進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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番外編:クラスメートの男たち

時は少し遡る。

メル達がボレ・ルーヴと戯れている最中、別の区画になった男たちがいた。総勢四人。森林方面のモンスター調査をしている彼らの会話は、とある話題によって白熱することとなる。

 

「なぁ……転校生、可愛すぎじゃね?」

 

真面目に調査に取り掛かる四人のうち、静寂を破った者がいた。一般科は八クラスあるのだが、その中でもかなりの顔面偏差値を誇る男だ。

 

真面目に取り組む他三人の水面に、可愛い転校生というドデカイ巨岩をぶち込むような暴挙。調査という真面目な授業が一転して、男子高校生の馬鹿な会話になることが確定してしまう。

 

彼の名は、タナカ。

彫りの深いイケメンであり、名前の普通さに見合わず中々にモテている。そんなタナカの言葉に、端末を操作していた男が反応した。

 

「分かる、イスフィちゃん可愛いよな……特にあの関西弁よ。萌え死ぬかと思ったわ」

 

彼の名前はスズキ。

アイドル顔負けの容姿を誇る、チャラチャラした少年だ。

 

現在、彼女なし。

しかし周りの三人には嘘をつき、彼女がいると吹聴している小狡さも持ち合わせている。

 

と、ここで。

 

「はっ、分かってないなお前らは。モウガンちゃんこそ至高だと親に教わらなかったのか?──ふっ、やれやれだ」

 

ロン毛のイケメンが会話に乱入してきた。

 

彼の名前はサトウ。

ロン毛と自己肯定感を伸ばしきった結果、残念イケメンというポジションを獲得してしまった哀れな男である。

 

口癖は“やれやれ”だ。という何とも香ばしいモノであり、白い歯を見せてキラッとウィンクするのが、最近の彼のマイブームらしい。

 

「テメェこそ何言ってんの?ヴェスティ先生こそ、綺麗で優しい女性の塊みたいな存在だろうが」

 

そして最後に会話に混じったのは、荒々しいヤンキーという雰囲気を醸し出している男──名前はヤマダ。

 

ヴェスティに「じゃ、じゃあ先生って彼氏とかいますか!?」という調子に乗った発言をした少年とは思えないほど、彼の発言は喧嘩腰である。

 

「うるせぇよヤマダ。お前は思いっきりフラれてただろうが」

 

スズキの口撃によってヤマダは無言で崩れ落ちた。どうやらクリティカルヒットだったらしい。

 

「現実は残酷だな」

 

無駄に歯をキラキラさせながらサトウが慰めの言葉をかける。

だがその言葉によって、ヤマダは地面にうつ伏せで倒れ込んだ。ただの屍のようだ。

 

可哀想なヤマダをさて置いて、残りの三人の会話内容は加速する。

 

「ヤマダは死んだか……ま、俺は転校生が可愛いっつったけど、アグニールちゃんが一番心惹かれたな。あとフォスちゃんも可愛い」

 

「モンスターフィリアかよ、キモ死ね」

 

スズキ の 容赦のない 言葉 !

 

タナカは血反吐を吐いて倒れ込んだ。

どうやらどちらが可愛いのかという勝負は、スズキとサトウの勝負にもつれ込んでしまったらしい。

 

「はぁ、やれやれ。これだから素人は……モウガンちゃんのあのスタイル、口調、顔の良さ。そして気の強そうな性格……その良さを分からないなんてな」

 

「なんだよ。胸が大きけりゃ良いってもんじゃねぇだろ?それにイスフィちゃんの方が、一緒にいて退屈しなさそうだろ」

 

「浅いな、実に浅い」

 

スズキの言葉にサトウは肩をすくめ、やれやれと天を仰いだ。

 

妙に様になっているのが実に腹が立つが、これこそが彼がカッコイイのにモテない理由なのである。許してあげて欲しい。

 

「分かってない。分かってなさすぎる。モウガンちゃんは“一緒にいて退屈しない”とか、そういう次元の話じゃない」

 

「じゃあ何だよ」

 

スズキが半眼になる。

 

何言ってんだコイツ?

