるうえに、地球連邦が復興と戦争の両立させないといけない現況のかじ取りが難しすぎる。




Zガンダム本編見てて思ったんですが、富野監督はニュータイプという超能力者を否定しているんですね。ニュータイプという超能力者では、世界をどうこうできやしないという絶望と諦観が作品から感じました。この時期の富野監督は人間に絶望してたのかな?とZガンダム本編みて思った。


でも、40年50年近くたってもまだ、この超能力者のMSバトルが人気で、ファンには求められている。俺も大好き!その魅力と文脈を書きたいけれど、文才が足りないので足掻いています。
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