アレンジクロノ【エイラから】   作:ロン毛リオン

4 / 8
カエルから

カエルはリーネ王妃の専属護衛としてその日も部屋の外で待機している。正午過ぎ、部屋の扉が開き、リーネが散歩に行きたいと申し出る。事前の予定通りの流れである。散歩コースは事前に兵士達によって安全調査済みであり、向かうことにする。

 

その前にリーネはお手洗いに向かった。従者と共にお手洗いから帰ってくると

 

『やっぱり今日は散歩は辞める。疲れているので一人になりたい』

 

散歩の予定はキャンセルされ、リーネは部屋に戻り、私は再び部屋の外で待機していた。

中からは特別おかしな物音はしなかったと思う。

中には従者がいたはずだが、静かなものだった。

 

しばらくすると、従者がやってきておめしかえの時間(着替えの時間)が始まる。

 

ノックをしてみるが返事はない。従者とリーネ、二人もいて返事のない異常性、中に入ると従者が既に遺体となっていてリーネの姿はなかった。

 

リーネの失踪、行方不明事件。

 

カエルは王宮の屋根に登り、眼下を見渡した。目の大きさから視界にほぼ全ての情報が入り、移動する何かがあれば瞬時にそれを捉える。

 

カエルのフルパワーのジャンプ力は10mを越える。その筋力の強さから移動の際の、最大瞬間速度は時速200kmを越える事もあり、城壁を高速に飛び移りながら探す。

 

捜索中、リーネ失踪の情報を伝える暗号の鐘が城内に響き、騎士団が召集されていく。

 

騎士団により、リーネの寝室が調査される。判明したのは寝室の外から何者かの侵入だった。

 

土ぼこりが石壁に残っていて、それが外からの侵入を示唆していた。リーネの寝室は5階層。魔族が空を飛んできて侵入した可能性が高かった。

 

外からの侵入には当然警戒していて見張りが多く配置されていた。しかし、そこを突破された。

 

おそらく犯人は複数。

リーネに擬態した魔族が予めトイレルームのどかかに潜んでいた。

リーネがトイレに入ってきたのを見計らってリーネに扮し、従者及びカエルと共に部屋に戻った。

 

『やっぱり今日は散歩を辞める。疲れているので一人になりたい』

 

等といって部屋に入ると直ぐに、そば仕えの従者の喉を塞ぎ殺した。

 

一方、トイレに入っていたリーネだが、予めトイレに隠れていたもう一体の魔族がカエルに擬態してリーネに対応、そのままいつもの散歩コースへと向かう。その道中に誘拐され、リーネの部屋にいた魔族は窓から逃げた可能性。

その証拠にトイレの窓へりにも侵入者の痕跡(泥等)が見つかった。

 

外からの侵入には当然警戒していて見張りが多く配置されていた。リーネの部屋から逃げた魔族についても本来なら衛兵に目撃されるはずだが、目撃情報は何一つない。恐らく未知の魔法の関与。身体を背景等に隠蔽して視認されにくくする魔法が開発されている

 

だとしたら厄介であり、この事件は長い時間をかけて計画された用意周到の上にあるものであり、捜索するのは困難になる。最悪の状態を想定しなければらない。

 

人海戦術による捜索でカエルは西側の森を捜索していた。

 

森の先には小さな修道院がある。そんなところにいる訳はないものと思いながらも石壁の通風口から覗くと、リーネの姿が見えた。

 

思ったより、早く見つかったこと。騎士団に応援の要請をしようと戻ろうとしたとき

 

痛みが走る。

 

 

 

なにかが肩に刺さっている。

 

それを引き抜こうとしたとき、更に痛みが走る。両肩、足、腕に何かが刺さっている。

 

 

 

明らかに攻撃を受けていると理解したカエル、高速移動で避けようとする。

 

 

 

林の中に逃げ込んだものの、深手を負っていた。

 

 

 

ドリル状のものが肉に食い込んでいる。そのドリルについて、それが何処からともなく次から次に飛んでくる。

 

まるで意思をもって追跡していくるかのような凶器について、カエルは逃げることを諦めるしかなかった。

 

多くの攻撃を受けてしまい、既に致命傷であり、身体から多くの出血をしている。

 

木を背にして後ろからの攻撃への対処を諦め、前方に意識を集中する。

 

矢のように早い速度で飛んでくるそれを肉眼で捉えてから対応するのでは遅い。

 

できることは盾でガードすること。

 

だが、いざ盾での防御をしてみるに全く話にならない。

 

そのドリルの発射間隔にはインターバルが殆んどない。連続的に突撃してくるドリル。

 

鉄でできた盾だが、それを確 実に削り破壊していく。

 

