機動戦士Ζガンダム異伝 エグザベ・オリベ戦記   作:1スレ130番より愛を込めて

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血の出ない戦い

 

 

 

 

 

カミーユ・ビダンの使うサイコミュシステムは、サイコミュ兵器のジャックを目的に調整されたものだ。

ニュータイプの感応波を増幅し、アクシズ方面に向けて停止命令を発信し続ける、という一見単純に見えるサイコミュジャックに特化したシステム。

だが、システムのパイロットは当然、ニュータイプでなければならない。しかも強い意志を持ち、集中力のあるニュータイプが複数人でなければ実戦投入はできないだろう。

 

しかし、性能がニュータイプの技量次第であるというのならば、間違いなく地球連邦軍に軍配が上がる。国力がある。軍に所属しているニュータイプも当然、連邦軍が多い。テロリストやジオン共和国と天と地ほどの差があるのだ。

 

このシステムで、敵のサイコミュ兵器を無効化できるのであれば…

 

これから先、サイコミュをMSの補助システムや無線誘導兵器として開発していくのは厳しいだろう。ジャマー兵器としてのサイコミュ開発が優先されていくのは俺でも分かる。強化人間の俺でも。

 

ニュータイプの能力は、個人によって強弱と向き不向きがある。個人差が大きすぎる能力だ。

そもそも、『ニュータイプ』と一括りにしていることが間違いだろう。そんな不揃いで不安定な能力に、それを持つたった一個人に合わせて調整する兵装やMSなど、贅沢な遊びでしかなかった。戦場にたった1人で何ができる。磨り潰されて死ぬだけだ。

 

いや、そもそも戦場まで向かえない。パイロットの体調に左右されるなど兵器ではない。永遠に完成されない兵器だ、サイコミュMSは。

 

人間は、便利な生き物ではない。

ニュータイプの能力も、便利なものではない。

 

強化人間の実験を見ている中で、俺はそれを理解せざる得なかった。

そして、強いニュータイプの能力が決して、本人にとって使いやすいものでもなく、幸福につながるものでもないということさえ、俺は理解させられた。

 

ゲーツ・キャパは、俺は自分でニュータイプになることを選んだ人間だ。進化、という意味ではなく、兵士として必要な技能だと考えて選んだ。

多額の資金と人手をかけて、強化してもらった人間だ。

 

天然もののニュータイプではない。だが、彼らを知れば知るほど、天然でニュータイプになることを哀れに思う。

 

ニュータイプであるというだけ、ジオニズムのプロバガンダに踊らされ、愚かな人々の期待に潰されかけていたハマーン・カーンやアムロ大尉。

 

今、システムを制御し、サイコミュジャックを続けているカミーユ・ビダンもそうだ。自分がニュータイプだという確信の無いまま、力に振り回されて周囲の人間とコミュニケーションをとることさえ難しくなっていた。まあ、本来の気性もあるのだろうが、他人の悪意に敏感になり過ぎていた。

 

人間の本質を見るものがニュータイプだ、と語るニュータイプ研究者がいたことを思い出す。その口で、サイコミュ兵器を絶賛もしていた。

人間の本質と最新の兵器は彼らにとって、同価値だった。

 

本質など、人間など、軽々しく分かるものでもないものを、時と共に変わっていくものを、皆が重要視し過ぎている。他人に期待し過ぎている。

 

俺が理解している本質というものがあるのならば、人間は変わる、ということがそれだ。

人は変わる。周囲の人間との関係で、或いは孤独で、或いは体や脳の不調や変化で、人は変わる。誰もかれも、不変のままではいられない。

 

生きているのだ。

 

その生きているニュータイプが動かそうとしているサイコミュ兵器を、俺たちはカミーユ・ビダンに止めさせている。それは、子供に行わせるのは残酷なことだ。アムロ大尉が言ったように、残酷なことに違いなかった。

 

戦場で、頼りにしていた武器が使えなくなる。それは混乱と恐怖でしかない。そして、戦場では武器の無い兵士は逃げ惑い、死ぬしかない。

 

アクシズの兵士は降伏しない、と断言したのはヌー曹長だった。降伏の手順を知らない、と言い切った。アクシズのサイコミュMSも決して降伏しないと、不調でも戦場へ出てくる、と、アクシズから逃亡しようとする戦艦やMSの行動と末路から、ヌー曹長はそう考えていた。

 

ましてや、アクシズの強化人間やクローン兵士はまだ子供だ。サイコミュ兵器を搭載したMSに乗せられて戦場に出されているのが子供だと、サイコミュジャックに抗おうとしてるのが子供だと、サイコミュを通してそれが伝わってくる。

 

