進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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桜の特異個体──桜珱妃《オウヒ》

「うぅ、パパが酷いよママぁ……」

 

チビスラが甘えた声を出しながら、メルちゃんの胸元に顔を埋める。

 

……いや、ちょっと待って。ちょっと待ってや。

 

「ん……」

 

メルちゃんはいつもの優しい顔で、チビスラを撫で撫でしている。その光景があまりにも自然すぎて、ウチの脳が処理を拒否しとる。

 

確かにおっぱいのサイズだけ見れば、どう考えてもママ側なんはメルちゃんや。そこは否定せぇへん。否定できへん。

 

でもな!?

でもやで!?

 

ウチですら気軽に触れへんメルπに、あんな無邪気に顔を埋めるとか何事やねん。

 

なんやその特権階級。

なんやその赤ちゃんポジ。

なんて羨まし……いや違う、けしからん!

 

「てかパパとママってなんやねん……」

 

ウチとメルちゃんが娚婦(ふうふ)みたいになっとるやないか。

 

──いや待て。

 

それってつまりウチがパパで、メルちゃんがママってことやろ……?いやいや落ち着け。頭働かせて答えを出せウチ!

 

「……最高やん」

 

アカン、駄目やった。なんも頭働かんくて、思わず呟いてしもた。

 

天井を仰ぐ。

なんやろなぁこの多幸感。学園への途中入学が決まった時でもこんなに嬉しいと思わんやったで。

 

オトン、オカン。

ウチ、将来有望かもしれん。メルちゃんをママとして紹介する日が来たら、赤飯はええから式場だけ押さえとってくれな。

 

あとメルちゃん、一緒に旅行も行こ。二人と一匹で。いやでもウチは四人家族が理想なんよな……今のチビスラが娘枠やったら、二人目も……いや何考えとんねんウチ。

 

顔が熱い。

アカン、ホンマに妄想が止まらへん。

 

その間もチビスラは「ママぁ……」ってすりすりしとるし、メルちゃんは本気で慈愛の表情やし。なんやこの完成された家族。

 

「なぁ、ツッコミはいないのか?一応私もいるんだが、放置されるといじけちゃうぞ」

 

アマネさんが不満げに言う。

 

せやった、おったわ。アマネさんも凄い人なのに、存在感が薄れるレベルで今の光景が強すぎただけや。

 

「ん」

 

メルちゃんは撫でるのをやめへん。てか、やめる気ないやろそれ。何か母性感じてしもうてる表情してるやん。

 

「お前はいい加減に撫でるのをやめろ。私でもバブ味を感じてしまいかねん」

 

「ッ!?アマネさんはウチの娘やった……?」

 

思わず口から出た。

 

ならちょうど四人になるな。ウチとメルちゃんと娘二人、最高の家族になりそうな予感しかせぇへんわ。

 

「……もう私帰っていいか?」

 

「でもアマネちゃんはママの肩に乗ってるやん。それもうウチの娘ってことやろ?」

 

「しれっとちゃん付けして娘扱いするな、頼むから死んでくれ」

 

反抗期な娘を宥めながら、ウチは将来設計を確認する。指輪、式場、旅行先、子ども部屋の間取りまで見えてきとる。あまりにも具体的すぎて我ながら怖い。

 

そうと決まれば、このチビスラに名前を付けてあげないといかんな。

 

どういう名前が──『ちょっと待って、その子はボクじゃないよ』──ええか……ん?

 

また声が聞こえてきた。

てっきりチビスラから聞こえてきたと思ってたんやけど、どうやら違うっぽいな。

 

喋るスライムといい、てっきりこの子やと勝手に勘違いしてもうたわ。

 

『ボクはこっちだよ。そんな弱いモンスターより、ボクみたいな強いモンスターの方がいいでしょ?』

 

甘くて優しい匂いを伴う声色が、どこからか聞こえてくる。

 

コイツが強いモンスターかどうかはしらんけど、流石に最弱と言われとるチビスラよりかは強いやろなぁ。そこは同意する。

 

「……まぁ、弱いモンスターよりかは強いモンスターの方がええな」

 

『でしょ?だからボクを選びなよ』

 

チビスラが弱いって言うことは有名や。三大最弱モンスターに名を連ねるだけあって進化も中々出来んし、位相を持ってない個体も多い。

 

メルちゃんの隣に立てるような女になるためには、モウガンさんのパートナーモンスターみたく、強いモンスターの方がええのは間違いないことや。

 

事実、ウチもそれを望んでここに来たわけやし。

 

けど。

 

「……うーん、弱くてもウチはこの子とパートナーになりたいかな。アンタがこの子と仲良くなれるんやったら、選んでもいいんやけど……口ぶりからして、嫌そうやん」

 

