進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する 作:霧夢龍人
ドーモ、コンニチワ。百合の王種(公認)です。
遂に仮初の王から真の王に進化したと思ったら、百合なんていうよく分からない物の王になっていた元男です。これからイスフィ、リリアと一緒にデートに向かうクソ野郎でもあります。
……もう自分でも何言ってるか分かんねーわ。
例の事件から二日経った今、俺たちを取り巻く環境は大きく変わった。というのも、リリアが聖女を引退したからだ。代わりとして、エリナスが新たな聖女に赴任したらしい。
エリナスの寿命の問題が気になるものの、普通の聖女とは違う進化を迎え上、能力に耐えれるように身体が頑強になったため、むしろ普通の人間より長生きになっているのだという。
引退したリリアは、これからは普通の女の子として生きていく事を決めたらしい。カプノスは護衛として付き従い──ノア=ハルベルトはエリナスの元で一からシスターの修練を受けるとのこと。まぁ、あまりにも優しすぎる温情ではあるが、リリアが許しているのだから俺は何も言うまい。
若干腹は立つけどな。
そうそう、進化したといえば、チビスラから『カオスウルティライム』という本当によく分からない変異をしてしまった俺もそうだ。
このままだと激エロモンスターである『デミ・ウルミナス』に辿り着けるとは思えないが、今の4次進化の時点でかなり強くなった自覚がある。
しかも、見た目も大幅レベルアップだ。
「われ、ちびすらのおうなり」
某引っ張るゲームの人気キャラのようなセリフを吐きながら、鏡の前でポーズを取るくらいには気に入っている。服装も聖女の力を吸収したせいか、前の露出度激増しの格好よりかは幾分か落ち着いているようだ。
まぁ、幾分かマシなだけなんですけどね。
今日向かうイスフィとリリアとの“デート”には明らか不向きなので、別の服に衣を包もうとしたのだが、この格好の方がいいと有無を言わさない表情で言われてしまった。
ハイライトがなさすぎておじさん怖かったよ……。
冷たくて光の灯っていない瞳を思い出して肩を震わせながら、テキパキと支度を済ませた。時計を見れば、ギリギリ昼前を示すように短針が十二を指している。
寮の部屋のドアを開け、遅れないように集合場所へ歩いていった。
街ゆく人々の視線が痛い。
そりゃあどこぞの生臭シスターのようなエロい格好してたら仕方ないだろうな。だからそこの男子学生くん、胸ばっかり見てる君は悪くないよ。でも他の女の子にはやめようね……。
学園都市を救ってから注目を浴びるようになってしまったが、【第六感】が拾ってくる感情の大半は「可愛い」とか「綺麗」とか、そういう好意的なものばかりだ。悪意がないのは分かる。分かるんだけど、元男としては何とも言えない気持ちになる。
まぁ、可愛すぎる俺が悪いんですけどね?
