進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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大人の化かし合い

主人公がいない。

それは今までの流れで分かっていたことだが、なんと代わりに原作でのお助けキャラと接触することができた。

 

名前はアルマ……アルマ何とかちゃん。フルネームは流石に覚えていない。だが野暮ったい眼鏡と、陰気な性格の裏に見える優しさと勇気の強さが大人気のキャラだった。

 

モンスターが大好きで、自分のことをモンスターヲタクと豪語する変わった女の子である。

 

ちなみに隠れ巨乳だ。ここ重要ね。

 

なぜこうなったかと言うと、ご主人様をアグニール──長いからアグニって呼ぶ──に預けて情報収集に出かけた俺とモウガンは二手に別れ、それぞれ街中やテレビの放送から情報を聞き出していた。

 

当の俺もご主人様のご飯を買いつつ、今後都市がどういう出方をとるのか伺っていた矢先。

なんと俺に声を掛けてきた奴がいたのである。

 

しかも、それがまさかのゲームに登場するキャラであるアルマと来たもんだから流石にびっくりした。

 

実際に会ったら見た目が知的美女すぎて、こんなキャラだったっけ?となったものの、キョドり方がまんまゲームで見た姿そのものだった。

 

ヲタク君さぁ……可愛すぎか?

 

早速仲間になって貰おうと思って路地裏に連れていった。のはいいものの、俺の都合に巻き込んでしまうわけで……もし拒否されてしまったら仕方がない。そう思っていた。

 

だが、なんとこの子は、俺の話を否定せず聞いてくれたのである。

 

ヲタク君さぁ……最高か?

 

てなわけで、設定資料集で話していた実はむっつりスケベであるという情報を元に臭いセリフを我慢しながら話をした訳なんだが。

 

『……ってことなんだ。理解して貰えたかな?』

 

「ふぁい……」

 

これはダメかも分からんね(諦観)

どうやら俺の刺激が強すぎたらしい。

 

まぁね、俺可愛いもんね。でも囁く度にビクビクするのお兄さん良くないと思うの。

 

恋愛経験がない女の子を悪い道へと引き込むクズ男の気持ちになりつつ、どうやら話はちゃんと聞いていたらしい。

 

「と、取り敢えず話は分かりました。ですけど信じられないというか……特異個体ってほんとに実在するんですか?」

 

『あはは、まぁそうだよね……うん、いるよ。なんなら呼び出せば来てくれると思う。首元のマーキングがその証かな』

 

赤いジャケットをずらし、黒い布に隠れたマーキングの跡を見せる。

 

「……わっ!み、見たことがない紋様です!確かに既存のモンスターとは違う……」

 

『あれ、マーキングの跡にも何か特徴って出るんだ』

 

「それはもちろん!例えばスライム種であればマーキングした跡は丸みを帯びたハート状になりますし、私のパートナーであるフルメルン種であれば四角い猫のようなマークになります!しかしこの形はどれとも違う……強いて言うなら焔を象ったマークに近いです。我ながらそこそこモンスターに詳しいと思っていますが、こんな形は初めて見ました。しかも決して消えないように念入りに、ふかーくマーキングされているところを見ると───」

 

『あ、うん』

 

ヲタク君さぁ……。という表情を浮かべながらも、俺の話を聞いてくれたからには無碍には出来ない。

その後も十分以上モンスターの話をされたが、正直一割も入ってこなかった。

 

 

 

───☆

 

 

 

「ボス、随分とご機嫌ですね」

 

「そう見えるか?」

 

「えぇ。とても」

 

魄離理論会(レムナント・セオリカ)】の円卓にて、組織のボスである男は部下の視線を感じ、不敵に微笑む。

何せ自身の思い描いた計画が、想像以上の結果を齎したからだ。

 

彼の支配するプリズマ刑務所にて、アグニールにマーキングを施されたモンスターの主人を捕まえた。小娘に罪を被せ、頭が固い警察共を騙して、そのパートナーも刑務所にぶち込んだ。

 

狙いは単純。アグニールを呼び寄せるためだ。

かのモンスターは組織にとってこれ以上ない糧である。

 

脆弱な人間をモンスターが支配する世界の頂点に立たせるには、王とも厄災とも呼ばれる特異個体を研究し、対策を立て、天敵になる必要がある。

 

しかしそのうちの一体が、不治の病である“獣性転写症候群”に感染したただの少女であると知っているのは、【魄離理論会(レムナント・セオリカ)】だけだ。

 

そして組織はとうとう、“獣性転写症候群”に感染する方法を編み出した。アグニールの血液や素材も、数年に一回起きるという転灰期に灰から蘇ったアグニールを捕らえた際に入手している。

 

弱体化しているとはいえ、研究施設から逃げ出されたのは想定外だったが、想定以上の報告があったのだ。

それはアグニールがスライム種のモンスターにマーキングを付けたというもの。

 