動け、動け、と恐怖の中で命じ続けている。死にたくない、と叫び声が聞こえる。

 

カミーユ・ビダンには、知らせていない事実だった。

 

知られないように、彼らの断末魔を遮断するのは、軍人である俺の役目だ。

 

ゲーツ・キャパは、今、幼い少女たちを殺した。

 

「ゲーツ大尉、脳波に乱れがあるが、中断が必要か?」

 

通信機から、ハマーンの声が聞こえる。

 

「いや、必要ない。カミーユが無事なら、私はこのまま任務を完遂してみせる。」

 

脳波に乱れが出るほどに、動揺してしまったか。カミーユに伝わって無ければ、それでいい。

サイコミュシステムは、感応波に指向性を持たせることができる。そうであれば、本来ならカミーユへ向かう敵の感応を俺が遮断することもできる。信じろ、ゲーツ・キャパ。お前は大尉だ。

 

「カミーユは無事だ。よく集中できている。本当に大丈夫か?ゲーツ大尉。」

 

アムロ大尉からも言われるか。断末魔など、地上の被災地や戦場で毎日聞いていた。悲しいことに、オーガスタ研究所でも聞いたことがある。

 

軍人のゲーツ大尉は、これからも敵や味方の断末魔を聞き続ける。俺が選んだ道だ。ならば、

 

「問題ない。後で、コーヒーでも奢ってくれればいい、アムロ大尉。」

 

俺は任務を完遂することができる。

 

任務を果たさなければ、地球圏に平和は訪れないことを知っているのだから。

 

 

 

 

 

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グラナダ基地に情報部の主だったメンバーが集められはじめて、もう1週間か。くそトロイ仕事増やしやがって。

 

今更になって、地球連邦軍とエゥーゴの情報部で情報共有なんかしたところでね、俺に何の利益があるんだかね。エゥーゴにも、俺らにも何の利益もね、あるわけないんだよね。

 

キャスバル・レム・ダイクンの演説が終わるその最後の瞬間まで、アクシズは降伏する、和睦の使者を出すべきだ、なんて馬鹿げたことを抜かしていた地球連邦軍の情報部と共有すべき情報って、この世に存在するのかね?

 

地球連邦正規軍の情報部は、ジオン公国とジオニズムを信奉する奴らが人間に見えているらしい。信じがたいことだよ。

 

情報を扱う軍人としては、恥ずべきことだ。

 

「アクシズに降伏勧告を出すべきではないか?」

 

だから、今更になって出される議題がこんなもんだよ。もう、とっくの昔にアクシズ殲滅作戦は開始されてるっていうのにさぁ。まあ、俺もね、言い出した理由は分からなくもない。

 

ヴェルザンディのパプテマス・シロッコ少佐の足をひっぱりたいんだろうね。

実際ね、才能と実力、そして木星からの人望もある有力な若者だよ。出世街道まっしぐらだ。現場の兵士からの人望も厚い。やっぱり、バスクとジャミトフをティターンズから追放できた実力と判断力がね、最高にパプテマス・シロッコ少佐への信頼へと繋がっている。

MSの開発までできる上に、コロニーの経営にまで手を出し始めてるし、軍内部の政争でも勝利し続けている。

 

それがね、面白くないわけだ、正規軍としては。

馬鹿馬鹿しいよね。

ティターンズの暴走を止めるわけでもなく、30バンチ事件を追及する憲兵を助けるわけでもなく、グリーン・ノアがキャスバル・レム・ダイクンのエゥーゴに襲撃された事件を追及するわけでもなかった地球連邦軍の正規軍には、ヴェルザンディのパプテマス・シロッコ少佐とジオン共和国のエグザべ・オリベ中尉の功績が非常にうっとおしいわけだよね。

 

自分たちが無能だって突き付けられているようなもんだもんね。実際、無能のくせにね、プライドだけは人一倍なわけだ。

 

正規軍はアクシズに人道的観点から降伏勧告を出した。それをヴェルザンディは無視し殲滅を続けた、とかいうね、ストーリーでも作って無能な自分たちの失態を隠したいんだろうよ。

 

アクシズとジオン公国を戦後どう処理するか、なんていう一大事すらね、考えたこともない脳みそダチョウレベルが、俺の仕事を邪魔しやがって。

 

まあ、地球連邦軍の一部の正規兵、つまり、月周辺に居た連中のね、ヒガミなわけだ。悪あがきなわけだ。

 

上層部がまで行けばね、地球連邦軍の参謀本部まで行けばね、真っ当な軍人がある程度、揃っていることが俺たちにとって救いではあるわけで。

その俺たちの救いであるはずの真っ当な軍人たちがね、今何を話し合っているのかも把握していない連中が、月周辺の正規軍なわけだよ。

サイド3がまたやらかした時用の時間稼ぎの捨て駒の集まりだったのかな?そう思えるくらいに、危機感も頭脳もない。

 

