綾小路がBクラスに配属された世界線 作:来世
もうしばしば綾小路くんとBクラスの愉快な雰囲気をお楽しみください
(愉快か…………? まぁいいか)
「──────こっちも、手応えはなかった」
Aクラスへの協力要請を終えた一之瀬と神崎が暗い顔をする。
確かに、あのクラスはお堅い。
簡単に攻略できないのは、仕方ないだろう。
「Dクラスの方はまだマシだな。まぁ、目撃者がいるかどうかは不明だが」
「それでも、話が出来ただけマシだ。それに、いる可能性に賭けるのが今回の作戦だろ?」
そうだ。
絶対に、柴田を守る。
そして、覚えておけ、Cクラス。
オレの友達に手を出したお前らは──────この手で屠る。
翌日。
オレたちは、特別棟に出向いて現場検証を行っていた。
と言っても、目新しい証拠やヒントは当然ない。
同行している一之瀬や神崎も、渋い顔だ。
「見つからないな…………」
「せめて、解決のヒントだけでも…………」
そんなことを呟きながら、特別棟内を散策する。
そしてオレは二人を置いて、柴田が嵌められたという二階まで階段で上る。
「暑いな…………」
思わず呟く。
七月序盤とはいえ、窓の数が少ない特別棟には熱気が籠りやすい。
それに加えて空調設備もないため、この中はまるで鍋のように沸騰している。
「待って………綾小路くん…………」
後ろから、トボトボと一之瀬がついてくる。
しかし、その顔に生気は宿されていない。
どうやら、暑さにやられる寸前らしいな。
「一之瀬。お前は顔色が悪い、今すぐ戻るべきだ」
冷静に事実を伝える。
今は、絶対に一之瀬がいなければならないというタイミングではない。
それに、こんなところで一之瀬が倒れた場合、柴田が責任を感じてしまう可能性もある。
「ダメ、だよ…………私が、柴田くんを助けないと………リーダー、だもん」
階段を上り、オレと同じ段まで一之瀬が到達する。
しかし、その顔は火照り、腕に触れればかなりの高温であることが分かった。
「リーダーだからといって、一之瀬だけが苦労する必要はない。助け合うのが『仲間』であり『友達』。お前たちがオレに教えてくれたことだろ?」
「でも…………私も役に立ちたい、から…………いさせて…………」
此方を向いて、真剣な瞳をする一之瀬。
しかし、その真っすぐさはときに自分の首を絞めることもあると知ってほしいものだ。
「神崎っ!」
オレは一階で天井を見上げていた神崎に聞こえるように叫ぶ。
すると、すぐに返事が返ってきた。
「なんだっ! 証拠でも見つかったのか?!」
どこか投げやりなことから、彼も少し暑さにやられていることが窺える。
まぁ、慣れていない者からしたら夏の気温は天敵である。
かく言うオレも、別に暑さに強いわけではないが。
汗がダラダラ零れてくるし、背中に流れて不快感が際立つ。
「一之瀬が熱中症気味だ。すぐに教室に連れて帰って水分を補給させてやってくれ!」
そう叫び返すと、神崎が駆けてくる。
その顔は真面目そのものだ。
「大丈夫なのか?!」
「ああ。まだ初期症状だ、すぐに回復できるだろうな」
「分かった。俺が連れて帰ろう、綾小路はどうする?」
「オレはもう少しだけ残ってヒントを探す。犯人が現場に戻ってくるかもしれないからな」
「そうか。じゃあ、こっちは任せろ」
「頼んだ」
すっかり大人しくなった一之瀬を神崎に引き渡し、オレは二階へと上がる。
一階よりも熱気が蓄積されているためか、少し意識が揺れる。
が、そんなことは重要ではない。
「────監視カメラなし。作戦実行は可能だな」
そう。
オレの第二の作戦とは、Cクラス側の訴え自体を取り下げさせるためのものだ。
この特別棟には、監視カメラが設置されていない。
当然、相手もそれを理解した上で柴田を嵌めたと予想される。
しかし、オレたちの予想ではこの計画を立てたのは被害者(加害者)である近藤・小宮ではなく、更にその裏にいる存在。
つまり──────龍園翔である。
だが、彼が自分で確認しただけで、下っ端は恐らく何も知らない。
だからこそ、下っ端だけに接触すれば訴えの撤回も可能だろう。
「んっ?」
──────シュンッ
「──────なんだ、今の」
何を言っているのか分からないと思うが、オレも何が起きたのか分からない。
今、確かに階段を降りていたオレの遥か先を何かが横切った。
いや、横切ったというよりも、出口から出て行ったという表現が正しいか。
とにかく、オレは視界の正面で何かを捉えた。
「…………ピンク色の髪、か…………」
去り際に僅かに見えたヒントを口に出す。
この学校でピンク色の髪を持つ者を、オレは二人しか見たことがない。
一人目は言わずもがな我がクラスのリーダー・一之瀬帆波。
そして二人目は──────
─────昨日Dクラスに出向いた際に見かけた、女子生徒だ。
眼鏡をかけていたし、遠目というのもあってよく見れなかったが、かなり顔立ちが整っていた記憶がある。
名前も知らぬ彼女が何故ここに来たのか、その理由は大体分かる。
恐らく──────事件について、何か知っているのだろう。
まずは今の生徒を捜すところからだな。
彼女が、事件解決のヒントになるかもしれない。
「────それは…………佐倉さんだね、多分だけど」
放課後。
特別棟での捜索を終えたオレは、Dクラスの平田と接触していた。
どうやって会ったのかって?
