進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する 作:霧夢龍人
朝の学園は騒がしい。
登校時間帯の正門前は、人の流れが絶えず、あちこちで笑い声と足音が混じり合っている。
そんな中を、俺は二人に挟まれる形で歩いていた。
「いやぁ〜、今日もええ天気やなぁ。これ絶対、何かええこと起きる日やで」
「イスフィ、根拠なさすぎだよ」
「根拠はノリや!」
……朝から元気だなぁ。
2の主人公特有のテンションの高さよ。
初代の陰鬱なストーリーとは裏腹に、2のストーリーは単純明快。一般科のなんの力もない主人公が、とある特異個体と接触して強くなっていく!というものだ。
感覚がバグりそうになるが、元々特異個体というのは一生に一度見れるか見れないかレベルである。某狩りゲーでいう、一般人視点から見た古龍みたいなものだ。
そんな存在と主人公は接触し、あまつさえパートナーとして学園生活を無双していくのである。
しかも、しかもだ。
水の特異個体である王種と、花の特異個体である王種。どちらか二つから選ぶことが出来るのである……いや大盤振る舞い過ぎるだろ。王種は全貌が分かっていない個体も含めて全部で“九体”いるが、そのうちの二体を選べるのである。
アグニールですら初代は仲間にならなかったのに、2になった途端序盤のパートナーにできますって……オー〇ド博士も涙目だ。
こんなんチートですやん(白目)
──まぁ?俺も王種で特異個体の仲間入りしてるんですけどね???
アグニが本気出したら木っ端微塵にされる程度の強さしかないが、肩書きとしては俺も同等だ。
正確には王種というのは“同じ王種以外には負けることがない”という称号であって、アグニの因子を取り込んだに過ぎない俺は、偽の王種みたいなもんだが……1部のラスボス倒したんだし、調子に乗るくらい許して欲しい。
てか許せ。
「おろ、なんかメルちゃんニヤニヤしてない?」
「ほんまや!早速いいことあったわ……拝んどこ」
「イスフィちゃんってたまにキモイよね」
俺は二人の会話を聞き流しつつ、いつも通り控えめに歩く。学校と校門を繋ぐ渡り廊下に差し掛かる頃には、学園の喧騒はより大きなものになっていた。
近くには聖堂学園という聖女が座する学園があるため、そこの生徒たちの声も聞こえてくる。2部では聖女もシルエットでしか出てこない。ハッキリ出てくるのは3部からであって、聖堂学園も名前しか登場しないため、特段気にする必要は無い。
R18禁版では、シスターとは?って感じの“生臭女”が出てくるが、ここも今はいらない知識だな。
教室に着く頃には、学園の喧騒はより大きなものになっていた。
特に今日はざわめきの内容が違う。笑い声というより、噂話が渦を巻いている気がした。
「昨日のランキング戦、見た?」
「アマネさんでしょ?完敗だったって」
「それだけじゃないよ。今日も二桁がまた三人落ちたらしい」
「三人もぉ!?」
昨日と今日。
立て続けに起きたランキング戦の話題が、一般科にまで流れ込んできている。
モウガンめ、かなり派手にやっているらしい。
「二日で四人って……」
「しかも相手、同じ人なんでしょ?」
「うん。モウガンさん」
名前が出た瞬間、教室のあちこちでざわめきが広がる。
「モンスター科のランキング荒らしだよね」
「最近、二桁を順番に倒して回ってるって噂」
「ファンクラブ出来たって聞いたけど?」
「私モウガンさんのファンになっちゃった!」
噂は留まることを知らない。俺からすれば、 生意気な後輩ではあるが、人気が出ない方がおかしい。勝気で高身長で、しかも強い。それに加えてあの容姿だ。
もしこの世界にハーレム系ラノベの主人公がいたなら、間違いなくヒロインの一員になっているだろう。アイツは強気すぎて、彼氏が出来た!って言われたらびっくりするけどな。
「……物騒やなぁ」
イスフィがぽつりと言う。
「二日連続でランキング戦とか、学園側も止めへんのやね」
「公式戦だからね。止められないんだよ」
リリアが肩をすくめながら苦笑いした。
その会話を聞き流しながら、席に着く。
モウガンと関わりがあると思われていない。ただの美少女転校生の俺にとっては、この話題は首を突っ込む必要がないのである。
2部のストーリーの都合上、またラスボスがいるからいずれは派手にやる羽目にはなるんだけどな。
……そう思っていたその時、教室の扉が音を立てて開かれた。
一斉に視線が集まる。
入ってきたのはモンスター科の制服を着た、茶髪の少女。そのすぐ後ろには見慣れた人型のモンスターが一体、ちょこちょこと付き添っていた。
「……え」
「まさか」
「本人じゃない?」
「あっ、あぁあくしゅとかってして貰えるのかな!?」
空気が張り詰める。
少女は教室を見渡し、落ち着いた声で言った。
