新訳 ドラゴンクエストビルダーズ   作:seven river

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4話 メルキド録を持つ者

設計図通りの作業部屋が完成した後、ピリンは言う。

 

「そういえば、色々な物を作っていくとしたら、私たち2人だけじゃ足りない気がするんだ。人が多い方が、町も賑わうし」

 

「確かにそうだね。誰かあてがあるの?」

 

物作りをするにしても町を盛り上げるにしても、人数は多い方がいい。誰かあてがあるのかと、ビルドは尋ねる。

 

「実はここに来る途中、怪しげな人を見たの。怪しいから声をかけずにここまで来たんだけど、一緒に町を作ろうって言ったら、仲間になってくれるんじゃないかな?」

 

怪しげな人物でも、町の仲間になってくれるなら歓迎するとビルドは思っていた。

 

「そうなんだ。ぜひとも仲間にしたいね」

 

「その人はあっちの方で見かけたよ。探しに行ってみて」

 

ピリンは北東の方角を指さす。

 

「わかった。行ってくる」

 

ビルドはピリンの言葉に従い、拠点の北東へと歩いていった。途中でスライムを何体か見つけたが、今は放っておいた。歩いている途中、ビルドは木でできた看板を見つけた。

 

「看板だ…何が書いてあるんだろう」

 

新しい人の手がかりがあるかもしれないと思い、ビルドは看板に近づく。看板にはこう書かれていた。

 

誓いの記

悪しき竜王が世界を闇で閉ざしてから、どのくらいの年月が経つのだろう。世界は魔物たちに脅かされ、我が故郷メルキドもついに滅びてしまった。竜王によって物を作る力を奪われた人々は、今や文字すらも失いかけている。人間の物を作る力は、最も大切な力の1つだったのだ。私は文明が滅ぶ前に、アレフガルドの各地を旅し、世界に起きたことを記録に残していこうと思う。これはその誓いの記である。私の旅の記録はアレフガルド歴程という書物として各地に残しておくつもりだ。もしこの誓いを見たものがいれば、私の足取りを辿ってくれると嬉しい。全ては大地の精霊ルビスの導きのままに

メルキドの冒険家・ガンダル

 

仲間の手がかりはなかったが、重要な情報を手に入れることができた。

 

「世界が闇に閉ざされて、人間が物を作る力を失ったのは、竜王って奴のせいなのか」

 

世界の闇と物作りの喪失、それらの元凶についてビルドは理解した。いずれその竜王とも戦わなければならないのかもと、恐れも感じていた。

 

「仲間についての情報はなしか…とりあえず進んでみよう」

 

仲間を探すため、ビルドは看板の元を去り、拠点の北東、海の近くを進んでいく。すると、焚き火と木箱を見つけることができた。

 

「焚き火だ…誰かいるかな?」

 

ビルドはその焚き火の周りを見渡すが、誰の姿もなかった。

 

「いないか…もっと奥なのかな」

 

ビルドはそう呟き、海辺の草原を進んでいく。すると、壁が一部欠損している家を見つけることができた。

 

「あの家の中に誰かいるのかな?」

 

ビルドは家へと近づいて、扉を開ける。しかし、そこにも誰の姿もなかった。

 

「ここにもいないね。どこいったんだろ?」

 

だが、家の中に置かれた木箱の上にメモが置いてあるのを見つける。

 

「何か書いてあるね」

 

うしなわれたもじというものはなんともむずかしいものなのだ。めるきどろくをかいどくするには、おそろしくじかんがかかりそうだな。

 

とても汚い字で書かれており、それ以降はビルドも読もうとはしなかった。

 

「メルキド録…そんな書物があるのか」

 

メモの内容からは、メルキド録という書物を解読しようとしているのが伝わる。

 

「ピリンが見つけたのは、そのメルキド録を持つ人なのかな?」

 

このメモがあるということは、近くに書いた人がいるかもしれない。ビルドはそう思って、海辺を進んでいった。家より奥は森林地帯になっており、ドラキーの姿が見かけられた。刺激しないように進んでいくと、小さいながら声が聞こえてきた。低い男性の声であった。

 

