進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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俺たちの世界へようこそ

「ふぉ、ふぉ〜〜〜!!!!」

 

私はロリコンじゃない。

少なくとも、目の前で奇声をあげる兄のような変態ではないと断言出来る。

 

私とパートナー達の出会いと、昨日仕出かした事を少しぼかしつつ話した結果が、奇声をあげる(コレ)だ。話さなければよかった。

「まさか百合!?百合か!?百合なのか!?」と叫び出して、気が狂ったように奇声をあげる兄を見て周りのお客さんは席を立ち始めている。

 

話さなければよかった、本当に。

 

店員さんにチップで多めのお金を払い、迷惑をかけることを承知で兄の奇行が終わるのをコーヒーを飲みながら眺める。

数分くらいして、息切れした兄がようやく落ち着いたのか机に腰掛ける。いや、席に座れよ。

 

「すまない、少し叫んでしまった」

 

「少し……?私と兄様の間にはどうやら、少しという単語に認識の違いがあるみたいね」

 

「何言ってるんだ。いつもの奇行と比べたらマシだろ」

 

「……確かに」

 

よく考えたら、裸で牧場に突っ込んだり「ロリとショタは同じロリとショタどうしで付き合うべきだ」と学会に裸で突っ込もうとしたり……それと比べたらだいぶ控え目だな、うん。

 

「それで……私はどうすればいいと思う?」

 

「自分のパートナーが可愛すぎてどうすればいいか分からないってことだろ?惚気かよ、乙」

 

「は?」

 

私が心底不愉快そうな顔をすれば、慌てたように真剣に考え出す兄。頭も良いし顔もいいのに、未だに嫁の貰い手も居ないのはコレが原因だろう。

 

テーブルの上で手を組み、その上に顎を乗せて顔を伏せている姿は我が兄ながらカッコイイとは思うが、姉様の方が私は好きである。

 

しばらくそうして考えている兄は、名案が思いついた様な顔を浮かべた。

 

「ヴェスティ……」

 

「なに」

 

「メルちゃんに乗れ」

 

「は?」

 

どうやら迷案だったらしい。わざわざ来てもらってる側だから文句は言いたくないが、思わず冷たい眼差しを向けてしまった。

 

「すまない、間違えた」

 

「……はぁ、それで?本当はなんて言いたいの。私はどうすればいい?」

 

「笑えばいいと思うよ」

 

「は?」

 

「うごっ!?」

 

足が滑った。

決して他意はない。足を抑えて痛みに呻く兄を眺めながら、コーヒーを嗜む。汚い呻き声がなければ、凄く良い休息時間だ。

 

そう言えばメル達は今どうしてるのだろうか?

あの子の笑顔とモウガンの毛並みを思い出す度に、直近の色々を思い出してしまうが……ふと、左肩に触れてしまう。

 

そこには確かに、昨夜メルが付けたマーキングの跡があった。

 

「……なぁ、我が妹よ。それって」

 

「へっ?あ、あぁ……虫刺されかな、うん」

 

「そうか……」

 

ちゃんと誤魔化せただろうか。

耳につけているピアスに刻まれている、二匹のパートナー達。私が探そうとか、不安になった時に探せるものだが、このマーキングがある限り私は探すことがないだろう。

 

そう言えば、メルには【微再生】という生存位相があるらしい。保護施設に預けた時にモンスターを診て貰えるのだが、レベル1にしては多くのスキルを持っているとのこと。

 

その中の一つである微再生には、文字通り自身の体を治す効果があるらしい。

 

……だが、私が兄と会うために別れる前に見た時は、未だにメルの右肩にマーキングの痕が残っていた。私がつけた、私だけのマーキング痕。

もう治っていてもおかしくないのに再生していないということは、きっとメルがわざと再生を止めていたりしちゃうんじゃないだろうか?

 

それなら──私は嬉しい、と思ってしまう。

 

我ながら変なパートナーだな。少しの自嘲を含めて、笑いを零した。そんな私を見て、そして左肩のマーキング痕を見て、兄は告げる。

 

「なぁ、我が妹よ」

 

「なに?」

 

「俺たちの世界へようこそ」

 

「は?」

 

清々しい笑顔でグッドサインを浮かべる兄へ、とりあえず暫く歩けないくらいに脚を強めに蹴る。

もし兄と同じ変態だと思われたら、私はコイツを殺して自分も死ぬ。

 

兄と違って清楚を地で行く姉様の姿を思い浮かべながら、悶絶する兄の姿を再び眺めるのだった。

 

 

 

───☆

 

 

 

「きゅきゅ」

(なぁ、モウガン)

 

「ワン?」

 

「きゅ」

(迷った)

 

「ワン」

 

巨大な森の中で迷子になる二匹。すなわち俺たちである。

会う予定の人がいるから、保護施設で楽しく遊んでおいで!と言われて連れてこられた俺たちは、保護施設を探検することにした。

 

周りにいた他のモンスター達に混ざりたかったが、遠巻きに見られて仲間に入れてくれなかったのである。

どうやらアグニールが付けたマーキングのせいらしい。

 

チラチラと俺の右肩を見て、凄く怯えた顔をされたのだから確定だろう。

 

だから暇を潰すために探検を開始しようと思ったのだが、そこにモウガンも一緒に着いて来てくれて、盛り上がった結果……無事に迷った。

元々、無印版に登場するモンスターたちの中にボツになったモンスター達が結構いて、他にもいるかも!と先へ先へ進んでしまったのが災いした。

 

ま、まぁロリだからね!仕方ないね!

 

「ワォン……」

 

なんだよモウガン。

悲しいやつを見る目で俺を見るな。

泣くぞ?いいのか、泣いちゃうぞ?元成人男性としての恥じらいなんてないからな?

 

とはいえ、流石に迷いましたってなるのも恥ずかしいのは事実。

 

付近にいるであろうモンスター達の鳴き声を聞いて、そこへ向かえば入口まで行けるだろうか?

 

「んきゅ」

(よし、やってみるか)

 

耳に手をやって、モンスター達の鳴き声を聞き分ける。すると、一際大きな鳴き声のする場所があった。どうやらここから近いらしい。

「お前ほんとに大丈夫か?」という疑心暗鬼な顔を浮かべるモウガンを連れ、鳴き声のする方へと歩む。

 

モウガンとペースを合わせ、ゆっくりと進んでいくのだが……そこで違和感に気付いた。

 

なんだか静かだ。

普通森というのは静かじゃない方が珍しい。しかし今は、まるで俺たちとその声だけを遮断するように、静かな空間が広がっていた。

 

やがて、大きな鳴き声が間近に迫る距離まで到達した時──巨大な檻が俺たちの目の前に姿を現した。なんだか不気味である。

檻に書かれているのはいくつかの文章で、どうやらこの檻に収容されているモンスターの詳細が書いてあるらしい。

 

モンスターを大勢食い殺した奴、街でいきなり炎を放って被害を増加した奴……などなど、物騒なのが並ぶ。その中でも一番ヤバイ気配を感じさせるのが、一番中央に位置する檻だ。

 

その檻では、モグラと犬を掛け合わせたモンスターが寝そべっていた。

種類は“モグライヌ”。そのまんまである。レベル2相当で、そこそこ強い序盤の相棒ポジションだった。

 

だが、そんなモンスターが収容されている檻に書かれている文章は──“パートナー殺し”。

ゲーム世界でも触れてこなかった、禁断のタブーである。

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