綾小路がBクラスに配属された世界線 作:来世
「────まじサンキューな!綾小路!」
生徒会室を出ると、柴田が飛びついてきた。
その顔には、笑みが溢れている。
「分かったから抱きつくな。夏で暑いんだ」
「連れねぇこと言うなよぉ!」
「だが、確かに頼もしかったな。今回の議論、綾小路に任せて正解だった」
神崎も、どこか誇らしげにオレを褒める。
「ホントだよ~!私だったら絶対に生徒会長を納得させるなんて出来なかったし、それに誘導も自然すぎて私も気付かなかったし!」
一之瀬は興奮しているらしい。
いつも以上に元気な声で、神崎たち同様オレを褒めてくる。
暫くしてから、オレは彼らと離れる。
今回のMVPと話をするためだ。
「────上手く行ったみたいで、よかった…………」
当然、1-Dの佐倉愛里である。
彼女の証拠映像と証言がなければ、裏の作戦を使わざるを得なかった。
お陰でいつでもスパイとして使用できるヤツが二人出来た。
「全ては、佐倉のお蔭だ。お前がいなければ、オレたちも危うかったからな」
「そんなことないよっ!私なんて、綾小路くんみたいに堂々と喋ったりできないし」
「別に、それだけが人間の価値を決めるものじゃないだろ。確か、『雫』という名前でクラビアアイドルをやってるんだよな?オレには無理だし、一之瀬もやってない。佐倉だけの、オリジナリティだ。自信を持て」
「綾小路君は凄いね…………なんで他クラスの私に、そこまで言ってくれるの?」
「そうだな…………強いて言うなら、借りを返すためだ。今回の件、何度も言うが佐倉がいなきゃ負けてた。だから、少しでも借りを返したい。これもな」
そう言い、オレは端末を差し出す。
そこには、事前に一之瀬から譲り受けていた十万ポイントにオレの元来持っていたポイントを合わせたポイント数が表示されている。
「これは…………?」
「十万ポイント、佐倉に支払う。今回の協力費だ」
痛くないかと言われれば否定は出来ないが、誠意を見せる必要がある。
それに、借りた恩を返さずにおくのは性分じゃないんでな。
「そんなに貰えないよ!私、何も出来てないのに」
「なら、あの証言と証拠の分だと思っておいてくれ。好きなカメラでも出来たら、また一緒に買いに行っても良いしな」
オレは彼女を見つめる。
なるべく、真心を込めて。
「─────ありがとう。綾小路くんには、助けられてばっかだね」
佐倉は、今にでも壊れてしまいそうな儚い微笑みを顔に浮かべる。
その表情から何を考えているのかを読むのは、不可能に近かった。
「そこまで大層なことをしたつもりはないんだが…………」
「それでもだよ。ありがとう、私、勇気出してみるね」
「…………? まぁ、そうか。頑張れ、応援してるぞ」
「うんっ!」
何に勇気を出すのかは知らないが、頑張って欲しい。
オレは自己中と嫌な奴は嫌いだが、良い奴は好きだからな。
他クラスでいうと、平田と佐倉くらいしかまだ会ってないわけだが。
「それと、最後に言っておく。確かにオレと佐倉は違うクラスだ。だが、友情にクラスは関係ない。協力してくれた時点で佐倉はオレの友人であり、恩人だ。困ったことがあれば、言ってくれ。必ず、力になる」
おかしいよな。
会ってすぐのころは、この事件が終わればもうなくなる関係だと思っていた。
なのに、今はオレ自身がそれを否定したがっている。
「…………ありがとう」
佐倉は、やはり薄い笑みを浮かべる。
心の中で佐倉を応援してから、オレは踵を返した。
その日の夜。
オレは溜めていたプライベートポイントで購入したノートパソコンに触れていた。
実は佐倉と家電量販店に行った日、ケヤキモールで見つけて衝動買いしてしまったのだ。
なんでかって?
─────だって、渡辺が良さを語ってくるんだぞ。
欲しくなっちゃうだろうが。
オレは悪くないぞ。 うん、悪いのはオレにいらんことを吹き込んだアイツだ!
