新訳 ドラゴンクエストビルダーズ 作:seven river
ロッシと別れ、寝室を出るビルド。これからどうしようかと考えていると、希望の旗の側にいるロロンドに話しかけられる。
「出てきたな、ビルドよ。お主に一つ相談したいことがある」
「相談したいことって?」
ロロンドはビルドに用事があるみたいだった。
「食べ物を食べた後は、用を足したくなるであろう?しかし、せっかく町に住んでいるのに、外で用を足すのは不満なのだ」
確かにこの町には、用を足すための設備が存在していなかった。
「そこでお主には、吾輩たちが用を足せるトイレを作って欲しいのだ。トイレには壺と明かりを置いてくれれば良いぞ」
「分かった。僕が土と青い油を集めてくるから、ロロンドは丈夫な草を3つ、太い枝を1本集めてきて」
ビルドは早速素材を集めに行こうとする。
「分かったぞ。では吾輩も素材集めに行こうではないか」
ケッパーが来てくれたおかげで、ロロンドも素材集めに出かけられるようになった。ビルドとロロンドは、それぞれ町を出発する。ビルドはまず、大木槌で土ブロックを破壊していく。物を壊す時は細い銅の剣より、太い大木槌の方が適していると考えたためだ。
「土はこのくらいでいいかな。今度は青い油を集めよう」
土の後、ビルドは銅の剣で2体のスライムを続けざまに斬りつけていく。一撃で倒すことができ、明かり用と壺作り用の青い油が集まった。
「これで青い油も集まったね。町に戻ろう」
町に戻ると、ロロンドは既に戻ってきていた。
「ただいま。さっき言ってた素材は集まった?」
「もちろん集まったぞ」
「良かった。じゃあ僕が明かりと壺を作るから、ロロンドが壁の修復と扉作りをして」
トイレ作りの役割分担について、ビルドはロロンドに話していく。
「はいっ。この土ブロックを使って」
それから、ロロンドに壁埋め用の土を渡していく。
「あの廃墟を修復すればいいと思う。壁を埋めたら作業部屋に来て」
ビルドは町の南東にある小さな廃墟を指さす。トイレはそんなに広い必要はないので、その場所で十分だった。
「分かったぞ。では、トイレ作りを始めよう」
ロロンドは壁埋めに行き、ビルドは作業部屋へと戻っていく。以前松明を作った時に5つに切り分けた枝の、残り4つから1つ手に取り 、先端に青い油を塗っていく。作業部屋の焚き火で点火し、新しい松明が出来上がった。
「明かりはこれでいいね。次にツボを作ろう」
明かりができたので、次は壺だ。土に青い油を染み込ませて、柔らかくしていく。そんな中、ロロンドが作業部屋にやってきた。
「壁埋めはできたぞ。それでは吾輩は、扉作りをさせて貰う」
「お願いね」
ビルドは柔らかくなった土を捏ねて、壺の形を形成していった。ロロンドは太い枝を切って扉の枠を作っていった。それから丈夫な草を編んでいく。ビルドの作業の方が早く終わり、ロロンドを手伝う。
「壺はできたよ。僕も扉作りを手伝うね」
「それはありがたい。吾輩だけでは、かなり時間がかかってしまうからな」
2人で丈夫な草を編んでいき、草の扉を完成させた。
「これで扉もできたね。トイレに置きに行こう」
「うむっ」
ビルドは完成した草の扉と壺、松明を持って、ロロンドが壁埋めをした廃墟に向かう。そして壺と松明、草の扉を設置し、トイレを完成させた。
「おお!これでトイレが完成したな。これでもう、外で用を足す必要はなくなったというわけだ」
トイレが出来上がり、ロロンドは喜ぶ。
「ちなみにだ。翼がついた紫色の小さな魔物、ドラキーは時々草原の種というアイテムを落とす。これは狭い範囲を草原に変えるアイテムなのだが、吾輩たちがトイレで出したもの…肥やしがあれば、広範囲を草原に変えられるアイテム、草原団子に変化させられるぞ。役立つ情報かは分からんが、一応覚えておくと良い」
