進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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ラッキースケベは突然に

俺は男である。

だが見た目的にはご主人様に及ばぬものの、かなりの美少女なのは確かだ。

 

そしてそれ以上に翼や角、尻尾がある。左足には触手が絡み付いているため、モンスターらしさが全開だ。

 

顔がご主人様に似ているのは、スライムの“どんな個体とでも交われる”という特性から来る副産物だ。角や尻尾や翼などは、アグニールの因子が関係している。

 

今回のモルドからの依頼で角や触手などの隠せない部分は、一時的に燃やして取り除いている。角は神経が繋がっていないし、触手も以下同文。【感覚超倍増】によって痛みが増幅されている俺でも、取り除くのは簡単だった。

 

依頼が終わればいつでも生やせるし、翼と尻尾は小さくしていれば目立たない。完璧な作戦だったはずだ。

 

だが一つ問題が起きてしまう。

 

「メルちゃーん、一緒に入ろうや!」

 

「ふっふっふ!女の子同士の付き合いはまずは裸から……さぁ、その制服を脱いでお風呂場に行くよ!」

 

一緒にお風呂に入ろうと誘われてしまったのだ。

しかも、行かないと言えれば楽なのに言葉が喋れないから黙ることしかできない。

 

え、ここから入れる保険ある?……ないですよね、はい。

 

俺はベッドの上で固まったまま、二人のテンションが最高潮に達していくのを眺めていた。

 

逃げ道を探す視線は、虚しく壁と天井を往復するだけだ。

窓?ここは二階だ。逃げられない。

ドア?既にリリアが塞いでいる。逃げられない。

助け?この時間帯にヴェスティやモウガンが来るはずないし、来たら逆にまずい。

 

詰みである。

 

まさか一章のラスボスを倒したこの俺がここまで追い詰められるとは……助けてヴェスえもーーーん!!!

 

という俺の嘆きは、両肩に置かれた二人の手によってなかったことにされた。

 

「ほらほら、早よ行こ?お風呂逃すと混むで?」

 

イスフィがタオルを手に、何の疑いもなく笑っている。疑ってほしい。せめて一ミリくらい。

 

薄い同人誌なら、俺男なんだ──ボロン。みたいな展開になりそうなのに、残念ながら俺はメスだ。薄い本が厚くなる展開はないのである。

 

「メルちゃん、脱衣所こっちだよ!……あ、もしかして恥ずかしい?」

 

リリアが首を傾げながら、逃げ道を作るような言葉を言ってくれた。

 

よし!ナイスだリリア!そうだ、俺は恥ずかしい!……いや、恥ずかしいというか、色々とアウトなんだ。

 

尻尾とか翼を見られたら、モンスターであることが確実にバレる。へその紋様も、スライム種から王種に進化して多少変化したとはいえ、かなりの確率でスライムであることがわかってしまうだろう。

 

そして何度も言うが、俺は喋れない。

否定も説明もできない。

 

「……ん」

 

出てきたのは、いつものそれだけ。

もはや呪いの一音である。

 

スライムなら「プルプル、ボク悪いスライムじゃないよ」くらい言わせてくれ。

 

「ほら、やっぱり大丈夫だって!」

 

「観念した顔しとるでこれ」

 

してない。

これは覚悟だ。

 

頭の中で、某奇妙な冒険をする主人公の姿が思い浮かんだ。

 

二人に背中を押される形で立たされ、脱衣所へと連行される。床が妙に冷たい。現実感がじわじわと押し寄せてくる。

 

だがここで嫌がれば、ここでの寮生活に疑問が生じる。モルドの狙いでは、一般科の生徒と裸の付き合いもして、仲良くなってもらいたいのだろう。でなければわざわざ寮に入れるなんてことはしないはず。

 

……そう、だよな?