「おーい、誰かー!」

 

聞こえた方向に行くと、土ブロックが積まれていた。

 

「何だ?土から声が?」

 

「おい、そこに誰かおるのだな!魔物どもに閉じ込められてしまってな、身動きがとれないのだ。頼むから、吾輩をここから出してくれ!」

 

土ブロックの中に閉じ込められた人がいるようだった。

 

「分かった。すぐに助けるよ」

 

ビルドは檜の棒を振り回し、土ブロックを破壊する。すると、長い髭を伸ばした男の姿があった。

 

「これで抜け出せたな、助かったぞ!」

 

助け出された男は、ビルドに感謝する。

 

「ところで、お主は何者だ?随分とぼけた顔をしておるが…」

 

「とぼけた顔とは失礼だね。僕はビルド。メルキドに町を作ろうとしているんだ」

 

とぼけた顔と言われて腹が立ったが、ビルドは自己紹介をする。

 

「町だと!?それは素晴らしい!吾輩も町作りの仲間に入れてくれぬか」

 

「もちろんいいよ。実は僕、町作りの仲間を探してここに来たんだ」

 

「そうだったのだな。では、さっそくお主の町に行こう。吾輩はロロンド、幻の書物と言われたメルキド録を持つ男だ。町づくりの役に立つと約束しよう」

 

メルキド録と言っているので、先ほどの汚いメモ書きはロロンドの物だったようだ。無事に仲間を見つけられたので、ビルドは拠点へと戻ろうとする。

 

「それじゃあ、僕について来て。町まで案内するよ」

 

「おお、頼むぞ」

 

ビルドは来た道を引き返して、メルキドの拠点へと戻っていく。帰り道もスライムやドラキーを刺激しないよう、慎重に進んでいった。そうして拠点に着くと、ロロンドは大喜びで叫ぶ。

 

「うおおお!なんと素晴らしい、生命力に満ちた場所だ!この地でなら、メルキド録に書かれた伝説の都市、メルキドを復活させられるぞ!」

 

「ビルド、町作りの仲間を連れてきてくれたんだね」

 

ロロンドの大声を聞いて、ピリンが駆け寄ってくる。

 

「1人で笑いながら本を撫で回してて怪しかったから、この前は声をかけなかったけど…ヒゲがたくさん生えてるし、頼りになりそう」

 

ピリンもロロンドに期待しているようだった。

 

「ただの本ではない、メルキド録だ。ここには人類の失われた技術や知識が記されており、必ず町作りに役立つと思うぞ。まだ解読の途中ではあるがな」

 

町作りに役立つのであれば、メルキド録が解読されるのが楽しみになってきた。

 

「ところで、どうやって建物を作ったのだ?人間の物を作る力は失われたはずだが」

 

「僕とこの子、ピリンで作ったんだ。僕は物を作る力が元からあって、ピリンは僕の作業を見て物を作れるようになった」

 

町を作り始められた理由について、ビルドはロロンドに説明していく。

 

「物を作る力が元から…お主はまさか、メルキド録に書かれた伝説の存在、ビルダーなのか?」

 

「ビルダー?聞いたことないよ」

 

ビルダーという呼び名については、ビルドは聞いたことがなかった。

 

「では違うのか…?しかし、物を作る力を元から持っているとなると、そうとしか考えられない」

 

「じゃあ僕、ビルダーなのかな?」

 

ビルドのことは、ビルダーで間違いないとロロンドは考えていた。

 

「そのはずだ。ビルダーであるお主に、作ると便利なものを教えよう」

 

ロロンドはビルドに、ある道具の作り方を教えようとする。

 

「歩いて吾輩をここまで連れてくるのは大変だったであろう?メルキド録によると、岩山に住む魔物、キメラの羽根を3枚束ねれば、移動がすごく便利になる道具になるらしいのだ」

 

「そうなんだ。それなら、ぜひとも作っておきたいね」

 

移動が便利になるのはありがたいと、ビルドも思っていた。

 

「キメラはあっち、南西の岩山の近くにたくさん生息しているぞ。キメラ狩りには吾輩も出発したいが、残念なことに武器がないな…」

 