町の近くは既に草原なので、使うとしたら大木槌の里だろうかとビルドは考える。しかし、トイレで出された物に触るのは嫌なので、使う機会がないことを願っていた。
「分かったよ」
ビルドはロロンドと別れると、一旦町の外に出て、丈夫な草を6つ集めた。ロッシとケッパーの分の草のベッドを作るためだ。町に戻ってくると、ロッシのいる寝室へと向かっていった。
「ねえロッシ。これからベッドを作るんだけど、良かったら見て、自分でも作ってみてよ」
「オレは物作りなんて興味ねえよ…でもどうしてもって言うなら、行ってやる」
「良かった。それならついて来て」
ロッシにも物作りの楽しさを教えたいと、ビルドは考えていた。2人は作業部屋に入っていった。
「それじゃあ草のベッドを作るから、よく見てて」
「仕方ねえな…」
ビルドは丈夫な草を編んでいき、ケッパーの分のベッドを作る。ロッシはケッパーのことが気に入らないみたいなので、彼のことは呼ばなかった。ビルドは無事に、草のベッドを完成させる。
「これが草のベッドの作り方だよ。ロッシもやってみる?」
「一応やってみるさ」
ロッシはあまり乗り気ではないようだが、草のベッドを作り始める。ビルドの作業を見ていたので、それを真似して作っていった。しばらくすると、ちゃんとした草のベッドが完成する。
「ちゃんと出来てるね。物作りは楽しかった?」
「うん、楽しくなくはないな」
「少しでも楽しさが伝わったなら良かったよ。それじゃあベッドを、寝室に置きに行こう」
ロッシにも物作りの楽しさを少しは伝えることができたようだった。ビルドとロッシは作業部屋を出て、寝室へと入っていく。そして、床にベッドを置く。
「今回はただのベッドだったから良かったが、すごい設備を作ることにはオレは反対だからな」
「ロッシはそうなんだね。でも僕たちはもっと町を大きくしたいし、そのためのすごい設備も作りたい」
「やっぱりお前はそうなのか。無理には止めねえが、やめておいた方がいいぜ」
ビルドは町を大きくするのをやめたくはなかった。
「とにかく、ベッドは完成したんだから、夜安心して眠れるね」
「まあな。作り方を教えてくれて感謝するぜ」
ロッシは感謝の言葉を言う。
その日はロロンドのメルキド録の解読に進展はなく、夜になるとみんなで焼きキノコを食べる。
「確かになかなか美味いな」
「こんな美味しい物が食べられるなんて…町に来て本当に良かったよ」
ロッシとケッパーも、焼きキノコの味に満足しているようだった。食べてからしばらくすると、5人同じ部屋で眠りについた。
眠っている最中、ビルドはやけにはっきりした夢を見た。夢の中でビルドは、兵士に話しかけられる。
「え?何ですって…?王様の話を忘れた…?お願いしますよ…大事なことなんですから。では私から…その昔勇者ロトは神から光の玉を授かり、この世界を覆っていた魔物たちを封じこめたと伝えられています。しかし、悪の化身、竜王がその玉を闇に閉ざしてしまったのです。このままでは世界は闇に飲み込まれ、やがて滅んでしまうでしょう。竜王を倒し、光の玉を取り返すことがあなたの使命なのです。国中の人々があなたに希望を託しています。竜王を倒し、世界を救ってください」
そこまで聞くと、はっきりとした夢は終わる。誰かの記憶のようだったが、自分のものなのか、他人のものなのかは分からなかった。
