進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する 作:霧夢龍人
こんにちは、多分今のところスライムの中じゃ最強格のおじさんです。
もし自己紹介するなら、俺の挨拶はこんな感じだろうか。アグニと一緒とはいえ、オウヒを倒せるスライムなんて殆どいないだろう。
……あぁ、そうだ。今の俺はかなり調子に乗っている。だって仕方ないじゃん。あの王種だぞ?チートの権化みたいな奴に勝ったんだぞ?
むしろもっと褒められていいくらいである。
「ニヤニヤしてる私のパートナー可愛すぎるでしょ」
「メルが可愛い、のはみんな、知ってる」
「確かに」
布団に寝転がっている俺の頭を優しく撫でるご主人様と、添い寝してくるアグニの声を聞きながら、新しく手に入れた極相の力を確かめるようにニヤニヤする俺。
端的に言ってキモイ。
このまま
流石に夢物語か?
いや、アグニとオウヒの極相はもうあるし……。
「ぎゅぐふふふ」
おっと、ついつい力んでしまった。
別にデュフっていた訳じゃない。何度も言うが、スライムは力むとオタクっぽくなるのだ、これ常識ね?
もし極相をコンプリートすれば進化先にも影響が出るだろうし、更にえっっっなお姉さんになるのではなかろうか。
因みに俺が一番えっちだと思うモンスターは、スライムの5次進化であるデミ・ウルミナスと淵の王種ミツル。そして王種最強の万魔である。スライムを除き、残り二つは俺のバトルメンバーに入ってたために仲良くなっておきたいが……流石に厳しいだろうな。
オウヒとの戦いですら、死者はいないものの重傷者は大勢出てるんだ。そう上手くはいかないのは間違いない。
なんて考えていると、トントンと遠慮がちに医務室を叩く音が響く。
少しの間を置き、扉が開かれると──そこに立っていたのはイスフィだった。腕に抱いているエリナスは可愛らしいが、イスフィの目元は赤く、まぶたが少し腫れている。泣いた跡がはっきりと残っていた。
視線をキョロキョロ動かして俺の寝転がっているベッドを発見すると、勢いよく抱きしてめてきた。
「メ、メルちゃーーん!!!」
「んぎゅむ」
うん。
平らだ。
どことは言わないが、ほんのり柔らかさを感じる程度の硬さ。いわゆる“控えめ”というやつだろう。しかし思うだけで口には出さない。
おじさんが嫌いな言葉ランキング二位、ハラスメント。はっきり分かんだね。因みに一位は臭いである。
これはもう殿堂入りレベルで嫌いだ。
一撃でおじさんのHPがゼロになる。
そんなことを考えている間にも、イスフィは俺をぎゅうぎゅう抱きしめながら叫んでいた。間に挟まれているエリナスがちょっと苦しそうだ。
「良かったぁ!良かったんよぉ!ウチ、死んでしもたんやないかって不安で……めっちゃ心配したんやでホンマぁ!!」
「きゅうきゅ」
(ごめんね)
顔を覆う胸で押し潰されながら、何とか謝罪を告げる。
「うぅ……何言ってるか分からんねん。エリナス、翻訳出来るぅ?」
そりゃそうだ。
基本的に俺の言葉が分かる奴しかいないから忘れがちだが、普通はモンスターの声なんて分かる人間はいない。パートナーなら心を通わせることが出来るが、言葉を理解して話すことなんて普通は出来ないのである。
「……えっとね!」
エリナスは少しだけ考えるように顎に指を当ててから、にっこり笑った。
おお、どうやらちゃんと翻訳してくれるらしい。流石は俺の娘……いや、違う違う。
──同種のスライムだな!
