進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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魄離理論会

俺は、強くならなければならない。

そろそろロリから進化して、2次進化を目指すべきだな。えっちな人外系お姉さんになって、ご主人様とイチャイチャしなければならないのだ。

 

そしてモウガンもそろそろ進化する頃だろう。

 

進化を焦っている?まぁ、たしかに。

だが強くなるのに越したことはないのだ。今日檻の中で見たモグライヌを見て、パートナーを守ることの大切さを学んだ。

 

だから、強くならなければならない……ならないんだが。

 

「ん?どうしたの?」

 

「んーきゅ」

(んーん)

 

俺と手を繋いでくれるご主人様を下から眺めながら、進化先について考え始める。

 

通常“エンジェロリム”から進化すると、“セラフジュニアム”になる。だが“デモンロリム”から進化する先なんて分からない。

まず進化条件とか、なんで進化ルート外れてるのかも意味わからんだろ……。

 

ま、まぁ進化すればめっちゃ強くなれるし?ロリから中学生くらいの身長になれるはずである。ついでにツルペタなこの胸もボリュームアップする。多分。

 

ここで天才スライムである俺は思った──進化すれば、ご主人様とのデート感が増すんじゃね?と。

 

「んぎゅふふふ……!」

 

「えっ……本当に大丈夫?」

 

キモイ鳴き声をあげる俺を心配そうな眼差しで見つめるご主人様。

 

白い髪と赤い瞳が、俺を狂わせる……!

あっ、あっ、可愛いんじゃあ……っ!

 

「ワォンッ!」

 

「んきゅっ!?」

(いてっ!?)

 

「ワォン……」

 

軽く俺に頭突きをかまし、お前キモイぞという眼差しを向けてくるモウガン。

 

おいおい、そんな顔をしてられるのも今のうちだぞ。レベル1はただの牛の癖に、2次進化した途端にお前は色気溢れる牛コスお姉さんになるんだからな!

 

そこから進化していく度に肌面積が減り、えろさが倍増する。

 

俺に言わせてもらえば、これからキモイ視線を向けられること間違いなしだ。俺なら見る。なんならガン見する。もし嫌われたら、涙を流しながらスマホで連写するだろう。

 

と、我ながらキモすぎる妄想をしていると……ふと背後から、何かを掘るような音が聞こえてきた。

なんだ?と思って後ろを振り返ってみるが、何もいない。

 

保護施設から出た後で、変なモンスターでも引っ掛けてきたのだろうか?

 

いや、まさかな。

 

 

 

───☆

 

 

世界は、均衡によって滅びる。

 

争いがあるから進化するのではない。

争いが中途半端だから、世界は停滞する。

 

ゆえに必要なのは──完全な支配だ。

 

魄離理論会(レムナント・セオリカ)】のボスは、そう結論づけた。

 

「モンスターとは、そのための“鍵”である」

 

会議室。光のない円卓に、幹部たちの影だけが映る。

議席の中央は空白であり【魄離理論会(レムナント・セオリカ)】を束ねるボスは、着席していない。

 

荘厳で威圧感のあるボスの声だけが、円卓に響いている。

 

「ご存知の通りとあるモンスターは、極めて特殊な個体である」

 

一人が記録用紙を開く。

そこには件のモンスターについての詳細が書かれていた。

 

ずらっと並ぶ様々な情報の中には、“転生”の二文字が見える。

 

「個体名───は、元人間だ」

 

空気が、わずかに揺れた。

しかし動揺する者はいない。この議席に参加している者にとっては当然の事実として知られているからだ。

 

「モンスターにしか感染しない病である、“獣性転写症候群”によって引き起こされた人体の消耗。そして死によって引き起こされる記憶の欠落」

 

それは、意図的に生み出された病だった。

だが引き起こされた事象は偶然だった。

 

先代のボスが興味本位で始めた実験によって生み出されたのが、かのモンスターである。

 

「魂の定着先を歪め、人間の意識を保ったまま、モンスターとして再構成する……アレは成功例だ。理性と感情を保持したまま、完全融合した存在──亜人(デミ・モンスター)と呼ぶべきモノ」

 

つまり。

 

「人の意思で、世界を支配できる力である」

 

それこそが、理論会の求めたもの。

世界征服?そんな幼稚な言葉は使わない。彼らが望むのは、選択肢の排除だ。争う者も、抗う者も、ただ“正解”に従わせる。

 

そのためには、“力”が必要だった。

 

モンスターと人が共存する社会にて、弱き人が支配するためにはなりふりを構っていられないのだ。

 

「アレは記憶が欠落し、モンスターに染まった今でも恐らく……単独で都市を制圧できる可能性が高い」

 

「わかっている。しかし問題があるだろう?」

 

別の幹部が続ける。

 

「……記憶です」

 

───は、かつてパートナーがいた。

 

その部分的に欠落した記憶の中に、今でもパートナーの姿があるのだろう。或いは、“フォス”と名付けられたモグライヌの方が勘づいているのかもしれない。

 

少なくとも、モンスターが持つべきではない過去の記憶を持っているために───は現時点で不完全な存在だ。

 

「なれば、再び“関係者”が必要になるな」

 

誰かが、静かに笑った。

現時点で不完全ならば、後から完全にしてしまえばいい。

 

記憶を消してしまえばどのような弊害があるかは分からない。だから、別の手段をとるのが人のやり方だろう。

 

「壊すために、ですか?」

 

「いいや、別の手段があるだろう。例えばそう、あの“モグライヌ”だ。あのモンスターがいれば、迂闊に手は出せんだろう。人質……否、犬質に取ってしまえば操りやすい」

 

「……モグライヌは今朝脱走したとの報告がありますが」

 

「探し出せ。報告にあった焔の紋様を見つけて躍起になっているだけだ。直ぐに見つかるはずだろう?」

 

「御意に」

 

ボスの言葉を皮切りに幹部たちが動き出す。

全てはボスの目指す理念。支配によって人がモンスターの頂点に立つことを目指し、身を粉にして動いている。

 

街中の監視カメラや、衛星情報をハッキングしてモグライヌの行方を追う。

 

そして、一人の人物に辿り着いた───“ヴェスティ”だ。

円卓の中央に位置するモニターに顔が表示され、詳細情報が刻まれる。

 

何やら訳ありの人物のようだが、理論会にとっては関係がない。

 

「支配とは祝福だ。人は弱く、脆く、愚かである。だから私は……人を“進化”させてやろう」

 

ボスの声が響く。

 

世界はいずれ燃えるのだ。

数多の強力なモンスター達によって、人々の営んだ社会や人命そのものが滅ぼされることだろう。だから世界が灰になる前に──我々が形を決める。

 

魄離理論会(レムナント・セオリカ)】のボスは、そう信じて疑わない。

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