このままでは盾が無くなり死ぬ。

 

 

 

カエルが死を悟ったとき、同時に音も悟った。

 

 

 

矢を飛ばすのであれば弦が跳ねる音や弓のしなる音がする。

 

銃なら大きな騒音がある。

 

飛んでくるドリルについても、何らかの発射音があるとしても、その音が全く聞こえない。魔法特有に無音の攻撃方法があるとしても、そのような情報は今だかつて聞いたことがなかった。

 

 

 

敵は発射音が届かない程の遠くの位置から攻撃を仕掛けているのかもしれない。

 

だとしても、遠すぎればそのドリルは届かないはず。敵はあくまで遠くない場所に潜んでいるのなら…

 

 

 

カエルは重い防具を脱ぎ捨てて走った。

 

当たれば致命傷は免れないが、距離さえとれば複雑に並ぶ林が盾のような役割になるはず

 

林を出ると、そこは修道院前であり、元いた場所だった。

 

ドリルの攻撃は木々の間をウネウネと曲がり、まるで生きているかのようにカエルめがけて飛んできた。

 

寸前で避けることに成功する。たが通り過ぎたドリルは楕円を描くように旋回してカエルの元に戻ってくる。

 

しかし、その大きな旋回により進路が分かりやすくもあった。カエルはドリルを剣で弾き飛ばした。

 

一発に対する軌道を見ている時間はさっきより遥かに短いものの、前方の林から飛んでくるのは判っているし、だんだん目も慣れてきている。

 

最初に不意打ちに受けた一発より確実に対応可能だった。

 

だが、それがカエルの最後となる。無尽蔵に飛んでくるドリルを一方的に受けるだけのカエルだった。

 

ヤクラな存在。上級魔族のそれはドリルを無尽蔵に生成することができた。

 

およそマシンガンのように放たれる自動追尾型のドリル。それらドリルは一つ一つがあたかも独立して生き物のように攻撃をする。燃料を積んだ誘導ミサイルが空間を自由に方向転換する仕組みにも似ているだろうその力をヤクラは無意識に操っている。

 

 ヤクラは触れた相手の細胞が発する特有のエネルギーを感知して居場所を特定している。カエルが最初に不意打ちを喰らった際に落とした出血(DNAミトコンドリア)を採取したヤクラはほとんどカエルの視界に入ることなく、戦いを制した。

 

ヤクラはカエルの異常な身体能力を危惧していて常にコウモリを張り付かせていた。もしもアジトである修道院が見つかりそうになるなら、ヤクラ自らがピンポイントでカエルを討ち取る計画だった。

 

カエルは防戦一方であった。

 

死を受け入れた最後に、戦場では殆んど使う事のなかったSOSの信号(一発の火薬玉)に火をつけた。

 

爆竹のように大きな音が林に鳴り響く。近くに人がいればこの場所に問題があることが伝わる。

 

その音の知らせは近くにいた通行人に届き、最終的に騎士団へと届く事で、修道院に監禁されたリーネは奪還される。

 

 

 

だが、この歴史にクロノが介入し、マールがリーネに間違われた場合は状況が一変する。

 

カエルが修道院の近くまで捜査に来た頃、連続的な5発の銃声が鳴り響く。

 

その5発は王家からの召集命令であり、カエルは捜査を止めて王宮まで戻った。

 

 

召集目的はリーネ捜査の打ちきり、つまり リーネ帰還の報だった。

 

カエルは安心し、再び護衛の任務に為リーネの部屋に向かった。

その道すがらに王妃の部屋に繋がる廊下を見慣れない男が歩いていた。赤い髪色で服装はこの国のものではない。不安になったカエルはリーネの部屋に向かうが、リーネがどこにも見当たらない。従者に状況を聞こうと思ったが、従者も見当たらない。トイレにでも行ったのだろうか。

トイレに向かってみるとリーネはおらず、従者だけがいた。リーネの姿が見当たらない事を告げると、従者は慌てて部屋に戻り、大声で叫んだ。

 

『さっきまでいた筈なのに!』

 

リーネから少し目を離した隙にリーネは消えてしまった。昼間の失踪は明らかに誘拐だった。このタイミングでリーネ自ら失踪するなんてことはありえない。だとしたら、あの赤い髪の男が怪しい。あれがもし魔族だとしたら、リーネは喰われてしまった?

