進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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魔性の焔妖姫──“ゲヘナジュヴァ”

鉄の冷たさが、背中に染み込む。

 

独房は狭く、天井も低い。

立ち上がれば手が届きそうで、でも届かない。そんな中途半端な閉塞感が、じわじわと正気を削っていく。

 

刑務所に着いた途端、私は尋問を受けた。沢山殴られて、沢山罵倒された。

そして食事も与えられぬまま、冷たい牢屋の奥へと放り込まれたせいで、お腹はぺこぺこ、喉もからからだ。

 

尋問の内容は、アグニールという──私たちを襲った焔のモンスターについて。

 

もちろん、私は何も知らない。

襲われたところを、メルが撃退した。それだけだ。

 

だが、尋問官たちは私が何かを隠していると決めつけているらしく、なかなか解放してくれなかった。

 

「……っあー……お腹空いた」

 

思わず、独り言が漏れる。

 

ともかく空腹だ。

もし私がこの扱いを受けているなら、パートナーである二人も同じような目に遭っている可能性が高い。

ちゃんと食事はもらえているだろうか。喉は乾いていないだろうか。

 

そんなことを考えていると、鉄格子の向こうに人影が立つのが見えた。

 

「……お前、その傷は誰にやられた? まさか、尋問官か?」

 

声からして、今朝私たちを逮捕した警察官の隊長らしい。

 

返事をする気力もなく、私は小さく頷くだけに留めた。

すると男は何も言わず、踵を返してどこかへ行ってしまう。

 

……と思ったら。

 

しばらくして、両手いっぱいにパンと回復草を抱えて戻ってきた。

 

「少々、尋問官どもを叱っておいた。我々は悪を取り締まるためにいるのであって、決して痛めつけたり、虐げたりするのが仕事ではない」

 

そう言って、鉄格子越しに食事を差し出してくる。

 

「……ほら、食べなさい」

 

「う、ぁ……」

 

「遠慮はいらん」

 

毒を盛られている可能性は考えなかった。

そんな手間をかけずとも、生殺与奪はこちらが完全に握られている。

 

だから私は、差し出されたパンを素直に口に運んだ。

 

食べながら、何度も質問する。

 

メルたちは大丈夫なのか。ちゃんと食事はもらっているのか。寂しがってはいないか。

 

返ってくる答えは、すべて肯定……信じるしかなかった。

 

「うむ、いい食べっぷりだ」

 

男は一息ついてから、低い声で続ける。

 

「本来なら、我々も君を疑いたくはない。だが君たちの行為は、国家転覆罪に相当する可能性がある。だから話してほしいのだ」

 

「へぇ、ご飯を食べさせて話してもらおうって魂胆?それなら無駄だよ。私、本当に何も知らないし」

 

「……そうか」

 

男は少しだけ目を伏せる。

 

「だが、研究所から証言が取れている。所長は、君が自らアグニールと接触したと言っている。さらに、君のパートナーが凶悪モンスター脱走の手引きをした疑いもある」

 

「へぇ……私の知らない話ばっかりだね」

 

本当に、何一つ覚えがない。

 

せっかく朝からパートナーたちと戯れようと思っていたのに、

宿に踏み込まれ、そのまま逮捕。

 

その理不尽さが、今になってじわじわと腹に溜まってきていた。

 

「ならば──」

 

男が、低く言う。

 

「話してもらえるまで、君のパートナーを──」

 

「それ以上言ったら」

 

言葉を遮る。

言わせるつもりはなかった。それ以上は私の怒りのラインを超えている。

 

「これ以上、私のパートナーに何かしようとしたら、舌を噛み切って死ぬ。あまり、私を舐めないで」

 

睨みつけるように男を見る。返ってきたのは沈黙。

男はしばらく私を見つめていたが、やがて小さく息を吐いた。

 

「……分かった。君のパートナーにも、君自身にも、危害は加えないと誓おう」

 

そうして、踵を返す。

 

「また来る」

 

重い足音が遠ざかり、再び独房は静寂に包まれた。

 

──二人とも、無事だよね?

ぐるぐると巡る思考を冷静にしながら、私はまた壁にもたれて力なく目を瞑った。

 

 

 

───☆

 

 

 

作戦は成功した。

触手に擬態させた俺を操作し、檻の前にいる看守の注意を引く。その間に転移し、即座にアグニールの熱によって壁を溶解し、空いた穴を【高等粘液制御】によって粘液で埋め、壁に【擬態】させる。

 

これによってバレずに移動できる。

 

まぁ、どうせご主人様を逃がすなら派手に逃がすから隠密行動は今だけだ。

 

「……メルのパートナーは、どっち?」

 

「んきゅんきゅ」

(ご主人様は……こっちだ)

 

二人の先を行き、時々騒ぎそうになるフォスの口を触手で喋れないようにしながら、刑務所を歩く。

 

てか、やっぱり俺身長伸びてね?

