綾小路がBクラスに配属された世界線 作:来世
「お二人とも、柴田くんに暴行を加えられたと言いましたよね。これは、どういうことでしょうか?」
橘の鋭い視線が、Cクラスに突き刺さる。
二人、いや三人の表情は見る見る絶望的になっていく。
「いや…………だってこれも、外に出たとは限らねぇだろ?!」
「そうだぜ!このあとすぐ戻ったんだよ!」
近藤と小宮はまだ言い訳を展開する。
無駄な足掻きだというのに。 よくもまぁ、飽きずに粘れるものだ。
「─────あ、あの………綾小路くん…………」
佐倉が心配そうな顔でオレを見てくる。
自分に自信がない彼女からしたら、これは不安な時間だろうな。
だからオレに出来ることは、これしかない。
「──────もう諦めて降参してくれないか、Cクラス。お前たちがでっち上げた事件内容と相違する証拠が他クラスから出た以上、この議論は終了の筈だろ」
一刻も早く、審議を終わらせる。
当然、Bクラスの勝利と言う結果を伴って。
「馬鹿言ってんじゃねぇ!だからあのあと戻ったんだっ!」
「そうだぜ!完全な証拠とは言えないだろうがよ!」
二人はやや暴走気味。
だが別に、大した問題じゃない。
「────生徒会長。先程の録音された音声や、Cクラス側の支離滅裂な主張。そしてわざわざ他クラスの生徒が証人として出てきた時点で、結論は出ているのではないですか?」
この議論を終わらせることが可能なのは、この場において彼だけだ。
そして、仮にも生徒会長という肩書を持つほど優秀な人物なら、結論は出ている。
「─────綾小路。お前の力量には感服したぞ。周到に用意された小宮が以前にお前たちを脅していたという証拠と証人。そしてCクラス側の明確な嫌がらせ。今回の事件は、それが発展し起こったものだとしても、何の違和感もないな」
その言葉、答だった。
最早、Cクラス側に勝ち目はない。
相手が悪かったな。
「─────先程の音声、佐倉の提出した証拠、担任の教師に報告されている真実の訴え、以前の接触例などを鑑みて思考した結果、今回はBクラスが真実を言っていると判断した」
「──────よって、Bクラス側の勝訴とする」
生徒会長の宣言が、無慈悲に生徒会室に木霊する。
小宮たちはまさか負けるとは思っていなかったのか、かなり悲惨な顔だ。
「で、では次にCクラス側の賠償責任についての議論に移りたいと思います」
橘が言った。
‘‘賠償責任’’、その言葉に向こうは怯えているだろうな。
だが、安心してくれていい。
手加減をするつもりは全くないからな。
「────まず俺からだ。今回の事件で、1-Cは教師だけでなく生徒会までもを巻き込んで時間を浪費させた。それも、虚偽の申告によって、だ。これを考えれば、それ相応の処罰を受け入れてもらうことになるが、それについて意見の相違はないな?」
生徒会長がオレの顔を見てくる。
隣の彼らに目配せすると、彼らも力強く頷く。
「ええ。オレたちは偽りの申告によって友達を傷付けられました。よって、厳重な処罰をCクラスに要求します」
絶対に、赦さない。
柴田を傷付けた罰は、その身で償ってもらうぞ。
「先生…………」
近藤が弱々しい瞳で坂上を見つめる。
「残念ですが、もう手はありません」
それに対し、坂上は現実を見せる。
彼の言う通りだ。
最早、彼らに逃げ場はない。
逃がすつもりがないからな。
「────今までに虚偽の申告が為されたことはなかったため判断材料がないが、その悪質性は他者と類を見ないものであり、二クラス間の問題ではなく学園規模の事件へ発展させたことから、まずは主犯格二人の一カ月程度の停学でどうだろうか」
停学、か。
確かに、妥当なのかもしれない。
本当は退学にしてやりたかったがな。
「──────主犯格、ね。この際だから言うが、そろそろ吐いてくれないか?」
オレは仕方なく、口を開いた。
その言葉に、相手方三人は目を見開く。
「吐く、というと?」
「彼らは確かに主犯格です。しかし、
橘の問に対し、オレは視線を向けずに答える。
一之瀬たちも、ここまでは想定の範囲内だったらしい。
特に、驚いた様子は見られない。
「首謀者? 知らないな」
「何のことだか」
小宮近藤はすっ呆ける。
だが、これもすべて計画内に過ぎない。
「首謀者、そう言及したということは今回の事件を自分たちで行ったと認めたわけだな」
もう、いい加減にしてくれ。
これ以上、お前たちに時間を使いたくないんだ。
「オレたちBクラスが二人に求める罰則は一カ月の停学で構いません。が、嫌がらせや悪口による精神的暴力はCクラス全体で行われていました。クラス全体に対する罰も要求します」
ここで退き下がることは絶対にしない。
いや、
なるべく罰を重くし、彼ら三人に精神的なプレッシャーを与えることが重要だ。
「橘。今現在の1-Cのクラスポイントはどの程度だ?」