うんうんと一人納得していると、不意に前方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「メルちゃーん!」
ぶんぶんと手を振っていたのはリリアだった。私服姿の彼女は聖女だった頃とは印象が違う。白を基調としたワンピース姿はどこにでもいる普通の女の子みたいで、思わず見惚れてしまうほどだ。
その隣にはイスフィもいる。
黒を基調とした服装で纏めているのだが、動きやすさとお洒落を両立したような格好で、普段とのギャップが凄まじい。美少女すぎる二人を眺めていると、イスフィが俺の格好を見て胸を抑え込むようにうずくまった。
「おっふ、やっぱりその格好はグッと来るなぁ……」
「アハハッ!なんかイスフィ変態みたいでおもしろ〜い♪でも前もおっぱい大きかったのに、もっと大きくなってるもんね……ちょっと触っていい?」
「やだ」
「え〜、けち!」
「ゴクリ……先っちょだけ、先っちょだけやからダメなんか!?」
「むり」
身体を抱くようにして二人から距離を取れば、諦めたように肩を竦める。イスフィだけはちょっと残念にしていたが、【第六感】によって俺は更なる敏感マシーンと化しているため、先っちょだけでもダメなのだ。
どこぞの対〇忍とほぼ同じくらいと言えば分かるだろうか。服は体と一体化しているため何とかなるが、手を触れ合うのも危険なレベルである。つまり、ご主人様の麗しいお手てに触れなくなってしまった。
オデ、サワルモノミンナキズツケル。
と悲しい化け物になったところで、今日の目的地へ足を進めていく。辿り着いたのは、学生に人気のスイーツバイキングが楽しめるカフェだ。苺や葡萄などの甘味に加え、モンスターから摂れる貴重な素材も食べることができるらしい(ご主人様の参照)
外観からして洒落ている。白を基調とした建物に、窓際には季節の花々。テラス席では学生達が楽しそうに談笑していて、甘い香りが風に乗って漂っていた。
「……ザ・都会って感じやなぁ。めっちゃオシャレやん」
「ここ行ってみたかったんだよね〜!引退する前は忙しくて中々行けなかったし、カプノスが居ると女の子にナンパしちゃうからさ!」
「あいつ、じゆうじんスぎなイ?」
「えへ」
「ほめてないよ?」
というか、あの生臭シスターなら「可愛い子を見たら声を掛けるのは礼儀だろ?」とか真顔で言いそうで怖い。気持ちは分かるが、聖女の護衛としてそれでいいんだろうか。
カプノスの株が若干下がる中、興奮冷めやらぬ二人に笑顔でスイーツを指さした。
「いっぱいたべテくれ。おれの奢りだ」
「「いゃったー!!!」」
ご主人様から口座を解放されているので、魔女制圧の報奨金でたんまりとお金を頂いている。二人とも頑張ってくれたんだから、これくらい全く問題ない。なんなら世界救済記念パーティーくらいの気持ちである。
……まぁ、正直に言うと。
こうして笑っている二人が見たかった。リリアは普通の女の子として生きることを選び、イスフィも、きっと色んなものを抱えながら前を向いている。
自分のパートナーが聖女になったお陰で、中々会えなくなるんだからな。それでも嫌な顔一つせず、自分のことのように喜んでいた。既に面会する許可も得ているらしく、エリナス以外にパートナーを作るつもりはないと言っていた。
──強い子だ。
だから、今日くらいは何も考えずに笑えばいい。
世界の命運とか、聖女の責務とか、そういう重たいものは全部置いて来て欲しいからだ。戦争とか二度とごめんだしな。
「さぁて──たべるぞぉ!」
「ウチ、苺のケーキ全部制覇するわ」
「私はプリン食べたい!」
「まてまて、バイキングはせんそうじゃないんだよ」
俺の制止を聞くことなく、二人は店の中へ駆け込んでいった。
……訂正しよう。
どうやらスイーツバイキングは戦争らしい。目が“ガチ”過ぎて、もはや殺意まで宿している二人を眺めながら、俺は苦笑を零さずにはいられなかった。
二時間後。
脅威の胃袋でスイーツを堪能した二人の顔は、見事にツヤツヤになっていた。俺はと言うと、甘味の暴力で胃が若干やられていた。
いや、正確には胃ではない。
【万喰】を持っている以上、消化器官のスペックだけならその辺のドラゴン種にも負けない自信がある。問題なのは精神の方だ。
見ろよ、このテーブルを。
甘さの権化、プリン。
大盛りのケーキ。
色とりどりのパフェ。
ふんわりクレープ。
チョコとバニラの象徴、アイス。
