進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する 作:霧夢龍人
俺は調子に乗っていたのかもしれない。
学校に行くという久々感と、潜入調査という男の憧れが詰まった四文字に全力で乗っかってしまった。
あのモルドが俺みたいに言葉が喋れないモンスターに生徒役をお願いするとは思えなかったし、どうやっても目立つモウガンも向いていない。だから潜入調査と言いつつ、別の目的があるのは分かっていた。
しかし3RIIに関しては初代と違って、鬱展開はない。基本的に爽快モンスターバトルモノを地で行くゲームになっているためだ。そのため、誰かの命を背負うとか、誰かが死ぬとか考えずに気楽に出来たのである。
まぁクールぶってた点は厨二病と言われても仕方ないが、男はいつだって子どもに戻ってしまうものだ。
──決して言い訳をしてる訳じゃないよ???
その点、モウガンから聖女伝いで死ぬと言われた時は流石にビックリした。どうやって、どのように、いつ死ぬかを明白にすれば、事前に予防できるだろうが、聖女が何故それを言わないのか疑問だ。
もしかすれば知っている未来が変わるからこそ、安易に伝えてこないのかもしれない。もしそうなら、未来は変えられるという認識になる。ならば
これから準備していけばいい。
俺だって元の世界という願望はご主人様に会ったお陰で、あまり思わなくなった。だから最悪俺が死んでも、ご主人様やモウガンたちが無事ならそれでいい。
と、思っていたのだが。
「メル、アンタ……どんだけ私の性癖を破壊すれば気が済むわけ?」
その守るべきモウガンに襲われてしまっている。
息が荒く、理性を必死で抑えつけようとしている様に見えるが、右手は俺の下着のホックに手が伸びていた。
しかも当の本人は、既に上を脱いで下着を露出している。腰に巻いている牛の尻尾が解かれ、俺の腰にキツく絡みついてくる。まだ外に四人の生徒がいるのに、モウガンは我慢の限界のようだった。
これ以上はヤバい……!
バレるのもそうだが、ゲームではぼかされていた交配が一番ヤバい。モンスター同士の場合、スライムは相手が雄でも雌でも交配ができる。俺の懸念点はそこだ。
雌同士の交配だと、どのような行為から子どもが出来るか分からない。キスや肌の触れ合いはセーフだと思うが、更にエスカレートした場合、俺は元おっさんでありながらママになってしまう……。
物凄く嫌だ。
俺は精神的には男のつもりだ。
なのにモウガンから「お前がママになるんだよぉ!」されたら、精神的にぶっ壊れる気がする。
そもそも、元おっさんがお腹膨らませてる図を誰が見たいんだよ!
「んきゅ!」
という訳で最終手段だ。
まぁ、ただご主人様の元に召喚されに行くだけなんだが。今の時間、ご主人様が担当している授業は恐らくないはず。
例えあったとしても、【擬態偽装】と【
てなわけで。
「ぎゅぐふふふ……」
「っ、なによ」
「きゅっ!」
(さらば!)
一方、残されたモウガンは、ロッカーの中で呆然としていた。メルを抱いていた尻尾はゆらゆらと宙を舞い、メルのいなくなった空間を寂しげに漂う。
顔を俯かせ、プルプルと震え出すモウガン。
あんなに発情してしまったことも、発情した相手がメルだったことも、更にはメルが急に居なくなった途端変なモヤモヤを感じてしまったことも……その全てで、モウガンの高いプライドにヒビが入った。
襲ったのはモウガンからで、メルはあくまでも抵抗はしていた。しかし、モンスターは睡眠、食事、繁殖を人間以上に大事にする生き物だ。理性の糸が切れ、繁殖もやむなしといった状況で消え去ったメル。
もはやメルの今夜の運命は決まったようなものだろう。
南無。
───☆
モルドは近所のカフェにて、待ち人の訪れを待ちながらコーヒーを嗜んでいた。彼は無類のカフェ好きで、人との待ち合わせにはカフェを指定することが多い。
カフェの名前は“TempUs”
カラン、とドアベルが鳴る。
視線を向ければ、長めのフードを被った人物が立っていた。コツコツと高いヒールの音が響き、やがてモルドの対面の席に座る。
「やぁ、ようやく来たか。待ちくたびれたぞ」
「……」
「……無反応かよ」
モルドの挨拶は残念ながら、帰ってこない。
ちょっとしょんぼりとしつつも、モルドはコーヒーを飲んで落ち着く。値段の割には中々に深みを感じる味だった。
そして一呼吸置いたあと、話を続ける。
「それで、だ。お前の言う通り、メルちゃんとモウガンちゃんは俺と聖女のコネを使って編入させて置いた。ヴェスティは疑問視してたけどな」
「……」
