進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する 作:霧夢龍人
世界は、不条理に満ちている。
どれだけ足掻こうと。
どれだけ命を削ろうと。
どれだけ強くなろうと。
──メルが死ぬ未来だけは、決して変わらない。
何度、この目で見ただろう。
温もりが失われていく瞬間を。
名前を呼んでも、もう応えてくれない静寂を。
そのすべてを、焼き付けるように記憶してきた。
一周目。
獣性転写症候群が蔓延し、マルデンブルクは崩壊した。
モウガンも、フォスも死んだ。アグニは仲間にならず、そしてメルも……目の前で殺された。
絶望の淵で願ったのは、ただ一つ。
『やり直したい』
その後悔が、祈りが、呪いが。
感情によって進化するというモンスターの特性と結びつき、私を“時律の王種”へと押し上げた。
二周目。
私は介入した。
あらゆる外敵を排除し、メルもモウガンも守り抜いた。
守れた、はずだった。だが、“万魔”が現れたんだ。新たな王種の存在を嗅ぎ付けたあの化け物は、躊躇もなく私ごと、メルを殺した。
三周目。
私は姿を消した。
万魔には勝てない。
あれは、理の外にいる。だから、ただ影から守った。ほんの少しだけ運命を変えるように、されど壊れないように。
その結果、街の被害は抑えられた。
メルたちは学園へ辿り着いた。
だけど、淵と桜。あの二体に阻まれ、また目の前でメルは死んだ。
四周目。
今度は、先に潰した。
淵と桜。
あの二体同時を相手にしたけど、何もさせずに勝つことが出来た。こんな私でも勝てないなんて、やっぱり万魔の奴はおかしい。ついでにドルマンの研究も時間を操って台無しにしておいた。
お陰でメル達は容易く学園まで辿り着いたまではいいんだけど、ノア=ハルベルトに殺された。
五回目。六回目。七回目──もう、ほとんど記憶に残っていない。
百を超えた頃、心が擦り減っていくのを感じた。
千を超えた頃には、死に慣れた。
万を超えた頃には。
「……どうせ死ぬなら」
自分の手で、終わらせたことすらある。
救うために繰り返したはずなのに。
気づけば、壊す側に回っていた。
──滑稽な話だ。
その結果、私は一つの結論に辿り着いた。
“出会わなければいい”
私とメルが出会わなければ、彼女は死なない。
数え切れない試行回数の末に、私とメルが出会わないようにした。私はモウガンに殺されたけど、メルは他のパートナーを見つけて幸せに暮らせていた。
別の誰かと出会い、笑っていた。穏やかに、幸せに。何年も。何十年も……その光景を、私は見ていた。
見続けてしまった。
そして、気づいた。メルを殺していたのは、“私自身”だったのだと。
私が関わるから、彼女は死ぬ。
私がいるから、彼女は壊れる。
なら。
答えは、出ているはずだった。
なのに。
「……なんで」
喉が震えてしまう。
声がつっかえて、目の前の光景を否定してくなる。
「なんで、笑ってるの……」
知らない誰かの隣で。
私の知らない顔で。
私に向けたことのない柔らかな表情で。
幸せそうに、笑っている。その事実が、どうしようもなく許せなかった。
気づけば、私は──また、メルを殺していた。
「……もう、分からない」
何が正しいのか。
何を選べばいいのか。
救いたいのか。
壊したいのか。
「……誰か」
ぽつり、と零れる。
「私を、殺してくれないかな」
願いですらない。ただの、諦めだった。
だってどうせ今回も、同じだ。誰も彼も死ぬ。メルも例外じゃない。オウヒに殺されかけた時は巻き戻して助けた。けれど、もし万魔に気付かれていたなら、それで終わりだ。
