機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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ウロボロスには2つの意匠がある。

一匹で環になっている型と二匹で環になっている型だ。

一匹だとただの間抜けか気狂いだが、二匹となると話は変わる。

どっちが最初に食い始めたのかは分からねえが、どっちかは抗ったんだろう。

死に抗う象徴だ。

最終的にどっちも死ぬんだから意味がねえって?

ああ、そうだな。

お前らにも、平等に価値はない。どうせ死ぬんだから。

そうだろ?お前が言うことが本当なら、自分の無価値を1人で噛み締めてろ。


俺の価値は俺が決める。それを認めてくれている奴もいる。なあ、シャヴィ。




ウロボロス 2

 

 

 

カミーユ・ビダンの声がする。戦場で、カミーユの声が聞こえる。

 

 

 

動くな。動いたら駄目だ。

 

 

 

ここは戦場だよ、カミーユ。動いていなければ、敵に補足されて殺される。敵に見つかったら殺される戦場なんだ。

 

いや、僕が死ぬのは、まだ、いい。僕は死んでもいい。

僕は、レコア・ロンドも殺した。これから、沢山の人が死ぬ。

未来で、2度と虐殺を起こさせないために沢山の人が死ぬ。僕が殺す。僕はそれを分かって、作戦を立てた。たくさんの人を殺さないといけないことを知っていて、こうして最前線にも来ている。

だから、僕も、彼らと共にに死んでもいい。

 

だって、こんなに、体中、全部が、痛い。どこからも、悲鳴と、断末魔と、憎しみの、叫びが、聞こえる。

 

 

 

動かないでください。止まれ!

 

 

 

そうか。カミーユが、そう、願うなら。

 

僕は目を閉じた。

宇宙に、戦場に、独り、放り出された僕がいる。それが見える。目を閉じていても見える。僕の体を掠りそうになるミサイルやランチャー、ビームライフルの光。でも、当たりはしないことさえ、見える。思考が走ってわかる。

 

馬鹿馬鹿しい。武器を全て失くした動かない僕に撃ってどうするんだ。訓練もろくにしていないパイロットの攻撃が当たるわけないのにそんなに滅茶苦茶に撃っては目立つだけだ…目立って、誰かに会敵して墜とされて光になっていった。

 

そう、僕はビームサーベルさえ失くしていた。心臓は無事だ。左腕も、それほど損傷していない。両手の指さえも無事なのは、赤い巨人の仕業か。

いや、違うか。赤い巨人にそれほど余力はない。次の宇宙の為に、因果地平の彼方の為に、僕程度を庇うなどという無駄なことはしない。そんな価値は僕にはない。

 

レコア・ロンドか?

いや、それこそまさか、だ。ありえない。

彼女は僕だ。僕だった。殺したんだ。

カミーユは、カミーユ・ビダンは彼女に、レコア・ロンドに親しみさえ、憧れさえ憶えていた。それを知っていた。だけど、僕は殺した。

 

アンマンで、グラナダ基地で殺したつもりでいた。地球で死んだことにして、レコア・ロンドの存在さえ忘れたふりをしていた。ずっと、レコア・ロンドの存在から目を逸らしていた。

僕が目を逸らしていたから、僕は読み違えた。決戦に至って読み違えた。赤いキュベレイしか、シャア・アズナブルしか目に入っていなかった。レコア・ロンドをサイド4で見ていたはずなのに、目をそらしていた。

結局、僕はその程度だ。

 

思考を走らせて分かったつもりになっていた。思考が走るなんて混乱しているのと変わりはしない、と分かっていたはずなのに。幻想と固定観念に囚われ過ぎた。

僕自身が、現実と乖離してしまった。

 

だって、余りにも哀れだったからだ、惨めだったからだ。

 

そうだろう!惨めだ!

自分から全てを奪った人間に、組織に歯向かえない自分は!!

あいつらを、サイド3を生かす為に、命を賭けている僕は、哀れで惨めだろう!殺したくなるくらいに。殺してやりたくなるくらいに。

 

間抜けだ。

あいつらは僕から全部を奪ったのに、僕はあいつらを憎み切れていない。あいつらから全部を奪いたいと思えない。踏みにじってやりたいと、思えなくされた。されてしまった。

 

目の前にレコア・ロンドが現れてしまえば、それが分かった。レコア・ロンドは僕だ。

死にたくなるくらいに、自分が哀れで惨めだった。

 

だから、殺すしかなかった。僕は、レコア・ロンドを、僕を殺すしかなかった。

 

 

 

どうか、動かないで。お願いだ。動くな。

 

 

 

カミーユの声が、聞こえた。誰に頼んでいるのだろう?僕はもう、動いていないのに。誰か、カミーユの懇願が聞こえていない誰かがいるのか。

こんなに一生懸命に頼んでるカミーユの声を、懇願を聞き捨てている誰かがいる?敵か?

