進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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悪い男に引っかかるタイプ

【高等粘液制御】によって作り出した、大きめの布団に包まるご主人様。

その横にはモウガンが一緒に布団に入っていて、アグニールとフォスは固まって寝ている。

 

洞窟内は寒いが、アグニールがいるお陰でだいぶ暖かい。

 

疲れていたのだろう。完全に熟睡しきっているご主人様に投げキッスをかまし、洞窟の外へ出た。

目的はただ一つ──【焔炎天(ホムラ)】とかいうとんでもない位相の確認だ。

 

ゲームはおろか、設定資料集でも見たことがない位相。

生存、目的、欲求と続いていく中で、“極相”なんてのは聞いた事がない。でも絶対強いって俺のゲーマーとしての感がそう言ってる。

 

(ふっ、可愛いだけじゃなくて強いって、ゲームで実装されたら間違いなく人権キャラだろうな)

 

なんて“俺”がゲームで使い倒される(意味深)を想像しながら、四人を起こさないように、かつ何かあってもすぐ対処できる距離まで来た。

まず初めは、《万焔帰一》とかいう物騒な名前の能力から検証しよう。

 

とは言っても、コイツの能力は既に刑務所で使っている。焔を自在に操って我が身とする能力だ。ちなみに燃やす対象を選択できて、使えば石でも鉄でも容易く溶かしてしまう。

その上、自身の火力に耐えられるように、この位相自体に火属性攻撃無効が付与されていた。こいつぁグレートですよ。

 

てことで次。

 

ご、ごうえん……なにこれ、ざいだん?しんだん?

ルビが振られてないから分からないため、えいや!っと気持ちを込めて発動させる。

 

何か技名を適当に考えた方が良さそうだ。

 

劫焔罪断の能力が発動すると、暗い空に焔が浮かんだ。青色の焔だ。

そこから段々と白色になっていくに連れ、大きくなっていく。そして、俺の方へ迫ってきた。

 

当然熱くはない……が、襲ってきたのは痛みとか熱とかじゃない。

 

過去の記憶だ。

 

う、あんあ(う、なんだ)……?」

 

俺は当然困惑した。その瞬間。

胸の奥から、“思い出したくなかった記憶”までもが、強制的に引きずり出された。

 

小学生の時に、おならと間違ってう〇こを漏らした記憶。

中学生の時に告白して、貴方とは友達のままでいたいって言われた記憶。

高校生の時にアンカーで出場して、意気揚々と挑んですっ転んだ記憶。

大学生の時に……と沢山出てくる忘れていた記憶。

 

それら一つ一つに、焔が判決を下していく。

 

──罪、一。

──罪、二。

──罪、三。

 

……ってちょっと待て!!!

慌てて能力を解除して、床に蹲る。

 

さ、最悪だ!

なんてものを思い出させてくるんだこの能力は!?

まさか物理攻撃じゃなくて精神攻撃タイプだと思わなかった……いや、てかよく考えたら、こんだけ学生時代に色々あったのに不登校にならなかった俺のメンタルすごくね?

 

発動した内容から見るに、攻撃対象の嫌な記憶や最悪な記憶を思い出させて“罪”として攻撃する能力だろうか。非常に凶悪である。

 

でももう一個能力あるんだよなぁ……うわぁ、やりたくねぇ。名前からして一番強そうだし、別日に回した方がいいだろう。

 

精神攻撃をくらいすぎてとぼとぼとゆっくり歩きながら、ご主人様の寝床に潜り込んだ。

 

明日は情報収集だ。早めに寝ないとな。

 

 

 

───☆

 

 

 

アルマ=メイソンはモンスターの声が聞けるという特技を持つ、一般モンスターテイマーだ。

今年十七歳になった彼女は、モンスター探しの旅に出て無事パートナーを見つけ、故郷である“貿易都市”マルデンブルクに帰ってきた。

 

貿易都市と銘打っているため、マルデンブルクは他の都市と比べて外国人が多い。

帰ってきて早々外国人の波に揉まれながら、アルマは実家に帰っていた。

 

しかしどうやら、旅に出る前と大きく変わった点が一つあるようだ。

 

それは、モンスターに対する視線。

以前は一緒に歩いていれば、可愛がる人も多かったのだが……何故か今は遠巻きに眺められることが多い。

 

パートナーであるフルメルンという種類のフルちゃんも、異変を感じているようだ。猫に翼を足して、長ーい尻尾をハート型にしているフルちゃんの姿も非常に可愛らしいが……アルマからすれば何故こんな事になっているか分からなかった。

 

のだが。

 

今朝デパートで買い物をしている時に、テレビに映っている情報を見て驚愕した。

 

え、なに。刑務所全部溶解って。

なのに犯罪者は逃げ出してなくて?そのくせモンスターが急襲してきたから、また襲ってくる可能性がある?

