進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する 作:霧夢龍人
ありがとう……今はただ、皆様に感謝を。
いつでも感想お待ちしております。
着信音が鳴る。
メルの顕になった大きな胸に伸ばそうとした手は行き場を失い、宙を彷徨ったままだ。気まずい。とても、気まずい。
三人の間に、何とも言えない沈黙が落ちる。
私は咳払いを一つして、その妙な雰囲気を誤魔化すように、ゆっくりと手を引っ込めた。
その瞬間──ペチッ。
軽い音とともに、手を叩かれた。驚いて視線を下げると、そこにはメルのしっぽ。ユラユラと揺れているその先端が、不機嫌そうに何度も私の手を叩いてくる。
ペチ、ペチ、ペチ。
まるで抗議するように、「なんでやめるの?」と言いたげなしっぽ。思わずメルの顔を見れば、頬を染めて未だに黒い下着を口に咥えている。潤んだ瞳はハートを描いたままで、へそに刻まれた紋様は未だに激しく明滅している。
状況の破壊力が凄い。
情欲のままに貪りたい。
だけど、そうはいかなかった。
着信着のスマホに表示されているのは、“聖女リリア”の文字。間違いなく大事な話だろう。私は一瞬だけ天井を仰ぎ、深く息を吐いた。
「……ま、また後で続きするから! ごめん!」
我ながら酷い言い訳だと思う。
でも、それ以外に言葉が思いつかなかった。居ても立ってもいられず、私は慌ててスマホを掴みそのまま部屋を飛び出す。
これ以上あんな姿のメルを見ていたら、自制が効かなくなるのは確実だったからだ。廊下に出た瞬間、冷たい空気が頬に触れる。さっきまでの熱が、ようやく少しだけ引いた。
……我ながら、最低な断り方だと思う。それを証拠に後ろの部屋からは──。
「ふぁっきゅ」
「逃げた、ね」
という二人の呟きが聞こえてきた。
後で、絶対に怒られる気がする。いや、怒られるだけならまだいい。
メルのあの状態を途中で放置したのだ。どう考えても恨みがましい視線くらいは覚悟しなければならない。
私は小さくため息をつき、スマホの通話ボタンを押した。待ち受けにしているメルの笑顔が、今だけは妙に胸に刺さる。
「もしもし──あぁ、私だよ」
『おいっすヴェスティ!いやぁ、説明会お疲れ様だよ〜』
他愛もない話から始まった、電話越しの会話。
リリアの声は、いつも通り少しテンションが高い。
明るくて、どこか軽やかで、聞いているこちらの肩の力を抜かせるような調子だ。
『最近どう? 怪我とかしてない?』
『ちゃんと寝てる? 先生って忙しいでしょ?』
そんな、私を労るような言葉が続く……本当に、いつも通りだった。そこから話題は自然と移り、今後の淵の動向についての確認や、相変わらずリリアを狙ってくる不届き者たちの情報の再確認が始まる。
こう言ってはなんだが、わざわざ電話で話すような内容じゃない。だって普段は、こういうやり取りは大抵文章で済ませている。むしろ、その方が記録も残るし効率もいい。
なのに。
今回はわざわざ電話。
それが妙に引っかかる……考えすぎかな?
そう思った矢先だった。
私の中に生まれた疑問を見透かしたみたいに、リリアが少し声の調子を変える。
『あー……そうだ』
軽い口調だ。
本当に、ただ思い出したみたいな言い方だった。
『実はさ──私、そろそろ寿命で死にそうなんだよね』
───☆
ウチはメルちゃんのことが好きや。
例え人にそっくりなモンスターやったとしても、ウチの気持ちは揺らがん。
例え若くて綺麗で美人なヴェスティ先生のパートナーモンスターやったとしても、ウチの気持ちは一ミリたりとも……いや、やっぱ嘘。めちゃくちゃ揺らいどる。
だって──あんなに可愛いモンスターがおるとか、先生羨ましすぎるやろ!!!反則やんか!
見た目は可愛くて。
仕草も可愛いくて。
声まで可愛い。
しかもあの子、戦ったら王種倒すレベルやろ?
何それ。
どこの物語の主人公やねん。一体何を持ちえんのや。ウチらみたいなモブとは違って、属性があまりにもてんこ盛りすぎるやろ。
「あーーーー!!!」
寮の三人部屋で、一人枕に感情をぶつける。
ヴェスティ先生がやった説明会で、王種についてとメルちゃんについての情報が統一された。その中には、メルちゃんがスライムから進化した特異個体で、先生のパートナーモンスターっちゅうことも教えて貰っとる。
……いや、情報量エグいわ。
スライムってあんな進化するもんなん?てか、あんな可愛いメルちゃんとアグニールちゃんを従えとるヴェスティ先生なにもんなん?
