進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する 作:霧夢龍人
ここまで来れたのは、今まで読んでくれた読者の皆様のおかげです。
私の拙い文章に誤字報告や感想、評価をしてくれた皆様に、今はただ感謝を!!!
やり過ぎだ。
クールキャラを演じている俺とは真逆の目立ち具合である。モウガンにも俺の目立たなさを見習って欲しいくらいだ。
……まぁ、若々しい子たちが眩しくて、中々輪に入れないだけなんですけどね、ハハハッ!
はぁ。
やめよう、なんか虚しくなってきた。
逆に考えて、元おっさんが混じるには厳しいだけで、むしろ今の状況は好都合である。まぁ、流石に2の主人公であるイスフィが居たのは驚いたし、仲良くなろうとしてくれるのも有難かったが。
ぜ、全然嬉しいなんて思ってないけど?
てか、あ行と「ん!」と「きゅ!」位しか言えない俺に、この依頼をするのは間違ってるとお兄さん思うの。その点モウガンは完璧に話せるから俺より向いてる……と思いきや、転校初日でコレである。
アマネちゃんが可哀想だ。
序盤のライバルポジションの彼女だが、一章のボス戦を乗り越えたフォスとモウガンの相手じゃない。レベルの差は強さに直結するが、絶対ではない。相性や戦闘経験、位相の有無などの方がよっぽど重要である。
つまり、絶対に勝てる戦いだったのだ。
《決着ウゥゥゥ───ッッッ!!!勝利したのは、なんと転校生のモウガンだアァァァ!!!》
地に両手を付け、項垂れるアマネに現実を叩きつけるように審判の声がマイクによって大きく響く。
試合の結果は無情にもモウガンの勝利、という結果に終わった。
───☆
「いやぁ、凄かったね!まさかあんなに強いパートナーがいるなんて、モウガンさん?っていう転校生は、将来有望だよ」
「やんなぁ。アマネさんがあんなにボコボコにされるなんて、ウチもビックリしたんよ」
イスフィ、リリアと共に学校の廊下を歩く。
二人の言葉にウンウン頷きながら、実習科目のある教室へと向かっている最中だ。
俺も美少女モンスターだと思うが、やはり現役女子高生は輝きが違う。お陰で俺の可愛さも霞むので、ありがたい限りだ。
若干視線を感じなくもないが、自意識過剰になるのも恥ずかしいのでイスフィとリリアへの視線だと思っておこう。モウガンに至ってはもうファンクラブが出ているらしいし、隠れ蓑として最適である。
……もしやアイツ、わざと目立っているのか?いや、有り得るな。
「だねぇ!ああいうカッコ良くて強い女の子羨ましいな。ふとした瞬間に声掛けられちゃったりして……きゃー!」
「あ、あはは。ミーハーなんやね……」
「ん」
「失礼な!でもモウガンさんって、彼氏も彼女もいないんだって。絶対モテるのに不思議だよねぇ……」
「えっ、そうなん!?いやいや、絶対おるやろ!」
「それがまさかのゼロらしいよ」
「えぇーーー!?」
……そこまで情報が回っているのか。
確かにモウガンは顔もいいし強いが、プライド高めだぞ?一体アイツのどこがいいんだろうか。この前だってあんなに俺に激しく……って!何を考えてるんだ!