 

テレビに映っているのは一人の女性の写真と、遠巻きから撮影したであろうもう一人の女性……否、モンスターの写真だ。

紋様がかろうじて見えるが、恐らくスライム種。しかしあんな姿に進化したというスライムの話は聞いた事がない。恐らく新種。

 

この影響を受けて都市は、暫く厳戒態勢をしくとの事。

しかもこれ以上捕まらなければ、他のモンスターも同様に新種として進化し、人類に牙を剥く可能性があるということで、もしかすればパートナーモンスターを都市が預かる方針を取るかもしれない。

 

そんな話をテレビのレポーターはしていた。

 

冗談じゃない!と周りから声が上がる。

その背後に紛れて、物騒な世の中になっちゃったなぁと買い物を続けるアルマ。

 

彼女からすれば、外国人が多いこの都市でそんな凶行をするはずがない、という確信があったからだ。だがモンスターを街中で連れ歩かないという法律くらいは特例で出そうだ。

 

と、その時。

口々にテレビに向かって文句を言い合っている人混みの中に、気になる少女を見つけた。

 

こんな暑い時期に黒いヴェールを頭から付け、目元だけを隠した少女だ。服装は一般的なものだが、何故かそこに視線が寄った。

 

きゅ(やっぱりか)………」

 

デパート内にかき消されるようなか細い声。

しかしモンスターの声が聞こえるアルマは、その少女が人間では無い事を見抜いていた。

 

「ど、どうしよう。なにか訳ありかな?」

 

どこか困っているように見えるモンスターの姿に、モンスターテイマーとしての本能が囁く。声を掛けろと。

 

だがどう見ても厄介事の匂いしかしない。

通常人型のモンスターは、一般的なモンスターと違って人間らしさを持っている。

 

一部変わり者はパートナーを人型モンスターに進化させようと躍起になっているようだか、アルマからすればそれは邪道。

モンスターはモンスターらしさを持っていて欲しいと思っている。

 

そして人型に進化するのは大抵強力なモンスターだ。

 

本来なら無視するのがベスト……なんだが。

 

『ご主人、アイツなんか凄い気配を感じるニャ』

 

「だ、だよね。声掛けて攻撃されないかな」

 

『んにゃ。そんな凶暴な感じはないニャよ?気になるなら声掛けてみるニャ!』

 

我が愛しきパートナー、フルちゃんが後押しをした。

小心者のアルマはその声を受け、恐る恐る少女に話し掛ける。

 

「あ、あのー……」

 

『っ、あ……う……』

 

「あっ、えっと……」

 

アルマのターンエンド!

どうやら急に声を掛けられてビックリしているらしい。よく見れば、白い肌に綺麗な口元をしていて、とんでもない美モンスターだ。

 

アルマは更に縮こまった。

 

だが、今度はモンスター側が声を掛けてくる。

ここから先はアルマの聞こえてくるモンスターの声だ。

 

『……あれ、もしかして。君ってアルマちゃん?』

 

「えっ。わ、私と面識ありましたっけ……?」

 

『いや、うん……なんて言えばいいかなぁ。ともかく、俺は君のこと知ってるよ』

 

なんで知ってるの?と気になる疑問はある。

でも可愛らしい声から“俺”なんていう一人称が出てきて、アルマは衝撃を受けた。

 

この子、性癖の塊やん……。

 

胸があって、身長も僅かにアルマより高い。スタイルもいい上に声まで可愛らしくて、それなのに俺口調。しかもモンスターである。

 

困った、ちょっと勝てない。

と某ドラゴンなボールの敵キャラみたいな口調になってしまうのは、女としての差を感じてしまったからだ。

 

『あれ、ごめんね。びっくりさせちゃったかな?確か君って、俺の声が聞こえてるんだもんね』

 

「うぇっ!?は、はい!む、昔からモンスターの声がわかる、ので……な、なんで知ってるんですか?」

 

『んー、秘密ってことじゃ……ダメ?』

 

「あっダメじゃないです」

 

即答だった。

こんな激メロなモンスターから可愛らしい声でダメ?なんて聞かれたら、断れるわけがないのである。

 

ということで、何故自分のことを知っているかという疑問を遥か彼方に投げ捨てたアルマは、再び話を続ける。

 

「そ、それでなにかお困り、ですか?」

 

『うーん。まぁそうなんだけど……ちょっとこっち来て?』

 

そう言われ、グイッと手を引っ張られる。

柔らかな肌の温もりから自然と恋人繋ぎをされ、そのままデパートの外へ。

 

デパートのカゴをその場に放置してしまい、フルちゃんに見てもらうようにお願いをしてモンスターについて行く。

フルはアルマの肩から飛び降りて、カゴの中に入ってくるまっていた。

 

『にしてもあのモンスター、うちの堅物なご主人をああも……やり手だニャあ』

 

モンスターに手を引っ張られ、顔を真っ赤にしながらついて行く自分のご主人を思い浮かべる。

 

フルは思った。

 

ご主人は悪い男に引っかかるタイプだニャんね、と。

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