いや、違う。

何言ってんだコイツ……今までずっと。

 

そんな感情が、言葉にされる前に表情だけで完結していた。

しかしスズキの表情を見てサトウは小さく鼻で笑い、端末をポケットに仕舞う。

 

そして大仰な仕草で告げた。

 

「隣に立った瞬間に、“あ、俺この人に殺されるかも”って思わせてくれる存在感だ」

 

「それもう可愛いじゃなくて恐怖だろ」

 

「恐怖は恋の第一歩だ」

 

「名言っぽく言うな」

 

拮抗する二人のやり取りを、地面からうめき声が遮る。

視線を向ければ、今までピクピクと痙攣していたヤマダの身体が徐々に動き出した。

 

胸を抑えながら、ゆっくりと立ち上がるヤマダ。

 

「……おい……」

 

その姿はまさに、勝てない強敵に何度でも挑む勇者さながらのよう。間違ってもゾンビみたいだね!と言ってはいけない。

 

男には負けられない勝負があるのだから。

 

「俺を……勝手に話題から外すんじゃねぇ……」

 

「ふっ、生き返ったか」

 

「ていうか何でお前はそこまでヴェスティ先生一択なんだよ」

 

スズキが呆れたように言う。

 

確かにあの妙な色気は中々にクるものがあった。そこは男して否定はしていない。しかし、転校生という括りの中で先生を生徒判定していいのかは、些か判定に困るものだ。

 

なお、モンスターフィリアのタナカは論外である。

 

「わかった、年上補正か?」

 

「……ちげぇよ。そんな浅いもんじゃねぇ!」

 

ヤマダは拳を握りしめる。

彼の心に宿るのは、男してのアツい意志だ。

 

「綺麗で、優しくて、強くて……それでいて俺みたいな馬鹿の話も聞いてくれそうな感じがすんだよ。そんなの、めちゃくちゃ魅力的じゃねぇか!」

 

男としてのプライドが籠った声。

まさに魂の叫びとも言うべきヤマダの発言に、一瞬だけ沈黙が三人と一人の(タナカ)を支配した。

 

だがそんなヤマダの魂から来る言葉に、スズキは笑みを深めて一言。

 

「ま、実際は秒で振られたけどな」

 

──トドメを刺した。

 

ヤマダは拳を握りしめたまま固まり、数秒遅れて、その手が力なくほどける。

 

「……っ、うるせぇ……」

 

絞り出すような声。

しかし反論はそれ以上続かず、ヤマダは再び膝に手をついた。やがて聞こえてくるのは、涙がヒタヒタと落ちる寂しい音だ。

 

高校生という希望満ち溢れる時期。

 

だが。

 

「……現実ってよぉ……」

 

「残酷だな」

 

「残酷だわ」

 

サトウとスズキが声を揃えて言った。

 

森林の中に、妙に重たい沈黙が落ちる。鳥の鳴き声すら、空気を読んでいるように遠慮がちだ。川のせせらぎの音は四人を包み込むように流れ、今日何度目か分からない沈黙がその場を制した。

 

やがて、その沈黙を破ったのは──地面に横たわっていた“屍”だった男だ。

 

「……なぁ……」

 

か細い声で、タナカが声を上げた。

口元を拭いながらゆっくり立ち上がるその姿はまさに幽鬼のよう。

 

「……結局さ」

 

三人の視線が集まる。

 

「誰が一番可愛いんだ?」

 

その問いに、全員が一瞬だけ考え込んだ。

 

イスフィ。

モウガン。

ヴェスティ先生。

アグニール。フォス。

 

なるほどなるほど、確かに誰もが魅力的だ。

この中の誰かから告白されれば、その後の人生は約束されたようなものである。

 

あまりにも可愛すぎる、もしくは美人すぎて自分が釣り合ってないのではないか?と思うくらいには、皆違って皆いい。

 

しかし。

 

「……あー」

 

「……まぁ」

 

「……うん」

 

