進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する 作:霧夢龍人
「はいどうも、皆さんこんにちは!今日は遂に発売された3Rのリメイクをやっていこうと思いまーーーす!!!ぃやったぁー!!」
『きたあああああああ』
『待ってました』
『神ゲー再来』
『原作泣けるんよ』
軽快なBGMとともに、テンション高めの女性ボイスが響く。流れ出るコメントは、彼女とゲームの人気を表していた。
彼女の名前は──“
八年ほど前に発売されたゲーム、『Dear Your Monster』。
3Rはシリーズ全部で4つ。その全てがかなりの高評価を得ており、特に初代と三作目は、ストーリー重視型RPGの金字塔として今なお語り継がれている名作である。
今回実況するのは、その中でも最高傑作との呼び声が高い──初代のフルリメイク版。
「いやー、ついに来ましたよ……!3Rリメイク!もうね、発表された瞬間、私叫びましたからね!?近所迷惑レベルで!」
『わかる』
『俺も叫んだ』
『会社休んだ』
「ちょ、会社休んだはダメでしょ!?社会人は!!」
軽快にツッコミを入れつつ、メニュー画面を操作する。
パソコンに表示されている可愛らしいアバターがひょこひょこと動き、嬉しさを表現していた。
「3Rはもう……名作とかいうレベルじゃなくて、人生に刺さるタイプのゲームなんですよ。プレイ後、価値観変わった人、絶対多い!ってことで、早速行きましょ!」
画面には、色鮮やかなタイトルロゴ。
《Dear Your Monster -Remake- 》
「いやー、もうね。原作やり込んだ人間としては、この日をどれだけ待ったか……!グラフィックもUIもフル刷新、ボイス完全再収録、追加シナリオありとか……これはもう実質新作ですよ」
『わかる』
『財布が軽くなった』
『給料全部溶けた』
「というわけで、初見実況いってみましょう!完全初見の人も、懐かし勢も、一緒に泣こうぜぃ!!」
▶ NEW GAME
暗転。
静かに流れ始める、ピアノとストリングスの混じる幻想的なBGM。
画面に映るのは、見覚えのある──だが、明らかに進化した光景。
崩れた都市、焔が立ち上る空、舞い散る光粒。
「……うわ」
八重が、思わず言葉を失う。
「……オープニングから、こんな……」
『もう泣いた』
『ここで泣かせに来るのずるい』
『リメイクスタッフ本気出しすぎ』
流れるコメント共に、八重はあの頃の思い出を振り返った。公園で友達と集まって交換したり、一緒にストーリーを進めたり、高難易度クエストに挑んだり……まさかそれが、リメイクされてまた世に出るとは思わなかった。
フラッシュバックする記憶をよそに、オープニングは進んでいく。
広がる山々や生息するモンスター。ストーリーに登場するキャラクター達。その中に、見覚えのない女の子が混じる。
「え?今の子見たことないんだけど」
『誰だこの子』
『めっちゃ可愛い』
『肌が半透明だな……スライムか?』
『オヘソにスライムの紋様がある!えっっっっ!!!』
コメント欄の反応を見るにスライム種らしい。だが四作目まで出ている3Rシリーズでも見たことがない進化だ。
「もしかして特殊進化?新規ストーリーってそーゆーコト!?は?神かよぉぉ!!!」
八重はワクワクを抑えきれず叫び出す。
防音室で区切られていなければ壁ドンを喰らいかねないほどの絶叫だった。
映像は進む。
やがて始まったのは、キャラ選択画面だ。表示される画像は見慣れた二種類……ではなく三種類。
男主人公であるモルド=クラウニア。
女主人公であるアルト=クラウニア。
そして。
「え、何この子。新しい主人公じゃん!!!めっちゃかわ……いや、かっこいいんだけど。結婚したい」
第三の主人公であるヴェスティ=クラウニア。
無印にはいなかったキャラだ。恐らくリメイク版限定の新規主人公だろう。
白髪を肩まで伸ばし、耳にピアスをいくつも付けている。
可愛らしい見た目とは対照的に切れ長の紅い瞳が鋭く輝き、白いジャケットとリュックを着用している。ショートパンツから覗く太ももが眩しい
「……マジでビジュ良すぎ、メロすぎるだろこの女。まじで運営さぁ……これ未成年もやってるんだよ?」
『とか言いつつ速攻選んでるの草』
『めっちゃ顔ニヤけてるやん』
『さっきからヴェスティちゃんの胸しか見てない』
『八重は俺たちだった……?』
「はぁ?見てないし。ちゃんと太腿も見てるよ」
『見とるやんけ!』
『エロい目で見られるヴェスティ可哀想……』
『草』
『草』
「うるさい!太腿は文化なの!これだからヲタク君たちは……やれやれ」
そう言い放ちつつ、迷いなくヴェスティを選択。
▶ START
「よし……じゃ、ヴェスティルート、行きましょう!」
⸻☆
プロローグが始まった。
暗転し、暫くの沈黙の後、微かに聞こえてくる──風の音。