アクシズ周辺のミノフスキー粒子の濃さを考えると、降伏勧告なんか電波じゃ届かないしね、和睦の使者でも乗せた宇宙船でもださないといけないんだけど。

無能共は誰も立候補すらしないよね、当たり前に。

 

会議室の広さは奥行き1500センチメートル幅2500センチメートル高さ280センチメートル扉は後方に両開きが一つ高さ230センチメートル横300センチメートル。部屋には221名の情報部所属メンバーが集められていて各人に与えられた机と椅子は安物でパソコン1つ乗せれば飲み物も置けない。縦40センチメートル横60センチメートル床からの距離100センチメートル…

 

「ヌー曹長!アーガマより定時連絡です。」

 

時間つぶしをしていたら、よりにもよってタナカ伍長が部屋に入ってきやがった。よりにもよって、タナカ……お前ね、一応俺の次席なんだから、アーガマから離れたら駄目なんだよね。そもそも、定時連絡はワン一等兵とニスリーン一等兵に頼んでた仕事だしね、お前がやるようなことじゃないよね。

というかね、情報部の、仮にも俺の次席なら、こういう俺と一網打尽になりそうな会議室なんかに来たら絶対に、駄目だよね!

 

「アルファがベータをカッパらってデルた。以上。」

 

満面の笑みでタナカ伍長は大声をあげた。敬礼までしやがってね、俺を悪目立ちさせるんじゃないよ。

 

「はいはい、どうもね。タナカ伍長、お疲れさん。次はもう少し一般的なジョークでお願いね。こちらからは何もないからね、帰って良し。」

 

 

鯱張った完璧な軍人しぐさで綺麗な回れ右まで披露してね、新人っぽい駆け足でタナカ伍長は即座に退出してった。

 

くだらないよね、ほんと。こんなことのためにね、わざわざグラナダ基地内部に来るとか、イカレてるよね。

タナカ伍長がイカレてる、というのはね、エゥーゴ情報部の共通見解だよ。まあ、仕事できるからいいけどね、俺は或る程度までは許すけれどね。

 

しかし、これはね、後で呼び出して説教したくもなる。

タナカ、あいつ、マジで許さねえから。

 

何がアルファ、ベータ、カッパ、デルタだよ!特に報告することないからってね、適当に思いついたジョークだけ言って帰りやがった。

 

こんなんね、会議室中の視線を、俺が独り占めしてしまうよね、当たり前なことに。

 

ジョークだって言っただろうがよ!今!

 

伍長が、俺の次席がわざわざ、ここまで来て、礼儀正しくね、報告していった。それだけのことで、俺は会議室中の全員から注目を集めてしまっている。

天使が通るってこういう事を言うのかね。会議室だというのにね、静かになった。なんで俺の味方のはずのエゥーゴの情報部も黙ってるのか、詳しく聞きたくもなるよね。

 

まあ、考えてみれば、信用が無いのはね、俺もタナカ伍長とおんなじなんだろうけどね。あいつと同類にされても嫌なんだよね。正直、俺でもね、タナカと同じ扱いは心が傷つく。

 

なんで、俺はね、こんな意味ない会議なんかしてるんだろうね。

本当に、手をつけたい仕事は、やるべき仕事は山ほどあるのに、馬鹿どもの相手なんかさせられてさ。どいつもこいつも馬鹿しかいないんだよね、この会議室。ジョークをジョークだとも気づかない馬鹿しかいない。

 

任務の一環だからね、我慢できるけれど。後、3時間は、この馬鹿どもを会議室に留めないといけない。それが任務だ。

適当に発言して、こいつらの怒りと困惑を俺に集めてね、こいつらにとっての戦場はアクシズではなく、この会議室内部だと思い込ませる。実際、出来てた。この会議室でね、1週間も時間を無駄遣いさせてやった。ざまあ、だよね。

 

会議室にいる全員の顔と名前はね、もともと知ってる。

いつか軍内部から蹴りだしてやろうとね、俺がコツコツと作っていたリストに載せている、この部屋の137人の馬鹿共。リストにはね、功罪ともども載せた履歴書もつけている。準備万端ってやつだよね。

 

このリストを使うのも、地球連邦軍の参謀本部からの任務だ。

一体、いつリストのことがバレたんだかね。パソコンのデータにも入れてないのにね。リストって手書きで日記風に暗号化してるのに、バレるんだもんな。頭良い奴ってのは、どこにでもいるもんだよね。そんなこと知ってるから、俺は悪いことはできないよね。

