進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する 作:霧夢龍人
あと、第二部を書くことにしました。だってまだ書きたい展開があるんだもの!!!
それまではこのイチャイチャをお楽しみください。
戦いは終わった。
一人の犠牲者も出すことなく、決着が着いた。
暴走していたモンスター達は沈静化され、デミモンスター達は気絶。劫焔罪断による効果と進化した位相によって、改造部位や変異した箇所は全て取り除かれている。
崩壊した建物や街並みは、モンスターと人間が協力して復旧作業中だ。
そして、都市の騒乱に手を貸した者たちは一斉検挙となった。
思っていた以上にドルマンの力が強かったのが、今回の騒動が大きくなった一因だろう。他にもまだまだ変わった点が幾つかあるが、一先ずはこれで終いである。
「……え、私死んでたの?」
「んきゅ」
「で、メル達が頑張って復活させてくれた……ってコト?」
「んきゅ」
「あの眼鏡の人、そんな悪人だったんだ」
「ふぁっきゅ」
ドングリマンは死んだ。これは確実だ。
復活もしないだろうし、万が一復活したとしても以前のような性格にはならないだろう。
ご主人様は「倒せてよかった……」と長いため息を吐いた後、俺の膝枕を堪能し始めた。獣性転写症候群によってモンスターに生まれ変わったご主人様だが、姿かたちは変わりない。
種族も不明らしい。
人とモンスターの狭間の姿が正しいだろうか。
ちなみにご主人様の紋章は俺と同じお臍にあるらしい。やったね!
だがなんだろうな。第三部に出てくるとある人物と似ている形をしているんだが……まぁ、気のせいだろう。
かくいう俺はゲヘナジュヴァから進化して、“アビスジェルヴァ”へ至った。スライム要素が“ジェル”しかないのはもう諦めたが、ついに念願の三次進化をすることが出来た。
身長もご主人様を越し、上から見下ろす形になったのだ。
もうね、言い残すことはないよ。
胸に関してもご主人様と同じくらいだし……もうお姉さんと言ってもいいレベルだろう。
現在は前使っていた宿屋で、二人仲良くイチャイチャ中だ。まぁイチャイチャといっても膝枕してるだけなんですけどね、はい。
買ったイチゴをご主人様の口元に運ぶと、パクリと一口で食べてしまった。
食いしん坊かよ。可愛い。
モウガン達はアルマと一緒に今回の事件の重要参考人として、警察に出向いている。俺たちは先に終わったので、暫く予定はない。
「ねぇ、メル」
「んきゅ?」
「ありがとうね、私のために」
「きゅきゅん」
(んーん、気にしないで)
ご主人様の頭を優しく撫でる。
テレビの報道はずっと今回の騒動についての詳細が流れていた。刑務所を溶かした極悪モンスターとして認識されていた俺も、今では都市を救ったヒーロー扱いされるらしい。
中でもアルマの人気は凄い。
ファンクラブまで出来ているらしく、涙目で助けてくださいって言われた時は笑ってしまったものだ。
地味目な子が街のヒーローになる展開、いいよね……いい。
兎角として、ドルマンの野望は絶たれた。
第一部の物語はこれで終了だ。いやぁ、長かった。
ご主人様は俺の膝の上で、少し身体を丸めている。
安心したからなのか、それとも疲れが一気に出たのか、さっきから瞬きの回数が少ない。
「……ねぇ、メル」
「んきゅ?」
「その……こうしてるの、変じゃない?」
そう言いながらも、立ち上がる気配はない。
むしろ、ほんの少しだけ頭をこちらに預けてくる。俺がなんて答えるか分かってるはずなのに、不安げな表情を浮かべる顔。
ちょっと意地悪がしたくて、挑発的に微笑んだ。
「きゅい」
(嫌なら、やめる?)
