えーえーわかってますよぉ!時期外れだってことくらい!
仕方ないじゃないですか!忙がしかったんです!
~蒼士side~
3月14日、俺達のおそらく人生初のイベントとなる、ホワイトデー。
「ということだけど、皆手作りチョコを貰ったんだから手作りで返すのは当たり前だよね」
前日、スーパーに材料を買いに皆でやって来た俺達は、その足であるところに来ていた。
「悪いね、キッチン借りちゃって」
この町内で有名なケーキ店《THE SEIO》のオーナー、服部真紀奈は慎之助の姉で、たまに皆で店を手伝ったりすることもある。
「あらあら、そんなの気にしないで良いのに。……蒼士君のお陰でやっと慎ちゃんにも彼女が出来たんだから……」
「姉貴!作業の邪魔だからさっさと出てけ!」
口を押さえてムフフと笑う真紀奈さんの背中を押して、キッチンから遠ざける慎之助。……何故だろう、凄く同情してしまう。
「ったく、俺がキッチンに立つのがそんなにおかしいか?」
「まあ似合わないね」
「凄く似合わねぇ」
「お前だけには言われたくなかったな単細胞」
「まあまあ」
いつも通りいがみ合う二人の間に立ち、宥める。
「はぁ、こんなんで出来んのか不安になってくるぜ……」
後ろで頭を抱える優也。そんな暇があるなら押さえるのを手伝って欲しい。
~優也side~
「ふぅ~……やっと終わったな」
ホワイトデーなんて経験のない俺は、偶然三輪に誘われていたから一緒に作ることになった。……が、正直ここまで疲れるなんて思わなかった。
「あっコラ!鍋を放置するな鍋を!」
「なんで薄力粉じゃなく強力粉を入れたんだよ!」
今日既に何回目か分からない服部の怒声が、店中に鳴り響く。
「……お前、疲れないか?」
あからさまに肩で息をする服部に問う。
「……すげぇ疲れた」
出来たクッキーを包装してもらい、明日の準備を済まして帰宅すると、疲れがドサッと舞い降りてベットにぶっ倒れる。
「……ああ……飯の準備しねぇと……」
家には野々花さん並みに料理のできない母がいるため、俺が飯を作らないと母が何を仕出かすか分からない。
重いからだを起こして台所に向かう。
「あら、遅かったわね優也君。今日は私が作ったわよ」
「あ、もう詰んだ」
そこからの記憶は覚えていない。
~蒼士side~
紆余曲折を経て、ようやく完成したクッキーの出来は素晴らしく、
「やっぱ蒼士の作るクッキーは美味しいわねぇ~」
と言いながら姉さんがすべて食べてしまった。
「いやいや、食べ過ぎと言うか……また明日の分を作らないとだね……」
空になった袋を見て嘆く俺に、姉さんはとどめの一撃を入れる。
「またあたしが食べてあげる♪」
****
~優也side~
翌日、少し早めに家を出る。
まとわり付くような寒さを振り払うように街を駆ける。
冬の日射しは思ったよりも暖かく、野々花さんの家に着く頃には程よい汗をかいていた。
「ふぅ……さて、野々花さんはっと……まだ来てないか」
待ち合わせの場所は野々花さんの家の正面にある公園という事だが、3月の平均気温は12月と変わらず、早朝はとても寒いため人一人見当たらない。
そして待つこと10分。家の前だから事故に遭うことはないが、あの野々花さんの事だ。俺の予想をはるかに超えることをしてるかもしれない。
「ごめんね~!」
勢いよく家のドアを開けて野々花さんが飛び出てくるが……その格好は……
「……野々花さん、その格好の意味は?」
野々花さんの服装には極力口を出さないつもりだったが……これは一言言っておかないといけない。
「あら、普通の……きゃあっ!?」
悲鳴をあげて家の中に逃げ帰っていく野々花さん。やっぱりあれは狙った訳じゃないんだな。
そこから待つこと数分。また家のドアが少しだけ開いて、隙間から野々花さんが覗き込むようにしてこちらを見ている。
「……見えてますよ?」
呟くように言うと、野々花さんはビクッと震えて思いっきり頭を打つ。
「野々花さん!?」
慌てて駆け寄り様子を見ると、今度はちゃんと制服に着替えている。
「あーあ、腫れちゃってますよ。全く、野々花さんは不器用なだけでなく、ドジでもあるんだから気を付けないと」
体を起こした野々花さんに、言い聞かせるように注意する。
「ええ~?不器用なのは認めるけど、私はそこまでドジじゃないよ?」
「よくそんなこと言えますね。朝だから人がいなくて良かったものの……よくパジャマで家の外に出られますね」