もうウチ、訳分からんわ。
ばふっ。
ばふばふっ。
感情のやり場がなくて、とりあえず枕にぶつけるしかない。
「ぐぬぬぬぬ……!」
すると、そんなウチの様子を心配したのか、ベッドの端からひょこっと小さな顔が覗いた。
パタパタ鳴る羽根の可愛いらしい音が寮室に響く。
『パパ、大丈夫?』
視線を向けると、そこにはウチのパートナーモンスター──エリナスが、きょとんとした表情でこちらを見上げていた。
「エリナスかぁ……聞いてくれ、ウチの……ウチのメルちゃんがな。他にもパパがおる可能性があるんや」
涙目でエリナスに縋りながら、想像を巡らせる。
ヴェスティ先生はスタイル抜群で、優しい性格やから男女問わず人気な人や。ほんで強いモンスターも従えとって、さらにはめっちゃ美人さんなんやで?
メルちゃんは言わずもがな。
転校二日目で、王種を倒した人型モンスターとして一躍有名人。
間違いなくお似合いや。
ウチみたいなモブじゃ相手にならんレベル。もう勝てへんやんそんなの。
普通そんなん出来る?出来るんなら言っといてぇや。
──と、グズグズと泣きながら愚痴を吐くウチ。
せやけどエリナスはそんなウチに首を掲げて、不思議そうに言った。
『なんで?パパはとっても素敵なパパだよ。こわーい王種よりも、ボクを選んでくれたんだもん。それに──パパは何人いても、僕は大丈夫だよ?』
……うん?
「待て、今なんて言うた?」
ウチはゆっくりと顔を上げた。
枕に押し付けていた頬には、まだほんのりと布の跡が残っている。
視線の先には、ベッドの端にちょこんと腰掛けているエリナス。ウチの聞いている意味が分からんのか、今度は反対方向に首を傾げた。
『ん?パパは何人いてもいいって……』
「そこや!」
ばっと上半身を起こす。
勢い余ってベッドのスプリングがぎしっと鳴った。
驚いたエリナスの肩(と言っていいのか分からん柔らかい部分)を、ウチは思わず両手で掴んでいた。
「そこがおかしいんや!!」
『えぇ!?』
エリナスの体がびくっと揺れ、大きな瞳がさらに丸くなり、ぱちぱちと瞬きを繰り返している。
これだけはハッキリさせとかなアカン。
「普通はな、パパは一人なんや!!」
思わず声が大きくなる。
窓の外から夜風が吹き込み、カーテンをふわりと揺らした。街灯の淡い光が細く差し込み、部屋の床を斜めに照らす。その光の中で、エリナスの水色の身体がほんのりと透けて見えた。
エリナスはぱちぱちと瞬きをしたまま、ウチの言った言葉を真剣に考え込んだあと、口を開く。
『でも、モンスターの間じゃハーレムも逆ハーレムも普通だよ?』
……うせやろ?
い、いやまぁ、モンスターやから子孫繁栄とか、強いモンスターのDNAを何とかって理由なのは分かる。
わかるんやけど……。
「……世界、広すぎやろ」
思わず声が裏返る。
ウチはその場で力が抜けたみたいに、ベッドへ崩れ落ちた。ぼふっ、と鈍い音を立てて背中が沈む。視界には、寮の見慣れた天井。白い塗装の端が少し剥げているところまで、やけにくっきり見える。
けれど頭の中は全然別の光景でいっぱいやった。
ヴェスティ先生とメル。
二人が並んで笑っとる姿が、妙に鮮明に浮かんでしまう。
キャッキャウフフしながら歩いて。
距離が近くて。
自然に肩が触れて。
「……」
嫌な想像は、勝手に続いていく。
もう手とか繋いどるんやろか。
いや、あの距離感なら普通に繋いどる可能性あるな。
キスだって、もしかしたら──。
「ってダメや!!」
ウチは勢いよく起き上がった。
枕を掴んで頭をぶんぶん振る。
突然のウチの奇行に驚いとるエリナスに謝りながら、友達で変な妄想をしとる自分を叱責した。
「何想像しとんねんウチは!!」
想像して妄想して……そんなん、幼稚園児だってできるわ。
今重要なんは、どうやってヴェスティ先生に勝つかや。社会的地位、スタイル、顔じゃウチには勝ち目がないのもわかっとる。
でもウチには。
「度胸と根性がある!これだけは絶対に負けへん!」
打倒するのはヴェスティ先生。
そのついでに淵とやらの王種も一切合切ぶっ倒し、ウチがメルちゃんの隣に立てるようなカッコイイ女になる。
名付けて──“つ合がイイ女作戦”や!
人気キャラクター 二部
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メリュジーヌ (メル)
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ヴェスティ=クラウニア(ご主人様)
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モウガン (ツンデレ牛娘)
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アグニール (クーデレ王種)
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フォス (元気っ娘)
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アルマ=メイソン(最近出番がないぞ)
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ソルガ (残念系イケメン美女)
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イスフィ(関西弁パパ系ガール)
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リリア
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アマネ(実はポンコツやれやれ系少女)
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オウヒ (好感度が上がるだろうか)
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ノア=ハルベルト (ラスボス系美女)
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ミツル (眼帯系王種)
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フルちゃん(アルマの貴重なツッコミ要因)
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シスターカプノス (生臭シスター)
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モルド=クラウニア (変態お兄さん)
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タナカ・サトウ・スズキ・ヤマダ