それに、繰り返すたびに世界は歪んでいく。
ドルマンの研究はより完成度を増し、ノア=ハルベルトはより強くなる。まるで“やり直しそのものが、敵を育てている”かのように。ほんと、皮肉な話だ。
「……ごめんね、メル」
掠れた声が、誰にも届かずに消える。
「私と君は、出会わない方が幸せだったのに」
虚しい叫びは、どこにも響かない。ただ、終わりのない繰り返しの中で──心だけが、確実に壊れていく。
───☆
「へきゅっ」
なんかくしゃみ出た。
誰かが俺の話でもしてるんだろうか?良い話だったら嬉しいんだけどな。例え悲しい話だとしても、この世界は3Rを基にしている。
あんな馬鹿げた格好してるモンスターが沢山いる時空に、鬱展開やら暗い物語は不似合いだ。それを証拠に3RTrinityでは、とんでもないえっっっな服を着た、顔をヴェールで覆っている敵女モブが沢山いるくらいである。
色んな意味でお世話になったのは言うまでもない。
──さて、いい加減話を戻そうか。
「……んきゅ」
(……どうしてそうなった)
視線を落とす。
そこには、地面と熱烈なキスを交わしているボロボロのイスフィとエリナス。そのすぐ横で、なぜか優雅にお嬢様座りを決めているモウガン。
……いや、お前なんでそんな余裕なんだよ。
さらにはそれを真似した結果、座り方を完全にミスってるフォスがいた。
「うかうが!」
(頑張ったの!褒めて褒めて!)
「んきゅきゅ」
(そうかそうか、よしよし。偉いなぁ!)
褒めて欲しいのか、スリスリと身体を擦り付けてくるフォス。犬耳美少女からのアピールに優しく頭を撫で、モウガンにことの成り行きを尋ねた。
なんでも、弱い自分たちを強くするために修行中らしい。
害獣相手に経験値を稼いで進化を早めるのはゲームでもよくやった行為だが、流石にモウガン達とイスフィ達とじゃ差がありすぎたようだ。エリナスに至っては疲れが限界を迎えているのか、半分溶けてしまっている。
「ボク戦うのキライなのに……うぅ」
「ふん。戦闘とはこういうものよ。それに、強くなっておけば嫌いな戦闘もする必要がなくなるわ」
「え、そうなの?」
「えぇ。誰も喧嘩を売れないくらい強くなれば、ね」
「目標が遠すぎてボク溶けちゃうよ……」
もう溶けてるよ?
なんてツッコミは野暮だろう。
この世界は3Rに限りなく近い世界ではあるが、唯一違う点としてステータスやレベルという概念がない。そのせいで成長が実感しにくいのも、強くなる事への求道心が下がる理由の一つだろう。
「メルちゃん……ウチ、ちゃんと身体あるよな?実は死んでたりしてないよな?むっちゃ走ったり、エリナスが攻撃受けそうなった時庇ったりしたから、痛みが天元突破してんねん」
地面に突っ伏したまま、イスフィがか細い声を漏らす。
頬は土で汚れ、呼吸は荒く、指先は小刻みに震えていた。さっきまで必死に走り回っていたせいか、胸が上下するたびに苦しそうな音が混じる。
その言葉に、思わず視線を細めた。
「んきゅ」
(ちゃんと生きてるよ)
ぺち、とイスフィの頬に触れる。
ひんやりとした感触に、イスフィの体がびくりと反応した。
「ひゃっ……冷た……」
「んきゅきゅ」
(むしろ、初めての戦闘なのによく頑張ったな)
チビスラを強くするのは、本当に修羅の道である。それでもめげずに、今ボロボロになっているのが頑張った証拠だ。
でもこんなのを続けたら、いつかは精神が摩耗してしまうだろう。
何か俺に協力出来ることはあるだろうか?
「んきゅきゅあ」
(頑張ったご褒美に、何か欲しいものでもあるか?)