さっき見た野々花さんの格好。薄桃色のフリルのついた可愛らしいパジャマを思い出して不覚にも顔が赤くなる。
「お願いだからそれは忘れてよぉ!」
~蒼士side~
今日は学校中があわただしい。
そんな下らない話をしていると、決まって慎之助が至極当たり前な事を言う。
「まあホワイトデーだし当たり前だろ」
「やっぱり。慎之助の回答には面白味がないね」
「はぁ?何をとち狂ったことを」
回答だけを答えてくれる慎之助は、話していても決して楽しくはない。
なぜなら、そういうときに限って面白い回答をするのは颯斗の役目だからだ。
「ってあれ?あのバカは何処?」
本来なら近くにいるだけで騒がしい颯斗は、今朝から見当たらない。
「ん?どうせ遅刻でもしてしまって偶然椎名と出会いクッキーを渡してるんじゃないか?」
「なにその具体的な回答」
~颯斗side~
俺は今、窮地に立たされている。
まあ走ってるけどな。
いつもの通学路を全力で走る。
俺は寝坊した。
何故か今日に限って起こしてくれなかった。
くそっ……我が妹よ、一生恨むぜ。
校門を通り、昇降口まで駆け抜ける。
「あっ、颯斗君!」
その途中で心実と鉢合わせた。
「お、おお……心実か。朝練上がりか?」
「いえ……その…………」
何故か緊張してるようで、顔がうっすらと赤い。もう一年近く一緒にいればそれが風邪ではないことくらい、流石に分かるようになった。
「えーと……言いづらいなら無理に言わなくても……」
「い、いえ!大丈夫です!……」
「…………」
「…………」
結局、心実は何も言わずに下を向いていた。
「「……あのっ!」」
「あ、先にいいぞ……」
「い、いえっ!颯斗君こそお先にっ!……」
こうなったら埒が明かないので、俺は心を決める。
「……心実。これ、バレンタインデーの時のお返し」
あらかじめ用意しておいた紙袋に入れておいたクッキーを、心実に渡す。
「あ、ありがとうございます!」
俺たちは笑いながら、少し急ぎ目に歩く。すると、今日は心実から手を出してきた。少し恥ずかしいが、俺はその手を取った。
「早く行こうぜ」
蓮「蓮太狼とぉ!」
明音「櫻井明音のー!」
「「インタビュアー!!」」
蓮「さぁーて!今回から始まる私、里見蓮太狼と」
明音「櫻井明音がお送りします、この小説に登場するキャラクターのあんなことやこんなことを根掘り葉掘りしてしまうという、インタビューコーナーを行っていきます!」
蓮「わぁー、個人情報もクソもないな~」
明音「はぁーい、もうゲストが、待ちくたびれてしまうのでさっさと始めますよー。では、今回のゲストはこちらです!」
蓮「ドンドンパフパフ」
蒼士「えぇーと、取り敢えずお招きいただきありがとうございます」
明音「いえいえー、やはりこの小説の主人公ですので、まずお招きしなければと思ったんですよね?里見さん?」
蓮「実はくじ引きだけど……」
明音「何か言いましたー?」
蓮「いえ何も!」
蒼士「……取り敢えず読者的にも盛り上がらないだろうから、早く進めようか?」
「「すいませんでしたー!」」
蓮「こりゃ次から蒼士君を司会にするべきかな?」
明音「そこ!呟いてないで早く進める!」
蒼士「もうこれ放送事故レベルでしょ……」
明音「で、では!……今日は既に質問項目をいくつか決めてあるので、それをもとに質問させていただきます。よろしいですか?」
蓮「だが断る!」
明音&蒼士「…………」
蓮「ああーっ!憐れみの視線が痛い!」
明音「では、ハンドルネーム『たった一人の悪友』さんからの質問です」
『どうして月一くらいで海外へ行くんですか?』
蒼士「……後でシメる」
明音「……あのー、何か物凄い恐い顔をしていますが……大丈夫でしょうか?」
蒼士「はい、大丈夫ですよー」
蓮「うわっ、本性恐えー」
蒼士「……何か?」
蓮「いえ何も!」
明音「あのー、そろそろよろしいでしょうか?」
蒼士「あ、はーい。質問の答えを一言で表すのは難しいんですけど……あえて言うなら社交パーティかな?もう次に行って良いですよ」
明音「はい、ありがとうございます。では、次に行きたいところ何ですが……時間も押してしまってるということで、今日はここまでにします。では里見さん、コールをお願いしまーす!」
蓮「では、皆さんでせーのっ!」
『さようなら~!!』