~蒼士side~
俺は今、兄に連れられてニューヨークに来ている。
腕時計を見ると、23日の0時を示している。日本との時差は14時間だから、日本は今は昼頃なのだろう。
「…今から飛ばせば間に合うかな…」
既にニューヨークでの用事は済んでいるため、後は帰るだけなのだが、まだ兄がビルから出てこない。
待ってる間、缶コーヒーを飲み続けているが、そろそろ飽きてきた。
「お待たせ…ってお前飲みすぎだろ」
ビルから出てきた兄は、まずゴミ箱に入りきっていない缶コーヒーを見て言う。
「終わったんなら早く帰ろう…寒いし」
更に、今飲み干した缶を無理やり押し込む。
「ああ…っと、そうだった」
そう言ってバッグから封筒を取り出し、俺に押し付ける。
「俺はこれからフランスに行ってくるから、お前は先に帰ってろ。あとその手紙は親父からだ」
「あっそう……いらね」
「まあそうだな…じゃあ文緒ちゃんに宜しくな?」
「…うるさいよ」
「ああ、次会うのは少し先になりそうだし…明けましておめでとう」
「……おめでとう」
日本時刻、12月31日20時30分
約6時間のフライトを経て日本に到着、そのままタクシーで家まで向かっているが……
(あーあ、やっぱり帰省ラッシュに巻き込まれたかー)
高速に乗りさえすれば、止まることなく家まで行けるのだが、成田空港から中々進まないものだ。
時間が刻一刻と進み、気付けばあと一時間で年が明けてしまう。
「お客さん。お客さんも海外からの帰省ですかい?」
運転手のおじさんが、笑いかけて話してくる。
「ええ、ついさっきニューヨークから帰って来たんですよ」
「やっぱりそうですか…今日はもうそんな客ばっか乗せてるんで分かるんですよ」
「もう年が明けるのに大変ですね」
「いやいや…おや、着きましたね」
どうやら話しているうちに着いたようだ。お金を渡して車を降りる。
「またよろしくお願いしますね」
そう言って早々に去っていくタクシー。少し見送ってからドアの鍵を開けようとする。
「ん?…鍵が開いてるね」
ドアを開けて、すぐにリビングに向かう。
「姉さんか慎之介か…」
リビングのドアをそっと開けてみるが、明かりはついているが誰もいない。
「…洗面所かな」
驚かすつもりで、忍び足で洗面所のドアの前に向かう。
そして勢いよくドアを開く。
「わっ!」
「キャッ!?」
洗面所にいたのは姉さんでもなく、もちろん慎之介でもない。
淡い水色の下着以外何も身に着けていない文緒だった。
「あっ……ごめん」
その後、家中に大きな悲鳴が響いた。