進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する   作:霧夢龍人

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もぎ取った勝利

俺、いっつも自分より圧倒的に強いやつとしか戦ってないよな。

 

アグニールだったりドルマンだったりオウヒだったり、未成年も遊ぶモンスター育成ゲームとは思えない位の負けイベの多さである。ご主人様やアグニールは死ぬし、俺も何度も死にかけるし……でも俺は、この戦いに勝たなければならない。

 

勝ってご主人様とイチャイチャしなければならないのだ。

 

「メルが着いて、来たら二人を守る、人がいなく、なるよ……?」

 

「んきゅきゅあ」

(俺のコピーを置いていくから大丈夫だ)

 

──【核分裂】

足元から、ぬるりともう一体のスライムが分離する。俺と全く同じ見た目のコピーだ。オリジナルである俺には劣るが、それでもそこらのモンスターよりは遥かに強い。護衛としては十分すぎる戦力だろう。

 

戦える戦力は多い方がいいし、出し惜しみをして負けたのが前回のオウヒ戦だ。

 

もう二度と、肉塊になったアグニールを見るのはごめんである。

 

「……わかった、一緒に行こう」

 

「んきゅ」

(ありがとう)

 

再戦の火蓋は、既に切られている。

 

 

 

───☆

 

 

 

「逃げろ!!早く!!!」

 

「振り返るなっ!」

 

「取り残された生徒はいないか!?」

 

普通科の教室。

悲鳴をあげ逃げ惑う生徒たちを導く先生たちは、先の爆発を引き起こした存在に頭を抱えていた。

 

廊下の壁は大きく崩れ、瓦礫が散乱している。焦げた木材の匂いと砕けた窓が事態の大きさを物語っていた。

 

その中心に、彼女は佇んでいる。

 

桃色の髪と、澄んだ青い瞳。

白い着物を着た美しい少女の姿は、とある文献にてこう記されている。

 

─── 血桜の妖艶姫、と。

 

「なぜこんな場所に王種が出現した!?」

 

「分かりません!ですが今は、生徒の安全が第一です!」

 

教師たちは顔を青くしながら、避難誘導を急いだ。建物を侵食する黒い蔦と桜の花弁に触れないように、各々のパートナーで道を切り開いていく。

 

そんなざわめきを気にも止めないオウヒは欠伸を噛み殺しながら、逃げ遅れた人間目掛け攻撃を開始した。邪魔が入らなければ、数分程度で学園を制圧できるだろう。

 

それ故の余裕、慢心がオウヒを包む。

 

「はーぁ、雑魚ばっかりでめんどくさいなぁ。僕と君たちとじゃあ、戦いにすらならないの早く気付けっての」

 

事実、負ける可能性がない戦いだ。

 

淵は何故か出張って来ないし、邪魔をしてくるであろう焔は学園じゃ本気を出せないのが分かりきっている。そもそも、属性的に相性がいいのはオウヒ側だ。

 

あの王種になりたてのスライムは未知数だが、焔よりも強いとは思えない。焔を殺し、スライムを殺せば、後は如何様にでも出来る。肝心の聖女は寿命の観点から見て、オウヒの邪魔をする事はできない。

 

だからこの勝負は既に、オウヒの勝ち──

 

「ふぁっきゅううううう!!!!」

 

「っぐふ!?」

 

──のはずであった。

 

横っ面からいきなり凄まじい衝撃を叩き込まれ、オウヒの体が横薙ぎに吹き飛ぶ。

 

ドゴォォォォン!!

 

廊下の壁を突き破り、そのまま校舎の外壁へと叩きつけられる。瓦礫が弾け飛び、コンクリートが粉砕された。教師も生徒も、一瞬何が起きたのか理解できず固まる。

 

「……え?」

 

「今……何が……」

 

崩れた壁の中央。

 

そこに立っていたのは、最近転校して来たばかりの美少女。

白い髪を振り乱して怒りを滲ませた女子生徒。しっぽや角を生やし、制服は既に、馬鹿な格好と揶揄される露出多めの服装へと変化している。

 

後ろには東洋の鳳凰と酷似した巨大な炎鳥(アグニール)が翼を広げており、険しい顔をしたヴェスティがその背に乗っていた。

 

情報が完結しない。

 

吹き飛ばされたオウヒは、瓦礫の中からゆったりと体を起こすと、忌々しげにメルを睨んだ。

 

「……っち、いきなり僕の顔を殴るとか、なかなか熱烈だね」

 

 

 

───☆

 

 

 

ファーストアタックは成功した。ご主人様たちには止められたが、桜の特性は毒と驚異的な再生力による持久戦である。

 

初っ端から出し惜しみはしない。絡めても不可能で、動きを封じることも出来ない。

 

ならば、真正面から全力で叩き潰すしかない。

 

掌に宿った焔をぐしゃりと握り潰し、捏ねあげる。凝縮された焔は渦を巻き、膨大な熱量を可視化出来るほどエネルギーに満ち満ちていた。

 

銃口を向けるように、オウヒ目掛けて指先を突き出す。

 

