寂しく一年を過ごす里見です。
~蒼士side~
除夜の鐘を聞いたあと、女性陣は一端家に帰り、神社で合流となったが、文緒はまだ足が直ってないから家で仮眠をとっている。
「はあ、やっぱり家は落ち着くな」
自分で淹れたコーヒーを飲みながら、颯斗と慎之助の三人で雑談をする。
「そうだな。正直、自分の家よりも落ち着くな」
「そうだな~。何かこう、よくわかんねえけど無条件に落ちついちまうんだよな」
「だからって流石にくつろぎすぎだよ。むしろ何で人の家のお茶菓子の場所を知ってるんだか……」
颯斗は台所にあるクッキーやスナック菓子を取り出して勝手に開ける。
「ふむ、小腹が減ってきたな。蒼士、何かあるか?」
「いや、特に何もないけど……」
「仕方ないな、今から何かしら買ってくるか」
慎之助はコタツから出て、ゆっくりと立つ。
「あ、じゃあついでにコーヒー豆もお願い。ちょうど切れちゃって」
「じゃあついでに菓子とかも買ってきてくれ」
「いやお前はついてこいよ、颯斗」
慎之助は颯斗を引きずって買い物に行く。
「…………ああ、暇だな」
テレビをつけても特に面白いものはやってなくて、書斎から本をまとめて持ってくる。
一応、寝室を覗いたが文緒はぐっすりと眠っていたから、頭を撫でて寝室を出る。
三十分ほど本を読んでいると、買い物から二人が帰ってくる。
「ああ~あったけぇ。マジで最高だな」
「お疲れ様、外は寒かった?」
明らかに体が冷えてる二人をコタツで休ませて、慎之助の買ってきた物でラーメンを作る。やっぱ短時間で作れて体が暖まるといったらラーメンだよね。
「はい、おまちどうさま。冷えてるだろうから暖かいコーヒーも淹れといたから」
慎之助と颯斗はすぐにラーメンを食べ始めたから、俺もコタツに入り、ラーメンをすする。
ああ~やっぱりラーメンといったら豚骨だよね!※注、これは作者の好みです。
読書や雑誌をしていて、気づいたらあっという間に4時を回っていた。
早ければ五時半には日の出になるので、俺は読んでいる本に栞を挟んで閉じ、寝室へ向かう。
「文緒、起きて」
文緒をやさしく起こす。間違っても無理矢理起こすなんてことはしない。
「ん、おはようございます。蒼士くん」
……俺はその時、心臓の鼓動のスピードが凄く速くなった。
何せ寝起きの文緒は服がはだけ、寒いのか顔が赤くなっていた。
「蒼士くん?どうかしましたか?」
自分の格好に気づいてないのか、頭に疑問符を浮かべている。
「文緒、その……服がはだけてるよ」
俺が寝ぼけてる文緒に分かりやすく、文緒の体を指して言うと、文緒は目覚めてきたのか、顔を赤くした。
「と、とりあえず着替えはクローゼットに入ってるのを着ていいから、って着替えられる?」
恥ずかしくなったけど、足を怪我してる文緒をほおっておくと、もっと大きな怪我をしかねないから。
「あ、えっと……いたっ!?」
「あーあ、無理しなくて良いよ?」
一端俺が後ろを向いている間に文緒に服を着直してもらって、クローゼットから文緒に似合いそうな暖かいコートを取り出す。
「大丈夫だよ、文緒は軽いから。ずっとおんぶしててあげる。それが嫌ならお姫様だっこしかないね」
「そ、それは流石に恥ずかしいです……でもおんぶをしてもらわなければ蒼士くんと初日の出を見れないから……」
まあ俺にとってはどちらにしろ役得だし。
「……蒼士くん、今何かいけないことを考えてませんか?」
女性ってたまに鋭い時があるね。
「いやー?まったくそんなこと考えてないよ?それよりも慎之助たち待たせてるから早くしよ?」
その一言で文緒は申し訳無さそうな顔をして、俺の持っているコートを受けとる。
俺たちは急いで神社に行き(勿論文緒は俺に背負われている)人の多さにびっくりする。
「流石に多すぎだろ……」
普段は騒がしい颯斗でさえも、絶句していた。
「仕方ないよ。俺たちはここで待ってるから二人はお願いしてきなよ」
「まあ、蒼士がそう言うなら……」
慎之助は渋ったが、多少強引に行かせる。
「ふぅ、文緒は寒くない?」
「はい、蒼士くんの背中は暖かかったので……」
「そ、そう……」
文緒からこういうことを言ってくるのは珍しく、少し照れてしまう。まあ言ってる文緒も照れてるんだけど。
そんなとき、見知った顔、というか芽以と春湖の二人が、巫女服で歩いていた。
「あれ~蒼士さんですか~?」
「やっぱ春湖か、巫女服着てたからわからなかったよ。もしかしてここが芽以の実家?」
「はい、先輩はお参りですか?」
「勿論、といっても彼女が怪我をしてるから見てるんだけどね」
俺は後ろをチラッとみて言う。
「まあ、それは邪魔をしてしまいましたね。では、失礼します」
「また会いましょうね~」
芽以は春湖を連れてそそくさと立ち去る。
「おーい、戻ってきたぞ」
二人が去るのと同時に慎之助たちが戻ってきた。
「おー、じゃあそろそろ時間だし初日の出を見に行きますか」
再び文緒をおんぶして移動する。
「ここなんかいいんじゃないか?」
颯斗が見やすいところに案内をして、ちょうど太陽が見えてきた。
「……今年も一年楽しく過ごせますように」
「おいおい、そんなの当たり前だろ?俺たちが揃っていて楽しくない訳がないだろ?」
俺の呟きを聞いた颯斗が笑って言う。
「ふっ、そうだな」
「ふふっ、そうですね」
それにつられて慎之助と文緒も笑う。
そうしてまた新しい一年が始まった。