機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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結局、ギレンの野郎が何したかったって?

決まってんだろ?世界を支配したかった、それだけだ。

だが、ま、当然のことだがギレンには器が無かった。100億人もの人間も、宇宙も地球も治めてみせる程度の技量もカリスマも計画性も知識も知能も、皆無だった。
それだけの頭が無かった。

狭くて治安と趣味の悪いお貴族趣味者の集まる、サイド3から出たこともねえ人間にはなくて当たり前だ。

ギレンの野郎は、発想の転換って奴だけは天才的だったよ。

器を自分に合わせようとした。

自分に治められる人数にしようとした。

人間を数でしか見なかったから、だ。

5万人以下に人類を減らさなかったのは自惚れがそうさせたんだろ。

1人でシムシティでもやってろよって話だ。



滅びゆくものたちの為に

 

 

先行していたムサイ級戦艦フィラデルフィアは今、目の前で轟沈した。

 

このベルサイユまで、任務を果たせず終わることなど許されはしない。

 

大罪を犯したのだ。我々、ジオン公国民だった人間は、決して許されず、償いようのない大罪を犯した。

いや、今も罪を犯し続けている。

 

アクシズに、ジオン公国の正統後継に名乗りを上げたキャスバル・レム・ダイクンを始めとした人々に、ジオン公国の全ての罪を擦り付けて、抹消しようとしている。

悪行を更なる悪行で塗りつぶそうとしている。

だが、他に道はない。生き残るための、道が無い。

 

ジオン公国の軍など、暴徒の集まりでしかなかった。

軍規など無いに等しく、同じ人類を殺す事しか命じなかった。武器やMSの使用方法しか教えなかった。民間人を虐殺してはいけない、という旧世紀の国際条約さえ、我々は教導しなかった。

地球連邦に与するサイドを、ジオン公国に与しないサイドを壊滅させることは戦前に決まっていたからだ。民間人ごとコロニーを殺すことは決まっていた。

だから、軍人も民間人も関係なく、殺せば殺すだけ階級を上げた。階級を授ける意味も、その責任も教えぬまま、褒め称えるだけ褒め、我々は兵士を使い潰した。

 

その代表格がシャア・アズナブルだ。1年戦争でシャア・アズナブル大佐になった。1年も満たずに大佐と言う地位を、我々は彼に与えたのだ。何も教えないまま、戦争の天才だ、と嘘で褒め称えた。英雄と呼び、特別待遇を与えた。パイロットスーツを着用せずとも叱責せず、軍に愛人を連れ込むのさえ黙認し、子供に玩具を与えるように新しいMSを与え続けた。

我々にとってシャア・アズナブルは軍人ではなく、使い勝手のいい道具だった。

 

つい、最近になってシャア・アズナブルがキャスバル・レム・ダイクンだったと聞いた。地球連邦軍から、キャスバル・レム・ダイクン配信というアジテーション作戦を提案された際に私は知った。

 

シャア・アズナブル。我々の、ジオン公国だった国民の間違った偏見と教育の元に育った哀れな子供。哀れだ。

どうしようもなく、愚かで哀れだ。

 

大人しく、アステロイドベルトで過ごしてくれていれば良かったのに。アクシズで余生を過ごしてくれれば良かった。

どうして、地球圏に戻り、反地球連邦の私兵集団を作り、ジャブローへ奇襲をかけるなどという真似を。

何故、ギレン・ザビの真似事をする気になった?