まさかただ単純に俺と他の女の子が絡んで欲しいとか、アイツに限ってそんなちゃちな狙いはないはずだ。

 

うん、キットソウ。

 

「着いたー!脱衣場やんばいなぁ!?めっちゃ広いやんけ!」

 

「私たちは勝ち組なんだ。あとはカッコイイ彼氏を……ふっ、この胸と顔で籠絡せねば!」

 

「いや無理やろ、顔はともかく胸はそこまで大きくないやん」

 

「あれ、虚乳の人がなんか言ってる」

 

ギャースギャースと戯れる二人を他所に、俺は制服に手をかけた。今まで気にしてなかったのに、やけにスカートがスースーする。

 

お、落ち着け。ただ制服を脱ぐだけだ!

今は角も触手もないし、翼と尻尾は縮めてある。

見た目は、ただの“ちょっとスタイルの良い女子高生”なんだ。誰がなんと言おうと俺はただの女子高生である。

 

そう、自分に言い聞かせながらブレザーを脱ぐ。

 

下に着ているのは、学園に潜入する前に行った買い物で買ったものだ。ご主人様が血走った目で「メ、メルはこの下着が似合うと思うよ!絶対!絶対似合うと思う!」と黒い透けた下着を、鼻息を荒くしながら力説された時は危うく警察に通報しそうになった。

 

めっちゃ怖かった。

 

しかしその恐怖に打ち勝ったお陰で、違和感のない下着になっているはずだ。

 

「……でっっっ」

 

「……か」

 

二人の視線が、わずかに止まる。

まだ脱いでいる途中なのに、ゴクリと喉が鳴る音がした。

 

背中に生えた翼を出来る限り小さくしながら、タオルで覆い隠していく。

 

「やっぱメルちゃんのスタイル、反則やない?」

 

イスフィがぽつりと呟く。

タオルで覆っているとはいえ、この体は色んな意味でデッカイ。隠しきれないのは仕方がないだろう。

 

二人以外にも、他に脱衣所を利用している女の子達からの視線も感じる。

 

「いや、ほんとに。制服マジックとかじゃないよねこれ」

 

リリアも腕を組み、真剣な顔をしていた。その癖、タオルで覆われた胸元を凝視してくるから少し恥ずかしい。

 

俺は何も言えずただ視線を逸らすしかない。

喋れないのが、今だけは本当に助かった。

 

 

 

──☆

 

 

 

ウチ、もしかしたら男の子やったんかも知らん。

メルちゃんが恥ずかしがり屋なんは、昼の実習で分かってたこと。

 

なんやけど。

 

タオルで身体を覆っているのに、メルちゃんのわがままボデーの主張が凄い。

 

いやほんと、マジでえっっっ──て感じなんよ。

ほんとにウチらと同じ高校生なんか?

実はもっと年上のお姉さんだったりしないやろか?

 

そう思ってしまうくらいには、メルちゃんの雰囲気は成熟した大人みたいやった。

 

まぁ正直な話。

同い年やし同じクラスやし、仲良くなりたいって思ってる女の子やから、そこがメルちゃんの魅力の一つやと思っとる。

 

せやけど──。

 

「……なぁリリアちゃん」

 

湯船に浸かりながら、リリアちゃんに話しかけながら横目でメルちゃんを見る。

 

ウチらはあんまし人がおらんところで、三人で一緒に湯船に浸かっとる。恥ずかしいのかタオルを巻いてないウチらと、ちょっとだけ距離を置いてるメルちゃん。

 

「ん、何?」

 

「いや……やっぱなんでもないわ」

 

「えーなに!めっちゃ気になるじゃん!」

 

なんでもない、は嘘や。めっちゃある。

 

だってな、メルちゃん……同じ高校生やのに、同じ湯船入ってるのに、なんでそんな堂々とした胸の存在感しとるんや。

 

見てみ?あの大きさ。

 

デカい胸

ほっせぇ腰に

デカいケツ

 

