綾小路がBクラスに配属された世界線   作:来世

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15話:募る不安と目先の勝利

 

 

 

「────待たせたな」

 

 

 

放課後。

 

オレは佐倉と待ち合わせをしていた。

 

場所は本人が目立つのを嫌がったため、噴水近くのベンチ。

 

いつか、平田と話した場所だ。

 

 

「い、いえ。私も今来たとこなので…………それじゃあ、行きましょうか」

 

「ああ」

 

 

今から向かうのは、ケヤキモール内にある家電量販店である。

 

なんでも、佐倉は証拠の入ったお気に入りのデジカメを壊してしまったらしい。

 

内部は傷ついていないから証拠自体は保存されているものの、今のままでは写せないという話だ。

 

オレは、護衛兼付添役のようなもの。

 

あまり、気張らなくて良さそうだな。

 

 

 

「綾小路くんはその、なんでこんな面倒な用事に付き合ってくれるの?」

 

 

移動中、突拍子もなく佐倉がそんなことを訊いてくる。

 

 

「佐倉とカメラの安全を確保するためだ。Cクラスの連中に狙われる可能性もあるからな」

 

「わざわざ、そのために?」

 

「ああ。念のためな、余計なお世話だったか?」

 

「そんなことないよっ!ありがとう…………」

 

 

どうやら、そういうわけでもなかったらしい。

 

まぁ、この件だけの付き合いだ。 ラフに行こう。

 

 

 

 

 

 

ケヤキモールに到着すると、オレたちは一直線に家電量販店へと向かう。

 

しかし、佐倉の足取りはどこか重く、迷いを秘めているように見えた。

 

 

エスカレーターに乗り上階へと進んでいく。

 

吹き抜けのため見下ろせる一階には、生徒たちはまだ少ない。

 

 

「佐倉。何か、嫌なことでもあったのか?」

 

 

オレは、自分の立つ段の二段上に立っている佐倉に声を掛ける。

 

すると、その背中が僅かに震えた。

 

 

「い、いえ。大丈夫です。この先なので、すぐですよ」

 

「…………そうか。なら、いいんだが」

 

 

まぁ、人には言いにくいこともあるよな。

 

わざわざ聞くことでもないし、気にすることでもないな。

 

 

 

 

 

 

 

その後、家電量販店に無事到着した。

 

名前に相応しく、さまざまな家電が販売されている。

 

しかし、オレの興味関心を惹くようなものはない。

 

残念だが、仕方ない。

 

 

「あそこです…………」

 

 

佐倉がのそのそと歩いていく先には、受付窓口が設置されていた。

 

修理専門の窓口、らしい。

 

 

「…………」

 

 

怪しいな。

 

そう、直感的に思った。

 

あちらに歩いていく佐倉を見た瞬間、窓口に立つ店員の目が変わったからだ。

 

先程までは気だるげだったのに、急にどんよりとした気色の悪い目に変化した。

 

 

「────はい。─────りました」

 

 

何やら、佐倉は店員と話している。

 

そして、渡されたペンをとった。

 

 

 

 

「─────待て」

 

 

 

オレは佐倉の肩を後ろから掴んだ。

 

 

「ひゃっ?!」

 

 

驚いたのか、佐倉は少し間抜けな声を上げる。

 

それにも、彼は妖しく笑った。

 

 

「今書いているのは、修理後の連絡先などだよな?」

 

 

カウンターに置かれているシートを見て尋ねる。

 

 

「は、はい」

 

「なら、オレが書いても構わないか?届いた瞬間に、佐倉に渡しに行こう。なんなら、オレに連絡してもらえればここまで取りに来る。どうだろうか?」

 

 

オレは、店員と佐倉二人に尋ねる。

 

 

「で、でも…………そこまで迷惑をかけるわけにも…………」

 

「ですよ!それに、こういうのは本人に書いてもらわないと…………」

 

 

店員は嬉しそうに話しているのに対し、佐倉はどこか不安げ。

 

やはり、佐倉に書かせるわけにはいかないな。

 

 

「いや、オレは迷惑などとは思っていない。そもそも、オレたちのクラスメイトのためにわざわざ協力してもらっているんだ。出来ることはしたい」

 

 

それに、オレにも僅かに残っていたらしい正義感のようなものが働いている。

 

このまま問題を有耶無耶にしたら、絶対に後悔すると勘が叫んでいるのだ。

 

 

「─────それとも、迷惑だったか? 信用できないなら、契約書を──────」

 

「─────そこまで言うなら、そのありがとうございます。少し話して分かりましたが、綾小路くんは酷いことするようには思えませんし。それに、してもメリットないですもんね」