いやそんな事あるはずない…

 

魔族がリーネを食べるのが目的であるのなら、誘拐後に食べられているはずで、リーネが戻ってくる事自体がありえない。

 

なら最悪、リーネに扮した魔族が戻っていた。リーネに成り済まして王宮で何かをするのが目的だったが、何らかの予定が狂い、再び窓から外に逃げた…

 

カエルは容疑者の男を急いで探した。

男は広間にいて、見知らぬ女と会話をしていた。内容は詳しくは聞き取れないが、リーネの単語を言葉にしている。何かを知っているのは間違いない。

 

もし二人の正体が魔族で、魔法か魔の道具でリーネを隠して運んでいるのだとしたら、今ここで捕まえて尋問してリーネを返して貰えるだろうか。

 

死を覚悟に尋問に耐えたり、返さない可能性があるとたら、どうなる?

 

この女がもしもリーネ誘拐に関わる共犯なのだとしたら、今この場でリーネの受け渡しがされている可能性だってありえそうで…

 

もし二人がこの後二手に別れて行動するというのなら、尾行させる為の仲間が必要になるかもれないが…

 

カエルは二人から目を離さず、ただ距離をとって後を追った。

不審な行動した場合、どちらかに致命傷を与えて動きを封じたあと、もう一方も制圧する。殺さない程度に拷問をかけつつ、 。あるいは片方は見せしめに殺す。それでも リーネを吐き出さないとしたら…

 

カエルは二人のあとを尾行していたら修道院へとたどり着いた。

男の方はオルガンを弾いてる。二人は不審な行動をしてはないものの、行動そのものは不可解だった。

何がしたいのか判らなかったが、男が外をうろうろして修道院を眺めている姿見て、その不自然さに私も気付いた。室内の広さの割には建物がやや大きい。隠し扉がどこかにあるのかもしれない。

 

外壁を登り 天井付近の通風口から中を覗き込むと、リーネが見える。

 

何故かその隣には大臣がいる。なぜこんなところに…。まさか!

大臣は化物に変身した。リーネが襲われると思ったが何かを話している。何かの交渉にリーネが利用されているのかもしれない。リーネはまだ殺されない可能性が高い。

隠し部屋を探すべく、外を探してみるも、それらしいものはなかった。。

隠し部屋があるとしたら部屋の中に。

だが、どうやって探すべきか…

悩んでいると旋律のない汚いオルガンが鳴り響く。下手くそな演奏であり、なぜあの男はこんなときにウザイ演奏をするのだろうと、その姿を視界に入れてしまう。

しかしその光景を見ていて気付いた。あの男に絡んでるシスター達は何故か壁の端をチラ見している。

 

騎士団が言っていた魔法の事を思い出す。敵は背景に成り済ませる魔法を開発している可能性。もし隠し扉なんかではなく、壁の背景がただそこにあるとしたら…

 

試しに小さな石を投げてみてたら、壁をすり抜けいった。

そういう事たったのか!

この男は尾行している私に気付いていて、私がその何もない壁に突撃できるようにオルガンを弾いて女達の注意を惹き付けて隙を作ってくれているのだな!

そして入り口にいるこの女は身長が私よりも高いので、その背後に私の身を隠して突撃のチャンスを伺えという事なんだな。

 

やるじゃないか!若者たちよ!

 

~ヤクラ視点~

 

~リーネ誘拐事件の真相~

 

魔族が大臣に成り済まして議会を我が物にする計画。それには成り済ましを完璧にするべく、大臣の情報が必要だった。大臣を脅して情報を引き出すべく、王妃を誘拐して人質にする計画だったが、冷静に考えると王妃の情報も必要になる事に気付いた。

 

大臣に成り済ますにも大臣が自身の情報を吐き出さない場合、大臣以外からその情報を聞き出さなければならない。大臣としての成り済ましを完璧にするにも、大臣の事を知る者(リーネ)を安易に殺す事はできない。

 

だが、ひとまず誘拐は成功した。あとは少しつつ情報を引き出せば良いと思っていたところに、リーネが山で見つかったという兵士達からの報告

 

あり得ないことだった。既にリーネは誘拐している。

リーネ不在の王宮だから、これを機に西側魔族がリーネに成り済まして入り込んだのだろうか?

あるいは私の部下が勝手に擬態魔法を使い王家に潜入している?

 

だがリーネが本当に修道院から脱出した可能性があるとしたら…

 

心配になり急ぎ修道院へと向かうが、急いでいた為、私はコウモリにその事を伝達しなかった。

 

~コウモリの視点~

 

あれれ? カエルが修道院の方角に向かったから王宮にいる筈のヤクラ様に報告に向かったけど、どこにもいないぞ、あれれ?

 

 

こうしてコウモリからの情報はヤクラへ届かず、カエルに不意打ちを与えることができなかったヤクラ。今度は反対に、カエルの突然の侵入(突撃)による不意打ちを食らってしまう。

得意技のドリルも遠距離であってこそ機能するので、カエルの一方的な攻撃を受けて絶命してしまう。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。