イスフィ。心の俳句──ってウチは何言うとんやろ。

 

てかそんなまじまじと見たらあかん。でも視界に入るんやもん、しゃーないやろ。

 

と何故か誰が聞く訳でもないのに言い訳するウチ。

 

(……なんでウチは成長期がないんやろ。いったいどこに置き忘れてきたんや)

 

同じ年齢、同じ条件。人一倍牛乳も飲んできたし、たくさん寝たし、運動もしてた。

 

なのに。

 

「……メルちゃんさ」

 

つい、ぽろっと口に出てもうた。

 

「なに食べて育ったん?」

 

リリアちゃんが即座に噴き出す。

 

「ちょ、イスフィちゃんそれ聞く!?デリカシー!」

 

メルちゃんは、きょとんとした顔でこちらを見るだけ。

ちょっと困ったように首を傾げて、静かに湯に浸かってる。タオルに包まれた渓谷が、湯船にプカプカ浮いとった。

 

も、もしかしてあれが……“クラムボン”……?

 

勿論そんな訳ないのは分かっとるんやけど、小学生の時の疑問が解き明かされた気分やった。

 

……くっ。

メルちゃんの別に他の人と食べてるモノ変わらないよ?みたいな反応がまた腹立ってきた。

 

「なんやその余裕……」

 

「イスフィちゃん、完全に負け犬の遠吠えじゃん。ウケる」

 

「うっさいわ!」

 

「きゃー!メルちゃんの元へ逃げ込めー!」

 

思わず湯をばしゃっと叩いたら、湯気が立ちのぼる。煽ってきたリリアちゃんは縮こまってるメルちゃんの後ろに回って、いたずらっぽく笑っとる。

 

でもな、不思議と嫌な感じはせえへん。

 

悔しいけど、嫉妬はするけど、それ以上でもそれ以下でもない。

 

「まぁええわ」

 

肩まで沈み込みながら、ため息をつく。

 

ウチの母ちゃんが言っとった。

「女は胸が全てじゃないんよ」って。

 

「胸は負けとるけどな。ウチには関西魂がある」

 

「なにそれ誇るとこ?」

 

リリアちゃんが笑う。

 

メルちゃんは相変わらず静かやけど、さっきよりちょっとだけ、目元が緩んでる気がした。

 

その顔にちょっと見惚れながら、ウチらはお風呂を堪能した。

 

 

 

「ふぃー、ちょっとのぼせそう。先に上がるねー!」

 

「りょーかい!ウチらももうちょいしたら行くわ!」

 

先に上がったリリアちゃんを見送った。

ウチとメルちゃんは向き合う体勢で、湯船に浸かっている。

 

他にも浸かっとる人はおると思うけど、パッと見今の浴場には、ウチとメルちゃんだけがいるように見えた。急に静かになって、さっきまでの騒がしさが嘘みたいや。

 

二人っきりみたいでちょっと恥ずかしいんよ。

 

湯船に浸かりながら、正面にいるメルちゃんを見る。

 

相変わらず、背筋がすっと伸びてて、姿勢がええ。同い年のはずなんやけど、落ち着き方がちょっとだけ大人びて見えるんよな。

 

……とはいえ。

 

「……静かやなぁ」

 

独り言みたいに言ったら、メルちゃんは小さく瞬きをしてウチを見る。湯船が気持ちいいのか、いつものクールな顔が若干緩んでいる気がした。

 

口元も薄く笑っているようにも見えるし、顔もちょっと火照っとる。

 

「……ん」

 

返ってきた返事はそれだけ、相変わらずや。

 

でもこの“それだけ”が、なんかいいんよな。

 

無理に喋らへんし、無理に距離詰めてくることもない。おるだけで、空気が落ち着く感じ。イスフィちゃんとはまた違った、一緒におると空気が和らぐタイプ。

 

ほんま不思議な子や

 