以前彼を再起させたときに、連絡先を交換していただけだ。
オレも、(コミュ力)強者への階段を静かに、しかし確実に上っているのだ。
感動で涙も出ないだろう?
「佐倉、か。ありがとう、参考にさせてもらうぞ」
「役に立てたのなら、嬉しいよ。でも、なぜ彼女を捜していたんだい?」
平田は不思議そうに訊いてくる。
確かに、何故彼女を捜しているのかの説明を省いていたな。
オレとしたことが、大失態だ。
「実は──────」
それからオレは、起きたことを説明した。
無論、一之瀬が熱中症でやられて絶賛介護中のことは伏せてある。
アイツにも、面子というものがあるだろうからな。
「──────なるほどね。それなら、僕からも話を通そうか?佐倉さんはあんまり他の人と話したがらないから、他クラスの綾小路くんだと少し抵抗感があるかもしれない」
「分かった。なら、多少の説明と、会う約束の取り付けだけで構わない。健闘を祈る」
「任されたよ」
平田は薄く微笑んだ。
まぁ、最悪彼が佐倉とのコンタクトに失敗しても、オレ個人で挑む価値はある。
そもそもあの場に来た時点で、なんらかの責任感などが働いていた可能性が高い。
多少融通も利くだろう。
それに、それが失敗してもまだ証拠・証言の提供者は一人も来ていない。
つまり、Bクラスの貯金にも猶予があり、それを使えば第二の作戦も即時実行可能。
さて、あとは詰将棋と同じだ。
翌日。
「あ、あの…………私に話って、なんでしょうか…………?」
目の前に立つ少女が、不安げに尋ねてくる。
まるで、借りてきた猫のようだな。
「Cクラスの件だ。以前、特別棟で佐倉を見かけたと思うんだが、間違いか?」
「は、はいっ…………まぁ、そうです」
肯定気味の言葉を受け取る。
しかし、やけに不安げだな。
自分に自信がないのか、それとも何かに怯えているのか。
「何故、ということは聞かない、プライバシーもあるからな。ただ、これだけは聞かせて欲しい。お前は、柴田とCクラスの問題について、何か知っていないか?」
オレは、彼女の瞳を真っすぐ見据える。
しかし、視線は交わらない。
「…………少しだけ、なら。知ってるかも、です…………」
俯きながら、しかししっかりとした声で佐倉は言った。
期待通りか、と問われれば答には迷う。
背中からも、平田の話からも彼女が以前のオレのようにコミュニケーションを苦手としていることは分かっていた。
その上さらに、他クラスであるオレからの接触願。
そもそも、断られるのも覚悟の上だった。
だから、これは素晴らしい功績と言えるだろう。
「詳しく、聞いていいか? 佐倉の言いたくないことは、避けてくれて構わない」
「先週末、私情で特別棟に行ったんです。そこで、たまたま三人の生徒が言い争ってるのが聞こえてきて…………それで、持ってたカメラで撮ったんです。その場面を」
マジか。
これは、予想を越えるどころの話じゃない。
本当に、これで勝ててしまう。
いや、喜ばしいことなのだが、唐突すぎて。
「見せてもらえたり、するか?」
オレは恐る恐る訊いてみる。
流石に、一度も拝見せずに生徒会主催の裁判に挑みたくはない。
「それが…………実は壊れちゃってて…………すみません」
「故障、か。生徒会の裁判が明後日に控えている。明日、修理に同行しても構わないか。一人がいいと言うのなら、止はしないが」
万が一にも、彼女が証拠流出に勘づいたCクラスの生徒に襲われでもした場合、オレは平田に合わせる顔がなくなってしまう。
それは、避けたい未来だ。
「特に予定はないですし、その…………一人は嫌だったので、助かります。予定は…………?」
「連絡先、交換しておこう。この件が片付いたら、そっちで削除してもらって構わない」
「いえ、大丈夫です。では、また明日」
「ああ。また明日な」
佐倉愛里とのファーストコンタクトは上々だ。
証拠の存在も確認できたし、これでCクラスを封じれる。
やはり──────正義は勝つ。らしいな。
物語の展開自体は脳内で既に一年生が完結してるんですが、どうにもキーボードを叩くのが遅くなってきました
多分疲れてるんでしょう(適当)
もしかしたら投稿頻度が落ちるかもしれませんが、一年生編までは絶対終わらせるので気長に待っててください
Dクラスで救って欲しい生徒(No.1を投票して)
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堀北鈴音
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櫛田桔梗
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軽井沢恵
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長谷部波瑠加
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三宅明人
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松下千秋
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Dクラスに救う価値無し