 

今、グラナダ市にはジオン共和国の外務大臣と財務大臣とコロニー交通大臣が来ている。舌打ちしたくなるほどに共和国政府の動きが遅いとは思うけれどね、戦後に向けた調整の会議を行っている。もちろん、いざとなればね、彼らはここグラナダ市かフォン・ブラウン市に亡命政権を作ることになるけれど。まあ、それはもう起こりえないだろうしね。

 

地球連邦軍の陸軍はね、予定時刻通りにアクシズとモウサへ突入できる。アーガマからの報告が無いってことはそういう事だよね。この会議室に集まって管撒いてる馬鹿どもの相手も、それまでだよね。後、3時間。

 

陸軍の仕事が終わればね、大体のMS部隊は撤収できる。警備の部隊には地球連邦軍の正規部隊が当たるから、共和国軍のMS部隊も撤収してしまう。

 

彼らが撤収する前に、さっさと、エグザべ中尉とギャン部隊を回収したいんだよね、俺は。エゥーゴ情報部も、俺と同じ考えだ。

 

ジオン公国に拉致されてね、共和国軍に入れられてね、最前線で戦闘任務を与えられている彼らの救出をしないといけない。

早く、彼らを助けてやりたい。

 

俺もね、軍人なんだから国民を助けたいという感情はあるんだよね。タナカは俺が正気か、疑ってきたけど。

 

オマケに俺は、小さいクソガキに、カミーユ君に家族を返してやりたいんだよね。約束してんだからさ、小さいクソガキと。

 

1年戦争後からずっとね、家族を失い、身寄りを失い、友人や知人さえも失い、孤独に苦しんで今を耐え忍んでいる人間は地球にもコロニーにも月にもいる。目の前にそんな奴らがね、いるんだよ。ずっと、いるんだよ。軍にも民間にも、何もかもジオンなんかに奪われて、それでも歯あ喰いしばって生きている奴らがね、いるんだよ。

 

そいつらがさ、支え合って生きようとしてた姿をね、俺は見ちゃったんだよね。アーガマでさ、不器用な親子ごっこして、でも、ちゃんと支え合ってた姿を見ちゃってるんだよ。

 

今も頑張って生きてる小さいクソガキが泣きながらさ、新しい家族と生きていきたいって言っているんならね、それに応えてやるのが大人の矜持ってもんだよな。

戦中も戦後も、いろんな人間を観察しながらね、情報食って生きて抜いて来た俺にしかできないこともあるんだから。

 

この会議室の無能共をさっさと片付けてね、俺にしかできない仕事に戻らないと駄目だよね。

 

アルファがベータをカッパらってデルた、ね。このクソジョークでできること、か。まったくね、もう。

 

 

 

 





タナカ伍長「ヌー曹長への定時連絡?前回はワン一等兵だったな。会議室の様子は?え?全員、一触即発だった?なるほど!次は俺が行ってくる。」

ヌー「タナカ!!てめえ!!!」

イッツァ ロックンロール!!


スレでは

>>タナカ伍長!「ヌー曹長は戦況が進んで事後処理の算段がつくまで無能どもの足を会議で引っ張るんですよね!ヨッシャ実態のないクソジョークで火をつけて全ヘイトをヌー曹長に集めてきます!」ではないが…!

と、コメントを頂きました!大正解です!!


俺はゲーツ好き。当然優遇する。
思想的でも能力的でもなく、ゲーツ・キャパは己のできることを完遂しようと全力を尽くすという意味で、間違いなくニュータイプ。
与えられた任務が、どれほど残酷であろうとも、それを達成することが人類へ平和をもたらすために必要なことだ、と人類を信用してもいる。

Zガンダム本編でも様子のおかしいロザミアの兄役と補助役を任されて頑張っていたし、ジークアクス本編でもドゥーの補助役として最期まで逃げていない。アホほど無謀で意味なさそうな、あのジークアクス本編の作戦でも、だよ。どちらも劣勢で戦力も大幅に不足していたのに不平不満も言わなかった。どんだけ胆力あるんだよ?全身胆か?趙雲か?




ヌー曹長は一番、子供の事考えてくれているから、俺は全任せにしている。こいつなら何とかするやろ。
エグザべ中尉は生きて帰ってくる、と取り合えずその前提で動いているヌー曹長。
サイコミュジャックもハマーン様とアムロ大尉とゲーツ大尉とついてるから、カミーユ君がなんとかするやろの精神。

会議室での戦争は、傍から見ると馬鹿馬鹿しいけれど、でも重要なんだよ。武器振り回して戦うよりも。俺はそう、思っている。
会議室だけで戦争が終われば、誰も武器を振り回さなくて済むのにな。
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