進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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発情

俺は追い詰められていた。

目の前の無表情でありながら、獲物の前にした獣のように唇をペロリと舐めるモウガンに、ジリジリと後ろのロッカーへと追い詰められる俺。

 

俺スライムぞ?

か弱い種族の代表みたいなものだぞ?

 

本来なら森の片隅でぷるぷる……してる存在である。

 

「逃げないのね」

 

「きゅうん……」

(逃がしてくれないだろ……)

 

「当たり前じゃない」

 

言い終わる前にモウガンの手のひらが俺の顔へ吸い寄せられる。頬をぐにぐにと引っ張らたり、逆に押し付けられたり、暫くそうして遊んでいたかと思うと、次に近付いてきたのはモウガンの綺麗な顔だった。

 

長い睫毛に茶色の髪が僅かに掛かり、整った鼻筋が俺の視界をゆっくりと埋めていく。

 

距離が近い。

 

いや、近いなんてもんじゃない。

呼吸がかかる。吐息が頬を撫でる。【五感超倍増】がこんなところで本領発揮していた。

 

モウガンの心音まで聞こえる気がする。もしかしたら俺の心音かもしれないが、ドキドキで動けない俺にとってはどっちであろうと変わりない。

恥ずかしくて顔を逸らせば、ぎゅっと真正面に顔を向かせられた。

 

「……聖女がアンタは死ぬって言ってたけど」

 

「ん、んきゅ……」

 

「もしかしたらこうやって、今みたいに誰かに襲われて死ぬのかしら」

 

「きゅうっ!」

(そんな訳あるか!)

 

「分からないわよ?」

 

そう言って、モウガンはわざとらしく首を傾げる。俺の方が身長が高いが、モウガンが背伸びするとほぼ真正面から見つめ合う形になる。

お陰で顔と顔の距離も僅かに狭まった。

 

動物種に起きがちである発情期。

ゲームではより強いモンスターを生み出しやすくなるボーナス期間、というものだったが、当然この世界はゲームじゃない。

 

あくまでもゲームに限りなく似た世界なだけだ。

 

だから──モウガンの匂いも、唇の艶も、女性らしい柔かさも、全てホンモノだ。

 

「誤解されると困るから、一応言っておくけれど……私は別にアンタが好きって訳じゃないわ。ただの先輩だし」

 

「んきゅ」

 

「でもまぁ……発情期の相手をしてくれそうなのは、貴方くらいしかいなさそうだし。それにご主人様にお願いする訳にもいかないでしょ?」

 

「んきゅきゅ……」

(だからって、俺が相手するのは……)

 

「つべこべ言わない。先輩なんでしょ?なら私の発情期くらい、鎮めてみなさいよ」

 

酷い暴論だ。

しかし、モウガンは止めるつもりがないようで、更に距離を近付けてきた。

 

僅かに開かれたカーテンから風が吹きこみ、閉ざされた暗い教室へ朝日が差し込む。日に照らされたモウガンは、いつものプライドの高そうな顔じゃなく、微笑むような顔で俺の腰を抱いてくる。

 

背中に優しく爪を立ててきた。

変な感触に嫌な顔をすれば、更に皮膚を擽るように爪を動かしてくる。

 

「口、開けなさい」

 

言われるがまま、口を開けた。

別にモウガンの言いなりになった訳じゃない。ただ、早く解放されたかったからだ。

 

「ふふ、良い子ね」

 

 

 

──☆

 

 

 

私はコイツのことが嫌いではない。

だが繁殖相手として好きかと聞かれれば、頷くことはないだろう。

 

顔は好みだと思う。性格も、わざわざクールなキャラを演じようとするポンコツさを抜けば、別に悪くない。スタイルに関しては、悔しいがメルの方が圧倒的に上だ。

 

負けることが嫌いな私にとって、メスとしてメルに完全な敗北をしているのは心底穏やかじゃない。

 

けれど……。

 

「ん、きゅ」

 