まさか進化……いや、にしては何も変わってないしな。

 

普通進化する時は、白い繭に包まれる。特殊進化とかは時間がかかるし、虹の繭になるからやっぱり進化じゃない……のか?

ちょっと判断に困るな。

 

──《進捗率8パーセント。進化までの感情が足りないため、このままでは失敗します……》

 

……ん?

 

「きゅ?」

(あれ、今何か言った?)

 

「ん、何も言って……ないよ?」

「がう!」

 

「っ、フォス!」

 

ヤバい、フォスが吠えたせいで声がめっちゃ響いた!

聞いた俺も悪いけど、普通何かの声が聞こえてきたら聞いちゃうダルォ!?

 

ともかく、急いで逃げねば!

 

二人を抱き締めて、アグニールの熱ではなく俺の粘液で壁を溶かし続けて進んでいく。どうせ出る時はバレるんだ。今はスピード重視でさっさと助け出して、ご主人様のピアス経由でモウガンも助ける。

 

これが一番早い。

 

溶けだした壁を触手でかわりに補修してもらいながら、ご主人様の元へかけ出す。途中見かけた囚人や看守には触手くんで気絶してもらい、出来るだけ騒ぎが広まらないようにした。

 

監視カメラ等は【擬態】で対処可能だ。

 

ホント便利だなこの位相達……お陰で続々とチートキャラになっていってる気がする。

 

だがやはり取りこぼしはあるようで、溶けた壁の向こうから金属の警報音が鳴り始めた。

 

──チッ、流石に手が足りないか!

 

「んきゅん!」

(急がごう!)

 

「わたしも、やるよ?」

 

「んきゅ!」

(いや、力を解放するのはご主人様を助け出してからだ!)

 

通路の先、赤い灯が一斉に点灯する。

看守たちの足音が、複数、しかもかなりの数で迫ってきていた。

 

だが、この程度で止まる気はない。

 

俺は触手を広げ、天井と壁に【擬態】させながら高速移動する。その途中でアグニール達と別れ、触手に乗って移動することで足音を吸収し、影に擬態するように進んだ──そして。

 

「……いた」

 

見つけた。

 

鉄格子の向こう。

背中を壁に預け、目を閉じて座り込んでいる小さな影。

 

ご主人様だ。

 

「……っ!」

 

手も足もボロボロで、顔からは殴られた跡と血が固まった跡がある。

 

つまり、看守か尋問官から何度も暴行されたのだろうか?回復草で血が固まってるようだが、精神的に傷ついているのは顔を見れば分かる。

 

元々、ゲームで主人公が捕まる展開があるため刑務所の存在は知っていた。

とはいえ、俺たちを捕まえた警察官自体は悪い奴らじゃない。

 

ラスボスはこの都市を牛耳っている。

それはもちろん、モンスター研究所も保護施設も刑務所もだ。適当な理由をでっち上げて捕まえようとするのは、簡単な話。

 

だから警察官たちも、看守も、本来は悪じゃない。

この都市を牛耳る“本体”に逆らえないだけだ。

 

分かってる。

理屈では理解しているはず──なんだが。

 

それでも。

 

「……きゅ」

 

胸の奥で、何かが軋んだ。

 

抑えろ。

今は暴れる場面じゃない。

 

分かってるのに。

 

──《進化進捗、急激な上昇を確認》

 

なんだ、この抑えきれないイライラは。

そりゃあ自分のご主人様がこんなにボロボロなら、パートナーとして怒るべきなのかもしれない。

 

だがそれは今じゃない。

もしここで俺が暴れてしまえば、アグニール達が暴れた結果ご主人様が逃げ出せたという筋書きにヒビが入る。

 

間違いなくアグニールとの関与を疑われるが、もとよりラスボスは倒すつもりだ。今のうちだけアグニールを隠れ蓑に出来れば、後々動きやすい。

 

だから立案者である俺が、暴れる訳にはいかない……んだが。

 

──《感情:怒りの発露による進化の促進を確認。対象の進化が通常の進化では有り得ないエネルギー量を発現──2次進化“ゲヘナジュニアム”を超過》

 

……抑え……切れない!

 

モンスターになった弊害か、はたまたパートナーとして思っていた以上に俺は、ご主人様のことを大切に思っていたのか。

どちらかは分からない。

 

──《更なる上位個体への2次進化の模索……生贄に特異個体の因子を投入……成功しました》

 

だが確実な事がひとつある。

 

作戦とか今後とかラスボスとか。

そんなのどうでも良くなるくらい。

 

 

 

──《特殊個体“魔性の焔妖姫”──“ゲヘナジュヴァ”顕現します》

 

コイツらは、俺を怒らせた。




進化先の詳細は次の更新で。
でもこれだけは伝えておきます……残念ながらロリじゃありません。
まぁいつでもロリになれるからね!仕方ないね!(血涙)
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