進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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メリュ子、君が悪いんだよ

なんだ、これは。

小学生のような見た目のメルと、中学生くらいのモンスター(名前は知らない)が絡み合う光景を見て、思わず声が零れた。

 

なんで首元に噛み付いてるんだ、とかなんでメルは抵抗しないんだ、とか色々言いたいことがある。

だけどそれ以上に、目の前の光景を直視したくなかった。

 

吐き気がする。頭がフットーしそう。

 

「きゅ、きゅきゅ!?」

 

「だめ……まだ、マーキングできて、ない」

 

「うきゅ……」

 

顔を赤くして抵抗を諦めたメルに思わずイラッときた。いや、実はさっきからずっとイライラしてる。淑女とは思えない感情に、私はずっと翻弄されていた。

 

だけど私のことが大好き(多分)なメルが抵抗しないってことは、きっと何か理由があるはず。

それをパートナーとして汲んであげないといけない。

 

──のは、分かっているんだけど。

 

「……ねぇ、もうその辺でいいんじゃない?」

 

見てられなくて、声を掛けてしまった。

なのに中学生っぽいモンスターは、私のことを意に介さない。

 

またイラッと来てしまって、声を掛け直そうとした時。

 

「うきゅ?」

 

メルに異変が訪れる。

唾液に濡れた肩に紋様みたいなのが浮き出て、首と肩を覆うように広がっていった。

 

真っ赤で綺麗で……まるで焔のような紋様。

 

モンスターが自分の所有物だと示すとき、マーキングをして取られないようにするらしい。

つまり、私のメルが目の前のモンスターの所有物としてマーキングされたことになる。

 

冗談じゃない。

メルは私のパートナーだ。

 

それを自覚した瞬間、胸の奥から得体の知れない感情が湧いてきた。

 

「でき、た。それじゃ今度は、わたしにまーきんぐ……して」

 

「うきゅ……きゅ」

 

メルが焔のモンスターに言われた言葉にびっくりしつつ、恐る恐る肩に噛み付こうとしている。身長差があるせいでやりにくそうだが、その口元が肩に届こうとした瞬間。

 

──私は限界だと悟った。

 

走り出した私は焔のモンスターの肩を掴み、無理やりメルの上から退かした。手加減を考える前に、メルがほかのモンスターや人にしっぽを振るのが見てられなかった。

 

地面に押し倒された状態のメルを深く抱きしめ、首元の紋様をぼんやりと眺める。やっぱりイライラが募った。

 

嫉妬?

こんなロリっ子焔系モンスターに?

冗談も甚だしい……きっと、多分、そんな感情じゃないと思う。

 

この燻るような感情の正体は分からない。でも、私はこの感情に従うべきだと考えた。

 

「何のつもりか知らないけど、メルは私のモノだから」

 

焔のモンスターを上から見下ろしながら、告げる。普段の私なら、モンスターになんて事を!と激怒していたであろう所業。

 

そんな私の行いに、焔のモンスターはふっと笑って私を見つめ返してきた。

 

「きゅ、きゅう!?」

 

「メルはじっとしてて」

 

「きゅっ」

 

メルは服を着せられない。粘液のせいで溶けてしまうから。

それはもちろん、今もこうやって抱きしめている私の服にも作用する。徐々に溶けていく私の服装に、メルが顔を赤くして離れようとするのをそれ以上の力で抑えつけた。

 

抵抗すればいいのに、私を怪我させたくないのだろう。

本当にこの子はいい子だ。

 

「ふ、ふふっ、あなたはその子の価値を、わかって、ない」

 

「だから何なの?私は私なりのペースでメルのことを知っていくし、共に歩んで行くつもりだから。もちろん、モウガンもね。私はそこに価値を見出す必要性が分からないな」

 

「ふーん……」

 

我ながら大人気ないと思う。

だけど今の私には優しく説き伏せることは出来なかった。

 

だってこの子は、私のモノだ。私だけのパートナーだ。

1度仲間にしないと言ったのにわざわざ着いてきて、私達のピンチを助けてくれた子だ。

 

そんなメルにマーキングをした挙句、自分にもして貰おうとする所業は流石に見過ごせなかった。

 

「……私、あなたとは仲良く、できそうに、ない」

 

「奇遇だね、私もだよ」

 

互いに万感の思いを乗っけて睨み合う。

この子にどんな事情があろうと、私のメルに手を出したんだからもはや仲良くはできない。

 

名前を知る必要もない。

 

「もうマーキングは、すんで、る。メルの居場所は、わたしにすぐ伝わる」

 

「残念だけど、メルは私とずっと一緒だから」

 

「……あなたのこと、きらい」

 

焔のモンスターは私を一瞥し、そして抱き締められているメルをじっと射抜いた。

対するメルは、服の間から露出した私の肌を見て顔を赤くしているまま。焔のモンスターが見つめていることに気づいてないみたいだ。

 

それでいいんだよ。

メルが顔を赤くするのは私にだけでいい。

 