メルの快感を我慢する顔が、私の嗜虐心を擽ってくる。

柔らかな唇とうねる舌の感触も、細い腰に回した手を無意識に握ってくるメルのいじらしさも、全てが私の興奮材料になっていた。

 

発情期なんて、体のいい“嘘”だ。

 

そんなのはまだまだ先だし、ヴェスティ様から教えて貰った聖女からの情報もほぼ全て教えた。話が終わったら、そのまま解散のつもりだった。

 

でも結局、私たちはこうして誰もいない教室でキスをしている。

 

寂しかったとか甘えたかったとか、そんなのじゃない。もしかしたらそんな気持ちもあるかもしれないが、認めたくない。発情期なんて言ってキスしてるのも、ただメルの我慢する顔が見たかっただけだ。

 

キスに夢中になっているメルの服を捲り、下着の上から胸を触る。それだけで更にトロンとした顔を浮かべるんだから、余程敏感なのだろう。

 

後ろにあるロッカーにメルを押し付け、何度も何度も口内を舐る。

きっと教室じゃ、こんな表情誰にも見せないはずだ。メルを一般科の教室から連れ出した時に隣にいた二人のメスも、私がこうしてメルを嗜虐のままに貪っているのを知らない。

 

たった一日であそこまで仲良さそうな友人を作ったというのは、メルの人柄がなす結果だと思う。そのうちの一匹は、不安と嫉妬の混じる表情を私に向けていた。

 

コイツ、もしかして嫉妬に駆られた他のメスに殺されるんじゃないかしら?

 

と、私がそう思ってしまうのも無理はないはずだ。

モンスターにとって、食と睡眠と繁殖は切っても切り離せないもの。それを誇りこそすれど、恥ずかしいと思う必要はない。メルが一体何を考えて新しいメスを増やしたのか分からないが、我慢出来なければ私に頼めばいいのだ。

 

ヴェスティ様やアグニール、フォスでもなく私に。

 

独占欲なんかじゃない。

ただヴェスティ様を除いた他のメスに、メルの身体に触れてほしくないだけだ。

 

キスをして、胸やお腹や顔に触れて、互いに溶け合いそうなほど燻る“熱”を交換しあう私たち。

 

──その時。

 

「あれー?モウガンさんどこ行ったんだろ」

 

「ね、ねぇもう教室に戻ろうよ!授業始まってるよー?」

 

「えーでもさぁ、一般科の転校生と一緒に二人でどこかに行くって怪しくない?」

 

見知らぬ生徒の声が、廊下の外から空き教室へ響く。

 

ぴたり、と動きが止まった。

 

メルの指先が、私の制服の裾を掴んだまま硬直する。私も反射的に息を止めた。

 

なんてタイミングが悪いのかしら。

 

廊下の足音から察するに三人。いや、四人だろうか。足取りは軽いようで、好奇心半分、野次馬半分って感じの歩幅で歩いてくるのが分かる。

 

「この辺じゃない?」

 

「さっきここ曲がったよね?」

 

「え、まさか空き教室とか?」

 

ガラッ、と。

隣の教室の扉が開く音が響いた。

 

私はどうやら有名になりすぎたらしい。いつの間にかファンクラブとやらが出来ていて、たまに私の後を付けて来る人間もいたが無視を決め込んでいた。

 

しかしここまでしてくる人間が居ようとは、私も想定していなかった。身から出た錆という奴かしらね。

 

「ん、きゅ……!」

(は、離れるぞ……!)

 

「だめよ」

 

トロンとした顔から正気に戻ったメルが、グイグイと私を追いやるように力を込めた。しかしその手を掴み、一度私の腕の中にメルを抱き込む。そして後ろにある掃除用具入れのロッカーに、一緒に入り込んだ。

 

せっかくいいところだったのだ。邪魔をされたくはないし、途中で止めたくはない。

 

「あ、ここの教室とかじゃない?」

 

「えー、居るのかなぁ」

 

「てか何でモウガンさんは、こんな外れの方にある教室まで来てるんだろ」

 

「あの可愛い転校生とえっちなことしてる説」

 

「うはっ、ないだろそれは!」

 

