進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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ちっちゃい子はめんどくさい

「いいか?私は確かに負けたが、たった一回だけだ」

 

「ん」

 

「そもそもまだまだパートナー達の練度も、私の指示もまだまだ修行中の身だしな」

 

「ん」

 

「なのに何故たった一回の敗北で、私はここまで煙たがられなければならないんだ。おかしいと思わないか?」

 

「ん」

 

「さっきから頷いてばっかり……本当に聞いているのか?」

 

「ん!」

 

……めんどくさい。

 

教室へ戻ろうとしていただけなのに、気づけば俺はただひたすらアマネの話を聞く羽目になっていた。最初はただ頷いているだけで良かったのに、どんどん愚痴が出てくるわで止まる気配はない。

 

気分はさながら、スライム科じゃなくドシタンハナシキコ科の気分である。

 

その後も暫くうんうん頷いていると、ようやく落ち着いたのかため息をつくアマネ。

 

「すまなかった。思っていたよりもストレスが溜まっていたようだ……しかしお前、もしかして喋るのが苦手なのか」

 

アマネは腕を組んだまま、じっと俺を見ている。さっきまでの勢いは落ち着いているが、まだ少しだけ目が赤い。泣いた後だと分かる程度には。

 

俺は小さく頷く。

 

「ん」

 

喋るのが苦手、というより喋れないが正しいだろうか。

 

特殊な進化をしたせいか、他の人型スライム種なら今頃喋れてるはずなのに全く喋れる気配がない。このままじゃ、お姉さんっぽい見た目してる癖に「んきゅんきゅ」としか喋れないスライムの出来上がりになってしまう。

 

……何故かご主人様はそっちの方が喜びそうな気はするが、俺だって喋りたい。

 

「本当にそれしか言えないのか?」

 

俺は深く頷いた後、肩をすくめる。

 

廊下は静かで、遠くから授業の声がかすかに聞こえるが、この辺りには人の気配がない。だからこそ、アマネの声がよく響く。

 

「……なるほどな」

 

アマネはそれ以上深くは聞いてこなかった。意外とあっさりしている。少し間が空いた後、アマネは窓の外に視線を向けながら、再びぽつりと話し始めた。

 

「私はな、負けたこと自体よりも、その後の周囲の反応が気に入らない」

 

さっきと同じ話題だが、声の調子は落ち着いている。

 

「十二位という立場は中途半端だ。一桁目前で期待もされるし、同時に妬まれもする。そこに敗北という分かりやすい結果がついた。だから一斉に言われる。“やはりそこまでか”と」

 

拳を強く握りしめる。

腕から浮き出た血管が、その悔しさを滲ませていた。

 

「だが私は、あの一戦で全てを出し切ったわけではない。パートナー達もまだ成長途中だ。私の指示も未熟だ。だからこそ、これから伸びる余地がある」

 

言いながら、少しだけ自嘲気味に笑う。

 

「それでも周囲は、“負けた”という事実だけを見る。そこが腹立たしい。喧嘩を吹っかけたのは私の方だから、モウガンに文句はないがな」

 

俺は黙って聞く。

こういう時、余計な言葉は不要だ。当のアマネは俺の反応を待つように視線を向ける。

 

「なぁ、お前はどう思う」

 

短い問いだが、真剣だ。

 

俺は少し考えてから、指を一本立てる。

 

「……一回、か?」

 

アマネの言葉に俺は頷く。

 

そしてその指をゆっくり折る。もう終わり、という意味ではない。まだ続きがある、という意味だ。

 

俺の考えを見たアマネは数秒考え、静かに息を吐いた。

 

「なるほど、一度きりで全てが決まるわけではない、と」

 

「ん」

 

俺は強く頷いた。

 

「そうだな。私もそう思っている。だが、人は結果を急ぎたがる」

 

しばらく沈黙が続く。

 

さっきまでの怒りは、もうほとんど残っていない。ただ、悔しさだけが静かに残っているように見える。

 

涙も既に止まっていた。

 

「私は上に行く。十二位で止まる気はない」

 

はっきりとした口調。

 

涙の流れた跡をぐしぐしと袖で拭い、闘志を燃やしているようだ。ストーリーではライバルポジションなだけで、彼女の掘り下げはなかった。

 

しかし尊大な口調を裏打ちする自信とプライド、そして努力を止める気のない負けず嫌いさがアマネの強さなのだろう。

 

「次は勝つ。そのために鍛えている」

 

「ん」

 

「お前も……聞き役としては悪くないな。余計なことを言わないのがいい」

 

褒め……られてるんだよな?

少し微妙なところだが、悪い意味ではないらしい。

 

廊下に二人分の足音が響く。

 

さっきまで泣いていた人間とは思えないくらい、アマネの歩き方はしっかりしている。気持ちの整理は、ある程度ついたのだろう。

 

俺は横を歩きながら、ふと足元に違和感を覚える。

 

一瞬だけ、床が冷たく感じた。水の気配のようなものだ。しかし確認しても気配だけしか感じ取れず、それ以外の違和感を感じ取れない。

 

アマネは気づいていないみたいだ。

 

水の特異個体がいよいよ動き出したのか、あるいは桜が既にイスフィと接触しているために、妨害行為をしようと暗躍しているのか……ううむ、心配だ。アグニールがいる限り水に負けることはないだろうが、桜はアグニールよりも強い。

 

属性の関係上、焔ですらアイツを焼くことは出来ないからだ。

 

……早くイスフィの元へ戻らないとな。

水を選んでも桜を選んでも物語の進行は変わらないが、選ばなかった方は“敵”になるからな。かと言って俺がなにか助言を言えば、邪魔されたと感じ取った両名が暴れかねない。

 

静観するしかないのだ。

 

と、考え込む俺をアマネが見つめてくる。

 

「……お前」

 

「ん?」

 

疑問符を浮かべてアマネを見つめ返せば、一瞬だけ俺を観察するように見つめ、それから小さく鼻を鳴らす。

 

「次に私が勝つところを、見ているといい」

 

宣言のようでいて、確認のようでもある。

 

俺は軽く頷いた。

 

「ん」

 

それで、十分だった……はずだったんだが。

 

「おい、やっぱりもうちょっと返事をしろ。あとお前ムカつくくらいスタイル良いせいで、見上げる私の首が痛い。少し屈め馬鹿者」

 

「ふぁっきゅ」

 

「……お前のそのデカイ胸をもぎ取ってやろうか、あぁん?」

 

やはり女の子は面倒臭い、特に不機嫌な時は。

モウガンしかりアマネしかり、気の強い女の子はたまに理不尽である。

 

と、小さい背丈のアマネを見下ろしながら、改めてそう思った。

当作品で何を楽しみたいか(これからの参考にさせていただきます)

  • ストーリー
  • キャラ同士のイチャイチャ
  • どっちも
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