綾小路がBクラスに配属された世界線   作:来世

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ずっと書きたかったユキちゃんがやっと書けるぜ!


21話:新たな友人(?)

 

 

 

「とりあえず、買うものを決めようか。何がいいかな?」

 

 

一之瀬はマニュアルを差し出しながら、集まったBクラス全員に問いかける。

 

だが、依然としてカーストトップの一之瀬に面と向かって意見を言える者は少ない。

 

やはり、一枚岩であるが故の弊害もあるわけだ。

 

 

「食料、水分については、まだ決める必要はないだろう。スポットに『無断で使用』の記述があるから、そのあたりも占有で獲得できる可能性が残ってる」

 

 

時間を無駄にしまいと神崎が意見する。

 

確かに、他クラスに貴重な命の綱を奪われたくはない。

 

となると、彼の予想もあながち間違っているとは言えないな。

 

 

「まずはポイントを使わずにどれだけ生活を持続されるかを考えるべきだろう。例えば、星之宮はビニールシートは好きなだけ持って行って構わないと言った。大量に敷けばテントの下の緩和材にもなるだろうな。あとは、使用云々を言うなら、木を拾うだけなら、使用とは言えないだろうから──────」

 

 

オレは軽く思いつくだけのアドバイスを話した。

 

クラスの皆の思考力を奪うのかもしれないが、この試験は早めに動くべきだ。

 

出なければ近場や条件のいいスポットはドンドン他クラスに奪われる。

 

全員に伝わるように言うなら、Real Time Attack。

 

つまり、ゲームで言うRTAだ。

 

 

 

「────ならまずは、スポット。ベースキャンプ地の決定だな。俺は船から無人島を見ていた時に、スポットらしき高台を見つけた。位置は記憶してあるから、向かわないか?」

 

 

出たな、有能神崎。

 

最早この人一人で良くないですか?

 

と言いたくなるほどのシゴデキっぷりだ。

 

何なら、意見まとめ以外では一之瀬よりも役に立っているかもしれない。

 

 

「いいね。ありがと、神崎くん」

 

「お安い御用だ」

 

 

二人の会話に耳を傾けながら、オレは手を空に翳す。

 

夏特有のギラギラした日光が肌に当たり、傷んだ気がした。

 

 

 

 

 

「良い場所じゃん!」

 

 

神崎が見つけたというスポットは、見晴らしも良く風通しもいい場所だった。

 

一つなん点があるとすれば、森も恐らくスポットに入っているので、テントの設置場所に困るということだ。

 

数メートルの岩の段差を越えると先には更に森が広がり、その奥には綺麗な海が太陽光を反射してキラキラ光っている。

 

 

「綺麗…………流石神崎くんだね」

 

「たまたまだ」

 

 

これで、ベースキャンプ地は決定したな。

 

問題は近くに水源や食料があるかだが、それは大した問題ではない。

 

最悪遠くても時間を予測して待ち伏せてリーダーを把握するも良し、そのまま占有しても良しで一石二鳥となる。

 

やはり、多少の問題は体力と根性のゴリ押しでどうにかなるな。

 

 

「じゃあ、とりあえず絶対に必要なものだけ先に買おうか。まずは──────」

 

 

その後、仮設トイレやウォーターシャワー、追加で全員寝れる分のベット、初日分の水分・食料の購入が決定された。

 

一之瀬が星之宮に話すと、すぐに用意してくれるらしい。

 

そのついでにオレの言っていた案も採用され、なんだか申し訳なくなってくるくらいの量のビニールシートがベースキャンプに運び込まれた。

 

星之宮でさえ苦笑していた程だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。

 

 

オレは一人、星を見ていた。

 

石崖の縁に座り、空を見上げる。

 

昨日見た空とは、またどこか違う良さがある気がするな。

 

 

ベースキャンプを決めた後、オレたちはスポット探索に乗り出した。

 

そこでベースキャンプから約十分ほどの距離に水源のスポットを見つけ、占有を済ませている。

 

明確な収穫はそれだけだが、個別で計七個のスポットを一日で発見できたのは大きい。

 

言い忘れていたが、リーダーはある程度運動も出来て信頼に値するということで網倉麻子が務めている。

 

少し不安だったが、渡辺が珍しくついてきたがっていたのが印象的だった。

 

もしかしたら、柴田が一之瀬に向けている感情と同じものを、渡辺も網倉に向けているのかもしれない。

 

 

青春、世間でそう呼ばれる体験をオレは得ていると自負している。

 

一之瀬や神崎たちの良き友人に囲まれ、毎日のように遊びに行って。

 

それでいて、たまには集まって学生らしく勉強会を開いてみたり。

 

そんな生活にオレは、心から満足している。

 

はずなのに、どこか足りない気がしてしまう。

 

それはきっと、オレがまだ感情というものを完全には理解できていないからだろう。

 

 

 

 

「─────はぁ………だっる、まじで」

 

 

想い耽っていると、ふと声がした。

 