翌日目を覚ますと、ピリンとロッシはまだ寝ていた。ロロンドとケッパーはもう起きているようで、寝室の外にいるようだ。ビルドが寝室から出ると、ロロンドは希望の旗の台座でメルキド録を読んでいた。
「おおビルド、目が覚めたか。今朝メルキド録を読んでいたら、役立ちそうなものが見つかったぞ」
「おはようロロンド。役立ちそうなものって?」
「大倉庫と言われるものだ。普通の収納箱より大きく、よりたくさんの素材を入れられる。これから多くの素材を手に入れることになるだろうし、作っておくべきだと思ったのだ」
現在はビルドの手持ちのポーチや、作業部屋や料理部屋の収納箱で間に合っているが、いずれ容量が足りなくなる恐れもある。作っておいた方が得だろうと、ビルドも考える。
「それじゃあ作ろう。作り方を教えて」
「大倉庫は、木材を使った大型の収納箱と毛皮の袋、ツボがセットになったものだ。木材は町の周りの木を壊せば良いし、毛皮はブラウニーから手に入れられる。壺は昨日と同様、土と油から作ると良いだろう」
「木材はもうたくさん持ってるし、壺の素材も簡単に集まる。ブラウニーはどこにいるんだろう?」
フレイユからブラウニーは人間と敵対していると聞いたことがあるが、実際に見たことはなかった。
「大木槌の里の近くに住んでいるそうだぞ。探してみるといい」
「分かった。行ってくるよ」
ビルドは旅の扉を抜けて、大木槌の里に向かっていった。案内所の隣を抜けて、進んでいると、大木槌のフレイユに話しかけられる。
「また来てくれたんだね、人間さん。今日はどんな用事?」
「毛皮が欲しくて、ブラウニーと戦いに来たんだ。ブラウニーがどこにいるか知ってる?」
「里より奥に住んでるよ。でも、ブラウニーは危険だよ…本当に行くの?」
「町のために必要な素材だからね…危険でも行くよ」
町のために役立つかもしれない物を作るためなので、引き下がることはしなかった。
「なら、私も一緒にいくね。それと、大木槌の中でも最強のポルドにも手伝ってもらえばいいかも」
フレイユは自分も同行すると言い、ポルドという大木槌の力も借りることを勧めた。
「そんな大木槌がいるのか…どこにいるんだ?」
「こっちだよ、ついて来て」
ビルドはフレイユに従い、彼女について行く。長老の家の左隣にいる大木槌に、フレイユは話しかけた。
「ポルド。この人間さんがブラウニーと戦う気なんだって。協力してくれる?」
「人間のために力を振るえるのは光栄だな。ブラウニーの奴らはこっちだ、行くぞ!」
ポルドもフレイユのように、人間に友好的なようだった。ポルドを先頭に、大木槌の里の奥へと抜ける。すると、頭部に茶色の毛皮がある、大木槌に似た魔物の姿が見えた。3体で群れをなしており、中央の個体は他より大きかった。それらがブラウニーのようだった。
「俺は真ん中のデカい奴を狙う。フレイユと人間は残りの奴らを頼む」
ポルドはそう言い、ブラウニーに近づいていく。ビルドも銅の剣を持って、戦いに向かった。
「大木槌に、人間!?人間と手を組むとは、やはり大木槌は愚かだな。全員叩き潰してやる」
大きなブラウニーはそう言ってきた。それからハンマーを振り上げ、近づいてくる。隣にいた2体も近づいてきた。
「こっちこそ、叩き潰してやる」
「私たちも負ける気はないよ」
ポルドは大きなブラウニーの、フレイユは小さなブラウニーのハンマーを、自分たちの木槌で受け止める。ビルドは小さいブラウニーのハンマーを身軽に動いて避けて、銅の剣で反撃していった。
「うおりゃっ!」
ポルドは力で大きなブラウニーを押し切り、転倒させる。その隙に何度も木槌で殴っていった。フレイユも小さなブラウニーを転倒させ、隙を作って連続攻撃していった。ビルドも回避と攻撃を繰り返し、ブラウニーの体力を削っていく。まず最初にフレイユが、ブラウニーを倒した。
