書き上げるのに時間かかりました。
~慎之助side~
今日は全校での一斉体力測定だ。
ゴールデンウィーク前日ということもあってか、回りはやる気が感じられない。
今2-Aは五十メートル走を測っている。
ピィーっ!
俺たちの前の列が走る。次が俺たちの番だ。
「よし!絶対お前らにゃ負けねえぞ!」
バカが何か宣言する。
「へぇ、凄い自信だね。じゃあ何かかけようか?」
蒼士がバカに乗る。こういう場合は蒼士が相手に付いてるから口じゃ勝てない。ならむしろ、相手の案に乗ってしまう方が楽だ。
「仕方ない、何をかけるんだ?」
すると、蒼士が何か思いついたのかに口を開く。
「それじゃあビリの人がゴールデンウィーク中の遊びの予定を立てるなんてどう?」
「おっしゃ!乗ったぜ!」
その時、俺はふと思った。
(何故コイツはビリの奴にしたんだ?どちらかというと勝ったやつが決められた方が良いだろうに)
それは走り終わったときに気付いた。
「おっしゃあ!一番だぜ!」
「あちゃあ、負けちゃったかぁ」
長年一緒にいた颯斗にすら気付かせずにうまく力を抜いていて、わざと三位を取りやがった。
「蒼士、どういうことだ?何故わざわざ予定を立てる役なんて力を抜いてまでやりたがったんだ?」
俺の質問の意図を完全に理解し、蒼士は笑って答える。
「ふーん、やっぱ慎之助は騙したりできないか。まあ、特に意図はないけどね。ただ単純に俺が企画したものでみんなが楽しんでくれたら良いだけだよ」
「……みんなだと?俺たち以外に誰かいるのか?」
ここで聞いておかないと、後で絶対コイツに一杯食わされる羽目になると思い、蒼士に聞くと、
「後で連絡がいくと思うよ?」
やはり俺はコイツには口じゃあ勝てないようだ。
~蒼士side~
慎之助との話も終わり、校庭から体育館に向かう途中、声をかけられる。
「蒼士さ~ん。こんにちは~」
「やあ春湖。体力測定はどう?」
「凄く疲れましたよ~、蒼士さんは慎之助さんと一緒じゃないんですか~?」
流石中庭大好きペア。いつも中庭で花の手入れなどをしてるときに慎之助と話してるからか、結構な人見知りの春湖が楽しく会話をするのは、五十鈴を除けば慎之助だけだろう。
「いや、さっきまで一緒だったけど先に体育館に行ったよ」
「そうですか~残念です~」
本当に残念そうに肩を落とす春湖。……なんか俺が苛めてるみたいじゃないか。
「春湖、これあげる」
俺はポケットからカードを一枚出して春湖に渡す。
不思議に思いながらも春湖は受け取ってくれた。
「コレはなんですか~?」
カードには【三輪】と書かれているだけだ。
「コレはね、明日俺が主催するパーティーのチケットさ。もし明日特に予定がないのならぜひ参加してね」
「はい~、参加させていただきますね~」
間延びした声で春湖は返事をしてくれる。
「じゃあ会場の場所は後で連絡するから、そのカードはなくしちゃあダメだからね?」
「わかりました~。絶対になくしませんよー?」
その言葉に少し不安を覚えつつも、時間がないため春湖とは別れて急ぎ足で体育館に向かう。
~颯斗side~
五十メートル走に勝って、気分が良い状態で体育館での種目をこなしていく。
その中の一つに反復横跳を見つけた。
「お、反復横跳びだな。颯斗、ジュースでもかけて勝負するか?」
そして気づいたら後ろに慎之助がいたが、蒼士
一緒ではない。
「おし、今度こそ勝ってやるぜ!……ところで蒼士はどうした?」
「ああ、アイツは……知らん」
「何で溜めた?」
反復横跳は慎之助に勝ったことがなかった。バスケには反復横跳が最低限出来ないとだから、コイツは反復横跳を今までずっとやって来ていたらしい。だから、今日こそは勝って見せるぜ!
