新訳 ドラゴンクエストビルダーズ   作:seven river

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12話 滅びたシェルターと石の守り

入った建物の中は荒れ果てていた。草花が生い茂り、いくつもの骨が落ちていた。そして建物の奥に、先ほどの兵士と同様に生気のない顔をした男が立っていた。この人が兵士の言っていたロロニアなのだろうか。

 

「すみませ〜ん」

 

「おや、そなたは吾輩の姿が見えるのか。そなたは普通の人間とは異なるようだな」

 

この男もやはり幽霊のようだった。

 

「吾輩はかつてのメルキドの町長、ロロニア。その亡霊だ」

 

「君がロロニアなんだね。外の兵士の幽霊から、ここが魔物から逃れるシェルターとして使われていたって聞いたよ。でも、中にもマモノが現れたって話してた…ここに現れたマモノって何だったの?」

 

先ほどから気になっていたことをロロニアに尋ねる。

 

「それは人間自身のことだな…ここでは人間が自らで自らを滅ぼしたのだ」

 

「人間が自ら…?」

 

「そうだ。魔物の脅威を凌ぎながら生活しているうちに、お互いを信じられなくなり、限りある食料を奪い合い、殺しあった。まるで、人間が魔物になってしまったかのようだった」

 

シェルターの中に現れたマモノ。それは殺し合うようになった人間のことのようだった。

 

「そんなことがあったんだ…」

 

「嘆かわしいことだが、それがこのシェルターで起きたことだ」

 

ロロニアは悲しそうにそう言う。

 

「ところでそなたは何者なのだ?こんな場所をわざわざ訪れて、亡霊である吾輩のことも見えて」

 

「物を作る力を持つ、ビルダーって存在らしい。石の守りの手がかりが欲しくてここまで来た。石の守りの手がかりは見つかったけど、シェルターの中のマモノについて気になって、君に会いにきた」

 

「そなたがあの伝説のビルダーか…そなたは何故物を作る?」

 

物を作る理由。ビルダーとしての役目ももちろんある。しかし、1番は物を作るのが楽しいからだとビルドは思っていた。

 

「ビルダーとしての役目もあるけど、何より物を作るのが楽しいからかな」

 

「なるほどな。そんなお主に見せたいものがある。ブロックを積んで、この建物の上に来てくれ」

 

「分かったよ」

 

亡霊であるロロニアは、浮いて屋上まで向かっていった。ビルドはその辺の土や城の壁を大木槌で回収し、足場を作って屋上に向かっていった。

 

「ロロニア、登ってきたよ」

 

「よくぞここまで来た、ビルダーよ。この屋上からの景色をそなたに見せたかったのだ。空を見れば、どこまでも黒き雲に覆われている…かつての美しい世界は見る影もない」

 

ロロニアの言う通り、空を見上げればどこまでも黒い雲に覆われていた。

 

「そして、人々は滅びを待つだけの存在になってしまっている。そなたが空の闇を晴らし、美しい世界を復活させてくれ。世界の復活なんて大きなことを言ったら無理と思うかもしれないが…ならば世界のことなど考えず、楽しいものを作り、目の前の友を救うのだ。それが重なり、いずれ世界を救うだろう」

 

楽しいものを作り、目の前の友を救う。ビルドは改めてそうしようと思った。

 

「この宝箱にそなたの役に立つものが入っている。さらばだビルダーよ。そなたが作る新しい世界を楽しみにしておるぞ」

 

ロロニアはそう言うと、昇天して消えていった。彼の近くにあった宝箱を開けてみると、石の守りに関する詳しい記録が残されていた。

 

「石の守りの記録か…これで町を守れるといいけど」

 

石の守りの記録をビルドは手に入れる。帰る前に、もう少しこのシェルターを調べてみることにした。下に本が置かれていたからだ。段差を降りて、本があった場所に向かう。本の近くにはメモが置かれていた。

 

がんだるとかいうぼうけんかからかいていたほんをとりあげてやった。あいつがかくもじはおれたちではよめなかったが、あのおとこ…おれたちのわるぐちをかいていたにきまっている。こんなことならあのおとこ、にがすんじゃなかったな。

 

悪口を書いているに違いないと思うほど、心が荒みきっていたようだった。他にもメモが置かれていた。

 