さっきまで胸のことでギャーギャー言うてた自分を思い出して、ちょっとだけ反省する。

 

……ま、まぁちょっとだけ、な。

 

「なぁメルちゃん」

 

呼びかけると、メルちゃんはちゃんとこっちを見る。

 

「ウチな」

 

一瞬言葉を探してから、肩をすくめた。

 

「同い年やし、同じクラスやし、変に気ぃ使わんでええと思っとる」

 

メルちゃんは、少しだけ首を傾げる。

 

「……ん?」

 

「ほら、喋らへんからって遠慮せんでええし。恥ずかしかったら恥ずかしいでええし。あんま気使わんでええんよ?」

 

そう言いながら、湯の中で足をゆらっと動かす。

湯けむりがふわっと立ち上がって、ウチらの間を白く包んだ。

 

「さっきもな、胸で負けたとか言うたけど」

 

ちらっとメルちゃんを見る。

 

「まぁ、正直ちょっと悔しいけどな」

 

メルちゃんは困ったような顔で、ほんの一瞬視線を逸らした……あ、今の反応、かわいい。

 

ウチはイケメンが好きなはずなんやけどなぁ。他の同い年の女の子も多分ウチと一緒やと思う。かっこよくてイケメンで優しくて、そんな男の子と付き合ってみたい。

 

でも不思議と、メルちゃんに何度か見惚れそうになるウチがおる。

 

「でもそれだけや」

 

にっと笑う。

 

「メルちゃんはメルちゃんやし。同い年のクラスメイトやし。それでええやろ?」

 

ウチはメルちゃんと仲良くなりたい。

でも言いたくないこともあるやろし、知られたくないこともあると思う。

 

首にあるハッキリとしたキスマみたいな痕跡も、あんまり喋ろうとせんことも、ウチは気にせん。後者に至っては雰囲気と相まって、逆にカッコイイとすら思ってしまうからなぁ。

 

メルちゃんは少し考えるみたいに瞬きをしてから、こくりと小さく頷いた。

 

「……ん」

 

それを見て、なんか安心した。

 

変に探らんでええ。深読みもいらん。

 

こうして一緒に風呂入って、たわいない話して、明日また同じ教室行く。それだけで十分やろ。

 

「よし」

 

湯船の縁に手をついて、立ち上がる。

 

「ほな、ウチもそろそろ上がろか。のぼせる前に」

 

メルちゃんも、それに合わせて立ち上がる。

 

湯気の向こうで、いつも通り静かで、落ち着いた顔……ほんま不思議やけど、嫌やない。

 

むしろ、ちょっと好きやな、こういうの。

 

ひたひたと浴場の床を二人で歩きながら、出口の方へ向かう。

 

湯気のせいで視界は少し白い。床もまだ温かくて、素足だと妙に感触がはっきり分かる。

 

……その時や。

 

「──わっ!?」

 

足裏がつるっと滑った。

 

泡や。完全に泡やこれ!

 

あ、やばっ……て思った時にはもう遅くて、身体が前に倒れるように持っていかれた。踏ん張ろうにも、体勢的に厳しい。

 

このままやと地面に激突してまう。

 

勢いそのまま、身体が前につんのめった──その瞬間。

 

「っへ?」

 

声が出るより早く、視界の端で影が動いた。

 

ぐいっ。

 

腕を引かれた感覚とともに、ウチの身体は前に倒れていく。やけどその前方にいつの間にかメルちゃんがおった。

タオルを抑えていた手を広げて、倒れそうになってるウチを抱き寄せるように両手を前に突き出しとる。

 

「あっ」

 

「んっ」

 

思わず息が詰まる。

 

額がぶつかるはずやった地面は遠くて、代わりに視界いっぱいにあったのは──メルちゃんの綺麗な顔やった。

当作品で何を楽しみたいか(これからの参考にさせていただきます)

  • ストーリー
  • キャラ同士のイチャイチャ
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