危ない危ない。
またうっかり父性が芽生えるところだった。
いやまあ、見た目もサイズも小さいし、ちょこちょこ動くし、ちょっと頭良さそうだし。つい娘として扱ってしまいそうになる。
それもそのはずだ。モンスターは親を持たない同種の幼体を見つけた場合、自分が親代わりになることがあるらしい。いわば、群れの本能みたいなもの。
血の繋がりがなくても、近い種族なら自然と面倒を見るようになるとか。
もしかすると、俺がエリナスを見て「娘っぽい」と感じるのも、そういうモンスター側の感性が働いているのかもしれない。
転生してから随分経つし、体がスライムなら、感覚の方もそっちに寄ってきているのだろう。
ま、どちらにせよ守るべき存在なのには変わりない。
「ママはね!」
エリナスが胸を張って宣言した。
うんうん、元気いっぱいでよろしいことだ。この際ママ呼びなのは否定しない。スタイルも今の性別も間違ってないからな。
少しだけ期待して続きを待つ。
エリナスは、えへんと咳払いしてから。
「ママは……パパのこと愛してるって!」
……よく出来ました。
完璧な翻訳だ。うん、実に素晴らしい。
流石は……流石は?
「っ、ウチもママのこと愛しとるでぇぇーーー!!!」
エリナスの誤翻訳を聞いたイスフィの絶叫が医務室に響いた。ぎゅううううう、っと抱きしめる力がさらに強くなる。
やめて、潰れちゃう。
ぺちゃんこスライムになっちゃう。
プルプルボデーがペタンコボデーになっちゃうから。
息苦しさと苦痛に呻く俺を他所に、パパとママ発言に反応したのはイスフィだけではなかった。
「ん……?ママ?パパって、どういう、こと?」
アグニがニコニコした顔で俺を見つめる。
なのに。
手元でちょろちょろと焔を出したり引っ込めたりするの、やめてもらえません?
さっきから指先で小さな炎を灯しては消し、灯しては消し……まるでライターでも弄るみたいな軽いノリだが、あれ普通に王種の炎なんですよね?
怖い、怖いよ俺。
焔は熱そうなのに、背筋が凍る恐怖を味わった俺はイスフィの腕の中でぷるぷる震える。
しかしこれだけじゃない。
もう一つ、別の視線が突き刺さった。
「あは」
ご主人様が、軽く笑った。
「違うよイスフィさん」
優しい声。
とても柔らかくて、読み聞かせでもしていそうなほど落ち着いた声色だった。
「パパっていうのは私のことだよ」
にこり、と笑う。
「勘違いしちゃダメでしょ?」
……。
………ひぇ。
危うく情けない悲鳴をあげそうになった。
なんなんだあの瞳。二人とも全く目に光がないんだけど。てか、ご主人様に至っては時律の王種みたいな顔になってますよ。
あの、未来に絶望してたときのやつ。
感情が消えて、温度がゼロになったみたいな表情だ。
はっきり言って二人とも、めちゃくちゃ怖い。
しかし俺はこの二人に対して頭が上がらないのである。もしここで俺が何か言えば──火に油どころか、ガソリンをぶちまける未来しか見えない。
だってアグニだぞ!?王種だぞ!?
歩く火薬庫にガソリンなんて自殺行為だ!
他の人を頼ろうにも、イスフィに至ってはすでに十分すぎるほど燃料投下済みだ。
となると。止められる可能性があるのは──そうだ、エリナスしかいない!
俺はイスフィにぎゅうぎゅう抱き締められながら、必死に体をひねってエリナスへ視線を送る。
頼む。
頼むから空気を読んでくれ。
このままだと、医務室で王種レベルの家庭戦争が勃発する。
エリナスは、そんな俺の視線に気付いたのか。
「?」
一度首を傾げてから、ぱっと表情を明るくした。
おお!どうやら意図を汲んでくれたらしい。さすが俺の娘……じゃなかった、同種のスライムだな!
俺の期待を背負ったエリナスは、パタパタと小さな羽でご主人様とアグニの方へ飛んで行く。そして二人の前で立ち止まり、にこにこと笑いながら口を開いた。
「えっとね!」
うんうん、いいぞエリナス!
空気を柔らかくする感じで頼んだ!
「パパが何人いても、ボクは気にしないよ!」
……ん?
「逆ハーレム?ってやつだよね!」
──ノォォォオオオオオッッッ!!!!!!
心の中で、俺は絶叫した。
次回予告
何とか強敵を倒したメル。だけどまだヴェスティとアグニの二人からは逃げられないわ!
しかもアグニがヴェスティに提案したのは……まさかの3P!?
次回──NTRに目覚めかけるヴェスティ。
モンスターバトル……スタンバイ!
当作品で何を楽しみたいか(これからの参考にさせていただきます)
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