「うおぉぉぉっ!」
結果は惨敗だった。いや、むしろ負けるよりもひどかった。
一回目は見事に滑り、二回目は靴の紐が千切れた。
流石に慎之助も顔をひきつらせていた。
「まあ、ドンマイ」
いつの間にか来ていた蒼士にも励まされ、俺の気分は最悪にまでなっていた。
~蒼士side~
颯斗の見事な滑りっぷりを見たあと、三人で握力測定をしに来た。
そこには、頑張って力をいれてるが全く握力測定器が動かせていない文緒が、勿論ジャージ姿でいた。
「文緒、頑張れ」
俺の特技、気配を消してこっそりと忍び寄るで文緒の背後に回り、ボソリと言う。
「ひゃあっ!」
案の定、文緒は驚いてくれた。
「そ、蒼士君だったんですか。もう、驚かさないでください」
本気でビックリしたのか、胸を押さえて呼吸を整える文緒。そのあとに頬っぺたを脹らます。
「あはは、文緒がそれをやっても可愛いだけだね」
文緒の頬っぺたを触って言うと、文緒は顔を赤くして顔を反らす。
「もう……恥ずかしいですよ……」
……凄い破壊力だった。実際にやらせた俺は顔が赤くなっていた。
「……ヤバい凄く可愛い」
だからか、つい呟いてしまい、それを聞いた文緒が更に顔を赤くする。もう真っ赤っかだ。
そんなとき、青いジャージ、つまり二年生の女子が文緒に話しかける。
「村上先輩、どうしたんですか?」
というかクラスメイトの夏目だった。
「え、えっと……何でもありませんよ?」
文緒は明らかに動揺していて、不自然すぎる上に、顔はリンゴのように真っ赤だった。
「村上先輩!?何か凄く顔が赤いですよ!?風邪ですか!?とにかく急いで保健室に、いや、いっそのこと病院に行った方が良いです!?」
普段はあまり喋らない夏目も、仲の良い文緒が風邪を引いてると思い、あわてて大声を出す。
「あ、あの!別に風邪とかじゃ……」
文緒はそのあわてっぷりに少し困っていた。そして俺の方を見て目で助けを求めてきた。
「まあまあ、夏目。文緒は風邪を引いてる訳じゃないよ?ただちょっと話してたら照れちゃっただけだよ」
自分の求めた助け方とは違い、文緒はまた俺の方を見る。というか睨まれる。
「三輪君ですか。顔はちょっと赤い程度じゃないですよ?」
少し冷静さを取り戻したのか、多少落ち着いて聞いて聞いてくる。
「まあそれはこっちが得したということで……」
「おーい、そっちは終わったか?」
俺が次の言葉を言おうとしたとき、後ろから颯斗が向こうから歩いてくる。
「おいおい、もしかしてまだやってすらないのか?」
後を追って慎之助も歩いてくる。
「ごめんごめん、すぐ終わらせるから少し待ってて」
無事に?体力測定も終わって次の日。
「ようこそ、待ってたよ」
現在の時刻は午後4時。今日のパーティーのために貸しきりにしたホテルのホールで、招待状(カード)を持った人を招き入れる。
「よう、噂には聞いてたが三輪の財力はすげぇな。普通、ホールを貸しきるかよ」
見慣れたバカの顔に言われるが気にしない。
「コレが会場か……派手にするとは言ってたが派手どころじゃあないだろ……」
呆れ顔の親友のごもっともな発言には苦笑いを返すだけだ。
大体は招き入れ、後はスタッフさんに任せて俺もホールへと入る。
あらかじめ明音に司会を頼んでおいたから、明音に指示を出して開会式?をはじめてもらう。
勿論俺もステージへと急いで向かう。
すると、演出に用意したのか、あたりが暗くなり、ステージにいる明音が照明で照らされた。
『はーい皆さ~ん!これからパーティーの開会式を始めま~す!司会は私、櫻井明音が勤めさせていただきます』
放送部で鍛えたよく通る声で喋り始める明音。
俺はマイクをもってステージの上に立つ。
『では、最初にこのパーティーを企画した三輪蒼士さんから一言お願いします!』
「皆さんこんばんは、聖櫻学園2-Aの三輪です。今日このパーティーを開いたのはほとんど思いつきだったけど、まあ交流を深める会として楽しんで下さい」
言い終わり明音に目をやると、親指を立てていた。
『はーい!ありがとうございました!それでは皆さん、飲み物の用意は良いですか?では、カンパーイ!』
『『『カンパーイ!!』』』
「今日は招いてくれてありがとうね、蒼士くん」
「あ、神楽坂さん。どうも」
そこには黒いドレスを着た神楽坂さんがいた。
「あら、別に砂夜でいいのに……」
「いえいえ、何か神楽坂さんを名前で呼ぶ気が起きないんですよ」
「蒼士くんって意外とひどいわね」
絡んでくる神楽坂さんとなんとか離れ、少し歩く。
すると、制服を着た生徒会の三人が何か騒いでいる。
「もう、ダメですってば、会長。副会長も何か言って下さい」
「あら、少しくらいいいじゃない。睦ちゃん」
「ダメですよ会長。せめてちゃんと許可を取ってからでなきゃ……」
「どうかしました?篠宮さん」
「あ、三輪さん。すいませんが会長を止めてくれませんか?会長、勝手に料理長に会いに行こうとしてるんですよ」
言いながら、篠宮さんと鴫野さんの二人でかなたさんを捕まえていた。
「かなたさん、何か料理の方で不備がありましたか?」
「あら、蒼士くん。ちょっと聞いてくれるかしら?この紅茶ね、この料理には合わないと思うのよ」
かなたさんは豪華な料理と手に持ったティーカップを見比べて言う。
「三輪さん。別に聞かなくて良いですからね。会長の我が儘に三輪さんまで振り回される必要はないです」
鴫野さんがフォローしてくるが、俺は会長を見て近くのスタッフに目をやった。すると、スタッフは急いでどこかへ行く。
「少々お待ちください。今すぐに別のを用意しますので」
「あら、ありがとうね」
「本当にすいません。三輪さん」
かなたさんはいつも通りだが、篠宮さんと鴫野さんは凄く申し訳なさそうな顔をしていた。
そこに青いドレスを着た文緒がいた。
「蒼士くん。こんばんは」
「ああ文緒か、こんばんは。どう、楽しんでるかい?」
「はい、美味しそうな料理もありますし、あと……蒼士くんもいますから……」
「そう、それなら頑張って作った甲斐があったよ」
言ってて恥ずかしいのか、いつものように顔を赤くする文緒。だが、何か驚いたように顔を上げる。
「え、料理って蒼士くんか作ったのですか?」
「まあ大体はね。料理長に教わりながら頑張って作ったんだ」
「凄いです、蒼士くんはなんでも出来て。私なんて特に出来ることもないですし……」
そう言ってどんどん沈んでいく文緒。
「そんなことないさ。俺に出来ることなんてたかが知れてるし、文緒は文緒さ。それに、俺としては何か欠点があった方が可愛いげがあって良いしね」
俺は文緒の頭を撫でる。
「は、恥ずかしいですよ……」
結局、聖櫻学園の生徒は皆物好きだった。