喧しいし騒がしい。

ガラッ、と勢いよく開かれた教室のドアの音を聴きながら、メルの足の間に膝を入れ、声を漏らさないように再びキスをした。

 

音を立てれば生徒たちが気付いてロッカーを開けて来るだろう。

 

「……きゅ、うぅ」

 

──だから、私の背徳感を刺激する。

 

メルが付けている下着は、恐らくヴェスティ様が買ったものらしい。私が付けている下着も同じくヴェスティ様が買ったもので、黒色に白のフリルが入っている可愛らしいものだった。

 

私は一度顔を離し、自身の制服のボタンを一つずつ外していく。私がいつも着ている服は伸縮性があり、ずっと着ていても違和感を感じない。しかし“制服”というモノは着ているだけでイライラが募る。

 

動きを制限され、縛られている感覚に陥るからだ。だからロッカーという狭い空間にいる以上、制服は必要がない。

 

ボタンを外し終え少しだけ楽になる。私の下着が露出し、メルの視線が胸に吸い寄せられているのが分かった。

 

「そんなに気になるかしら?」

 

と、耳元で囁けば、頬を赤くして顔を何度も横に振る。その癖胸から視線を外そうと、見当違いの方向へ視線を忙しなく動かしている。

 

……何だか可愛いわね。

 

「きゅ、きゅうぅ」

(ふ、服着てくれよ。外に人がいるじゃんか)

 

「さぁ?なんの事かしら」

 

「きゅっ!」

(分かってるくせに!)

 

僅かに声を震わせるメル。

 

「あれ?なんか声しなかった?」

 

「え、やめてよ?私ホラーとか苦手だから」

 

「私も聞こえた!なんかここら辺から聞こえてきたよね」

 

しかしその声で、教室内にいた生徒がロッカー周辺に近付いてくる。まだバレていないとは思うが、これ以上暴れたり声を出せば間違いなくロッカーを開けられるだろう。

 

それをメルもわかっているのか、ハッと口を抑えて私を睨み付けてきた。

 

いや、声出したのアナタよ?

 

とは言わない。

代わりにメルの着ている服に、私は手を掛けた。ブレザーのボタンを一つずつ外し、Tシャツも外していく。

 

メルは抵抗しなかった。

というより、抵抗したら音でバレるから抵抗できない、の方が正しいだろうか。

 

外し終わったTシャツの隙間からは、黒い下着が覗く。

どうやらヴェスティ様のセンスはピカイチらしい。モンスターとしては下着なんて邪魔に過ぎなかったが、こうして見るとメルの魅力を引き立てているのが分かる。

 

恥ずかしいのか胸元を両腕で囲うように隠して、「うぅ」と小さな声を漏らすメル。

 

「んきゅぅ」

(いじわる)

 

「……やばいわね、これは」

 

抵抗できない状況で服を脱がされるという、私のSっ気にそっぽを向いたメル。大きな胸を黒い下着が覆い隠し、白くて綺麗な素肌と臍を囲うように赤いスライムの紋様が明滅する。

 

その瞬間。

 

──私の理性の糸が切れる音がした。




TIPS 通常種、特殊個体、特異個体、王種の違い。

通常種──とある人物によって普通の動物が進化した結果、火や水などの属性を扱えるようになった。感情によって更なる進化をするらしい。

特殊個体──通常種の中でも特殊な進化をしたモンスター。あくまでも通常種からの派生進化である。感情によって進化する。

特異個体──同じ種類の個体は存在せず、通常種や特殊個体との繋がりはない。また、常に自己進化し続けているため、属性攻撃を受けると耐性を得ていくという特徴を持つ。それゆえ感情によって進化することはない。

王種──特異個体の中でも、更に強力な個体が王種という頂きに到達できる。同じ王種以外で敗北した場合は、王という称号を剥奪される。この世の頂点個体たちを指す言葉である。
同じく感情によって進化することはない。

当作品で何を楽しみたいか(これからの参考にさせていただきます)

  • ストーリー
  • キャラ同士のイチャイチャ
  • どっちも
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