「……えと、なんて?エリナス、翻訳して貰ってえぇ?」
「うーんとね。頑張ったご褒美に、“何でも”言うこと聞いてあげるって」
エリナスが少し首を傾げながら、言葉を選ぶようにそう訳す。
「……なんでも?」
その翻訳を聞いて、イスフィは地面に伏せたまま顔だけを上げた。
土で汚れた頬に張り付いた髪の隙間から覗く瞳は、さっきまでの弱音とは違う、どこか揺らぐ光を宿していた。
「ほんまに、なんでも……?」
もう一度、確認するように呟く。
その声音には、冗談半分の軽さはなかった。
むしろ、何かを決めようとしている人間特有の、躊躇いと覚悟が入り混じった響きがある。
……何でもとは言ってないんだけど、今更否定しづらい。
というか、エリナス。お前、ちょっと盛ったな?
ちらりと視線を向けると、当の本人は「えへへ」とでも言いたげに身体をぷるんと揺らしている……まあ、いいか。
決して我が娘の可愛さに誤魔化された訳ではない。いいね?
俺はイスフィの言葉に同意するように、わざとらしく頷いた。
その瞬間。
「───っしゃきたァ!言質取ったで!?これくらいの苦行、ナンボでもやったるわ!!!」
俺ですら捉えられない速度で起き上がったイスフィは、乙女とは言い難い声を上げながら、そのままエリナスを勢いよく抱き抱えた。さっきまで地面と熱烈なキスを交わしていたとは、とても思えない回復力である。
……いや、ほんとに同一人物か?
あまりの落差に若干引きつつ、視線を横に流す。
すると今度は、フォスが尻尾を巻き付けながら背後からぐりぐりと頭を押し付けてきた。
甘えるような仕草に、反射的にその頭を撫でる。
「うかうが〜」
(撫で撫できもち〜!)
満足げな声……こっちはこっちで平和すぎるな。可愛いからいいんだけどね?フォスが可愛いので全てヨシ。異論は認めない。反論も受け付けない。はい論破。
なんならこのまま一生撫でててもいいまである。
と、フォスの可愛さに癒されていると、背後から何者かが駆け寄ってくる音が聞こえてきた。
「わ〜、いた!もうっ、探したんだよメルちゃん!」
振り返って声の主を見やれば、見慣れた水色の髪とエメラルドブルーの瞳を蓄えたリリアが、喜色を纏ってやってくる。
とっくに放課後を迎えているためか、黒のエーラインミニスカートとちょっと派手なロングブーツ。そして真ん中にジップの着いた赤いセーターを着ていた。
かんっぜんなデートコーデである。
メイクもバッチリしてるし、睫毛もいつもよりほんのり高い。なまじ前世でモテていただけに、細かい変化に気付いてしまうのだ。
モテるって辛いな、やれやれだぜ……うん、現実逃避はやめよう。
リリアは俺に話しかけた後、キョロキョロと俺たちを見渡してびっくりした様な顔を浮かべた。
「って、イスフィちゃんもいるじゃん!モウガンさんもいるし、もしかして今日はお揃い?」
「あ、あぁ……え、リリア。もしかして誰かとデートでも行くん?」
「──ふふ、分かっちゃった?実は私、この後メルちゃんとデート行くんだ!」
「「はぁ?」」
綺麗にハモった。
イスフィとモウガンの声が、寸分の狂いもなく重なる。
エリナスはというと、目をきらきらさせてこちらを見ているし、フォスはフォスで俺の尻尾に夢中だ。
だめだ、戦力外が多すぎる。助けは期待できない。
そのくせリリアは当然のように俺の腕をぎゅっと抱き寄せ、「ね〜?」と小悪魔みたいに笑ってみせた。心なしかその場の温度が、真冬くらい下がった気がする。
なんなら寒い。寒すぎて逃げ出したい。
「へぇ、あなた。やっぱり他の子に手を出してたのね?しかもヴェスティ様にも私にもアグニにも、それどころかフォスにすら許可もなく……なるほどねぇ」
「これがNTR……?これがBSSならぬ、私の方が先に好きだったのにってやつなんか……?」
終わった。
オウヒと戦った時以上のプレッシャーが、全て俺に襲い掛かる。なのにエリナスは「ボク知ってる!これ修羅場ってやつだよね!」と呑気に笑っていた。
しかしそんな冷たい空気をぶち壊したのは、なんと他でもないリリアだった。
「あ、イスフィちゃんも一緒に行く〜?ダブルデートって訳じゃないけど、一緒に居る人は多い方がいいから!モウガンさんも来なよ!」
──その一言で、凍りついていた空気がぴしっと音を立てて砕けた。
「行く!!!」
即答だった。
さっきまで死にかけてたとは思えない声量で、イスフィが手を挙げた。
「回復早過ぎないかしら……?」