『ふぅん、つまりボクじゃなくてその雑魚を選ぶってこと?』

 

「まぁ、そうやな」

 

気が変わった。

 

弱いモンスターはおるけど、強くなれないモンスターはおらん。それにここで出会ったのも何かの縁やし、強い弱いに囚われてたウチには丁度いい。

 

やからウチは、この子以外は選ばん。

 

『愚かだね。しかも隣のそいつは、腹立たしいことに王種の資格もあるみたいだし……』

 

「王種?どういうことや」

 

『教える義理はないよ、今から君とボクは敵になったんだから』

 

んな理不尽な。

 

まぁだからといって今更前言撤回するつもりもウチにはないし、それを許してくれそうな気配もない。やけど、敵になったっちゅう言い方的に、周りの人にも被害が及ぶのは避けたい。

 

この学校の教師はみんな強いパートナーがおるけど、相手がどんな強さをしとるか分からんから安心できん。

 

「アンタ、名前は?」

 

せめて名前でも聞ければ、どんなモンスターか分かって対策にはなるかもしれん。

 

そう思って聞いたウチの耳に飛び込んで来たのは、声の主がとんでもないモンスターっていう情報やった。

 

『ボクかい?これも教える義理はないんだけど……まぁいいか。ボクは桜の“王種”──桜珱妃(オウヒ)。せいぜい妄想に浸って、ボクに殺されないように頑張ってね』

 

「……うせやろ」

 

今、なんて言った?王種って言ったよな?

さっきもオウヒは、多分やけどウチのチビスラを指さして王種の資格がある言うたけど、コイツ自身がそもそも王種やったんか。

 

もちろん、ハッタリの可能性もあるにはある。

 

やけど王種は、三千年前に最強と謳われる“万魔”が所以の文字通り王たる種のことや。御伽噺やら神話やらに山ほど出てくる存在やから、知らんもんはおらん。

 

何種類おるか、名前な何か、具体的な生息地はどこか、ウチははっきり知らんから、コイツがもし王種を名乗ったとしても今のところ否定できる材料はない。

 

むしろ、夢に干渉してきたり、声を飛ばしてきたり、生半可なモンスターが出来ないことをできている時点で──本当と断定して動くべきやな。

 

「この学園……いや、学園都市には沢山のモンスターパートナー達がおる。ウチが助けを求めれば、すぐに協力にやってくる。それでもウチを殺せるんか?」

 

ブラフや。

ウチが誰かに助けを求めてたとして、そんな大勢の人らが来るわけが無い。

 

『出来ないとでも?』

 

その声には、明らかな確信がこもっとった。

 

桜の匂いが強まる。

懐かしさと甘さが混じった花弁の匂いが、肺の奥底まで入り込んでくる。

風はないのに桃色の花びらが舞い、吹雪のように押し寄せて病まない。

 

周りの植物は大きく育ち、花は人を飲み込めそうなほど巨大に咲き誇る。

 

オウヒの力のせいなのか分からんけど、メルちゃんもアマネちゃんもチビスラの姿も消えて、ウチとオウヒだけが対面する形になる。

 

『ボクは王種。桜の頂点。君が望む強さそのものだよ』

 

「は、ははっ……」

 

思わず笑いがこぼれた。

なるほど確かに、これは間違いなく王種と言っても過言やないな。今まで疑ってた気持ちが確信に変わったわ。

 

でもウチは、強いからと言って弱いモンスターから乗り換えたくない。前言撤回して、チビスラを見捨てるような女にはなりたない。

 

だって、そんなのめっちゃダサいやん。

 

「……やから何やねん、ウチはウチの力で強くなる。そんなポッと貰った力で強くなるより、ウチとこの子で強くなった方が万倍ええわ」

 

『ふぅん、そっか。まぁいいよ。死ぬ時までその威勢が続くといいけどね』

 

そう言うと、オウヒの声は綺麗さっぱりなくなった。

 

あんなに伸びきっていた植物は元に戻り、メルちゃんはチビスラを抱き抱えたまんま。アマネちゃんもその様子を見ながら、退屈そうに空を眺めとる。

 

……王種に真っ向から喧嘩を売ったってこと、誰に伝えればいいんやろか。

 

ちょっと途方に暮れるけど、ふと思い出したんは、メルちゃんとそっくりの髪色と眼をした先生の姿。アグニールちゃんっていうめっちゃ強い王種を従える、ウチと同い年くらいの凄い人。

 

あの人やったら、ウチの話を聞いてくれるかもしれん。

当作品で何を楽しみたいか(これからの参考にさせていただきます)

  • ストーリー
  • キャラ同士のイチャイチャ
  • どっちも
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