焔のロリっ子モンスターは反応しないメルに、もう一度話しかけた。

 

「メル。また、あおう、ね」

 

「会わせないよ」

 

「あなたには、かんけい、ないから」

 

そう言って、焔が零れる程の翼を大きく広げるモンスター。

冷たい眼差しは私とメルを射抜き、やがて目を逸らされる。火傷しそうなほど熱い風がふいた後、モンスターは姿を消した。

 

「行ったみたいだね」

 

「んきゅ」

 

「ワォン……」

 

メル達の頭を撫でる。

私の服はちょこっと溶けているだけに済んでいるが、酷いところは肌が露出している。

 

このままじゃ帰れないかな?なんて考えていたら、遅れてモンスター保護官の人達がやって来た。なんでも、被害場所から離れていたせいで場所の特定に時間が掛かったらしい。

 

軽く被害状況を話した後、タオルと服を支給して貰えたのでそのまま電車で宿まで帰ることにした。

 

そしてその間、私はメルの手を一度たりとも離さなかった。

 

 

 

───☆

 

 

 

「きゅう〜」

(はぁ、酷い目にあった〜)

 

アグニールと戦う羽目になったかと思えば、首元にマーキングされるし。かと思えばご主人様に抱きしめられた上に、下着とか丸見えの状態で離して貰えないし……いや、後半は眼福だったな。

 

ちなみにご主人様の下着は黒でした……えっっっ!!!と思ってしまうのは、パートナー失格だろうか。

 

にしても友達の証がマーキングって、特異個体ってのはやっぱりズレてるんだよなぁ。

 

まぁ、怖い顔したご主人様のおかげで自分からマーキングする事は予防できたが、首元でずっと吸われたり噛まれたりしてる間は恥ずかしいし擽ったいしで、地獄そのものだった。

 

もしアグニールが可愛くなければ、突き飛ばしていただろう。

 

「……きゅ」

(……さて、現実逃避はここまでにしよう)

 

「ん?ふふ、どうしたの?」

 

耳を過ぎるのは、宿に到着した時のご主人様のセリフだ。

こうして現実逃避しなければならないほど、クールな俺が動揺するレベルのセリフ。

 

なぜなら──今日俺は、ご主人様と一緒に寝るらしい。

 

帰り際、ずっと手を握られて頭がパンクしそうになった時に「今日はメルと一緒に寝たいな」って上目遣いで言われたのである。

……もしかして俺は、ご主人様とお付き合いをしていたのかもしれない、と錯乱するレベルだ。

 

こうして現実逃避を繰り返していた俺は、ご主人様に連れられてベッドの上で添い寝をしていた。

 

ベッドは耐火性と耐酸性に優れた特別製を用意してもらっている。だが服に関しては、何の変哲もない普通のバスローブをご主人様は着ているのだ。

 

服、溶けちゃわないですかね?あぁ、気にしない?なるほど。

どうやら俺は、今日が命日らしい。

 

ご主人様の腕に抱かれながら、全く眠れそうにない暖かな心地良さに命の危険を感じた。

 

 

 

───☆

 

 

 

腕の中のメルが可愛い。

ソファーで寛いでるモウガンとは対照的に、私に抱かれて緊張しているのかな。

 

揶揄う目的で背中を軽くツーっと撫でれば、「うきゅっ!?」と驚いて私に抱きついてきた。

 

可愛い。

昼間のイライラが嘘みたいに霧散していく。

 

でも───。

 

「ねぇ、メル」

 

「うきゅ?」

 

「そのマーキングされてる時さ」

 

やっぱり首元の紋様は気に入らない。

 

「気持ちよかった?」

 

思い出すのは頬を軽く赤色に染めたメルの姿。嫌そうにしながらも、焔のロリっ子モンスターに噛むように促された時は、同じようにマーキングしようとしていた。

 

分かってる。

これはただの八つ当たりに近いんだって。

 

メルにはメルなりの考えがあって私たちを守ろうとしてくれたし、私も一々それを責めるべきじゃない。

 

それでも私は、メルが私以外にしっぽを振るのが気に食わない。

 

「……う、うきゅ」

 

私の質問にマーキングの事を思い出したのか、恥ずかしそうにムズムズと顔を逸らすメル。

 

そっか、そんなに気持ちよかったんだ。

あんなに私にくっ付いて、頭を撫でれば嬉しそうに微笑んでくれたのに。

 

「ねぇ、メル」

 

メルを深く抱き寄せた後、私は小さなメルのお腹辺りに腰を下ろした。私がメルを見下ろして、上から抑えこむ形。

 

もはや私の服は意味をなさない。

きっとメルには私の全てが見えているはずだ。

 

恥ずかしさは無かった。

ただ彼女の首元の紋様が気に食わなくて、胸の奥がムカムカして、上書きしたいと思ったから。

 

「君が悪いんだよ」

 

私はメルの首元に──口付けをした。

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