方向はオレの丁度真後ろ、女子たちのテントがある方向だ。

 

 

「…………」

 

 

流石に他クラスの者ではないだろうが、マイナス寄りの発言にオレは振り返る。

 

前の櫛田のときは興味本位だったが、あまりいい気分ではなかったしな。

 

もしここで仲間の悪口を吐かれるようなら、オレは即刻この場を去るだろう。

 

 

「頭痛いし…………まじでっ………」

 

「…………」

 

「「あ」」

 

 

立ち上がり少し歩いていくと、目が合った。

 

そして、声が被る。

 

 

「なに、あんた」

 

「いや、それはこっちのセリフなんだが」

 

 

正面には、クラスで見かけたことのある女子生徒が立っていた。

 

月の光に照らされ、その綺麗な紺色の髪が光っている。

 

ついでに、地毛なのか染めたのかは分からないが、水色のメッシュも綺麗だ。

 

 

「はぁ…………だっる」

 

「人の顔を見て溜息を吐くとは酷いな。傷ついたぞ」

 

 

やはり未知への興味と言う感情だけはあるのか、オレは彼女に話しかけていた。

 

なるべく、友人たちと話すときと同じように。

 

それしか、コミュニケーションのやり方を知らないからな。

 

 

「っせ。いやまじ運ないわ。どっか行ってくんない?」

 

 

どうやら、向こうはオレと話す気はないらしい。

 

だが、残念だったな。

 

オレはお前と話してみたいんだ。

 

この暇な夜の時間、少々付き合ってもらうぞ。

 

 

「オレの方が先にいた。道理に従うなら、どこかに行くべきなのはお前の方じゃないか?」

 

「はぁ、キッショ。もういいや、まじだるいし」

 

「ところで姫野。何にそんなイラついているんだ?」

 

 

そう。

 

彼女の名前は姫野ユキ。

 

クラスの男子の間では『可愛いけど愛想がない』などと言われている女子だ。

 

『話しかけたら殺される』や『目が合ったら石になる』みたいな噂も実しやか囁かれている。

 

 

「はぁ? なんであんたに話さないといけないわけ?」

 

「なんとなく、だ。喋ったことはなかったが、Bクラスにお前みたいなタイプがいるとは思わなくてな。少し意外だったんだ」

 

「はぁ…………なんか、普段のあんた見てると話すまで付いてきそうだしいっか。その代わり、話したらどっか行ってね」

 

「よく分かったな。確かに、ここで断れたら明日追いかけるつもりだったぞ」

 

「ストーカーじゃん。キッショ」

 

「それ止めて。傷つく」

 

「嘘つけ」

 

 

意外とノリいいな、姫野。

 

しかも、オレのつまらない会話にも乗ってくれるし。

 

 

 

「どうせあんた人に言うタイプじゃないだろうから言うけど、Bクラスの空気少しだるいんだよね。何でもかんでも『みんなでやるのが正義』で『一人でいるのは悪いこと』てさ」

 

「確かに、一之瀬がそういうタイプの人間である以上、クラスの雰囲気もそうであるのは否定できないな」

 

「へぇ、友達でしょ? もっと庇うと思ったけど」

 

「別に、姫野の意見自体は正しいからな。それを否定してもお前との関係までこじれるだけだ。もっと話したいと思ってるから、それは避けたい」

 

 

姫野は面白い。

 

網倉や柴田とはまた違ったツッコミをしてくる。

 

それに、一之瀬や神崎にはない雰囲気を持っているしな。

 

 

「そういうこと言って一之瀬さんとかを誑かしてるんだ。悪いけど、私にそういうの効かないからね」

 

「すまない。誑かしてなんかいないし、姫野に何か言ってしまったか?」

 

 

あまり、失礼なことを言ったつもりはないんだがな…………

 

また、無知を晒してしまったのだろうか。

 

 

「それ全部演技なら凄いけど、今は話し聴いてもらったし信じてあげなくもない。でも、ホントに言わないでよ? 私足並み揃えるのだけが取り柄だからさ」

 

「誰かに話す気はない。もう夜も遅いし、大人しくテントに戻って寝ることを勧めるぞ」

 

「っせ。子供なんだが親なんだか、ハッキリしてくんない?」

 

「意味が分からないな…………」

 

 

新たな喋れる人材を発見し、オレの無人島生活一日目は終了した。

 

 

 

 

 

 

──────綾小路はまだ知らない。

 

彼の手も届かず、存在にすら気付かない海の向こうで、静かに牙を研ぎ、毒を調合している者がいることを。

 

 

彼女の牙が、綾小路の琴線に触れることになるのは、もう少し先の話だ。

 

 

 




最後に書いた人、誰だか分かるかな?

Dクラスで救って欲しい生徒(No.1を投票して)

  • 堀北鈴音
  • 櫛田桔梗
  • 軽井沢恵
  • 長谷部波瑠加
  • 三宅明人
  • 松下千秋
  • Dクラスに救う価値無し
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