「ううん、やだ」
即答だった。
自分でもそれに気づいたのか、少しだけ恥ずかしそうに視線を逸らすご主人様。
……可愛すぎるだろ
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
戦闘中の昂りとはまるで違う、静かな熱が身体に流れている。
俺は返事の代わりに、指先でご主人様の髪を梳いた。
力を入れないように、壊れ物を扱うみたいに。
「……メル、大きくなったよね」
「んきゅ」
(まぁね)
「前はさ、メルが私を見上げてたのに」
「きゅい」
「……今じゃ、私が見上げてる」
ご主人様の手が俺の頬に伸びる。
ぐにぐにとほっぺを引っ張られ、ぐいーっと引っ張られてる。痛くはないが、ちょっとくすぐったい。
変な顔になった俺を見てクスクス笑うと、ご主人様は勢いよく起き上がった。
「ねぇ、メル」
「んきゅ?」
「私って今、モンスターと人間の間みたいなものだよね?」
「ん……きゅきゅう」
「ふふっ、そっか。なら良かった。これでもう我慢しなくていいんだよね」
嬉しそうに笑うご主人様とは反対に、俺は疑問符しか浮かばない。
我慢ってなんだろうか?俺はご主人様になにか我慢させていたのか?そんなことないとは思いたいが……。
──その答えを考えるより先に、ご主人様の額が、こつんと俺の胸に当たった。
「……ずっとね」
小さな声だった。
聞き逃しそうなくらい、弱々しい。
「私が人間で、メルがモンスターで……それだけで、勝手に線を引いてた」
「んきゅ……」
「触りすぎたら嫌かな、とか。甘えたら困るかな、とか……どこかでブレーキかけてたんだ──でも、それも今日でお終い」
「……」
俺が言葉を探している間にも、ご主人様の額は俺の胸に預けられたままだった。心臓の音が、やけに近い。
ご主人様の鼓動なのか、それとも俺のものなのか、もう分からないくらいに。
「メルの前ではさ、強がらなくていいって……分かってたはずなのに」
そう言って、ご主人様はそっと息を吐く。
その温もりが胸越しに伝わって、じん、と広がった。
呼吸も心臓の音も、お互いに伝わってしまいそうだ。
「……私、死んだんでしょ?」
「んきゅ……」
「だから思ったの。次がある保証なんて、どこにもないんだなって」
ゆっくりと顔が上がる。
すぐそこに、ご主人様の瞳があった。
いつもより少し潤んでいて、いつもよりずっと真剣で──逃げ場がない。
まつ毛の長さも、見てると吸い込まれそうな赤い瞳も、火照った艶やかな表情も……その全てが愛おしく感じる。
「ねぇ、メル」
「……んきゅ?」
「怖いけどさ。それでも、伝えないで後悔する方が、もっと怖い」
指先が、俺の服の裾をぎゅっと掴む。
力は弱いのに、引き止める意志だけははっきりしていた。
「私は……メルのそばにいたい」
その一言で、胸の奥に溜まっていた熱が、静かに溢れた。
「きゅ……」
喉まで出かかった言葉は、音にならない。
代わりに、俺はそっと身体を屈めた。
目線が、同じ高さになる。
近い。
近すぎて、息が触れそうだ。
ご主人様は一瞬だけ目を見開いて、それから、逃げる代わりに瞼を伏せた。そしてふいに、俺の服の裾を引く。
ほんの少しの力なのに、まるで逃がさないと言われているみたいで固まってしまう。
「……メル」
「ん、んきゅ?」
顔を上げさせられる。
顎に触れたご主人様のひんやりとした手が、頬の熱を冷ましてくれるようで、全く逆効果だ。
……いや、いやいや。
べ、別に照れてる訳じゃないし?
「あは、顔赤くなってる。可愛いね」
「っ、きゅっきゅう!」
「ふふっ、怒ってても可愛いだけだよ?」
……おかしい。ご主人様の顔が見れない。
なんだ、なんでこんなに色気マシマシなんだ!!!おかしいだろ!
これも全てドングリマンのせいだ。
ご主人様に照れそうになるのも、顔が近くなるだけでドキドキしてしまうのも全てアイツのせいだ!
やけにドキドキする心臓を収めるために、ご主人様から顔を逸らす……が、再び顎を掴まれて、グイッと正面を向けさせられた。
綺麗な顔だ。
子供っぽさと大人っぽさを兼ね備えていて、今も俺を心底愛おしそうな顔で見てくる。
そして、距離が……だんだん……近づく。
「メルはさ、私とキスするの……いや?」
「きゅっ!?」
「そんなに驚かなくてもいいじゃん。メルだって、いきなり私にキスしてきて驚かせて来たんだし。だから、ね?」
「……ん、きゅ」
絞り出すみたいな声に、ご主人様の目がふっと細まる。
その表情だけで、何を受け取ったのかが分かってしまって、胸の奥がきゅっと縮んだ。
「そっか」
それだけ言って、今度はゆっくりと、確かめるみたいに近づいてくる。
ご主人様の火照った顔も、柔らかな手も、熱い吐息も、全部が毒だ。囚われたら逃げられない遅効性の毒だ。
でも毒だと分かっていても、不思議と拒否したいと思わなかった。
やがて、俺の唇に──ご主人様の温度が触れる。
たった一瞬だ。
なのになんで、こんなに胸がドキドキするんだ。
確かにご主人様の事は好きだし愛しているが、それはどちらかと言うと自分の飼い主に向ける感情である。
まさか──恋?
いや、いやいやまさか。
前世の半分くらいの年齢しか重ねていない目の前の少女に、恋するわけない。
そんなはずないんだ、けど。
「……
自分でも負け惜しみだと思った。こんなにドキドキしてるのが悔しくて、ボヤくように吐いた小さな鳴き声。聞かなかったフリをしてくれてもいいのに、俺の情けない負け惜しみにご主人様は反応を返した。
本当に意地悪だ。
「ふふっ、へたくそか……じゃあ──もっと練習させて?」
逃げられないと思った。
いつでも避けれるはずなのに、身体が動くことを拒否するように固まる。
徐々に近づいてくるご主人様の顔を見て、「仕方ないなぁ」と瞼を閉じた。
二度目のキスは、ほのかな苺の味がした。
本編とは別で他キャラとのイチャイチャ編は必要だろうか
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やってくれ、必要だろ!
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やるな、戻れ!