「確認します。──────今現在で、510クラスポイントを保持しています」
そんなに持ってたのか。
やはり、過去問に気付いたヤツが龍園だな。
「─────そうか。物は試しで聞いてみるが、お前たち1-Bは1-Cにどれ程のCPT罰則を要求するんだ?」
その問いかけに、オレは詰まる。
別に、そこまで大きい額を要求する必要はない。
ただ、クラス全体に迷惑をかけるかもしれないという精神状態に陥れるのが大事だからだ。
「なら、私たちはここ二週間ほどで精神的なストレスを受け、著しく授業態度や成績が低下しました。よってその差分に罰則の意味を付け加え、-50CPTを要求します」
一之瀬が自信に満ちた顔で答えた。
それに、生徒会長も満足したらしい。
「規模から推測すれば、妥当な額ではあるな。この罰則で、満場一致であるか?」
その生徒会長の問に、オレたちは頷く。
向こうも諦めたのか、半心状態で頷いている。
「では、これにて審議を終──────「待ってください」
オレは、生徒会長の言葉を遮った。
ここからが、オレの待ち望んでいたターンだ。
いや、正確にはここに到達するように会話を誘導していたわけだが。
「なんだ、綾小路。発言を許可した覚えはないぞ」
「なぁ、二人とも。お前らの所為でクラスに迷惑が掛かったら、今後の学校生活、どうなるか分かるか?」
オレは正面に座る近藤と小宮を見つめる。
二人の目は、若干の恐怖を帯びていた。
「………どうなるってんだ」
「知らねぇよ、んなもん」
「─────恐怖の独裁者・龍園翔をはじめとするクラスメイト全員から非難を受けるだろうな。任務に失敗し、見事カウンターを食らって帰ってきたなんて言ったらな。そしたら夢見てた高校生活はどこへやら、監視カメラのない場所でいじめられ、ボコられる日々。そんなクソみたいな未来に進みたいのか?」
二人は首を横に振る。
その勢いで、オレの前髪が揺れた気がした。
「─────なら、いい提案をしてやる。もしお前たちの口から今回の事件を裏で操っていた首謀者の名前を出すのなら、停学だけで勘弁してやる。提案者のオレたちが認めてるので、可能ですよね?生徒会長」
オレの問いかけに、生徒会長は黙って頷いた。
あとは、詰めていくだけだ。
そして、ここまでもすべて計画通り。
「だから………知らねぇよ…………んなやつ………」
「ああ。これは、俺たちが独断でやった………ことだ…………」
二人の声は小さい。
今、アイツらは心の中で戦っている。
龍園を裏切ったらどうなるか分からないという恐怖心と、このままでは自分たちの生活が危ういという自衛心。
その二つが混じり合い、正常な判断を狂わせる。
「いいのか? 今この場だけ彼を裏切るか、今後の学生生活を全て棒に振るか。二つに一つだ」
オレは、彼らを真っすぐ見つめる。
あと、少しだ。
「──────仕方ない、か。これで議論は終わりにしてく「…………龍園」
神崎、柴田、一之瀬全員の目が見開く。
その小さな呟きは、それほどの衝撃を伴っていた。
「聞こえないな」
「首謀者の名前は──────龍園翔、だ。これでいいんだなっ!?」
ありがとう、二人とも。
よく、正直になってくれた。
「一之瀬、約束通りクラスポイントの罰則は撤回、個人に対しての罰則だけに要求を変更しろ」
「分かってるよ。生徒会長、そういうことなので」
「了解した。これにて議論は終了とする」
スピーディーに議論は終焉を迎えた。
「二人とも。無論、龍園にはこのことは言わない。安心してくれていい」
「そうかよ」
「チッ」
さて、これで裁判は終了した。
「─────綾小路くん、なんでわざわざ龍園くんの名前を言わせたの?分かってることだし、聞くまでもな─────?!」
一之瀬の言葉が止まる。
何故かって?
──────オレがポケットからスマホを取り出し、先程までの裁判の音声を再生したからだ。
Dクラスで救って欲しい生徒(No.1を投票して)
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堀北鈴音
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櫛田桔梗
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軽井沢恵
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長谷部波瑠加
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三宅明人
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松下千秋
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Dクラスに救う価値無し