 

我々も、ジオン共和国も危うく、その協力者になってしまうところだったのだ。エゥーゴに力を貸してしまうところだった。

もはや、許すわけにはいかない。シャア・アズナブルを決して見逃すわけには、生かしてはおけない。

 

「本艦直掩MS部隊に撤退命令を出せ。全兵装を正面フィラデルフィアに向けろ。本艦は、遺ったフィラデルフィアを吹き飛ばし、予定通り前進する。主砲用意、フィラデルフィアの献身にに敬意を示せ!放て!!」

 

フィラデルフィアの艦長だった男は知っている。出兵前に、孫が生まれるのだ、と言っていた。初孫だと言う。娘が孫のエコー写真を見せてくれた、と喜んでいた。

 

彼は、まだ生まれていない孫の為に再び戦場へ戻って来た。

 

私もそうだ。子供のために戦場へ戻ってきた。子供は、息子は戦後に生まれた。まだ、5歳だ。

 

戦争を、ジオン公国の大罪を知らない子供達だ。

今のサイド3には、ジオン共和国にはそんな子供がたくさんいる。

 

8年前に私たちが壊したコロニーにも、戦場にした地球にもたくさんの子供たちがいた。

私達が殺した子供たちがいた。

そして、奪った子供達が今もジオン共和国にいる。

我々は、許されない大罪を犯し続けている。

 

このベルサイユの直掩を任せているギャン部隊。この部隊のパイロット達は、ジオン公国民だったことはない。

1年戦争時に人質として、ジオン公国が拉致してきた、ジオン公国が壊滅させたサイドの人間だ。皮肉なことに、そのギャン部隊が、ギャン部隊の隊長に着任しているエグザべ・オリベ中尉がジオン共和国政府と軍の真意を理解し、行動をしてくれた。

エゥーゴの、シャア・アズナブルの目的がザビ家と同じだということを看破し、地球連邦の騒乱も未然に防いでくれた。だからこそ私は、ジオン共和国軍はこの戦場に立ち、ジオン公国に対して戦えているのだ。過去の過ちと戦えている。

 

ジオン共和国は、かつて私達が全てを奪った人間に、助けられた。今も奪い続けている人間に助けられた。

 

地球連邦政府とジオン共和国が、手を取り平和を築く可能性すら示してくれた。

その誠意と献身に、応えるために、皆が戦場に戻ったのだ。応えられねば、人間どころか、畜生でもない。ゴミだ。

 

吹き飛んでしまったフィラデルフィアのその先、アクシズ最大の港湾が見える。そこに停泊しているアクシズの、ジオン公国の旗艦グワダンも。

フィラデルフィアを、味方艦を吹き飛ばしてまで吶喊してくるとは思いもしなかったのだろう。攻撃の手を緩めていた。

そう、ジオン公国に兵はなし。

 

「滅ぶべきものの為に!!」

 

全速で進むベルサイユをもう、止める手立てはないだろう!グワダン、MSを排出したところで最早遅い。

 

情けだ。共に地獄へ行こう!ジオン公国!!

 

 

 

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グワダンからMS部隊を出立させたのは、抵抗ではなく、せめてもの情けだった。

 

目前に迫るムサイ級の戦艦はグワダンの主砲で撃った所で、そのデブリがグワダンと港湾を落とす。間違いなく。

グワダンの出航は間に合わなかった。巨大な戦艦だ。そしてその戦艦に乗るのは未錬成の兵士たちだ。

飢餓と経済的不安と内乱に疲弊しきった兵士は、まともに出動すらできなかった。グワダンのエンジンには、まだ火が入っていない。エンジンが動いていない。

 

ジャミトフ・ハイマンはアクシズのグワダンと共に死ぬ。ジオン公国の旗艦と共に死ぬのだ。

 

「シャア・アズナブルはニュータイプ、か。」

 

笑うしかなかった。それは過ちだったからだ。

ニュータイプに、シャア・アズナブルに、キャスバル・レム・ダイクンに縋ってしまったのは過ちだった。アクシズの、ジオン公国の運命を託してしまったのは間違いだった。取り返しようのない、間違いだった。

 

公王即位に伴い行われたキャスバル・レム・ダイクンの、あの演説。

 