「……お?」
画面が、ゆっくりと明るくなっていく。
映された画面には白髪が風に揺れ、紅い瞳が遠くの山々をぼんやりと眺めている場面が登場した。
リュックから水筒を取り出し、喉を鳴らしながら一気に飲み干す仕草は、どこか無防備で──それでいて、旅慣れた者の余裕も感じさせる。
《……ぷはっ》
小さく息を吐き、空を仰ぐ。
その瞬間、画面左下に静かに名前が表示された。
《ヴェスティ=クラウニア、16歳。家出してパートナー探しの旅に出る彼女だが、なかなか見つからないため大岩に座って休憩していた》
「……っ、きた……!」
八重の声が、明らかに一段落ち着いたトーンになる。
『主人公登場か』
『ビジュ強すぎんだるぉ!?』
『もう好き』
「初登場からこの作画……スタッフ、分かってるな……もう好きになりそう。は?これで好きになる私チョロ」
『ツッコミの重要性を感じる動画ですね』
『かわいそう……』
『まじで作画やばい』
『俺たちの青春が……やべぇ、感動する』
感動に咽び泣くコメントが流れる中、ヴェスティはゆっくりと立ち上がり、背中のリュックを背負い直した。
白いジャケットが風に揺れ、紅い瞳が静かに細められる。
「ふぉぉぉーーー!!!えっぐ!ガチ恋距離じゃん!!!……お姉さん彼氏いる?私の隣空いてるけど、どう?」
『草』
『求婚すな』
『童貞だからこの距離で見られたら好きになる』
『ヴェスちゃん可愛いなマジで』
ヴェスティの視線の先には、小さな村が見えた。
石造りの家々、木製の看板、行き交う人々とモンスターたち。温かく、どこか懐かしい空気が画面越しにも伝わってくる。
「……はぁ、もうこの時点で泣きそう。原作のこの最初の町の空気感、ほんと好きなんだよ……」
『いやまじでそれな』
『BGMなっつ』
『友達と一緒に公園でやってたわ』
八重はメニューを開き、クエスト一覧に目を通す。
そこには一つだけクエストが表示されていた。ゲーム機の画面で通して見ていた、懐かしい依頼だ。
【初心者向け依頼:森で迷子になったモンスターを探してほしい】
「はい、きました!チュートリアルクエスト!でもこれ、原作だと確か──」
言い終える前に、イベントムービーが始まる。
先程ヴェスティがいた大岩の上。そこに小さなスライムがひょっこりと現れた。
「……お?」
『なんだこの演出』
『新規主人公だから別の展開ありそう』
『おー?』
八重が警戒するように身構えた、その瞬間。
ぽよん。
とスライム……チビスラが跳ねる。
半透明の水色の身体がぷよぷよと動き、つぶらな瞳と可愛らしい羽をパタパタと動かしてヴェスティを見つめていた。
「うわ、チビスラじゃん。この子が相棒キャラかな?」
そんな八重の想像とは裏腹に、ストーリーは進んでいく。ヴェスティのセリフが表示されるが、目の前のチビスラをパートナーにするか選べるようだ。
普通なら序盤のパートナーはもう少し強いモンスターにするべきなため、八重は少し悩む。
「んー……でも、貴重な相棒枠をチビスラに使うのはなぁ……くっ、ごめんね!また会お!」
『え!?』
『選ばんの?』
『まぁチビスラだしなぁ』
『可愛いけど弱いんだよコイツ』
『わかる。進化するまで待てん』
暫しの思考の末、なくなくチビスラとお別れすることにした八重。ちょっと泣いていたように見えるチビスラは、ヴェスティの足元を一度くるりと回った後。
《……きゅ》
小さく鳴いて、森の方へと跳ねていった。
画面には、ささやかなSEと共に──
【???との縁が、わずかに深まりました】
の文字が。
「……え?」
八重が、思わず声を漏らす。
『ん?』
『今の何』
『縁?』
『フラグじゃね?』
「いやいやまっさかぁー!選ばないことが正解なんて……え、そんなことある?」
そんな言葉を漏らしながらも、八重の実況は続いていく。壮大な景色と美麗な映像に圧倒されつつ、序盤で優秀なモンスターであるグレートモーと無事パートナー契約を結ぶことが出来た。
草食であるグレートモーにお肉をあげることによって、更に優秀な進化をすることが出来るのである。
「やっぱおもろ。見てこれ、毛がめっちゃ細かいよ!」
『グラフィックの進化えぐいw』
『初代の安直なネーミング好きなんだよなぁ』
『3R久しぶりにやって見ようかなぁ』
八重は採取や細かな依頼をこなしつつ、舞台は貿易都市マルデンブルクへと移る。
──こうして。
リメイク版3Rは、原作ファンすら知らない、新たな物語へと、静かに踏み出したのだった。
こういうのやってみたかった。
本編とは別で他キャラとのイチャイチャ編は必要だろうか
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やってくれ、必要だろ!
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やるな、戻れ!