途中から数えるのをやめたが、絶対に人間二人が食べる量じゃなかった。
「美味しかったぁ〜……」
「しあわせや……」
満腹になった二人は椅子に深く腰掛け、蕩けるような表情を浮かべている。特にリリアなんて頬が緩みっぱなしだ。聖女時代では絶対に見られなかった顔だろう。
連れて来て正解だった。
俺が満足げに頷いていると、不意にリリアがこちらを見上げた。
「ありがとね、メルちゃん」
「ん?」
「こういうの、ずっと憧れてたんだ。友達と遊んで、ご飯食べて、笑って……普通の女の子みたいなこと」
「そうか……」
普通。
それはリリアが一番手に入れられなかったものだ。生まれた時から聖女として祭り上げられ、世界の期待を背負って生きてきた少女。そんな彼女が今、こうして笑っている。
それだけで、未来のご主人様が命を懸けて巻き戻した世界は間違っていなかったのだと思えた。
「私、イスフィもメルちゃんもいて、しかもこんなに沢山スイーツも食べられて──すっごく幸せ!」
満面の笑みだった。
その笑顔を見た瞬間、胸の奥が少しだけ熱くなる。
あぁ、そうか。未来のご主人様が守りたかったのは、きっとこういう光景なんだろう。
世界平和だの、聖女の使命だの、そんな大層なものじゃない。ただ誰かが笑って、ご飯を食べて、友達と馬鹿みたいな話をして過ごす。そんな当たり前の日常こそが、本当に守りたかったものなのかもしれない。
「おれも、しあわせだ」
「えへへ、だよね〜!」
「なーに二人でイチャイチャしてるん。ウチも混ぜてやぁ〜」
やいのやいのと騒ぐ俺たち。
若干周りからの視線を感じつつ、スイーツで満たしたお腹を撫でながら次の目的地へと向かう。
“ヴァルォッサウォーターパーク”は、都市外からも観光客が押し寄せる大人気の水族館だ。水棲モンスターが八割を占め、お触りコーナーや餌やり体験も楽しめるらしく、休日ともなれば子供から大人まで多くの人で賑わう人気スポットでもある。(アグニ参照)
「おぉ……でっかいなぁ……!?」
館内へ足を踏み入れた瞬間、リリアが目を輝かせた。
天井近くまで伸びる巨大水槽に、青く揺れる水のカーテン。優雅に泳ぐ魚群をゆっくりと通り過ぎていく巨大な水棲モンスター。まるで海の中へ迷い込んだような幻想的な空間に、俺も思わず見惚れ立ち止まってしまう。
イスフィも興奮した様子でモンスター達を指差しながら、手元にいつの間にか持っていたパンフレットで名前を連呼していく。
ラッコ型やイルカ型はかなりの人気で、パフォーマーショーに関しては椅子にギュウギュウになりながら見る羽目になった。それでも、やはりこういうショーはかなりの見応えがある。
「うわぁ〜見て見てメルちゃん!あの子、あんなに高くジャンプしてるよ!」
「なんやあのキュルンとしたお目目……ウチよりデカない?」
「すご……あたまいいなぁあの子たち」
各々感想を述べながら、道中で買ったラッコやカメのカチューシャをそれぞれ身に付ける。中央に位置する巨大水槽もやはり人がごった返していたが、何とか座る場所を見つけることができた。
青い照明とゆったりとしたBGMのお陰で、歩き疲れも少し和らぐ。
「水族館ってええなぁ。ウチの地元じゃこんなのなかったわ」
「私も初めて来たけど、モンスターも動物も可愛すぎて……絶対人形買う。メルちゃんも持つの手伝って」
「もちろん。オトコ手がひつようならまかせろ」
「なははっ、男手ってメルちゃん女の子やんか!」
「………そうだケド」
言えない。前世じゃアラフィフに差し掛かっているおじさんだなんて。もし年齢がバレたら逮捕されかねない奴だなんて、口が裂けても言えない。
焦りと逮捕の二文字で頭真っ白になりつつ、三人で撮った写真を眺めていると──ふと、【第六感】がビンビンに警報を発した。だが、危険な感じはない。強力な個体……それもアグニレベルの強いやつの反応が、俺たちの周囲にいる。
嫌な予感しかしない。
反応がある方向に恐る恐る視線を向ければ、巨大水槽の前に腕を組み、実に偉そうに頷いている青髪の美女が一人いた。片目を眼帯に包み、俺と同じくシスター風の格好をしている女だ。
……どうしよう、物凄く見覚えがある。
具体的にはアグニと戦っていたどこぞの淵の王種に物凄く似ている気がする。
「うふふ、流石は我の民。実に優雅で美しいですわね」
──偽物であって欲しい。
喋り口調まで再現してて、強さも雰囲気も物凄く似ているだけのそっくりさんであって欲しい。
認めたくないんだよ!