モウガンとはただの先輩後輩の関係でしかないのだ。これ以上深く考えるのは良そう。
「あっ、そう言えばさ。二人ともお付き合いしてる人はいるの?」
「んー。残念やけど、ウチはおらんなぁ。出来たこともないんよね。メルちゃんはどうなん?」
げっ、恋愛話だ。
確かにこの頃って、付き合うどうのこうので話題になることあったよなぁ。男同士なら下世話な話で盛り上がれるが、女の子同士の会話なんてしたことないので、どう答えればいいか分からない。
……ご主人様やモウガン達と会話してるだろって?ご主人様はともかく、モンスターの恋愛観なんて参考にならないだろう。
ここは無難に首を横に振っておくか。
「……ん」
「そうなんや!?モウガンさんと言いメルちゃんと言い、美人すぎたり可愛すぎると逆に恋人出来なくなるんかなぁ」
「ふっ、とうとう気付いちゃったみたいだねイスフィちゃん……つまり私たちみたいなのが一番狙い目なんだよ!」
「なん……やて……?」
うん、楽しそうでおじさん嬉しいよ。
俺からしたら全員可愛いし全員カッコよく見えちゃうんだが、何かしら違いがあるんだろうな。精神年齢が一回り以上ズレていると、そこら辺の感覚が狂ってくる。
ちなみにご主人様は殿堂入りな?これ大事。
「ってやばい!早く行かないと実習始まっちゃうよ!」
「せやな。今日の担当、確かゴマダ教官やっけ?」
「いや、別の人っぽいよ?マルデンブルクを救った人が、特別講師で来るみたい」
「まじか!トゥイッターでも話題になってたアルマさんやろ?」
「もう一人の女の子らしいよ。名前は確か──ヴェスティさんだったかな」
その名前を聞いた途端、俺の中の感情メーターが振り切れそうになった。スカートで見えないように、太腿に巻き付けている尻尾が勝手に動き出しそうになるのを堪えながら、何とか無表情を保つ。
危ない。
ご主人様の名前を聞いただけで嬉しくなるなんて、俺は犬か何かだろうか?
「……あれ?なんかメルちゃん嬉しそうやない?」
「んーん」
「そう?気のせいやったんかな」
───☆
俺たちが着いた頃には、殆どの生徒が待機していた。実習についてはタブレットで見た情報によると、学園内にある自然施設にいるモンスターの生態を直接調べる学習らしい。
危険なモンスターも生息しているため、必ずパートナーがいる先生が同伴する形になる。
授業開始の鐘が鳴り響く。
生徒全員が集合し終わり、ゴマダ教官と呼ばれた屈強な教師と──我が愛しのご主人様、ヴェスティが現れた。当然、ご主人様を知っている者も知らない者もザワザワとざわめきが広がった。
……ご主人様、タイトスカートに赤縁眼鏡してるんだけど、もしかして先生の格好に気合いを入れてきたんだろうか?
確かに先生らしいと言えばらしいが、それよりも色気が溢れてるんだけど。ほら、周りの男子生徒も前屈みになってるし……なんだこれ、NTRか?申し訳ないがNTRはNGだ。
「しぃずかにっ!!!これより、実習活動を始める!!!」
「「はいっ!!!」」
「うむ、よろしい。ではヴェスティ先生、自己紹介をお願いしますぞ」
ゴマダ教官の号令と共に、ご主人様が前に出てくる。
年齢はここにいる全員より一回り上の十七歳だが、どう見てもそれ以上の妖艶さが醸し出されている。
ご主人様──いいや、ヴェスティ先生は眼鏡をくいくいと動かしながら、笑顔で挨拶をする。
「はい、皆さんこんにちは。私は特別講師って立場だから、皆を守る立場だけど……気になるとことか、分からないところがあれば是非聞いて欲しいな」
「じゃ、じゃあ先生って彼氏とかいますか!?」
おい誰だこの質問したやつ。殺すぞ。
なんて穏やかじゃない俺の心とは裏腹に、ヴェスティ先生は妖艶な笑みで対処した。
「う〜ん、どうかなぁ。気になる子ならいるけど、ね?」
そう言ってチラッと俺の方を見つめてくるヴェスティ先生。頼むからやめてくれ。ご主人様の可愛さに、俺の尻尾がビンビンに元気になっちゃうから。
……あれ、なんか言い方に語弊があるな。
ヴェスティ先生の返事を聞いて、「うヴォあ」と聞いたことない声で沈みこんでいく男子生徒。へっ!ざまぁ見やがれ!と思ってしまうのは、流石に子供すぎただろうか。
「ね、ねぇ気のせいかな。今メルちゃんの方見なかった?」
「……私もそう見えたわ。もしかして知り合いなん?」
「んーん」
とりあえず首を横に振っておく。
だって知り合いじゃなくてご主人様だし、嘘はついてないからいいよね。
そのまま幾つかの質問にヴェスティ先生が答えた後、いよいよ施設に入る準備段階に入った。まぁ、ただモンスターを呼び出すだけなんだけどな。
ゴマダ教官が呼び出したのは、三次進化の“ソウ・ワ・ナランヤロ”。進化すると“ナットル・ヤロ・ガイ”になる。スライムの近縁種であるアメーバ種だ。
水のような体をうねうねと動かし、パッチリしたお目目を持つカワイイ系のモンスターである。スライムの可愛さには負けるけどな???