きょうもまたひとがいなくなった。どうしてだろう、このじょうさいのなかにはまものはいないはずなのに。じつはきょうのよるおとなたちからよびだしをうけた。いったいぼくになんのようがあるんだろう。

 

食料を奪い合い、殺しあった。それで人がいなくなっていったようだ。このメモを書いた子供も、殺されてしまったのだろう。ビルドは次に本に目を通す。本にはアレフガルド歴程と書かれていた。

 

おお、我が故郷メルキド!私は滅びたと思っていたメルキドの奥地で、シェルターとして作られた城塞を発見した。どうやら私の留守中に人々はこの大きな城塞を作り上げ、魔物たちの脅威から逃れるために、その中に閉じこもって生活していたようだ。しかし、閉鎖された城塞で暮らす人々はどこか様子がおかしい。私が話しかけても目は虚ろで、持っていた食料を奪われそうになってしまった。これも魔物の恐怖の中閉鎖された空間に居続けたせいなのだろうか。そんな恐怖に囚われた人々が暮らすシェルターの中で、メルキドの守り神であるゴーレムがどこか悲しげに座っている姿が印象的だった。メルキドは愛すべき我が故郷…しかし、故郷の人々が住む場所だからといって、ここに長居すると良いことはなさそうだ。良からぬことが起きる前に、私は次なる地を目指すことにする。

メルキドの冒険家・ガンダル

 

町の近くにあった誓いの記を書いたガンダルが、この本を書いたようだ。彼も食料を奪われそうになったということで、長居しなかったのは正解だっただろう。長居していたら、殺し合いに巻き込まれていたかもしれない。ロロニアの言っていた通り、人間がマモノになってしまっていたようだ。

 

「こんな恐ろしいこと、もう起こらないでほしいな」

 

シェルターの悲劇を繰り返してはならないと、ビルドは強く思った。彼は建物を出て、キメラの翼を取り出す。旅の扉から遠い場所なので、これを使って帰ろうと思っていた。キメラの翼を羽ばたかせて、ビルドの身体は上空へと上がる。町の上へと移動し、希望の旗の台座へとゆっくり着地した。

 

「ロロンド、石の守りの記録を持ってきたよ」

 

「おお!よくやったぞ。早速吾輩に見せてくれ」

 

ロロンドは希望の旗の台座でメルキド録を読んでいるので、すぐに話しかけることができた。石の守りの記録をロロンドに手渡す。

 

「これが石の守りの記録か…これを解読して、この町に石の守りを作ろうぞ」

 

「うんっ。それで、今度も魔物から町を守ろう」

 

「解読している間、お主はゆっくりと待っておれ」

 

そう言われたので、ビルドは一旦寝室に戻ってゆったりと休んだ。

今日の冒険でキメラの翼を使い、無くなってしまったので、しばらくすると町の南西にある岩山の前にキメラ狩りに出かけた。キメラは嘴と火で攻撃してくるが、戦い慣れているので簡単に躱し、倒すことができた。戦っている中で、こちらを見ているのに攻撃してこない個体がいるのに気づいた。

 

「ん?あのキメラ、僕を攻撃してこない」

 

もしかしたら人間との戦いが嫌な個体なのかもしれない。仲間になってくれるかもと思い、ビルドは魔物のエサを作りに行くことにした。岩山の前の草原で丈夫な草を拾い、森の中でキノコを手に入れる。丈夫な草でキノコを巻き、先ほどのキメラの所に戻る。

 

「ほら、エサだよ。食べて」

 

攻撃してこないキメラは、魔物のエサを美味しそうに食べていた。食べている間にも敵のキメラがやってきて、嘴や炎で攻撃しくる。ビルドはそれを避けて、倒していく。炎の一部がエサを食べているキメラに当たったが、一部だけなので平気そうだった。エサを食べ終わったキメラは、敵のキメラの炎を自らの炎で打ち消す。

 

「僕の仲間になってくれたみたいだね。このまま敵のキメラ狩りを続けるよ」

 

敵の炎は仲間のキメラが打ち消してくれるので、ビルドは嘴さえ避ければよかった。9枚のキメラの羽根が集まると、ビルドは町に戻ることにする。

 

「これから僕たちの町に戻るよ。ついて来て」

 

味方になったキメラは、ビルドの後ろについて行く。町に戻る途中、ビルドはキメラの羽根を束ねるための丈夫な草も集めていった。町に到着すると、ケッパーとレゾンが近づいてくる。