【第六感】から伝わる情報は、あの美女をミツルだと告げている。でも俺の魂がソレを否定してんだ!
「……ふたりとも、いどうしたい」
「ん?ええけどどしたんよ」
「何かあった〜?」
「ちょっとこっちにきてほしい」
関わりたくない上に二人が巻き込まれるのも面倒なので、疑問符を浮かべるイスフィとリリアの手をギュッと握りしめ、足早にその場を後にする。若干二人の顔が赤いが、淵の王種の存在に気を留めている俺は気付くことはなく、人気が少ない場所まで歩いていった。
ミツルが魚群に話し掛け、綺麗な整列を披露していたところも見ていないし、興奮のあまり身体中から水で出来た巨大な魚を作り出したところも見ていない。
あれはそっくりさんによるただのトリックなんだ。いいね?
後ろを恐る恐る振り向けば……誰もついてきていない。よかった、どうやら気付かれなかったらしい。二人も俺と繋いだ手に夢中で、ミツルのことには意識が向いていなかったようだ。
ふぅ、一安し──。
「あれ、気のせいなんやろか。さっき後ろで騒がれとった子って、確か淵の王──」
「とりっくだ」
「え〜?でもあれ、どう見ても身体から水を出して──」
「とりっくだ」
そうに違いない。
水族館を後にした俺たちは、すっかり暗くなった空を眺めながら夜食をとれるレストランを探していた。
昼間はあんなに賑やかだった学園都市も、夜になると少しだけ表情を変える。街灯の明かりが石畳を優しく照らし、道沿いの店からは香ばしい匂いが漂ってくる。遠くでは学生達の笑い声が聞こえ、どこか穏やかな時間が流れていた。
「うわぁ……もうこんな時間なんやなぁ」
イスフィが伸びをしながら夜空を見上げる。
隣ではリリアが土産屋で買ったイルカのぬいぐるみを大事そうに抱えていた。結局、水族館を出る頃には両手いっぱいに人形を抱えていたので、荷物の大半は俺が持っている。
まぁ、力仕事は男の役目だからな。
元だけど。
「お腹すいたねぇ……」
「さっきあんなに食べたやろ」
「甘いものとご飯は別腹なんだよ?」
「おんなってこわい」
「メルちゃんも女の子だよ?」
「…………」
やめろ、その一言は俺に効く。
結局見つけたレストランはボリューム満点の料理が売りだった。
外観こそ年季が入っていたが、中から漂ってくる香りだけで当たりだと分かるほど食欲を刺激していた。木造の扉を開けば、肉の焼ける音とスープの匂いが鼻を擽る。
「おぉ……ええ匂いやなぁ」
「お腹空いてきた〜……」
さっきまであれだけ甘味を食べていたはずなのに、本当に二人の胃袋はまだまだ現役らしい。女の子の別腹理論、恐るべし。席へ案内されると、俺たちはそれぞれ好きな料理を注文した。
イスフィは肉料理、リリアはオムライス。そして俺は──。
「おれ、このおすすめプレート」
「めっちゃ普通やな」
「普通っていいことだよ〜?」
「……たしかに」
普通。
今日だけで何度も聞いた言葉だ。普通に笑って、普通に遊んで、普通にご飯を食べる。それがどれほど尊いものなのか、俺たちは嫌というほど知っている。
料理を待つ間、他愛もない話をする。授業のこと、学園のこと、水族館で見たモンスターのこと。特にイスフィはラッコ型モンスターが気に入ったらしく、ずっと「あの子飼えへんかなぁ」と言っていた。
