進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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3RII 浠と華の学園、聖女と歩む討魔録
新章開幕


俺たちは、とあるカフェにてある人物を待っていた。

カフェの名前は“Casse-toi”。フランス語で出て行けという意味らしい、最初にこのカフェを利用した時も、ある人物を待っていた時だったんだが……今回の待ち人も一緒である。

 

「やぁ、待たせたね!百合の花園諸君!」

 

俺、ご主人様、モウガン、アグニとフォスの五人で駄弁っていると、『ショタ=ロリ=ラブ』という文字が印字された服を着ている、胡散臭いイケメンが登場する。

 

紛うことなき変質者だ。

 

「兄様……さすがにその格好で外を出歩くのはどうかと思うよ」

 

「ふっ、俺は顔がいいんでな!」

 

「顔“だけは”の間違いじゃなくて?」

 

「はーはっは!言うようになったな我が妹よ!」

 

「姉様を見習いなよ……でも、助けてくれたのはありがとう」

 

「いいってことだ。この天才かつイケメンの俺が助けられたなら、それでいい」

 

「……う、うん。あ、ありがと?」

 

テンションが凄い。

ゲームじゃもっと落ち着いたテンションというか、顔が良いのと相まってクールキャラだった気がするんだが……どうしてこうなった?

時たま変態に変貌する男主人公のはずなのに、ずっと変態なままなんだが。

 

となると女主人公であるあのキャラも……いや、いやいや。想像したくない。

 

しかし助けてもらった大恩人なのには変わらないため、俺たちは何も言わずに二人のやり取りを眺めているに留まっている。

 

あ、モウガンステイ!ハリセンを取り出すのはやめろ!

 

……ふぅ、危なかった。

 

「それでさ。私たちを呼び出したのは何の用?アグニやフォスも呼べ、なんて来た時は何かの間違いかなって思ったんだけど」

 

「ふ、実はだな。お前たちを助けたという恩を着せる形にはなってしまうが、俺の名義でとある依頼をしたいんだ」

 

「……依頼?」

 

「きゅきゅ?」

 

「ふーん、どんな依頼かしら」

 

ご主人様、俺、モウガンの順で尋ねると、胡散臭いイケメン──もといモルドは、勿体ぶるように人差し指を立てた。

 

「単刀直入に言おう。お前たちには……とある学校に潜入してもらいたい」

 

「「「……え?」」」

 

声が揃う。

興味なさげにフォスと戯れていたアグニまでもが、身を乗り出して驚きに満ち溢れている表情を浮かべていた。

 

提示された依頼の内容はこうだ。

俺たちが行く先はここから更に東にある、学園都市“ヴァルヴォッサ”。そこでご主人様を除いた4人で、生徒役として潜入する。

正確にはフォスの飼い主役としてモウガンが潜入するらしい。俺はというと、パートナーなしだ。

 

え、なんで?

 

肝心のご主人様は先生として教鞭を振るいつつ、教師側で何か問題がないか調べて欲しいとのこと。ちなみにご主人様のパートナー役はアグニである。

 

は?羨ましい。

 

……と、この依頼内容を聞いて、俺の頭に浮かんだのは一つだ。

 

これ3RII(ツー)の舞台じゃん、と。

 

殺伐とした無印と打って変わって、(分かりにくいので)II改めて2の内容は学園系モンスターバトルモノになっている。

モンスターとパートナーになり、様々な生徒と交流を経て切磋琢磨し、最終的にパートナーランキングというもので上位(あるいは一位)を目指すことが、ゲームの目標になっている。

 

やり込み要素として先生や学園長に挑んだりする事もできる上に、前作より登場するモンスターが多いため、やり込み要素も豊富。

神ゲーとの評価も受けるほど、かなり面白い作品だった。

 

かくいう俺も2が一番好きである。

 

「どうだ。話は理解して貰えたか?」

 

「……いやまぁ。理解はできたけど」

 

「んきゅんきゅ」

 

「なんでそこまでして、私たちが潜入する必要があるのかしら。もっといい人材がいるんじゃないの?」

 

「がうがう」

 

「だよね。しかも学園にって、兄様が動くようなことが起きてるってことじゃん。私たちに頼むのは荷が重いよ」

 

まぁそうなるよな。

適材適所と言ってはなんだが、到底俺たち素人に頼むような難易度じゃない。

 

なぜ俺たちを潜入させるのかという目的も、選んだ理由もわからない。

 

そんな疑問を払拭するように、モルドは笑った。

 

「時間がないんだ」

 

「時間……?」

 

「あぁ、今回のパートナーランキングでは学園都市の聖女が表彰してくれるんだが、その聖女を狙う黒幕がいるという情報が入った」

 

「きゅきゅう」

 

「そうさ。だから君たちには転校生として普通の生活を歩みつつ、その目論見を阻止して欲しい。ヴェスは分かっていると思うが、ヴァルヴォッサの聖女が斃れてしまうとまずいんでね……」

 

ご主人様の息を飲む声が聞こえてきた。

「なるほどね……そっか、あの子ももう聖女になってるのか」と確信を得た顔をしたかと思うと、持っていたコーヒーをストローで飲み干す。

 

異様な空気だった。

 

俺が知っている聖女とは、3に登場するキャラクターだが、まかり間違っても2に出てくるキャラじゃない。となると、開始前の時点で俺が知りえない情報があることになる。

 

危険だ、間違いなく。

だがそんな俺の考えを他所に、話は進んでいく。

 

モウガンはフォスというパートナーがいる転校生として、ランキング上位を狙いながら情報収集。

俺はパートナーがいない転校生として、一般的な生徒の目線で怪しいヤツがいないかの確認。

ご主人様はマルデンブルクの騒乱をアグニと共に治めた英雄として、特別指導員という役割で教師側の趨勢を見張る。

 

「私……学校行ったこと、ないから、楽しみ」

 

「そうね。私も人間の学校に興味が出てきたわ」

 

「がうがう」

(私も私も!)