 

「ビルド、そのキメラは?」

 

「群れの中で1体だけ、僕を攻撃してこなかったんだ。それで魔物のエサをあげたら、仲間になってくれた。一緒に敵のキメラと戦ったよ」

 

「そうだったんだね…仲間が増えるのはありがたいよ」

 

「俺以外にも魔物の仲間ができるとはびっくりだぜ。よろしくな。…そういえばそいつに、名前はあるのか?」

 

ケッパーとレゾンは新たな仲間を歓迎してくれた。レゾンはキメラに名前があるのか聞いてくる。

 

「いや、まだつけてないよ」

 

仲間にしたばかりなので、まだ名前はつけていない。

 

「そうか。そうだな…お前の名前はエルゾアだ!どうだ、かっこいい響きだろう」

 

レゾンはキメラにエルゾアと名付ける。キメラもそれを気に入ってくれたようで、頷いていた。

 

「かっこいい名前がもらえてよかったね、エルゾア」

 

エルゾアを仲間に加えて、メルキドの町は一段と成長していく。

 

「そうだ。エルゾアもベッドが必要かな?」

 

「いや。キメラも睡眠を必要としない種族だ。作らなくていいと思うぜ」

 

今回もベッドは新しく作る必要がないようだった。

 

「分かった。キメラの羽根を集めてきたから、とりあえずキメラの翼を作ってくるよ」

 

ビルドはレゾンたちと別れ、作業部屋に入る。そして、キメラの羽根を3枚ずつ束ねて3つのキメラの翼を作っていった。その後は寝室に戻り、ゆっくりと休んでいた。

翌日、ビルドはいつも通り寝室にいたり、町の中を歩いたりのんびり過ごしていた。彼が町を歩いている時、ロロンドが話しかけてきた。

 

「ビルドよ、石の守りの記録の解読が済んで、設計図も用意できたぞ。石の守りには石垣、棘罠が必要なようだ」

 

ロロンドは設計図を見せてくる。彼もペンと紙を持っているようだ。設計図には石垣と棘罠の配置位置が書かれており、シェルターの前で見た石の守りより長めだった。大量の石材と銅、石炭が必要になりそうだった。

 

「これはかなりの数の素材が必要になるね。これから集めてくるよ」

 

「頼むぞ、ビルドよ」

 

ビルドは旅の扉を通り、まずは扉の周囲の岩を砕いて石材を入手していく。扉の周囲になくなると、岩が多くある大木槌の里の北に向かった。そこでもビルドは大木槌を振るい、石材をたくさん入手していった。

石材が手に入ったら、次は銅と石炭だ。以前ケッパーを探しに行った時の崖に、それらの鉱石があった。そこに向かい、落ちないように気をつけながら崖の壁面にある銅や石炭を掘っていった。そこの分だけでは足りないので、土ブロックも使って崖を移動しつつ、鉱石を集めていった。十分な数が集まると、崖を登って旅の扉へと戻っていく。メルキドの町に戻ってくると、まずはロロンドに報告に向かった。

 

「ロロンド、必要な素材を集めてきたよ」

 

「おお。では早速、作り始めようぞ」

 

作り始める前に、ビルドは1つ提案をする。

 

「今回は長丁場になるから、2人だけだと疲れきっちゃいそう。町のみんなにも手伝ってもらおうよ」

 

「確かに、それが良いかもしれぬな」

 

2人だけだとくたびれてしまいそうなので、町のみんなにも手伝ってもらうことにする。

 

「おーい!町のみんな!希望の旗の前に集まってきて!」

 

ビルドは大声を出して町のみんなを呼び寄せる。

 

「どうしたの?」

 

ピリンが最初に来て、それから町のみんなが集まってくる。みんなが集まると、ビルドは言う。

 

「これから石の守りっていう、町を守るための設備を作るんだ。それが結構大変な作業だから、みんなにも手伝って欲しいんだ」

 

「そうなんだ。私はもちろんいいよ」

 

「物を作るのは楽しくなくはない…やってみるぜ」

 

「僕も手伝わせてもらうよ」

 

「骸骨の身でどこまで出来るか分からんが…とりあえず頑張ってみるぜ」

 

町のみんなも手伝ってくれるようだった。

 

「それじゃあ作業部屋に行こう」

 

みんなを引き連れてビルドは作業部屋に入る。

 