当時はたかだかマーキングで雑魚と名高いスライムがどうなるのだ、なんて疑問も上がっていたのだが──まさかあそこまで至るとは。クリスマスまで早いというのに、サンタというには紅すぎるスライムは嬉しいプレゼントをくれたものだ。

 

特異個体には、その他のモンスターをより強力にする効果がある。

 

組織が出した結論だった。

たかが少女が特異個体になった“獣性転写症候群”。そして、アグニールの素材である血液。

 

もし自身が感染し、素材を糧に進化すれば──恐らく、かのモンスターも恐るるに足らない真の化け物(モンスター)になれるはずだ。

 

しかも例のスライムが刑務所を溶かすという想定以上の被害を出したお陰で、モンスターの規制がやりやすい。なんなら都市の中央に働きを効かせて、パートナーモンスターの強制徴収をすることも可能だろう。

 

貿易都市と銘打ってる以上、外国人は納得しないだろうが……それ以上に得られるものが大きい。

 

つまり、既に舞台は整っているのだ。

 

「私の勝ちは確定している。人も、モンスターも、特異個体すらも超越し、新たな支配者として人を進化させる……ははっ、まるで出来レースだな」

 

「もちろんです。我々は貴方様の思想を全力でサポートさせて頂きますゆえ」

 

足を組み、これからの未来に想いを馳せる男は、部下の声を受けて嬉しそうに笑った。そんな彼の腕には、“獣性転写症候群”に感染した事を示す紋様が刻まれている。

 

主人公はいない。

ゆえに救いも未来もない。

 

あるのは一つの組織の目的が達成され、パートナーという関係が破綻した人とモンスターの頂点争いだけだ。

 

「さぁ、我々の時代の始まりだ──始めようか、人とモンスターの化かし合いを」

 

 

 

───☆

 

 

 

なんて考えてるんだろうな。

埒が明かなかったので、アルマちゃんと別日にまた会う約束をした俺は、情報収集をしながら組織の行動を予測する。

 

刑務所でアグニールが暴れ、俺がその隙にご主人様を助けるという作戦は失敗した。他ならぬ俺のせいで。

 

傷だらけになったご主人様を見て我慢出来ずに、感情の赴くままに暴れてしまったのだ。

だから組織はそこに目をつけ、勝負を決めにかかっているのだろう。

 

モンスターを規制し、万が一自身の狙いに気付かれても止めることが出来ないように根回しをして……考えてみれば、ご主人様をボコボコにしたという尋問官も恐らく組織の指示によるものだろう。

 

まぁ、どう言い訳しても俺の責任な訳だが──忘れて貰っては困ることが一つある。

 

『ふっ、俺はモンスターである前に、おっさんの知識を持っている大人だ』

 

歳を重ねたに過ぎない生き方をしているが、これでも社会の厳しさを分かっている身だ。腹の探り合いや、真実を隠した表面上のやり取りは何度もしてきたし、失態や失敗は自分で取り返してきた。

自分のケツは自分で拭う。そんな常識を忘れちゃいない。

 

俺は確かに馬鹿だ。しかし愚かじゃない。

だから利用できるものは利用させて貰うし、ラスボスには必ず償って貰おう。

 

相手は組織だ、大人だ。

 

そのくせ成人前の子どもをボコボコにした上に、アグニールになる前の少女を苦しめ、そしてそれ以上に沢山の犠牲を出しているだろう奴らだ。

 

無論、大人なら自分のケツの拭い方くらい知ってるだろう?

 

『俺の大事な大事なご主人様を傷付けたんだ、償ってもらうぞ──大人同士の汚い腹の探り合いでな』

 

それもこれも全部ご主人様のため。

我ながら気持ち悪いくらいの忠誠心だな、と客観視するが止めようと思わない。

 

だって、もし彼女と会わなければ俺は───

 

「ちょっと、何してるのよメル」

 

「んきゅ?あきゅあきゅ」

(ん?モウガンか。ふっ、俺は天才探偵ごっこをしてた……あと復讐に燃える大人的なモノもやってました)

 

「……真面目に探してよ。あと、アンタって復讐とか似合わなそうだから辞めた方がいいわよ」

 

「んきゅ……うきゅ〜?」

(なるほど……笑顔が似合ういい男ってコト?)

 

「アンタ、メスでしょ」

 

「あっ、きゅい」

(あっ、はい)

 

悪ふざけがすぎた。

合流したモウガンに変人を見る目で見られてしまう……あ、いつもか。

ともかく、明るい俺に似合わないドロドロを出しすぎたかもしれないな、反省しよう。

 

だがその足掛かりとなる原作お助けキャラがいたのは、俺にとって星五モンスターを十連で五体抜きするくらいの豪運である。

 

この勝負、勝ったな!!!と、天を見上げて拳を振り上げる。

そんな俺の姿を横目に見て、はぁと呆れるモウガン。

 

ちょっと控え目にした。

決して恥ずかしかった訳ではない。

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