「倒した。私もこいつを」
大きなブラウニーを、ポルドとフレイユは攻撃していく。起き上がろうとするブラウニーだったが、2体の猛攻に耐えきれず倒れたままで、そのまま体力がなくなって消えていった。ビルドも同じくらいの時にブラウニーを斬り倒し、戦いは終わった。
「勝ったね。これが毛皮と、革袋だね」
小さなブラウニーは毛皮を、大きなブラウニーは革袋を落としていった。
「この革袋、そのまま使えるかも」
毛皮から革袋を作る予定だったが、大きなブラウニーが落としたのを使えば良さそうだった。
「一緒に戦ってくれてありがとう」
「どういたしまして。人間さんの役に立てて嬉しいよ」
「俺も、人間の味方をできてよかった」
ビルドは一緒に戦ってくれたポルドとフレイユに感謝する。2体も嬉しそうであった。
「それじゃあ、僕は町に帰るね」
「また何かあったらよろしくね」
ビルドは毛皮と革袋を持って、旅の扉を抜けて町に戻ってくる。それに気づいたロロンドが聞いてくる。
「おおビルド!毛皮は手に入れられたか?」
「毛皮どころか、革袋が手に入ったよ。これで大倉庫を作れる」
「ブラウニーが落としたのか?それは良かったな。大倉庫ができるのを楽しみにしておるぞ」
「身体の大きなブラウニーが落としてた。次は土と油を集めてくるよ」
町の近くで土を集め、スライムを倒して青い油を入手する。作業部屋を拡張するため、土は多めに集めていく。それから、ビルドは大倉庫を作り始めていった。まずは土に油を染み込ませて柔らかくし、捏ねて壺を作っていく。壺ができると、次は巨大な収納箱を作っていく。8つもの木材を削り、突起や凹みも作って木材同士を繋ぎ合わせていった。木材の余った部分を用いて、蓋も作っていった。
「これで大倉庫は完成かな。作業部屋に起きたいけどスペースがないし、ピリンに大きくしていいか聞きにいくか」
大倉庫は作業部屋に置いておけば、取り出してすぐに物作りに移れるため、作業効率がよくなる。しかし、今の作業部屋はピリンが考えた設計図に従って作られたもの。ピリンに言わず勝手に拡張するのは申し訳ないと思い、彼女に聞きにいくことにする。ピリンは既に起きており、希望の旗の台座に座って休んでいた。
「ピリン。君が書いた設計図から作った作業部屋だけど、大きくしてもいいかな。大倉庫っていう大きな収納器具を置きたいんだ」
「もちろんいいよ。収納スペースが増えれば、持てる素材も多くなって、色んなものを作れるもんね」
「ならよかった。作業部屋を拡張してくるね」
ビルドは一度作業部屋の右の壁を壊し、ブロックを積んで拡張された作業部屋を作っていく。そして、拡張された部分に大倉庫を置いた。大倉庫の設置が済むと、ロロンドに報告しにいく。
「ロロンド、大倉庫を作って作業部屋に置いてきたよ」
すると彼は、作業部屋に走って向かっていく。
「おお、でかしたぞ!これで素材集めが捗るな!」
「今はまだ収納箱で事足りるけど、この先どうなるか分からないもんね。足りなくなる前に作れてよかったよ」
大倉庫の完成を、ビルドとロロンドは喜ぶ。これからたくさんの素材を入手して、たくさんの物を作る。それが楽しみだった。
「とりあえずこの辺の素材、大倉庫に入れておこう」
ビルドは木材や石材、銅や石炭を大倉庫にしまってみた。
「早速活用してみたのだな」
「うんっ」
「吾輩はメルキド録の解読に戻る。新しいことが分かったら、お主に伝えるぞ」
「分かったよ。お願いね」
ビルドはまた、ロロンドのメルキド録解読が進むのを待つことにした。