「私は、かつて宇宙移民者の自治権と独立を掲げ、その権勢を欲したザビ家によって暗殺されたジオン・ズム・ダイクンの子、キャスバル・レム・ダイクンである。父ジオン・ダイクンの遺志を継ぐ者である。ジオン・ダイクンの目指した独立とは、ザビ家のような他者への支配欲や権力への欲望に根差したものではない。諸君、ジオン・ダイクンは、地球連邦の腐敗と増長をも見通していた。その腐敗と増長に宇宙移民を巻き込ませないためにジオン共和国を建国したのであって、ザビ家が目論んだ宇宙全てを己が手に収めるためではなかった。何故、地球に住む人々は腐敗と増長をするのか!それは、宇宙の広さというものを、そして地球の重みというものを感じる力が無い人々だからである。宇宙に出ることによって、人々は、人間は更なる能力を得ることができると信じられないからである。宇宙という無限の環境に適応できない地球に住む人々は、人の能力の拡大や進化を否定し、古い規範のまま進歩の無い生き方を肯定する。それこそが人類の、そして地球連邦そのものの腐敗と増長の根源である。今の地球環境を見れば、それは更に確かなものとしてわかるだろう。地球環境の悪化こそがその証拠である。その証拠を横目に地球の人々は、地球環境の保全を謳い宇宙移民を進めておきながらも、その地球から宇宙を支配しようとした。この阿漕な政治手法が、宇宙から地球を支配しようとするザビ家というものをも生み出し、地球に住む人々とザビ家のその葛藤の中で人類は互いに争い、地球を汚染することになったのである。いまや、地球は、あの人類同士の酷い争いの中で傷つき、人によって汚染されていない場所はない。砂漠化も海面上昇も南極の融解も気候変動も、すべての人類の過ちによって引き起こされた愚かな行いの結果である。だというのに、地球に住む人々は、地球という生命の揺り籠から離れることもせず、宇宙の無限も想像することさえせずに、ただ地球環境を汚染し続けている。人の手で、地球を汚してはならないということさえ、地球に住む人々は分かりもしない。更には、地球連邦が先の戦争に勝利したことを良いことに、宇宙移民への支配を強めるためにティターンズという宇宙移民を弾圧する組織さえも作り出した。ティターンズは地球に住む人々が作り出した、横暴と腐敗の象徴である。宇宙で人が新たな力を、能力を広げられるという事実を受け入れられない、地球の人々の怠惰さがティターンズを生んだのである。今、ここに私、キャスバル・レム・ダイクンは父ジオン・ダイクンの遺志を果たす為に公王の座にさえついた。即ち、人類がこれ以上、地球を汚すことなく、また、地球を戦場とさせないために、アクシズを地球へ落とし、戦争の根源たる地球にしがみ付く人間を粛清し、全ての宇宙移民をニュータイプへと導くことが私の使命である。」

 

この演説が、全てを敵に回した。

地球連邦もジオン共和国もコロニーも当然だが、アクシズの内部のザビ家派閥も私のティターンズさえも全てを敵に回した。

 

アクシズ内部のザビ家派閥はこの演説に当然反発を表明し内乱を起こした。ダイクン派閥の人間を、決戦を迎えた今でさえ殺している事だろう。

モウサとアクシズの内部で、馬鹿馬鹿しい殺し合いをしている。

治安維持など、夢のまた夢だ。できるはずがない。私のティターンズももう既にない。

 

私のティターンズは先日、エグザべ・オリベに殺された。このアクシズから逃亡したところを、白い死神とパプテマス・シロッコの作ったMS部隊に殺された。

ニュータイプのキャスバル・レム・ダイクンを敵視する、ニュータイプのエグザべ・オリベとパプテマス・シロッコに、私は、アクシズは、キャスバル・レム・ダイクンは負けたのだ。

 

もはや、死ぬしか道が無い。何も打てる手がない。生きる道がない。

 

キャスバル・レム・ダイクンは、この演説の後、アクシズが開発したMS、キュベレイに夢中になり、ニュータイプは新たな能力を得た、などと嘯いていた。

 

何が新たな能力だ。

戦場で、一方的に敵を殺せる能力が、ニュータイプの能力などであってたまるものか!