「無理じゃない?学園都市の保護種だし」
「むぅ……じゃあメルちゃんがラッコになってや」
「おれはスライムだよ」
「ラッコスライムになればええやん」
なんだその新種。
進化先に追加されそうで怖いからやめてほしい。
料理が運ばれてくる頃には、すっかり夜も更けていた。窓の外では街灯が揺れ、昼間とは違う静かな街並みが広がっている。
「いただきます!」
元気よく手を合わせる二人を見て、俺も小さく手を合わせた。
「いただきます」
料理はどれも美味しかった。
肉は柔らかく、スープは身体に染み渡るような優しい味だ。甘味の後に食べる塩気というのは、どうしてこうも美味いのだろう。
舌鼓を打ちながら食事を終えた頃には、流石に疲れも出てきたらしく、リリアは小さく欠伸を漏らしていた。イスフィもどこか眠そうに目を擦っている。
デートも終わりに入り、楽しい時間は、本当にあっという間だ。
帰り道は、夜風に吹かれながら三人並んで歩く。昼間みたいな騒がしさはなくて、代わりに心地良い静けさがあった。街灯が夜道を照らし、月光がいつにも増して柔らかい。
そのまま繁華街を通り抜け、ネオンサインが輝くホテル街を突き進んでいく。やけにピンクピンクしい広告だったり、カップルが多かったりと若干気まずい。
俺が真ん中で、二人と手を繋いで歩いているのだが、そろそろホテル街を抜けようかという所でグッと手を引かれた。
どうした?と後ろを振り返れば、赤い顔を浮かべているイスフィとリリア。二人の視線の先には、桃色の広告が刻まれている大きなホテルが聳え立っている。完全に“そういう”ホテルだった。
「……あ、あのな、メルちゃん」
「ここってえっちなホテルだよね?」
「まぁ、そウだな」
「やっぱり!私、こういうホテルで女子会とかしてみたいなぁ〜」
チラッと朱に染まる頬を隠そうともせず、グイグイ手を引いてくるリリア。片やイスフィも恥ずかしそうにはしているが、リリアと同意見なのただろうか、僅かながらホテルへ向かう意志を【第六感】が感じ取る。
違和感はない。
最近ラブホテルで女子会をする子が増えているのも知っているし、普通のホテルよりも安価で広々としているため、普通ではないにしろ選択肢に入ってくるのは理解できる。
でも、でもだぞ?
元男のおっさんが女の子二人とラブホテルに入るって、それもう事案だろ。
「きゃっか、だな」
「えぇ〜?」
「……そ、そうよな!」
残念だが却下である。
そもそも俺にはご主人様がいるし、未成年に手を出す犯罪者にはなりたくない。
え?ご主人様も未成年だろって?──パ、パートナーだからセーフだろ。
ともかくとして、俺は肉体的にも社会的にも二人と一緒にホテルに入る訳にはいかないのだ。残念そうな顔を浮かべるイスフィとリリアを無理やり引きずり、巨大なラブホテルに背を向ける。
しょうがないが、諦めてもらおう。
ため息を吐きながら尚も入ろうとする二人を引き摺っていく──その最中、リリアがピタリと動きを止めた。そしてイスフィに何かを吹き込むようにコソコソと耳を口元に手を当てると、二人で意を決したように頷き合う。
何を話しているんだろうか?
