~颯斗side~
頭がクラクラして、気付いたときには翌日の昼になっていた。
「やべっ、学校は……」
ベットを飛び上がろうとすると、今までに体感したことのない強烈な頭痛が襲ってくる。
「ガァッ!?」
頭を押さえて痛みを堪えようとするが、到底耐えられるようなものではなく、倒れてしまう。
「……ん?」
落ち着いた頃に机の上にある一枚の手紙に気付く。
内容は簡潔に、かつ簡単に書かれていた。
「へぇ……マジで助かる」
学校には風邪と連絡したこと、冷蔵庫に牛乳があるから飲めば二日酔いも良くなるということ、その二つだけだった。
*****
~慎之助side~
放課後になり、急いで帰宅の準備をして教室を出る。
「蒼士はどうせ図書室だろうな……」
別段興味があるわけでもなく、俺は中庭へ向かう。
昼休み、
「~♪。慎之助くん、今日の放課後空いてる?」
「どうした?やぶからぼうに……特に予定はないが」
一瞬、颯斗の顔が思い浮かんだが、無いなと振り払う。
「じゃあ渡したいものがあるから中庭に来てね。絶対だよ?」
「はいはい、放課後だろ。分かったからあんまり顔を近づけるな」
颯斗辺りなら軽く殴り飛ばせるんだがな。どうも陽歌が相手だと振り払うのも大変だな。
「あっ、慎之助く~ん!」
中庭の定位置、ベンチの設置してある所に三人の少女がいた。
「ん?……春湖と五十鈴か。どうしたんだ?」
約束していた陽歌だけでなく、比較的仲の良い二人を見付けたため、険しい顔をしてしまう。
「えっとねぇ、二人も慎之助くんにチョコを上げたいらしいよ?」
「バっバカ!言うでない!」
五十鈴は慌てて陽歌の口を押さえるが、もう遅い。
「ほう……俺にか?」
「そ、そんなわけなかろう!」
「五十鈴ちゃんは素直じゃないですねー」
「そうだねぇ。別に隠すことないのにねぇ」
みんなして五十鈴をからかい始める。五十鈴の顔が真っ赤になり両手で顔を覆うようにして隠す。
「恥ずかしがることでもない……」
俺が言いきる前に、物凄い速さで和風の紙袋を俺に押し付けて走り去っていく五十鈴。正直今の速さは俺にも捉えられなかった。
「五十鈴ちゃん、行っちゃいましたねー」
「春湖、後でありがとうと伝えておいてくれ」
チョコを貰ったんだ、感謝はするさ。
「はーい、じゃあ~これもどうぞ~」
五十鈴の紙袋とは違い、カラフルな紙袋を手渡してくる。
「中身は手作りですよ~」
「ほぅ……春湖、料理出来たんだな」
「それくらいはできますよ~」
「まあ……ありがとな。大事に食べる」
後ろからの視線が気になるが、とりあえず無視して春湖の頭を撫でる。
「じゃあ私は戻りますね~。五十鈴ちゃんも気になりますし~」
「そうだな、じゃあ頼んだぞ」
春湖の頭から手を離し、春湖を見送る。
「あ、お返しはハー○ンダッツで良いですよ~」
「いや駄目だろ普通」
春湖は、振り返り様に言うと駆け足で校舎の方に向かっていった。
「……それで、何で膨れてるんだ?」
「……むー」
陽歌は頬っぺたを膨らまして、いかにも不機嫌ですといった感じになっていた。俺はそんな陽歌の頬っぺたをぐいっと引っ張る。
「どうした?不機嫌なのか?」
「いひゃいいひゃい(訳:痛い痛い)!」
陽歌の頬っぺたは柔らかく、むにょーと伸びる。
「おっと、すまないな」
「もぉ、ひどいよぉ……」
赤くなった頬っぺたをさすって、涙目で訴えてくる陽歌。
「……ハッ」
「あーっ!今鼻で笑ったでしょ!?」
「気のせいだ」
~蒼士side~
この時期は夜が早く、下校時刻になると外は真っ暗になっていた。
文緒を家まで送った後、駆け足で帰宅すると、リビングでぶっ倒れている颯斗を見つけた。
「……何やってるの?」
炬燵に入ってテレビを見ている慎之助は、上機嫌でミカンの皮を剥きはじめた。
「お、おお……そ、蒼士か?」
「あ、起きた」
うつ伏せになって倒れていた颯斗は、頭だけ上に向いて苦しそうな声を出す。
「ぐぁっ!」
「おっと、ごめんごめん」
ちょうど良い所に倒れていたため、颯斗を思いっきり踏んでリビングに入る。
「で、チョコは貰えたの?」
颯斗をソファに座らせて、ゆっくりと聞く。もちろん、コーヒーを淹れるのを忘れてない。
「んあ?ああ、心実なら来たぜ」
「あ、やっぱり?一応誘導くらいはしといたんだけど、必要なかったみたいね。……あれ?じゃあどうしてぶっ倒れてたの?」
「まあちょっとな……そんなことより」
どこからか取り出した、颯斗には全く似合わない紙袋から包みを出す。
「なにそれ?というか似合わなっ」
「うるせえしゃあねぇだろ。……黙ってこれ受け取っとけ」