そしてヴェスティ先生が呼び出したのは──“焔”の玉。
莫大な熱量によって、蜃気楼のように空間が歪むほどのエネルギーを放つ玉に亀裂が入る。
現れたのは、もちろんアグニールだ。
何度見てもえっ──健康的な姿をしている。ぶっちゃけ過剰戦力だ。
「これが私のパート……いや、モンスターのアグニールだ。特異個体だから結構強いし熱いから、あんまり近付かないようにね」
「ん、よろ、しく」
そう言ってピースサインするアグニ。
ヴェスティ先生はといえば。冷や汗を垂らしている。
私のパートナーと言いそうになったところで、俺がハイライトの消えた目をご主人様に向けたからだ。
でも訂正してくれたから許す!やっぱりご主人様しか勝たん!
と、心の中でガッツポーズをしていたのも束の間。
「「えぇぇぇぇ!?!?」」
生徒たちの絶叫が施設前に響き渡った。
そりゃそうだ。
アグニのエロい部分しか目に入らないから忘れがちだが、仮にもアグニは王種に分類される特異個体だ。とある都市では、王種の特異個体が滅ぼしたと言われる崩落した国がある。
つまり、国が総出で掛かっても勝てない可能性の方が高いモンスターなんだ。下手すりゃ身動ぎしただけで命を奪われかねない。
流石にそんなモンスターと対面したら怖がる──
「せ、先生すっげぇぇぇえええ!!!」
「美人な上にこんなに強いモンスターまでいるとか、反則でしょ!」
「アグニールちゃん可愛い!!!」
──なんてこと無かったわ。
やっぱりコイツら
「え、ちょっと怖くね?」
あ、良かった。マトモな感性のやつがいた。
「いや何言ってんだよ。王種だぞ王種!」
「生で見れる機会とか一生に一度、あるかないかよ?」
「御伽噺の類いだと思ってたけど、本当にいたんだな」
「……たしかに!」
ダメだったわ。
やっぱりこの世界の住人は根っからのモンスター好きらしい。そこからねじ曲がってドルマンみたいな奴が出来るんだから、分からないもんだ。
でもアグニの嬉しそうな顔を見ると、歓迎されている雰囲気で良かったと思う。
「うわ!やばいんよ!凄いよアグニールちゃん!!!」
「さ、さささサインとか貰えるのかな!?」
二人も大興奮のようだ。
でもリリア、君の持っているペンだと触った瞬間に溶けるとおじさん思うんだ。イスフィに関しては……語彙力が崩壊している。
他の生徒たちも二人と変わらず、慌てたり驚愕したり目を輝せたり。本当にモンスターが好きなのが伝わってきた。
「みん、な可愛いね」
そんな生徒たちにくすりとアグニは微笑むと、背中に生えた一対の羽根を広げて俺たちの上を飛ぶ。
本当に凄まじい熱気だ。
あまりにも暑すぎるために、粘液を地面に撒いて熱の上昇を避けているが、それでもこの暑さである。
やがてひとしきり空を遊泳していたアグニは、チラリと俺に視線を向けてきた。
──何故だろう。すごく嫌な予感がするんだが。
ゆっくりと俺に向かって降下してくるアグニへ、頼むからこっちへ来るなとお祈りをする。
しかしどうやら、俺の願いは叶わなかったようだ。
「んふ、貴女かわいい、ね」
俺の目の前で、上目遣いで覗き込んでくる赤い瞳。ご主人様の目よりも濃く、真っ赤という言葉が似合う目と俺の目が交錯した。