 

 

分かってくれたらしい。

 

それに、佐倉は基本的にいい奴だ。

 

目立つことを嫌っていた筈なのに、柴田の為に協力してくれた。

 

だから、オレもその恩は返す。

 

 

「────だ、そうだ。先程は言わなかったが、この際言う。この紙切れにオレの住所と電話番号を書くことで、店側に何か問題が生じるのか? そもそも法的に何の問題もない筈だが」

 

「い、いやそれは…………ははは」

 

 

店員は苦笑いをする。

 

しかし、目だけは笑っていない。

 

まるで、親の仇でも見るような目でオレを見てくる。

 

 

「それとも、佐倉でなければならない理由(・・・・・・・・・・・・・)があるのか?」

 

 

そう尋ねると、何とか解放された。

 

最後にオレではなく佐倉を見つめていたことは気になったが、無視だ無視。

 

 

 

 

「────悪いな。勝手なこと言って」

 

 

店を出たあと、オレは佐倉に謝罪する。

 

彼女のため、そういう独善的なことをいうのは好きじゃない。

 

 

「だ、大丈夫です。あの店員さん…………いや、なんでもない、です…………」

 

「そこまで言われると気になるんだが」

 

「本当に何でもないので! それじゃあ、今日はここで」

 

「分かった。明日は審議だ、頼むぞ」

 

 

結局、明日が審議と言うことで一之瀬から少し預かっていたポイントで期限を明日の朝までにしてもらった。

 

お陰でオレは明日、朝一でここにカメラを受け取りにくる羽目になったが、仕方ない。

 

それで友達を助けれるのなら、お安い御用だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、放課後。

 

 

今から、生徒会主催の審議が執り行われる。

 

 

「四人とも、緊張はしないでね。やれることをやろう」

 

 

今だけは、星之宮も頼り甲斐のある担任に見えてくるな。

 

 

「悪いな、迷惑かけて…………でも、三人なら大丈夫だって信じてるぜ?」

 

 

どこか不安げだった柴田も、今は少しの安心を取り戻しているかのように見えた。

 

それか加えて想い人である一之瀬も同じ場にいるため、強がっているのかも。

 

どっちにしろ、今はその状態でいてくれた方がありがたい。

 

 

オレは時が来るまで生徒会室の外で待つことになっている佐倉に目を向ける。

 

彼女が協力者であり証言者であることは、一昨日の夜に神崎と一之瀬に伝えてある。

 

 

「佐倉さんも、緊張しないでね?」

 

「あ、ありがとうございます。出来ることは、しっかりやるので」

 

「ああ。助かる」

 

 

二人も、彼女に優しく語り掛ける。

 

今から始まる裁判において、彼らは重要な役割を果たすだろう。

 

さて、ここで必ず仕留めるぞ。 Cクラス。

 

 

 

「──────さて、入りましょうか」

 

 

星之宮の言葉を皮切りに、オレたち四人は生徒会室に入室する。

 

 

 

 

「Bクラス入ります」

 

 

いつものおふざけからは想像もつかない真面目なトーンで星之宮が告げる。

 

視線の先には、右端の椅子に腰かける生徒会長と、テーブルを二つ挟んだ先の椅子に座るCクラスの面々。

 

来たのは、被害者二人と、Cクラス担任である坂上先生だ。

 

 

 

 

「──────ではこれより、1-Bと1-Cの問題の審議を執り行う。橘、説明を」

 

 

入学式で聞いた時と同じ凛々しい声で生徒会長が宣告する。

 

そういえば、彼の名前は堀北学だったな。

 

Dクラスの堀北と、何か関係があるんだろうか。

 

いや、あの出来損ないと彼が同系統とは思えない。

 

 

「ではまず、事件の概要から──────」

 

 

そこから、橘と呼ばれた女子生徒による事件の説明が行われた。

 

Cクラス側の主張とBクラス側の主張が懇切丁寧に読み上げられる。

 

 

 

 

「──────このような経緯であるということを念頭に置き、その上でどちらの主張が真実であるかを見極めさせていただきます。ではまず、1-Cの二人から─────」

 

 

そこで、被害者(自称)の二人が立ち上がる。

 

が、ここで二人、いや坂上含めた三人が違和感に気付く。

 

 

 

どんな違和感かって?

 

 

──────Bクラス全員、余裕の表情だからさ。

 

 

 

Dクラスで救って欲しい生徒(No.1を投票して)

  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 軽井沢恵
  • 長谷部波瑠加
  • 三宅明人
  • 松下千秋
  • Dクラスに救う価値無し
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