三人の脳裏に、ほぼ同時に浮かんだ存在があった。

 

無口で。

表情が薄く。

なのにとんでもない美貌によって、視界の端にいても意識を持っていかれそうになりそうな女の子。

 

あまりにも顔が良いために、転校生という括りですら挙げた名前に入らなかった。何故なら、名前をいえばその時点でこのバカな会話が終了してしまうからだ。

 

「……メリュジーヌちゃんだろ」

 

「間違いないな」

 

「あの子は殿堂入りだ」

 

「だよな……」

 

誰も異論を挟まなかった。

否定できない。否定する理由が、どこにも存在しない。

 

スタイル良し、顔良し、性格は分からないが男の欲望を詰め込んだような女の子である。

 

「可愛いとか美人とかの話じゃねぇんだよな」

 

スズキが肩を落としながら言った。

 

「というか、俺らが可愛いとか言っていい領域じゃねぇ」

 

その言葉に、三人は妙に納得してしまった。

 

否定しようとした者はいない。

反論の言葉も浮かばない。

むしろ、その一言で胸の奥に引っかかっていた違和感が、すとんと腑に落ちたのだ。

 

「……あれだな」

 

タナカがぽつりと言う。

 

「近づいたら、人生変わりそうなタイプ」

 

「良くも悪くもな」

 

四人は同時にため息をついた。

 

「つーかさ」

 

スズキが急に現実的なことを言い出す。

 

「冷静に考えて、あの子と会話成立する未来、見える?」

 

「見えない」

 

「一言も返ってこない可能性ある」

 

「むしろ返事がなくても、見つめられるだけでドキドキして心臓止まる」

 

「詰みじゃねぇか!」

 

全員が同時に結論へ辿り着いた。

 

しかしここで、タナカが更に一石を投じる言葉を呟く。異様に澄み渡る彼の瞳は、言いたくて仕方がないという感情が抜き出ていた。

 

「俺、見たんだよね。イスフィちゃんに可愛いって言われて、ちょっと照れてるメリュジーヌちゃんの顔」

 

「なん、だと……!?」

 

「由々しき事態だ……」

 

「なんて日だ!」

 

反応は三者三様。

 

サトウは数秒固まったあと、ゆっくりと息を吐いた。

 

「……それは、反則だろ」

 

それ以上の言葉が出てこないあたり、だいぶ効いている。スズキはというと、額を指で押さえながら首を振った。

 

「やれやれ……やれやれ」

 

完全に想定外だったらしい。やれやれの先の言葉が出てこないようだ。

無口で近寄りがたい美少女という枠に、照れ顔という強烈な追加要素がねじ込まれた衝撃は大きい。

 

そしてヤマダ。

 

「…………」

 

何も言わない。

だが拳だけは、やけに強く握りしめられていた。

 

「おいヤマダ、生きてるか」

 

スズキが声をかけると、少し遅れて顔を上げる。そしてスズキにだけ聞こえる声量で呟いた。

 

他の二人がなんて言ったんだと催促すれば、ため息を吐いて聞こえてきた内容を零す。

 

どうやら限界を迎えてしまったらしい。

 

「……可愛いってさ、ずるいよな」

 

さっきまで誰が一番可愛いだの、胸がどうだの、性格がどうだのと騒いでいたのが嘘みたいに静かになってしまった。

 

男子高校生とは繊細なのだ。

 

ちなみにこの四人全員がメルに告白し、見事に玉砕されるのはまた別のお話である。




三次進化したメルの絵をAIくんに描いてもらいました。あまりにもえっちだったので、メルへの印象を変えたくないという人や、こういうイラストは見たくないという方はお控えください。

もしこれでBANになっても……止まるんじゃ、ねぇぞ……ッ!


【挿絵表示】


ちょっと触手が足りないけど、概ね満足です。
※あくまでおおよその再現なので、全く一緒ではありません。
そこを踏まえた上で、見たい人だけ見てください。

本編とは別で他キャラとのイチャイチャ編は必要だろうか

  • やってくれ、必要だろ!
  • やるな、戻れ!
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