「分かった。それじゃあ武器を用意してから行こう。素材を集めてくるよ」

 

ビルドは拠点を出て森に入り、太い枝を2本集める。それから拠点に戻ると、石の作業台で削り、棘のある棍棒を2本作った。

 

「ロロンド、武器ができたよ。これでキメラを狩りにいける」

 

「なかなか強そうな武器ではないか。ありがたい」

 

「それじゃあ、南西の岩山に行こう」

 

棍棒を持ち、2人は岩山へと向かっていく。森を抜けて岩山に近づくと、確かに羽根を持った魔物、キメラがいた。

 

「あやつがキメラだな。火を吐いてくるから気をつけるのだぞ」

 

「分かった。戦いに行こう」

 

キメラの方に近づいていくと、彼らの方から襲いかかってきた。どうやら好戦的な魔物のようだ。

 

「えいっ、そりゃっ!」

 

「ふんっ、はあっ!」

 

キメラは嘴で攻撃しようとしてくるが、横に回避して棍棒を叩きつける。棍棒を3回叩きつけると倒れ、キメラの羽根を落としていた。遠くから火を放ってくるキメラもいたが、ジャンプして回避し、近づいて攻撃する。ロロンドとビルドで6体ずつ、合わせて12体のキメラを倒していた。

 

「そろそろ十分かな?」

 

「そうだな。それでは吾輩たちの町に帰ろうではないか」

 

帰っている途中、ビルドとロロンドは丈夫な草も集める。

 

「羽根を束ねるなら、そのための素材も必要だよね。あの辺の草を使うよ」

 

「それが良いだろうな」

 

丈夫な草も集め終わると、ビルドとロロンドは拠点の中へと戻っていく。そして、石の作業台がある部屋の中に入っていった。

 

「まずは僕が作るから、ロロンドはそれを真似してみて」

 

「わかったぞ。ビルダーの物作り、見させてもらう」

 

ビルドはキメラの羽根を3枚取り出し、それを並べて、丈夫な草を使って束ねていった。

 

「これでいいかな?」

 

「おお!これはまさしく、メルキド録に記されたキメラの翼!」

 

キメラの翼の出来に、ロロンドは驚いていた。

 

「それならよかった。もう1つも作るね」

 

ビルドは残った3枚の羽根で、キメラの翼をもう1つ作る。

 

「できた。次はロロンドの番だよ」

 

「お主のように出来るかは分からぬが…やってみよう」

 

ロロンドもキメラの羽根3枚を並べて、丈夫な草で束ねていく。ビルドの作業を見て覚えており、きれいな形のキメラの翼ができていた。

 

「我ながら良いキメラの翼ができたな。もう1つも作るぞ」

 

ロロンドは残ったキメラの羽根もキメラの翼へと加工していった。

 

「ふう…これで完成だな」

 

キメラの翼ができた後、ロロンドはビルダーに関する話をする。

 

「ビルダーのお主がいて、本当に心強い。人々は長い間待ち続けていたのだ…いつの日か精霊ルビスによって、世界を再建するビルダーが遣わされることを」

 

「そうだったんだね」

 

「ビルドよ…吾輩はお主とともに2つのことを成し遂げたい。一つは城塞都市メルキドの復活。もう一つは、メルキドの町がなぜ滅びたかを調べることだ」

 

「滅びたのは魔物のせいじゃないの?」

 

滅んだ理由は魔物以外に何があるのかと、ビルドは不思議に思う。

 

「メルキドは硬い城塞に囲まれていたうえに、巨大なゴーレムが町の守り神として存在していたはず。魔物の攻撃で滅びるとは思えん」

 

「魔物以外に原因があるとしたら、何なんだろう?」

 

「それは分からぬ。だがメルキドの民の末裔として、どうしてもそれを知りたいのだ」

 

ロロンドは強い思いを持ち、そう言う。

 

「だが、とりあえず今はメルキド録を読み解き、町を発展させていこうではないか」

 

「僕も町が発展していくのが楽しみだよ」

 

ロロンドもビルドも、これからの町の発展を楽しみにしていた。キメラの翼を手に入れたビルドは、一度作業部屋から出ていった。

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