 

どこに?どこかに、カミーユの敵がいる?

 

どっちのカミーユの敵だと思う?エグザべ・オリベ。

 

どっちの?

カミーユの敵なら、僕の敵だろう。

 

昔、そう言った。

 

ルウムの、7バンチの、家の近くにあった赤いブランコがあった公園で僕はカミーユに言った。8歳の、クリスマスの朝だった。

お前が、僕にくれたクリスマスプレゼントが嬉しかったから、僕はお前にそう言った。そういう年頃だった。

カミーユが作った無線機がプレゼントだった。夜でも僕と話せるように、カミーユは僕に内緒で作ってくれていた。僕の両親が仕事に行った日や皆が寝静まった夜に、ずっとカミーユと僕は話をしていた。クラスの他の友達の話や、宿題の話、学校で噂になった怖い話や面白かった休み時間の出来事。思い出せないくらい沢山、僕たちは話して笑いあっただろう。あのオシャレな腕時計型の無線機も、持ち出せなかった。

僕らが個人用のデバイスを買ってもらえるまで、ずっと使っていた僕らの宝物だったのに。カミーユと僕の宝物だった。

それを、奪った敵がいる。この世から奪っていった敵がいる。カミーユと僕が大事にしていたものを。

無線機だけじゃない。

ルウムで僕らが大切にしていたもの。

家族や友人たち、クラスメイトの皆、学校、故郷のあの街並み。僕らが思い描いていた未来を、奪った敵がいる。

カミーユも、カミーユ・ビダンも奪われた。僕達と同じだ。

 

だから、カミーユの敵は、僕の敵だ。

 

そう、俺たちの敵がいる、エグザべ・オリベ。

この宇宙の、どこにいると思う?探せるだろう、エグザべ・オリベなら。

俺にできることなら、自分にもできる、と言ったよな?

やってみせろよ、エグザべ。

見つけて見せろよ、俺たちの敵を。お前が戦うべき敵を。

この宇宙で、お前が倒すべき相手を、今、探せ、シャヴィ。

 

懐かしいな。あの無線機を使っていた時分は、そう、呼ばれていた。分かっているよ、カミュ。

僕は止まっているわけにはいかないんだ。探さないといけないんだ、僕らの敵を。

ごめんな、カミーユ。

 

人類の敵が、いる。

 

僕は目を開けた。

 

 

 






カミーユとカミーユ  編

カミーユ・ビダンとルウムのカミーユは、生きている状態で会うと仲が悪いし、秒で反目する。
エグザべが間に挟まらないと血を見るくらいには、互いが互いに無理。
カミーユ・ビダンはイイ子ちゃん。
ルウムのカミーユは性悪。



宇宙世紀は、なんであんなに戦争を繰り返すんです?
人類が半分、死んでしまったのに。

それで、まだ7年しか経っていないのにテロ組織が立ち上がるんです?コロニーも地球も再建と復興をしている途中だというのに、何故、内乱を起こすんです?せめて、復興するまで待ちませんか?

宇宙世紀の行きつく果ては、身体が弱った人間を食べてでも生き残った人々が作ったリギルド・センチュリー。そして、その食べられてしまった人間の子孫が被差別人種として生きているリギルド・センチュリー。その、Gのレコンギスタの時代でも、大人は利権を求めて、若者は衝動に身を任せて、戦いを始めてしまう……
実際に自分の目で確かめないと分からない、と言い出して何の用意もアポも取らずに戦艦なんかで旅をしてしまうから不要な戦いを呼びこんでしまって。恩師も殺すし、世話になった先輩とも敵対するし、大量虐殺兵器まで簡単に使ってしまう。

人類は品性を持つべきですよ。本当に。

教育だよ!教育。
現代アメリカ軍とか「仲間を見捨てない、決して置き去りにしない」と教育徹底してるし、日本だってまだ海外でWW2の邦人遺骨の捜索してるんだ。
人の生と死を越えた信頼ってこういうものでしょう?品性に支えられて作られるものじゃないですか。

なので、学会追放されている派閥ですが、Zガンダム本編最終話のカミーユ君の周囲のアレはカミーユ君自身だと思ってます。分裂したカミーユ君が個人的に好意を寄せた人間のガワを被って出てきていると考えています。異論大歓迎。
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