綾小路がBクラスに配属された世界線   作:来世

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13話:敵と味方

 

 

 

「─────柴田が訴えられた、だと?」

 

 

七月初めのHR。

 

いつも通りのポイント振込が行われず困惑していたオレたちに告げられたのは、思ってもない宣告だった。

 

六月最後の週、特別棟にて柴田颯がCクラス所属の小宮叶吾と近藤玲音に対し、暴行をはたらいた。

 

それが、向こうの言い分らしい。

 

 

あまりの衝撃に、普段は冷静沈着な神崎も言葉を零す。

 

かく言うオレも、開いた口が塞がらない。

 

 

「────違う!俺はやってねぇよ!」

 

 

続けて、張本人である柴田が叫ぶ。

 

その必死さから、事の重大さには気付いているらしい。

 

 

「分かってるよ、柴田くん。君は、そんなことする人じゃない。でも、なんで相談してくれなかったの? 前日にでも言ってくれれば…………」

 

 

確かに、訴えられる前に手が打てたかもしれない。

 

一之瀬も、糾弾はせず反省点だけを示す良い手だ。

 

 

「悪い…………クラスの皆に迷惑かけたくなかったんだ…………ほら、俺ってあんま役に立ててねぇだろ? だから、せめて迷惑だけはって…………」

 

 

柴田の言葉からは、悲壮感が漂ってくる。

 

ただ、一つだけ解せない言葉が混じっていた。

 

 

 

「────柴田はしっかり、役に立っていると思うぞ」

 

 

オレは気付けば言葉を発していた。

 

そしてその行動に、クラスの視線がオレに集中する。

 

 

「綾小、路?」

 

「柴田のお蔭でクラスの雰囲気は明るいし、体育の授業では色々と参考にさせてもらっている部分もある。ここにいる誰も、お前を役立たずだなんて思ってないぞ」

 

「だから、次からはオレたちのことも頼ってくれ。仲間だろ?」

 

「綾小路ぃぃ!」

 

 

気付けば柴田はオレの元に駆け寄り、むさ苦しく抱きついてくる。

 

 

「やっぱお前いい奴だなぁ!」

 

 

感涙、とでも表現しようか。

 

柴田は少しだけ涙ぐんでいた。

 

Cクラスに嵌められ、心細かっただろう。

 

コイツがどれだけの絶望を味わったのか、オレには想像もつかない。

 

 

「柴田は絶対に、そんなことをする奴じゃない。訴えてきた時点で、Cクラスは明確に敵、そうだな一之瀬?」

 

 

オレは横に座っている一之瀬に視線を投げる。

 

 

「うん。クラスメイトに迷惑をかけた時点で、助けるつもりは毛頭ないよ」

 

 

一之瀬の顔には決意が宿っている。

 

前回のような事態になる恐れは、これで完全に途絶えた。

 

 

「─────柴田、詳しい現場の説明を頼めるか?」

 

 

神崎の問に、柴田は黙って頷いた。

 

 

 

 

柴田の話をまとめると、事の真相はこうだ。

 

まず、六月最終日に柴田がCクラスの生徒に呼び出される。

 

一之瀬たちから注意を促されたため警戒したが、ビビってるのかと脅され仕方なく同行。

 

結果、特別棟で一之瀬や他のクラスメイトの悪口を散々目の前で吐かれ、終いには本人もバカにされる始末。

 

が、彼が偉かったのはここで彼自身が暴行を加えなかったことにある。

 

維持でも迷惑はかけまいと、プライドと恋心を理性で抑え込んだのだ。

 

 

 

 

「──────でも、どうしよっか…………」

 

 

聞いてもなお、打開策は思い浮かばない。

 

だが、それは仕方ないだろう。 向こうも、計画犯だろうからな。

 

 

「生徒会による裁判の決行が明々後日。それまでに、誰か目撃者でも見つけないと」

 

 

網倉の言う通りだ。

 

期限はかなり限られている。

 

だがそれでも、不可能じゃない。

 

 

 

「…………仕方ない、か。うちから目撃者が出ても、恐らく信用はされないし、出来ても時間稼ぎだ。なら、他クラスに協力を要請すべきじゃないか?」

 

 

オレは口を開く。

 

そこから発されるのは、現状を打開するための苦肉の策だ。

 

 

「でも、協力してくれるかな? Aクラスは内部政戦で忙しいだろうし、Dクラスはねぇ………」

 

 

そう零す一之瀬の表情は暗い。

 

だが、うちにはクラス単位で切れる最強のカードが残っているじゃないか。

 

 

「────プライベートポイントで釣る。もし目撃の証拠や証言が可能ならポイントを支払うと公に宣言すればいい。それなら、私情を挟ませずに利用できる」

 

 

高くつくかもしれないが、致し方ない。

 

もし払えないような高額で売りつけてくるなら、もう一つの手を打つ。

 

だがそれは、今後のオレの立場や他クラスからの意識的に避けたい手でもある。

 

この作戦が上手く行くのが理想だな。

 

 

「確かに、うちはポイントを溜めてる。仲間の為なら、使っても構わない。皆もそれでいいか!?」

 

 

神崎が、クラス全体に聞こえるように言った。

 

その言葉に、全員が頷く。

 

やはり、こういうときの団結力は桁違いだな。

 

