~蒼士side~
「えーでは、新しい一年の始まりを祝して……」
『乾ぱ~~い!!!』
皆のグラスを机の中央で合わせ、また座りなおす。
「いやー、もう一年経っちまったな」
「何だ急に…頭がおかしくなったか?…元からか」
「いや別にっおかしかねぇよ!…あっという間だったなってな」
颯斗の言わんとすることを感じたのか、慎之介はグラスを少し傾けて飲む。
「いよーっ!どしたのお二人さん?もっと盛り上がっていこーよ!」
「げっ……春奈さん」
「なーにしんみりしてんのよぉー!ほらーじゃんじゃん飲んで飲んで!」
姉さんは自分の持っていた一升瓶を、空になっていた二人のグラスに大量に注いだ。
二人のグラスから匂う独特の匂いや、姉さんの感じからするとあれは…
「…これって酒じゃあ…」
「ほらーグイ―っと逝きなさい!」
「ちょっ字が違…」
口を開けて反論しようとした颯斗。その隙をついてグラスの中身を口に思いっきり注がれた。
「高いのよー、吐いたら怒るからね?」
顔は笑っているが、全然目が笑っていない姉さん。
そして吐き出すこともできないため、颯斗は口いっぱいに含んだお酒を飲み込んだ。
「うっ…強っ!この酒度数メッチャ高いだろ!」
いつものごとく倒れるのかと思ったけど、今回は耐えたようだ。
「大丈夫ですかっ!」
「ああ…もうやられ慣れてるからな…それより心実は楽しんでるか?」
慌てて駆け寄る椎名さんをよそに姉さんは次の標的である慎之介を見るが、既にグラスにはお酒はなかった。
「ふぅ……一気飲みは洒落にならんからな。美味しく頂いた」
「あらあら~」
「うわぁ…ん?」
床に一升瓶が転がっていた。それは間違いなく姉さんが持っていたものであった。
ラベルを確認すると、『アブサン』と書かれていて、度数は45~71%だった。
思わず口が開き、呟いてしまった。
「……うわぁ」
ある程度時間が経ち、計画していたことを提案する。
「せっかくだし…みんなでカルタ大会でもしない?」
「賛成だ。が、コイツは別の部屋で寝かしとくか」
「では、私が看護をします」
結局酔いつぶれた颯斗と、看病を申し出た椎名さんの二名は不参加となった。
「わ~い、みんなでやろ~」
「賛成ですっ!」
「風町さんたちも賛成と言う事で…ああ桃、ほっぺにクリームついてるよ」
「あやや~、お兄ちゃんありがとう!」
「どういたしまして……じゃあ始めてもいいかな?」
カルタの箱をどこからか取り出して、読み札を分けてカードを切る。
『おおぉーっ!』
本場で覚えたカードテクニックを披露すると歓声が上がる。
「さて…では早速配ろうかね?」
シュッシュと軽い音を立てて、円を描いたみんなの中央に取り札をばら撒く。
「うわーっ!お兄ちゃん凄いね!」
「流石蒼士さんですね~」
「…その配り方はカジノのトランプだろう。カルタでそれはどうなんだ?」
「うるさいよ慎之介。いちいち小さいことを気にするものじゃないよ」
「よし、じゃあ読み上げるよ。…『犬も………」
「はいっ!」
読み上げた瞬間、慎之介が正面に座っている桃の前の札をはじく。
偶然か、それとも狙ったのかはじかれた札は一直線に俺の方に飛んできた。
「……へぇ、いい度胸だね。減点されたいの?」
それを難なく掴み、同じくらいの速度で投げ返す。
「おお、怖い怖い」
「やっぱり食えないね……次、『旅はみ………」
「ほらっ」
またもや慎之介が札をはじく。
「……そんなに俺とキャッチボールがしたいの?」
「偶然だよ偶然」
そうして47枚の札の内、45枚を慎之介が取り、しかもその内の半数以上を俺に飛ばしてきた。
後の二枚は、復活した颯斗が掻っ攫っていった。
「……偶に日本で過ごす正月もいいねぇ」
「いつもは海外なんですか?」
隅でお茶をすすっていると、一人の来客、振り袖姿の文緒が立っている。
「…まぁね。大抵は大晦日から三が日が終わるまではあっちにいるかな?」
「まだ高校生なのに大変なんですね。…じゃあ良かったです、一緒に過ごせて」
「……そうだね。今年は良い一年になりそうだ」