「ご褒美あるなら人は蘇るんや!」
理屈が雑すぎる。
でも否定できないのが悔しい。俺だってご主人様から褒められるのであれば、なんだってできる自信はある。
こう思うと、本当にチビスラ根性が板に付いてきた。
「……ふん、私は行かないわよ」
モウガンは腕を組んだまま、そっぽを向く。
その横顔はいつも通り気高くて、揺らぎなんて一切見せない。
「えぇ!?モウガンさんも一緒に行こうや!」
「嫌よ。それより強くなる方が先決だもの。遊びに付き合っている暇なんてないわ……行くわよ、フォス」
「うがっ!」
掛けられた声をピシャリと切り捨て、堂々と洞窟へと向かっていくモウガン。
呼ばれたフォスは一瞬きょとんとしたあと、慌てて立ち上がる。
だが、その足はぴたりと止まった。
ちらり、とこちらを見る。
その視線は、迷っているようで。
それでもどこか寂しそうで。
「……」
モウガンはそれに気付いているはずなのに、振り返らない。
ほんの一瞬だけ。
ほんの一瞬だけ、足が止まる。
けれど次の瞬間には、何事もなかったかのように歩き出した。
「……っ、待って!」
見ていられなかったのか、イスフィが咄嗟に声を上げる。
「……なによ」
振り返らずにモウガンは返事を返す。
その距離は、ほんの数歩のはずなのに妙に遠く感じた。
イスフィは一度だけ息を飲んで、それから少しだけ照れくさそうに笑った。
「また今度、一緒に行こな」
「……ふん、気が向いたらね」
短く、それだけを返す。
けれどその声音は、さっきまでよりも少しだけ柔らかかった。
「うが!」
フォスが名残惜しそうにこちらを振り返る。
その頭を軽く撫でると、ぱっと表情を明るくして──それから慌ててモウガンの後を追いかけていった。
やがて、二人の背中は洞窟の中へ消えていく。
「……行っちゃったなぁ」
ぽつりと、イスフィが呟く。
その声にさっきまでの勢いはない。でも少しだけ寂しそうで、暗闇へ消えていった二人の姿を眺めていた。
「ま、ええか!」
けれど次の瞬間には、いつもの調子で顔を上げる。切り替えが早いのか、あるいは無理をしているのかは分からないが、モウガンとイスフィが仲良くなれたなら良かった。
張り上げた声はわざとらしいくらいに明るくて、その宣言に、リリアはぱっと表情を綻ばせた。
「ほな、ウチらで行こか!デートやデート!」
「ふふっ、決まりだね!」
そのままリリアは嬉しそうに笑って、俺の腕をぎゅっと引いた。
人気キャラクター 二部
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メリュジーヌ (メル)
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ヴェスティ=クラウニア(ご主人様)
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モウガン (ツンデレ牛娘)
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アグニール (クーデレ王種)
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フォス (元気っ娘)
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アルマ=メイソン(最近出番がないぞ)
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ソルガ (残念系イケメン美女)
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リリア
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オウヒ (好感度が上がるだろうか)
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ノア=ハルベルト (ラスボス系美女)
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ミツル (眼帯系王種)
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タナカ・サトウ・スズキ・ヤマダ