新訳 ドラゴンクエストビルダーズ 作:seven river
1話 目覚めしビルダー
「ビルド…ようやく見つけましたよ、あなたのことを」
ビルドという少年の頭に、何者かが話しかけてくる声が聞こえる。
「一つの忌まわしい選択が生んだ、闇に覆われた世界。その世界では空が闇に覆われ、人々はただ滅びの時を待っています。世界を救うには、あなたの力が必要なのです。さああ、時は来ました。ビルド…目をお開けなさい」
目を閉じ倒れていたビルドは、目を開けて起き上がる。辺りは岩壁で囲まれた閉鎖空間で、目の前には石でできた墓があった。
「目が覚めたのですね、ビルド。あなたは覚えていますか?自分が何者だったのか」
謎の声にそう尋ねられる。しかし、ビルドは声をかけられる前の記憶が一切なかった。頑張って思い出そうとしても、何も分からなかった。
「いや、覚えてないよ。自分が何者かも、なんでこんな場所で倒れていたかも」
「そうですか…眠りにつく前のことは何も覚えていないのですね。…むしろ今は、その方がいいのかもしれません」
「気になるけど…覚えていない方がいいって言うなら、無理に思い出すことはないか」
謎の声に覚えていない方がいいと言われて、ビルドはひとまず思い出そうとするのをやめる。
「それがいいでしょうね。ところであなた、長い眠りで身体がなまっていることでしょう。まず、自分の身体を動かしてみてください」
「分かったよ」
ビルドはとりあえず身体を動かしてみる。今いる墓の前を歩き回ったり、ジャンプして段差を超えたりしてみた。どうやら、身体は問題なく動くようだった。
「普通に動けるね」
「そのようですね。これならあなたは、自分の役割を果たせるでしょう。あなたには果たすべき、重大な役割があるのです」
「そうなんだ…けど、ちょっと身体がだるいかも」
問題なく動けるとはいえ、ビルドは身体のだるさを感じていた。
「では、身体を回復させてみましょう。私がこれから、白い花びらをあなたに提供します」
「白い花びら…それで回復できるのか」
その声が聞こえた後、ビルドの目の前に白い花びらが3つ落ちてきた。
「花びらのままではできません。あなたは素材から道具や武器を作り出す力を持っています。そこにある切り株を作業台にし、白い花びらから傷薬を作ってください」
「そうなんだ。やってみるね」
ビルドは切り株の上で、白い花びらを練りこんでいく。記憶は欠乏しているものの、傷薬の作り方は思いつけた。しばらくすると、クリーム状の傷薬が出来上がる。
「これでいいかな?」
「上手ですね。その物を作る力は、この世界であなただけが持つものです。作った傷薬をさっそく使ってみましょう」
ビルドは傷薬を飲み込んでいく。すると、身体のだるさがすっかりと取れていった。
「おお。これで元気になったよ」
「それはよかったです。先ほどあなただけが持つ力と言いましたが、この世界の人間たちは、とあるきっかけで物を作る力を失ってしまいました」
謎の声は、この世界の現状について説明していく。ビルドはそれを聞きつつも、早く狭い洞窟から広い外の世界に出たいと思っていた。
「そうなんだね…ところで、僕はいつまでここにいるの?早く広い外に出たいよ」
「では、洞穴から出るための足場を作りましょう。この太い枝を使ってください」
「わかったよ。ありがとう」
ビルドの目の前に、太い枝が落ちてくる。
「この太い枝を加工すれば、檜の棒が作れるでしょう。先ほどのように、切り株を作業台として加工してみてください」
ビルドは切り株の上にあった石を使って、太い枝を細く削り出していく。しばらくすると、持ちやすいサイズの檜の棒が出来上がる。
「これで完成かな」
「よくできましたね。では、外に出る足場を作るために、周囲の土ブロックを壊し、集めるのです」
「やってみるよ。えいっ、それっ!」
ビルドは檜の棒を振り回し、周囲の土ブロックを叩いていく。2回叩くと土ブロックは崩れ、持ち運べる小さなサイズになった。ビルドはそれを拾い、持っていたポーチにしまっていく。
「手に入れた土は、任意の場所に置くことができます。出口に繋がる段差があるので、そこに置いてみましょう」
「うんっ。早く外の世界を見たい」
洞窟の中を見渡すと、上に繋がる段差が見つかった。しかし2段の高さがあり、このままでは登れない。
「ここに置けばいいね」
ビルドは段差の前に土ブロックを配置し、1段ずつ登っていく。登った先には階段があり、彼はそれも登っていった。階段を登ってからは、しばらく平坦な道が続く。
「ここにも置けばいいね」
次の階段の前には足場が足りず、ビルドはそこにも土ブロックを配置していった。そして階段を登ると、外に続く鉄格子の扉が見えた。
「おっ、いよいよ外だね」
ビルドは扉を開けて、外に出る。すると、そこには広い草原と森が広がっていた。
「うまく外に出られましたね。この世界、アレフガルドはとあるきっかけで光を失い、闇に覆われた世界。先ほども言いましたが、人間たちは物を作る力をなくしてしまっています」
謎の声は、この世界の現状について改めて説明した後、ビルドの役割について話す。
「ビルド…あなたの重大な役割は、あなたの持つ物作りの力で人々を救い、世界を復活させることです」
世界を復活させるという大きな役割を言い渡され、ビルドは困惑する。
「世界を復活させるって…そんなすごいことを言われても…」
「確かに、あなたには厳しすぎる役割なのかもしれません。では、あなたは物を作る力で、自由に思いついた世界を作ってみてください。そうすれば、自ずと役割を果たせるでしょう」
「自由に物を作るか…それならやってみたいかも」
ビルドはひとまず、物作りを楽しめばいいやと考える。謎の声は、自分の正体について彼に話す。
「私は大地の精霊ルビス。全ては精霊の導きのままに…」
大地の精霊、ルビス。それが謎の声の主だった。
「最後に1つだけ、あなたに忠告しておきます。あなたは勇者ではありません…このことは覚えておいてくださいね」
「分かったよ」
勇者ではないと言われ、ビルドはそれを頭の隅に置いておいた。
「では、目の前の大地の説明に移りましょう」
ルビスは目の前に広がる大地についても解説してくれるようだった。
「ここはかつてメルキドと呼ばれていた場所。昔、この地には巨大な城塞都市がありましたが、魔物との争いで全てを破壊されてしまいました。あなたは、物を作る力で新しいメルキドの町を作りあげてください」
「さっき言われた通り、思いつくままにやってみるよ」
メルキドの町を復活させる。それが当面の目標になるようだった。
「町の復活のため、あなたにはこれを渡しておきましょう」
ルビスがそう言うと、目の前にボロボロの黄色い旗が落ちてくる。
「これは希望のはた。この地で魔物と戦っていた人々が最後まで掲げていた旗です。これを持って、光さす地を目指しなさい」
目の前の草原には、光の柱が立っているところがあった。
「あの場所に希望の旗を立てれば、光が溢れ、メルキド復興の拠点となるでしょう」
「それじゃあ、行ってみるよ」
ビルドは草原を歩き、光さす地を目指した。あまり遠くはなく、しばらくすると到着することができた。
「ここに旗を立てるんだよね」
ビルドは希望の旗を、光の柱に突き立てる。すると、辺りに暖かい光が溢れ出した。心地のよい感覚をビルドは味わっていた。
「うわあ、暖かくて明るいね」
「光に導かれ人間たちがやってくるはずです。ほら、早速…」
ルビスの言う通り、希望の旗の近くに、女の子が駆け寄ってきた。