「……まぁいい。あと、聖女がもう一度お前に会いたがってたぞ」
“彼女”は聖女の二文字を聞くと、わずかに顎を伏せた。フードの影が深くなり、表情はモルドから伺えない。
「今は……無理かな」
辛うじて聞き取れた声色は平坦なもの。しかし、長年の付き合いがあるモルドからすれば、かなり迷って出した答えなのが分かっていた。
だからこそ、モルドは何も言わない。
「そうか……まぁ、あいつも困ってるんだ。お前から聞いた話のせいでな」
モルドはゆっくりとカップを持ち上げ、縁に残った僅かな泡を眺める。
そして一口含み、舌の上で転がしてから、静かに飲み込んだ。
カチャリ、と。
必要以上に丁寧な動作でソーサーへ戻す。
だが最後の一瞬、わずかに力が入ったのか、陶器が小さく鳴った。
「メルが死ぬ未来」
モルドはわざと軽い口調で言った。
だが指先は、カップの取っ手を離さないままだ。
フードの奥の“彼女”は、微動だにしない。
しかしテーブルの下、膝の上に置かれた手が、ほんの僅かに強く握られている。
「水の特異個体と接触する前後で、分岐があるんだろ?」
モルドは視線を上げ、思い出すように口を開いた。
「……」
「桜の特異個体が絡んだ場合は生存率が上がる。だが、水を選んだ場合は極端に落ちる。そういう話だったな」
店内の奥でスプーンが落ちる音がした。一瞬だけ周囲のざわめきが揺れる。だが二人の間には、それ以上に重い沈黙が落ちていた。
フードの奥の視線が、わずかに鋭くなる。
「私は“可能性”を言っただけ」
「可能性、ね」
モルドは苦笑する。
その可能性に何度苦悩したか、聖女と同じ気持ちを“彼女”から味わっているモルドは、再びコーヒーに手を伸ばした。
「だが聖女は可能性じゃなくて“事実”として受け取る。あいつは優しすぎるからな。それをお前が一番分かってるんじゃないか?」
……やはり、沈黙。
店内のスピーカーから流れるジャズが、妙に場違いに感じられた。指先でカップの縁をなぞれば、冷たい空気を押し戻すような僅かな温かさが指先に集う。
「水……いや、
“彼女”が初めて、はっきりと告げた。
「イスフィに接触する準備が整ってる」
「桜は?」
「まだ様子見かな。干渉はしてるみたいだけどね」
モルドは顎に手を当てる。
「なるほど……前にお前が言ってたよな。イスフィがどちらを選ぶかで、流れが大きく変わると」
「……うん」
「お前が介入する訳にはいかないのか?」
「それは無理だよ。何十回……いや、何百回試したけど私が干渉すると悪い方向に行っちゃうみたい」
彼女がそう答えれば、モルドは「なるほどなぁ」と呟いて白いカップの底に残ったコーヒーを飲み干した。
カチリ、と。
今度は確かに、陶器が硬い音を立てた。
「メルが介入すれば、分岐は更に増える。だからと言って私が介入すれば、メルの死が確定する。だから私は直接動けないよ」
店内の喧騒が、遠くに感じられる。
モルドは数秒、何も言わない。
視線だけをテーブルの木目に落とし、静かに考える。
やがて、息を吐いた。
「なるほど。だからイスフィちゃん……だったか?その子の近くにメルを配置したんだな。分岐を増やして生き残る未来を掴むために」
「そうだよ」
「ヴェスの奴は不思議がってたが、何せ俺は未来を知ってるわけじゃないから、答えようがないからな」
モルドは肩を竦めて見せる……がその目は笑っていなかった。“TempUs”の壁に掛けられた時計が、静かに秒針を刻む。
コツ、コツ、コツ。
やけに大きく聞こえる。
フードの奥の“彼女”は、その音に一瞬だけ視線を向けた。
「時間は、もうあまりないよ」
淡々とした声音。
やはり顔は見えない。しかしモルドと聖女の二人は“彼女”の正体を知っている。そして“彼女”がいたおかげで、マルデンブルクでは誰一人死なずにドルマンを倒すことが出来た。
「分かってる」
焦ったような“彼女”の口調に、落ち着けという意味も込めて言葉を返す。
深いフードの奥でどんな表情をしているのか分からないが、“時間”が足りないのなら焦る気持ちも分かる。
“彼女”の首元にある黒いチョーカーを眺めながら、モルドはため息を着いて窓の外を眺めた。
天気は良い。
しかしそれすらも、嵐の前の静けさの様に見えて不気味だった。
当作品がR18なら最後まで行ってました。
何なら書いてる途中でR15に収まらないと慌てて気づいて消しました。
危なかったぜ……。
ていうか、今後の展開的に【曇らせ】を追加するか非常に悩みます
当作品で何を楽しみたいか(これからの参考にさせていただきます)
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