 

ニュータイプとは、争いさえも超越できる新人類だと言ったのが、ジオン・ダイクンだろう。争いを超越するというニュータイプの力を、アクシズを戦いから遠ざけるために使いもしなかった。

 

何故、アクシズを1つに取りまとめ、地球圏に対して和平交渉すらしなかったのだ。ニュータイプだというのならできることだろう!宇宙の人間を導くというのであれば、何故、争いと言う野蛮な方法を使う!

 

シャア・アズナブルはニュータイプの能力を、己が戦場で活躍するためだけに使っている。それが当然だと考えてさえいる。他者を導くために使っていない。ただ、自分のためだけに使っている。

 

すなわち、キャスバル・レム・ダイクンは全世界に向けた演説においてさえ、虚構を、己さえ信じていない夢物語を語ったのだ。人類を、宇宙移民をニュータイプへと導く気など毛頭もないのだ。

 

世界に嘘をついた。

 

私も、アクシズもそれを許した。許さざる得なかった。ザビ派閥とダイクン派閥が殺し合おうと、許すしかなかった。見て見ぬふりをしてきた。

キャスバル・レム・ダイクンとシャア・アズナブルを別人だと騙りさえもした。

 

ニュータイプの作る世界を、争いから解放された世界を諦められなかった。

 

争いに疲れ切った私たちは、その程度しかできない愚かで心の弱い人間でしかなかった。ニュータイプという愚かな幻想に浸っていたい老いた人間だった。キャスバル・レム・ダイクンかシャア・アズナブル。どちらかの名前が生き残り、いずれ目を覚まし、真のニュータイプとして覚醒してくれることを祈るしかできない人間だった。

 

そのシャア・アズナブルはたった今、このグワダンを捨てて、アクシズを捨てて、赤いキュベレイで逃げて行った。この港湾から逃げだした。

 

キュベレイの調子が悪い、動かないなどと言い、戦場に出ることを渋っていたシャア・アズナブルは、目の前に敵戦艦が迫るのを見るや否や、逃げて行った。

 

グワダンの艦橋にいるもの全てが、呆気にとられた。シャア・アズナブルの、キャスバル・レム・ダイクンの無事に安心するよりも、呆気に取られていた。

 

咄嗟にMS部隊を全機出撃させたことで、彼らの認識を誤魔化せただろうか?シャア・アズナブルを名乗るキャスバル・レム・ダイクンはグワダンを守るために出撃したと誤認させることができただろうか。

シャア・アズナブルがアクシズを捨てたことを誤魔化せただろうか?

 

せめてもの情けだった。滅びゆくものへの情けだった。

 

もっと地球や人々の為にするべきことが、できることがあったはずだと気づいた私ができる、最後の施しだった。

 

 

 

ジャミトフ・ハイマンは死ぬ最期の瞬間まで独りよがりの老人だったのだ。

 

 




特にみんなが興味がないであろう、キャスバル・レム・ダイクンの演説内容はこうでした。   編


要約:自分はザビ家の被害者。
  :ザビ家は悪いし、地球連邦はもっと悪い。
  :地球を人間が汚染するな。
  :宇宙で生きる人間はニュータイプになれる。知らんけど。
  :アクシズ落とします。

ダカール演説も、CCAでの演説もウィキペディアに載ってたけど、だいたいこんなことしか言ってない。
シャア・アズナブルはアドリブが利かないのか、特に主張したいことがないからこうなるのか……俺にはわからない。
普通は、こういう演説、草案つくるチームとかあると思うんですけど、ウィキペディアの全文読んでる限りシャア・アズナブルがそういうチームを作っている様に見えないので、こーなりました。他人に助けを求められないのがシャア・アズナブル君なので。



Zガンダムの本編で、3~6回乗ったら壊れるガザCに乗って前線に出て、先頭に立って兵の指揮取ってたハマーン様の株が、どんどん上がっていく。兵士も未錬成だったらしいのに。いや、訓練未了だからこそ、ハマーン様が最前線に行かなければならなかったのか…ミネバ様もアクシズから出て、グワダンで最前線へ…
地獄。おいサ●バ●●チ野郎!!
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