ドルマン戦で使用した、悪人には特攻が乗る俺の必殺技。

 

「──劫焔罪絶(ゴウエンシンダン)

 

瞬間。

 

圧縮された劫火が、咆哮のように解き放たれた。熱は瞬時にオウヒを包み、轟音に紛れて奴の絶叫が聞こえてくる。犯した罪の数によって威力が変動する技だが、奴は前回大勢の人間を殺している。

 

果たして前回分の罪の量が適応されればいいが……。

 

「いっっったいなぁ!!!」

 

やはり、そうは甘くないらしい。

そりゃそうだよな。王種がこの程度の技で死ぬ訳がない。

 

最大出力の技ですら痛いで済むんだから、どんだけ強いんだって話だ。

 

「んきゅきゅ」

(やっぱり、アレしかないか)

 

倒す算段はついている。

こちとらゲームをそこそこやり込んでいたプレイヤーだ。相性が悪くとも、俺の位相が勝つことを可能にさせてくれる。

 

ボロボロになった身体を即座に修復し、殺意の籠った眼差しで睨むオウヒへ一気に踏み込む。

 

狙うは、懐。

 

発動させるのは【影縛】だ。

 

「っ、動きが……!?」

 

前回は一瞬しか動きを止められなかった位相だが、その一瞬が今はかなり大事になってくる。影を踏まれ、身動きの取れないオウヒ。更に触手で絡め取り、顔を近づけた。

 

最期に発動させるのは、前回不発で終わった位相──【超吸収】。

 

もちろん技を吸収するわけではない。ここで思い出して欲しいのは、スライムの身体というのは誰とでも配合可能という点だ。

 

それはアグニールという王種相手でも変わらない。

今だってスライムが本来使えないはずの焔技を使ってるからな。と言うことは、DNAを取り込むことが出来れば、俺も王種の力の一端を貰うことが出来るのである。

 

そのために必要なプロセスは──そう。

 

「んっ」

 

「っ、ぐ……ぅ!?」

 

口内接触だ。

 

こんな奴とコレをしなければならないのは非常に不服で不快だが、アグニの時も口内接触によるDNAの摂取で、【焔炎天】を獲得できた。試さない道理はない。

 

雑魚が多くてつまらない?

退屈で欠伸がでる?

 

舐め腐った態度のコイツを、俺は許さない。ご主人様もアグニも殺したんだ。遠慮の2文字は捨ててきた。

 

だから。

 

「きゅあ」

(全部、寄越せ)

 

時間にして、ほんの数秒。

オウヒが崩れ落ちるのと、新たな位相を獲得したのはほぼ同時だった。

 

ぺっと唾液を吐き出し、口元を拭う。気分としては最悪である。だが、その不快感に見合うだけの、強力な力が手に入った。

 

──極相【櫻沃咲(サクラ)

 

・“散華吸精”

・“桜花万丈”

・“万緑帰一”

 

相手の生命力を吸収する力。

攻撃を受けるほど耐性を獲得する適応能力。

 

そして──あらゆる植物を支配する力。

 

焔と桜という、本来なら相反する属性を同時に宿しているせいか、身体の奥がじわりと熱を帯びている。まるで内側から焼かれているような、不快な感覚だ。

 

……拒絶反応を起こさなければいいが。

 

身体の内側で、焔が揺らぐ。その隣で、桜の力が静かに根を張る感覚がある。相容れないはずの二つの力が、今この瞬間だけ、無理やり同居しているのだ。

 

「はぁ……はぁ……くそっ、この変態スライムがぁ!」

 

瓦礫に膝をつきながら、オウヒがこちらを睨みつけてくる。

顔には怒りと屈辱が滲んでいた。

 

さっきまでの余裕など、もう欠片も残っていない。

 

「きゅきゅ」

(なんとでも言え)

 

むしろ、そうやって喚いてくれる方がありがたい。

王種が焦る姿なんて、なかなか見られるものじゃないからな。

 

「うるさいッ!!」

 

オウヒの足元から、黒い蔦が蠢き始める。

 

地面がひび割れ、そこから無数の枝が突き出した。

毒々しい紫の樹液を滴らせながら、巨大な樹が急速に成長していく。

 

それはまるで、嘆きながら世界を侵食する呪いの森だ。

 

オウヒの青い瞳が、憎悪に歪む。

 

「喰らえ……!」

 

狂気を孕んだ声が、校舎に響いた。

 

「【悲哀なる毒創樹】──ッッッ!」

 

瞬間。

 

地面を突き破り、無数の毒樹が一斉に噴き出した。

 

練度や純粋な出力では、間違いなくオウヒが上だ。

だが俺には、もう一つ武器がある。

 

焔だ。

 

俺の生み出した樹木が、赤々と燃え上がる。

 

幹を這う炎が一気に燃え広がり、枝の先端まで灼熱を纏っていく。炎を纏った毒樹が、怒涛の勢いで前方へと伸び上がった。

 

──激突。

 

轟音が空間を震わせる。

 