 

「なら、あまり多くは使いたくないが、遠慮はしない方針で行こう。まずは、今日の放課後からでいいか?」

 

 

全員を相手にするなら、揃っている朝か放課後が理想だ。

 

神崎とは意見が合うな。

 

 

「なら、オレがDクラスに行こう。彼らに対する責任は、オレが負う」

 

 

それに、オレには平田とのコネクトがある。

 

他の者よりも、交渉が有利に進められる筈だ。

 

 

「止めても、君は聞かないよね。なら、私がAクラスに行くよ」

 

「なら俺も一之瀬に同行しよう。綾小路なら、一人で平気だろ?」

 

 

気付かぬうちに神崎からはかなり信用されているらしい。

 

嬉しい言葉だな。 仲間に頼られると言うのは悪い気分じゃない。

 

まぁ、オレに頼りっ切りはダメだがな。

 

 

「ああ、任せてくれ。そもそも、一方的に宣言するだけだしな」

 

「そう考えれば、自然と不安も消える。頑張るか」

 

「だね。柴田くんの無実を私たちで証明しよう!」

 

「「「「おぉぉぉ!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────綾小路くん。一体何の用だい?」

 

 

放課後。

 

オレがDクラスの教室を訪れると、まず声を掛けてきたのは平田だった。

 

他の者は、警戒心を露わにしている。

 

まぁ、仕方ないことだ。

 

これもすべて、想定したうえで来たからな。

 

 

「今日、1学年の全クラスがポイント振込停止になった。それは、オレたちBクラスと龍園翔率いるCクラス間のいざこざの所為だ」

 

 

まずは、真実を伝える。

 

が、それでも懐疑的な視線はオレに向き続けていた。

 

 

「そうだったんだ…………それが、どうしたんだい?」

 

「事の顛末は、Bクラスの柴田颯がCクラス所属の近藤・小宮を殴ったというCクラス側の訴えだ。これを受け、学校側はオレたちのポイントを止めた」

 

 

そのような事実はないが、下手に隠しても良い未来は来ない。

 

ここでは、正直に話すのが妥当だろう。

 

 

「─────それってその柴田って人が悪いんじゃないのぉ? ってか、よくうち来られたね。私たち友達退学してんだけど」

 

 

誰よりも早く文句を言ってきたのは、金髪の女子生徒だった。

 

渡辺の言葉を借りるなら『ギャル』と呼ばれる種族でもある。

 

 

「ちょっと、軽井沢さんっ!」

 

 

彼女のあけすけな物言いを、平田が指摘する。

 

だが、言っていることは尤もだ。

 

 

「お前の言い分は理解できる。確かに、友を退学に追い込んだオレが憎いだろう。が、話を最後まで聞いてくれ。柴田は、そんなことをする奴じゃない。だから、現場の目撃者を捜してる」

 

 

オレは、Dクラスの面々を正面から捉える。

 

 

「もし目撃した、もしくは証拠と共に証言してくれるという者がいるのならそれ相応のポイントを配当させてもらう。この話は、現在他クラス相手にもしている。が、何人でも受付は可能だ」

 

 

オレは、黒板にチョークで数字の羅列を書いていく。

 

最後に白い粉で汚れた手をパンパンッと叩いてから、再び口を開いた。

 

 

「これは、オレの電話番号だ。もし心当たりのある者がいたら、いつでもかけてくれ。待ってるから」

 

 

これで、話は済んだ。

 

ざわめきや小言を無視して教室を出ようとしたとき──────

 

 

 

 

 

 

 

「──────あなたが綾小路くんね。感謝を述べるわ」

 

 

 

大変威圧的で無機的な言葉がオレの耳に届いた。

 

内容と声のギャップに驚き、オレは自ずと振り向く。

 

視線の先には──────

 

 

 

 

 

─────黒く嫋やかな長い髪を伸ばした、女子生徒がいた。

 

教室窓際の一番後ろの席に陣取る彼女は、まるで女王のように見える。

 

 

 

「感謝?」

 

 

オレは思わず聞き返す。

 

Dクラスの生徒に感謝されるようなことなんて、平田の立ち直りくらいしか思い当たらない。

 

だが、彼女がそれでオレに感謝しているとは思えなかった。

 

 

「ええ。もしあなたが反対意見を出していなければ、このクラスに阿呆な猿がまだ数匹残っていたかもしれないもの。考えるだけでもゾッとするわ。だから、駆除への協力感謝するわ」

 

 

彼女の言葉に、クラスの大半が顔を顰める。

 

それに気付いているのかいないのか、彼女はまだ平然と立っている。

 

 

「阿呆な猿、か…………」

 

 

オレは、ため息を吐きそうになるのを堪える。

 

平田や王は良い奴だと思った、だからDクラスも救いようはあるかもしれないと心のどこかで思っていた。

 

だが、ダメだな。

 

 

 

 

 

 

「──────自己紹介お疲れさま。じゃあ、連絡待ってる」

 

 

 

それだけを言い残し、オレはDクラスの教室を出た。

 

 




初期北さんさぁ…………()

Dクラスで救って欲しい生徒(No.1を投票して)

  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 軽井沢恵
  • 長谷部波瑠加
  • 三宅明人
  • 松下千秋
  • Dクラスに救う価値無し
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