疑問に思っていると、ニコニコと朗らかな顔をしたイスフィがグッと身体を寄せてきた。香水を振っているのか、シャンパンローズの鼻の香りが鼻腔を擽る。
そして、俺の耳元にも口を近付けてくる。
「ごめんね、メルちゃん」
「きゅ?」
「──『私たちと一緒に、ホテル行こ?』」
聖女の有する『
それでも王種になった俺には通用しないのだが、【第六感】によって対〇忍と同等レベルに進化してしまった五感は、余計なことをしてくれたらしい。
「……は、い」
意識が闇に染まっていく感覚を味わないながら、俺は朦朧と頷いてしまった。もはや止める意思すらわかず、二人に引き摺られるままホテルの中へと消えてく。
そして次に目覚めた時──俺は、ベッドの上で拘束されていた。
Tips:新たな王種について。
百合の王種“メリュジーヌ”
種族名:カオスウルティライム
身長:178cm
体重:チビスラ11〜12体分
説明文
白色の衣に身を包み、世界を混沌に導くと言われている伝説の種族。一見、清楚なシスター服に身を包んだ傾国の美女にしか見えないが、その下には世の中の男を堕落させてしまう程の───がある。
肥大化した角や巨大な翼、うねる尻尾に絡みつく触手の姿はどう見ても悪魔種にしか見えないが、れっきとしたチビスラの進化先である。
ちなみに、かの種族の前では悪魔種に属する『サキュバス』系統も、裸で逃げ出してしまう色気と淫気があるらしい。聖女とあらゆる王種の力が混じったその力は、まさしく王を冠するのに相応しいだろう。
極相
【
▶︎・『万焔帰一』
・『業焔罪断』
・『残火天生』
【
▶︎・『万淵帰一』
・『淵瀧抱殺』
・『水廻樂道』
【
▶︎・『花命吸精』
・『桜幻界』
・『散華繚乱』
【五感超倍増】▶︎【第六感】
──時律の王種による干渉により誕生した、生物には存在しえない第六感を擬似的に扱う能力。
五感は更に研ぎ澄まされ、未来を見ているかのような行動を取ることが出来る。また、集中すれば自身に対する感情や殺気を察知することができ、更に極めていくと未来を視ることが出来るらしい。
【
──異なる次元にまたがる触手が、更なる進化を経た位相。物理攻撃だけではなく属性攻撃すら浸食して無効化する触手は、所有者の思うがままに操ることが出来る。
相手の感知する“外”側からじわじわと削られる恐ろしさを見たものは、触手の魔の手からは逃げられない。
【
──所有者の思うがままに身体を構築することができる位相。
“設計”ではなく“構築”の名の通り、自身が得ている属性を身体に宿したり、あるいは状態異常等も適応進化することで喰らわなくなる。
超速をさらに超えた速度で負傷した部位も回復可能であり、他人に能力を行使することも出来るようになった。
【CHAOS】New!!!
──混沌を導く者に顕現する位相。
所有者が目指す
欲求位相
【衝撃完全無効】
──自身に及ぶ物理攻撃(打撃・突撃を含む)を完全に無効化する。
【擬態偽装】▶︎【完全変態】
──擬態or偽装する対象へ完全なる変態を可能にする位相。
生態や行動だけではなく、普段の癖や行動意思の模倣すら完璧にコピーしてしまう。特殊な眼や力がない限り、所有者の変態能力は説き明かされることはない。
【超吸収】▶︎【万喰】
──対象の体液や身体の一部を吸収することで、新たな位相を得る確率が上昇し、吸収量に乗じて耐性や身体能力も大きく上がる。また、属性攻撃(火・水・etc...)を完全に吸収し、概念的属性攻撃(焔・淵・etc...)を稀に無効化できる。
【核分裂】▶︎【万殖】
──自身の体を分裂させ、その分裂体からも新たな分裂体を発動できるようになる位相。知能は本体に劣るが、能力は完全にコピーされている。破壊されると、一部ダメージが自身に跳ね返ってくる。
【影縛】▶︎【
──影を媒介にして対象の自由を奪う能力。
捕縛された対象は影へと引きずり込まれるほど拘束力が増し、抵抗するほど影は深く侵食していく。
また、光の届かない環境下では効果が飛躍的に上昇し、影の濃い場所では複数の対象を同時に封じることも可能。
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