「ん」
ぷい。
顔を逸らす。
だが、尚もアグニは止まらない。
「もしかして、私の、まね?……うれしい」
一歩一歩と歩み寄り、顔を近付けてくる。
助けを求めてヴェスティ先生へ視線を向ければ、青筋が隆起していた。なんかめっちゃ怒ってる。周りの生徒たちも俺とアグニのやり取りを、息を飲んで見守っていた。
やがて我慢できなくなったヴェスティ先生が、アグニへと声をかける。
「アグニくん?もうそこら辺でいいんじゃないかな?」
「なん、で?私この子のこと、気に入った、から」
「勝手な真似はダメだって言ったよね」
「……はー、い」
ヴェスティ先生から怒られ、しゅんとしたまま戻っていくアグニ。
な、何とかなった。
あいつご主人様が止めなかったら、そのままキスして来ようとしてたよな?
そうなれば目立つ目立たないの話じゃ収まらなくなっていたので、ご主人様には非常に感謝である。
内心でそう安堵していると、隣にいた二人もようやく動き出した。
「び、びっくりしたんよ!あのまんまちゅ、ちゅーされるんやないかなって!」
「だよね!?もしかしてメルちゃんって、モンスターに好かれる匂いでもある?」
「んーん」
「ほんとにー?……あ、いい匂い」
「どれどれ……ほんまや。なんかずっと嗅ぎたくなる匂いしてるんやな」
二人に挟まれ、くんくんと匂いを嗅がれる。
やめてくれ。
普通に恥ずかしいし、これ以上嗅がれると元おじさんの加齢臭が漏れるんじゃないかって恐ろしさがあるのだ。
「……ん、む」
さりげなく一歩下がり、距離を取る。
「むー。逃げた」
「でもほんま、不思議な匂いやね。甘いような、すっきりしてるような……」
自分の身体を搔き抱いて、更に距離を取った。
女子高生の距離感の近さは異様だ。
変に抱き着かれたりして、尻尾や目立たなくしている翼に気付かれたら非常に困る。
それに何より……。
「ふぅん?」
「へ、ぇ?」
ご主人様の目が笑っていない。めちゃくちゃ怖い。
こんな目をしていたのは、アグニに色んな意味でモンスターバトルされた時以来だ。
しかも当のアグニの目も据わっている。目に光がない。
レイプ目になっている二人の視線に耐えかねて、僅かに身体が震える俺。今日家に帰ったら、一体どんな目にあってしまうんだろうか?
「あれ、大丈夫?」
「体震えてるで?」
プルプルとスライムらしく身体を震わせている俺へ、心配の言葉を投げかけてくれるイスフィとリリア。
とてもありがたいんだが、今のご主人様たちには逆効果だった。
「そこの三人、ちゃんと私の話聞いてるかな?」
額に青筋を浮かべたヴェスティ先生が、ヒクヒクと口角を痙攣させながらこちらへやってくる。
その声は優しいようでいて、背筋が凍るような冷たさを放っていた。
私情を挟む教師はどうかと思います!
そんな俺の訴えは声に出ることなく、結局お説教が終わったのは予鈴が始まって五分が経過した頃だった。
嫉妬する女の子っていいよね……いい(自己完結)
本編とは別で他キャラとのイチャイチャ編は必要だろうか
-
やってくれ、必要だろ!
-
やるな、戻れ!