「まずは魔物の攻撃を防ぐ石垣から作っていくよ。僕が作るところを見てて」

 

まずは石垣から作る。ビルドは石材を取り出し、大木槌で叩き割る。それから石炭で炉内を加熱し、銅を溶かす。石の作業台の上の石の工具で溶けた銅を掬い、それで石材の破片を溶接していった。幾つもの破片を溶接してブロック状になると、金槌で形を整えていった。綺麗な立方体になると、石垣の完成だ。

 

「これでまずは1個目。これを40個作らないといけないんだ」

 

「それはまたすごい量だね。でも町を守るためなら頑張らないとね」

 

ケッパーはそう言う。

 

「僕の大木槌を使っていいから、みんなもやってみて」

 

ビルドが素材を手渡し、ピリン、ロロンド、ケッパー、ロッシ、レゾンの順番で、ビルドを真似して石垣を作っていく。ロロンドは自分の大木槌を使っていた。みんなの作ったものは少し形が歪んだりしていたが、石垣として機能しそうであった。みんなが作った石垣はビルドがポーチに入れていた。時間をかけて順番に作業し、40個の石垣を作ることができた。

 

「これで石垣は十分だね。後は魔物を攻撃するための棘罠を作ろう。1マス当たり5個置いて、16マス分置くから、全部で80個必要だね」

 

「それはまた大変じゃねえか」

 

レゾンはそう言う。しかし棘罠1個は小さいので、石垣よりは楽だろうとビルドは思っていた。

 

「これもまず僕が手本を見せるね」

 

まず銅を炉で溶かして、インゴットの形にする。そのインゴットを石の作業台の工具で5個に切り分け、金槌で叩いて棘の形にしていった。

 

「みんなもやってみて」

 

先ほどと同じ順番で、ビルドから素材を受け取り、町の人々は棘罠を作っていく。1回当たり5つ作るので16回の作業で済み、石垣作りよりは楽に終わった。棘罠も、ビルドがポーチにしまう。

 

「みんなありがとう。これで石の守りが作れるね」

 

「吾輩からも深く感謝する。魔物たちは2回とも町の西から襲ってきていた…町の西に石の守りを設置しようではないか」

 

「それじゃあ、僕が置きに行ってくるね」

 

その言葉の後、ビルドは石垣と棘罠を町の西に置きにいく。まずは石垣を設置し、それから棘罠を置いていく。無事に設計図通りの石の守りを完成させることができた。

 

「おお!ついに石の守りができたな!これで魔物との戦いが楽になるはずだ」

 

「良かったねロロンド」

 

「ああ!この調子で町を発展させていきたいぞ」

 

石の守りが完成し、ロロンドはとても喜んでいた。長い作業で、辺りはもう薄暗くなってきていた。

 

「でも、もうすぐ夜になるから、今日はキノコを食べて休もう」

 

「そうだな。明日からは、またメルキド録の解読だ」

 

その日は夕食として焼きキノコを食べ、明日に備えて眠ることにした。

翌日、ビルドは目を覚ますととりあえず寝室から出る。するとロロンドが、希望の旗の傍から近づいてきた。

 

「目覚めたようだな、ビルド。吾輩はメルキド録を解読し、ある重要なことが分かったのだ」

 

「重要なことって?」

 

メルキド録の解読がまた進んだようだった。

 

「どうやらメルキドには魔物の親玉なるものがおり、そいつを倒すことで空の闇を晴らすことができるようなのだ」

 

「そうなんだ。なら、それを倒すために頑張らないとね」

 

どこまでも続く暗い雲に覆われた空。それを晴らすことができるのはビルドにとっても喜ばしいことだった。

 

「ああ。魔物の親玉を倒すために、より強力な武器や防具の作成に務めなければな」

 

必ず魔物の親玉を倒したいと、ビルドとロロンドは思っていた。

 

「そのためにも、さらにメルキド録の解読を進めなければならんな。新たなことが分かったら、お主に伝えるぞ」

 

「分かったよ」

 

ロロンドはメルキド録の解読に戻る。ビルドには今はできることはなく、町を歩いたり、寝室で休んだりしていた。

ビルドが休んでいると、旅の扉の方向からフレイユの切羽詰まった声が聞こえてきた。

 

「人間さん、大変!里にたくさんの魔物たちが襲ってきてるの!」

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