 

3人が口々に興味を告げる。

けれど気になったのは、やはり口を閉ざして真剣に考え始めるご主人様の顔だった。

 

モルドとご主人様の間で、聖女に関する情報が共有されているのだろう。厄ネタにしかならない今後の展開に、俺は頭を抱えそうになる。

 

……てか、モウガンはともかく俺は「きゅ!」くらいしか喋れないんだけど、どうすればいいんだ?

 

という当然の疑問は、ご主人様のクールな顔にメロついている当時の俺に浮かぶことはなかった。

 

 

 

 

───☆

 

「よ、よし!私はやりますよ!早くメルさんに会いに行くんです!」

 

普段メルたちが寝泊まりする宿屋の前で威勢を張り上げるのは、マルデンブルクの英雄として祀りあげられているアルマだった。

 

後ろにはアイスを頬張るソルガが早く入れよコイツ、とジト目でアルマを見つめている。

肩に乗っているフルは『やれやれだニャア』と頭を振っていた。

 

「ふ、ふん!動け!私の足ぃ!緊張して動けないとか、それでも私の身体の一部ですかぁ!?」

 

「何をやってるんだあやつは……」

 

『許してやって欲しいニャ。ご主人はたまに勇気があってかっこいいんニャけど、普段はこんな感じニャ』

 

「……お労しいな」

 

結局アルマが動き出したのは、五分ほど経った後だ。

 

宿屋の自動ドアを潜り、緊張した面持ちで店主に話し掛ける。

都市の英雄の登場に一瞬だけ驚愕した表情を浮かべた店主だが、そこはさすがプロ。すぐさま顔を取り繕い、笑顔で接客を始めた。

 

「あ、あのぅ。その……」

 

「はい、どのようなご要件でしょうか?」

 

「ひぅっ!え、えと!その!……メ、メルさん!……じゃなくて、ヴェスティって人はどの部屋にいますか?」

 

恐る恐るアルマが聞くと、店主は少し申し訳なさそうな顔を浮かべた。

 

「お知り合いでしょうか?本来ならお教えはできないのですが……特別でお教え致します」

 

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!……やった、これでメルさんに会える!」

 

『健気だニャア』

 

「待っている間に吾輩のアイスが溶けてしまった……しゅん」

 

『お前は早く食えニャ』

 

威厳の欠片もない獅子の姿にツッコむフルを他所に、店主はカタカタとパソコンで顧客情報を覗き込んでいた。

彼もアルマによって助けられ、命を無駄にせず済んだ者の一人だ。

 

「……それで、ヴェスティさんのお部屋は──」

 

期待に満ちたアルマの声。

キラキラと目を輝かせながら、笑顔で問いかけてくる彼女の笑顔を見て、店主は一瞬だけ言葉を詰まらせた。

 

「……申し訳ありません」

 

「……え?」

 

「ヴェスティ様御一行は、すでに先程、この宿を発たれております」

 

「………………」

 

一瞬、時間が止まった。

 

「……た、たった今、さっきですか?」

 

震える声で、アルマが問い返す。

 

「はい。急ぎの御用があるとのことで、モンスター達を連れて出て行かれました」

 

「……そう、ですか……」

 

『ご主人……』

 

「どうやら、一足遅かったようだな」

 

アルマの声が、少し重くなる。

 

フルはそんな飼い主を見て、慰めの言葉を探していた。ソルガも言葉では気にしていないようだが、耳と尻尾がへにょんと垂れ下がっている。

 

ほんの少し。

ほんの、ほんの少し早く来ていれば。

 

勇気を出すのが、五分早ければ会えたかもしれない。

 

「……どちらへ、行かれたか……分かりますか……?」

 

縋るような視線。

店主は、少しだけ考えてから答えた。

 

どうやらヴェスティとモンスター達の会話を思い出したらしい。

 

「東の方角、とだけ。学園都市ヴァルヴォッサへ向かう、と仰っていました」

 

「……東……」

 

アルマは、その言葉を反芻する。

 

「……学園都市……ヴァルヴォッサ、かぁ」

 

マルデンブルクからは離れ過ぎている。

大陸随一の学園都市であるため、場所は知っていた。

アルマは自分にさよならも言わずに、そんな遠い場所まで向かったメルに悲しい気持ちになる。

 

そして同時に。

 

「フルちゃん、ソルガさん」

 

『どうしたニャ?』

 

「む、なんだ」

 

メルへの僅かな怒りが湧いた。

 

私、あんなに頑張ったのに。

何でも言うこと聞いてくれるっていうから、命を掛けたのに。

 

どんな用事があったのかアルマは知らないし、事情を鑑みることも出来ない。だってそれほど仲が進展していないから。

 

だが、だからこそ。

 

「行きましょう、私たちも──学園都市“ヴァルヴォッサ”へ」

 

メルに何か一言言わないと気が済まなかった。

本編とは別で他キャラとのイチャイチャ編は必要だろうか

  • やってくれ、必要だろ!
  • やるな、戻れ!
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