「失礼するわ。このクラスにメル──いいえ、メリュジーヌっていう名前のスラ……女の子はいるかしら?」
瞬間、クラスはおろか外の野次馬の視線全てが、俺へ向けられた。
───☆
──特異個体。
それは既存の進化形態から逸脱し、完全独自の個体へと進化したモンスターである。
──王種。
特異個体の中でも、他の王種以外に負けることを許されないという、最強の称号を誇るモンスター。御伽噺に登場することも多く、とある国では王種の怒りを買い、滅ぼされたという逸話を持つ。
現在確認されているのは、“八体”。
そのうち二体が、学園都市ヴァルヴォッサに封印されている。
「カカッ、本当なのかねぇ。この学園都市に聖女と王種がいるっちゅうのはよぉ〜」
名前は“ノア=ハルベルト”。
独特な笑い方で酒を煽る彼女は、旅人のような装いをしている。
齢は23歳。家族や友人はいない──書類上は。
ノア=ハルベルトは、安酒の入ったグラスを傾けながら、薄暗い酒場の奥で足を組んでいた。学園都市ヴァルヴォッサの外縁。流れ者と裏稼業の人間しか寄りつかない、名も無い酒場だ。
ここヴァルヴォッサでは、年々モンスター被害の報告が多く上がっている。全ての国で、害獣以外は基本的に殺してはいけないという取り決めがあるが、モンスターとパートナー契約をした者だけは殺害を許可されている。
しかしモンスターと友誼を結ぶのは非常に困難。
よって、金を貰って人力でモンスターを倒す者たちがいるのだ。その職業とは──“デヴォーカー”。
一般人からは忌み嫌われ、モンスターからは恐れられる者達の事だ。そして、彼女もそのうちの一人である。
酒場の壁には色褪せた張り紙、床には拭いきれない酒と血の染み。転がった死体は動くことなく、光の消えた瞳で天井を映していた。そんな場所でもノアは気にも留めず、肘をついて顎を乗せ、くつくつと喉を鳴らして笑っている。
「いやぁ……面白くなってきたねぇ。私にとっちゃあ、ひっじょーに都合がいいよぉ〜」
声音は柔らかく、どこか親しみやすい。だがその目は、ひどく冷めきっていた。
「聖女がおって、王種がおって……その上、ドルマンの野郎を殺したスライムまで混ざっとるとはなぁ〜」
グラスを傾け、アルコールを一口。
受け止めきれなかった酒が首筋から流れ滴るも、ノアはやはり気にも留めない。
「都合がいいねぇ〜。これはもう、舞台が出来上がっとる……まるで誰かが、こうなると仕組んだみてぇによぉ〜」
カウンターの向こうで、唯一生きている店主がびくりと肩を震わせる。
正体は分からない。だが、この女が関わってはいけない類だということだけは、本能が告げていた。
いきなり酒場にやって来て、腰に下げている二つの拳銃で客を撃ち殺した女だ。恐怖するのは仕方がないだろう。
ノアは店主の視線を浴びながら、指でテーブルをとん、と叩く。
「王種は八体……いや」
くすり、と笑う。
「九体目になるかもしれんスライムが、一つかねぇ。或いはもう成ってるのか……ともかく、沢山の血が見れそうだ」
脳裏に浮かぶのは、マルデンブルクで撮られたという一枚の写真。映っていたのは、この学園に転入してきたらしい美しい銀髪の少女。
「水と花、そして焔の王種に、このスライム。争わせれば聖女が出てくるのは確実だねぇ〜!」
ノアは心底楽しそうに笑った。
恐れも、信仰も、畏敬もない。彼女にとって王種とは、ただの観察対象であり、聖女を呼ぶための生贄である。
「王が吠えようが、聖女が祈ろうが……世界の転び方っちゅうもんは、最初から決まっちょるんよ」
立ち上がり、外套を羽織る。旅人のような装いの奥には、ずらりと並ぶ数々の武器が見えた。
どう見てもただの人間。
しかし身に宿す狂気と殺意は、到底生身の人間が宿していいものではない。
「さてさて……」
扉の前で、一度だけ振り返る。
「学園都市ヴァルヴォッサ。次は誰が、どんな死に様を見せてくれるのかねぇ。あわよくば、聖女を引きずり出して……カカッ、楽しみだぁ〜!」
朝の涼しい風に髪を揺らしながら、ノア=ハルベルトは歩き出す。
酒を何度も煽り、灰を被ったような髪の毛を乱雑に伸ばした彼女こそ、生身の人間でありながら“狂気”の二文字を被った──二部のラスボスである。
イチャイチャも書きたい。ストーリーも書きたい。
両方やらなくっちゃあならないってのが「作者」の辛くて楽しいところだな。
当作品で何を楽しみたいか(これからの参考にさせていただきます)
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ストーリー
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キャラ同士のイチャイチャ
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どっちも