樹と樹がぶつかり合い、互いに絡みつきながら食い合う。枝が砕け、蔦が引き裂かれ、毒の樹液が飛び散った。だが、その均衡は長くは続かない。

 

焔を纏った俺の毒樹が、オウヒの植物を焼き焦がしながら押し込んでいく。黒く変色した枝が次々と崩れ落ち、炎に呑まれて灰となった。燃え上がる毒樹はそのまま勢いを増し、まるで獲物に食らいつく獣のように、オウヒの森を侵食していく。

 

「んなっ!?」

 

オウヒの目が、驚愕に見開かれる。

炎を纏った毒樹が、ついにその奔流を押し止めた。

 

相殺だ。

 

攻撃のタイミングは今しかない。

 

「んきゅきゅ!!!」

 

(いまだっ!!!)

 

背後で空を舞うアグニール。

巨大な炎鳥が、翼を大きくはためかせる。金色の嘴に宿るのは、紫色の膨大な熱量の塊だ。

 

「じゃあね──“滅劫”」

 

対ドルマン戦で使用した必殺技。

ゲームのフレーバーテキストでは、摂氏三億度にも及ぶ超超高熱によって耐性を無視し、敵を蒸発させるという文字通り相手を必ず殺す技。

 

もちろん、アグニールとその遺伝子を持つ俺自身が、この熱で死ぬことはない。

 

だがこんなものを解き放てば、周囲にいる人間たちまで例外なく蒸発する。

 

一瞬の逡巡。

 

だが、迷っている時間はない。

 

俺は急いで粘液を展開させた。

粘液は空中で広がり、形を変え、壁となり、やがて半球状のドームへと変形していく。

 

アグニールの焔耐性を宿した、防御膜。

 

即席だが、これで内部の人間たちは守れるはずだ。

 

ドームの外では、紫の熱塊がさらに膨張していく。

空気が震え、視界が歪み、世界そのものが焼け落ちそうな気配を放っていた。

 

これで、倒せるだろうか?

 

分からない。相手は桜の王種だ。生存能力に長けており、圧倒的火力で焼き払わなければそのまま逆転される恐れがある。

 

だから──俺も。

 

拙い動作で、見よう見まねにアグニールの「滅劫」を模倣する。

 

体内で焔を圧縮する。

赤よりも、青よりもさらに高温の領域へ。

 

ただ熱を増やすだけでは意味がない。

暴発すれば周囲ごと吹き飛ぶ。だからこそ、その膨大な熱量を一点へ、極限まで押し込める。

 

常識ではあり得ない制御、まさしく神業。

 

だが俺の体にも、アグニのDNAが流れている。彼女が出来て、俺に出来ない道理はない。

 

「……んぎゅ、ぎゅぁ……」

 

喉の奥から、獣のような唸りが漏れた。

 

身体の内側が焼ける。

骨が軋み、粘液が沸騰し、視界の端が白く霞む。

 

それでも止めない。

 

胸の奥で、焔が凝縮されていく。小さな火種だったそれは、やがて拳大の火球となり……さらに圧縮され、紫と白の混じった歪な焔へと変化した。

 

熱量に耐えきれず、周囲の空間がひび割れるように揺らぐ。

 

「……きゅ」

 

思わず、笑みがこぼれた。

 

なんて不格好で、なんて不出来な焔なんだろうと。

王種とは、やはり規格外な存在であると何度目か分からない凄さを脳に叩き付けられる。俺と彼女らとでは、越えられそうもない壁の存在を感じさせられた。

 

だが、それでもはっきりした。

俺の焔は、確実に王種に届きうる。

 

──【滅劫】。

 

俺のボロボロに焼けた両掌から放たれた紫と白の焔。ドームから覗くオウヒと目が合った。アグニの焔に焼かれて苦痛に歪む表情は、追加の焔の投下によって驚愕に目を見開かれる。

 

紫と白が混ざり合う歪な焔が、風を切り裂き、一直線にオウヒへと迫る。

 

その直後。

 

アグニールの紫炎と、俺の白紫の焔が重なった。

光が爆ぜ、オウヒの絶叫と共に轟音が鳴り響く。熱量を保護しきれなかったドームは弾かれるように壊れ、中から灰と化したヒトガタの物体が堕ち──地に叩き付けられた。

 

ふぁっきゅ(ざまぁみろ)

 

ヒトガタはピクリとも動かない。

恐らく死んではいない。相性の問題で、殺すには至らなかったようだ。

 

まぁ、死にかけなのは間違いないだろうが。

 

ボロボロの両手を治療しながら、何とか勝利をもぎ取った事に安堵のため息を吐いた。オウヒの油断と慢心、そして【超吸収】による技の獲得がなければ、勝つことは叶わなかっただろう。

 

「きゅぅ……」

 

まだ淵とラスボスが残っている。

今回みたいな戦いは勘弁だが、今だけは勝利の余韻に浸らせて貰おう。

当作品で何を楽しみたいか(これからの参考にさせていただきます)

  • ストーリー
  • キャラ同士のイチャイチャ
  • どっちも
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