「…………なんだ、このボタン…………」
オレはキーボードを叩きながら操作していく。
ようやく全ての設定を終え、自由に使えるようになった時には時刻は二十二時を回っていた。
「何をするか…………」
渡辺の話では、無料で遊べるゲームがあるらしい。
彼は確か、銃で撃ち合うゲームをやっていた。
「そういえば………確か、‘‘雫’’だったよな」
オレは気になっていた佐倉の正体について調べてみることにした。
別にスマホでも検索すれば出てくるだろうが、大きい画面で拝んでみたかったのだ。
「何々…………雫、だから‘‘S I Z U K U’’っと」
まだ中々慣れず、人差し指だけでボタンを叩き、エンターキーを押す。
ここで勢いよくやればかっこいいと、言っていたな。
「出てこないな…………」
雫だけだと出てこない。
雨粒の写真が大量に映し出されるだけだ。
「あ、ワードが足りないのか」
仕方なくオレは『グラドル 雫』と検索する。
すると、桃色の髪に素晴らしい肉体美を備えた美少女の写真が出てきた。
ビーチで寝そべっているものから、知的な印象を与える写真まで、幅広い。
「にしても、可愛いな…………」
オレは無意識に呟いていた。
これは、一之瀬や網倉にも感じた感情だ。
因みに、猫や犬を見た時にも感じた。
「ブログもやってるのか…………」
どうやら、佐倉はブログもやっているらしい。
健気なことだ。 オレなら絶対に途中で飽きて三日坊主になる自信があるな。
「ん……? これは…………」
佐倉が投稿した文言や写真に対して、毎回コメントをしているユーザーはがいるな。
それに、これは中々強烈だ。
『君は運命を信じる?僕は信じるよ』
『今日目が合ったね。やっぱり運命だよ』
『君を愛してる。大好きだよ』
そんな言葉が、びっしりと書き連ねられていた。
あまりの気色悪さに、オレは思わず鳥肌が立つ。
「なんだこれ………キッショ」
だが、これが佐倉の抱えている問題なのかもな。
しかしそれなら、内気な彼女一人で解決するのは難しいかもしれない。
余計なお世話なのかもしれないが、オレが自称友人として一肌脱ぐか。
翌日。
「佐倉。来てくれたか」
オレは佐倉と例の件について話すため、彼女を呼び出していた。
当然、人目につかない場所だ。
「な、何かな。綾小路くん…………」
「ストーカー。そう聞けば、心当たりはあるよな?」
「!?」
オレの言葉に、彼女は驚きを隠せないでいる。
当然だろうな。
ずっと自分だけで抱えていた問題に、他者が首を突っ込んできたわけだから。
「な、なんでそれを…………?」
「昨日の夜、佐倉、いや雫について興味が沸いて調べてみたんだ。そしたら、お前の書いているブログに辿り着いてな。そして、あのキッショいコメントにも目が行った訳だ」
「そっか…………私が言ったんだもんね………でも、それがどうしたの?」
「余計なお世話なのかもしれないが、オレはお前を放っておけない。佐倉がこの件を解決したいと言うなら、オレが協力する。もし本当にオレの手など要らないと言うなら、この場で言ってくれ」
オレは彼女の目を見つめる。
真っ直ぐ、いつかと同じように。
「…………本当に、迷惑じゃないですか?」
「ああ。これは、オレの自己満足の押し付けに過ぎないからな」
「なら、お願いしたい、です。あんまり人を信用できない私だけど、綾小路くんなら、出来る気がするから」
「なら、全力で期待に応えると約束しよう」
翌日。
朝のニュースで、ある事件が取り上げられた。
内容は『国が誇る高度育成高等学校内で女子生徒に性的暴行未遂を行った犯人の現行犯逮捕』。
犯人である男の実家にはマスコミが押し寄せ、中学や高校時代の同級生にも報道記者が集ることになったという。
犯人を追い詰めた綾小路と被害者である佐倉は、知る由もないことだが。
助けた際のやり取りや方法については、今後絶対出します
というか、夏季休暇篇で出します
次回からは怒涛の夏休み!(の予定)
お楽しみに~
Dクラスで救って欲しい生徒(No.1を投票して)
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櫛田桔梗
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軽井沢恵
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長谷部波瑠加
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三宅明人
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Dクラスに救う価値無し